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[017]2002年1月1日
[017]
血清TSHを正常にする甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の投与は、潜在性甲状腺機能低下症による症状、血清コレステロール値を改善する:2重盲検、偽薬コントロール研究(バーゼル甲状腺研究)
田尻クリニック / 田尻淳一
スイスのMeierらのグループは潜在性甲状腺機能低下症による症状、血清コレステロール値に対して、血清TSHを正常にする甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の投与は有効かどうかを63人の潜在性甲状腺機能低下症(血清TSH値は5〜50mU/L; 11.7±0.8mU/L)について検討した(J Clin Endocrinol Metab 86: 4860-4866, 2001)

結果は、血清TSHを正常にする甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS=85.5±4.3μg/日)投与をした群(31人:血清TSH値は3.1±0.3mU/L)では、総コレステロールとLDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が有意に低下した。また、臨床症状も改善した。

結論として、彼らは「この研究はTSHを正常にする甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の投与で、LDL-コレステロールと臨床症状の改善がみられたことを示した初めての2重盲検試験である。LDL-コレステロールの減少で、心血管系の死亡率が9〜31%減少することが予想される」と述べている。

このあと紹介するトピック[018]トピック[019]を読んでもお分かりのように、しばらくはこの分野での論争が続きそうです。ただ、欧米や日本でコンセンサスが得られているのは、血清TSH値が10mU/L以上なら甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の治療を開始するということです。論争の的は、正常上限から10mU/Lまでの軽症例をどうすれば良いかという点です。今後の研究で、結論が出ると思います。
. Dr.Tajiri's comment . .
. 軽症の潜在性甲状腺機能低下症の治療については、意見の分かれるところです。関連したページを参考にしてください。
潜在性甲状腺機能低下症
実地臨床:潜在性甲状腺機能低下症
潜在性甲状腺機能低下症は想像以上に多い
TSHレベルと診断に関するアメリカ臨床内分泌専門医会の見解の逆転
潜在性甲状腺機能低下症は軽度の甲状腺機能不全であり、治療すべきである
潜在性甲状腺機能低下症の治療は、ほとんどの場合、不必要である
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