アイソトープ治療はがんや白血病にはなりません。

放射性ヨード治療(アイソトープ治療)はアイソトープという一種の放射能を使う治療です。
バセドウ病の人ではアイソトープのカプセルを飲むとその6~7割が甲状腺に集まります。このことを利用して治療するわけです。分かりやすく言えば、アイソトープで小さく縮めて治そうというものです。
外から放射線をあてるわけではなく、痛くもかゆくもない治療です。

放射線を使いますが、がんや白血病になったり髪が抜けたりはしません。

今から70年ぐらい前にこの治療は始められました。最初はがんや白血病になるだろうと考えられていました。しかし、これまでの多くの研究でこの治療をしたことで甲状腺がんや白血病が増えたということはないと分かりました。いまでは安全な治療法として多くの人がこの治療を受けています。

日本は広島、長崎へ原爆を落とされた経験から医者や患者もこの治療を避ける傾向にあります。しかし上にも述べたように、がんなどの心配のないことが分かってきて、日本でも今後は増えてくると思います。
さらに、平成10年6月から使用量に制限があるものの(13.5mCiまで)、外来で放射性ヨード治療ができるようになりましたので、これから放射性ヨード治療が増えてくることが予想されます。

アイソトープ治療のために一時的にクスリを中止しますので、アイソトープ治療前後に動悸などバセドウ病の症状が出ることもあります。そのようなときにはベータ遮断薬などで治療すれば、良くなりますから心配ありません。そのうち、抗甲状腺薬やヨード剤を再開すれば甲状腺ホルモンが落ち着いてきて気分も良くなります。

アイソト-プ治療後3~4ヶ月経った頃、筋肉がつることがあります。これはアイソト-プ治療が一番効く時期に当り、一時的に甲状腺ホルモンが低下するためです。ほとんどの場合は3~6ヶ月経つと回復して来ます。

バセドウ病の外来アイソトープ治療・5年後の治療成績<233例>

平成20年4月1日から平成21年3月31までにアイソトープ治療を受けたバセドウ病患者は233例です。来院しなくなった20例を除いた213例の治療5年後の甲状腺機能をお示しします。

9割は甲状腺機能低下症になります。これは、1回で治すために最近ではアイソトープ投与量を多くしたためです。アイソトープ治療の目的は抗甲状腺薬からの解放です。甲状腺ホルモン剤は副作用もなく、長期服用しても問題ありません。6ヶ月という長期処方もできますので、診察回数を減らすことができます。
潜在性甲状腺機能低下症、潜在性甲状腺機能亢進症はクスリを飲まなくて良い状態です。正常はもちろんクスリはありません。

アイソトープ治療が適する場合

心臓病や肝臓病などがあり手術できない人、手術を受けることをいやがっている人、手術後に再発した人などが、この治療に適しています。年齢的には、18歳以下なら医師と相談して決めましょう。

実際の治療法はアイソトープのカプセルを1回飲むだけです。1回で効かなければ、6~12ヶ月してまた飲みます。治療の前後で計4日間はクスリをやめ、海草類を食べないようにしてもらいます。

アイソトープ治療が適さない場合

妊娠中又は授乳中の女性はアイソトープ治療をしてはいけません。
しかし妊娠可能な年齢の女性でも手術ができないときはアイソトープで治します。そのときは、6ヶ月間の避妊を要します。

アイソトープ治療には、これといった欠点はありません。

1年以上経つと甲状腺機能低下症になる人が大半ですが、これは欠点ではなく、治療がうまくいったと捉えられてきました。すなわち、一生再発しないわけです。アイソトープ治療を行った場合、再発しては何のために治療を受けたのか分かりません。もし低下症になったら、甲状腺ホルモン剤を飲めば良いのですが、生涯飲む必要があるということを理解した上でアイソトープ治療を受けるかどうか決めましょう。