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甲状腺意識向上月間:2001年<1>

人生の大事な時期に「甲状腺のことを考える」こと、および検査を受けることを促がすための新たなキャンペーン。

1月は甲状腺意識向上月間です
ニューヨーク州ニューヨーク−2001年1月18日−アメリカ臨床内分泌病専門医会(AACE)が今日発表した国民調査によると、15%を下らないアメリカ人が子供を産んだ後(産後)、閉経期、あるいは60歳を超えた時など人生の大事な時期にしばしば甲状腺疾患に襲われています。AACEは新たなキャンペーン『今や首の時代』を打ち上げます。これはアメリカ人に誕生から老齢期までの甲状腺疾患を発症するリスクが高まる重要な時期について教育するためであります。アメリカ人は妊婦が最初に医師の診察を受ける時、産後うつ病に襲われた時、子供の発育や行動に変化が見られた時、ホルモン補充療法を行なっているにもかかわらず、気分変動やその他の更年期症状が続く時、高齢者が疲労やうつ病、物忘れに悩んでいる時は「甲状腺のことを考える」必要があり、医師にTSH(甲状腺刺激ホルモン)検査をしてもらう必要があります。甲状腺は首の鎖骨の上、喉仏のすぐ下のところにある蝶々の形をした内分泌腺です。甲状腺の病気を治療しないままにしておくと、コレステロール値の上昇やその結果起こる心疾患、不妊症、筋力低下、そして骨粗鬆症など長期的に重大な合併症を起こしてきます。甲状腺疾患に1,300万人以上のアメリカ人が罹っていますが、その半分以上は未診断のままになっています。

何百万人もの人が未診断のままであるということは、この深刻ではあるが簡単に治療できる病気に対する意識が欠けていることを反映しているものです。AACEの調査によれば、回答者の半分以上が自分の血圧を知っており、5分の1以上が自分のコレステロール(39%)や血糖値(21%)がわかっているのに、甲状腺がこれらの値に影響を与えるのにもかかわらず自分の甲状腺機能を知っている人は15%に過ぎなかったとあります。「甲状腺疾患に罹っている何百万人ものアメリカ人にとって、自分自身あるいは愛する者の甲状腺疾患の重大なマーカーとなりうる些細な徴候や症状に気付き、評価することを学ぶことが大事です」とAACE会長であり、マイアミ大学医学部臨床教授であるPaul Jellinger, M.D., F.A.C.E.は言っております。

TSHの検知と理解
重大な合併症を避けるためには、甲状腺疾患を早期に見つけることが絶対に必要であるが、調査ではアメリカ人のほぼ60%が甲状腺の病気の検査を受けたことがないということが明らかとなった。調査に参加した人の圧倒的多数(85%)が、もっとも一般的な甲状腺機能の標準的測定法であるTSH検査を知らされていないのです。TSHは簡単ですが、非常に感度の高い血液検査で、それにより医師はごくわずかな甲状腺機能の異常も見つけることができるのです。これは甲状腺ホルモン産生を調節している甲状腺刺激ホルモンのレベルを計るもので、甲状腺が活動し過ぎ(甲状腺機能亢進)か、不活発(甲状腺機能低下)、あるいは甲状腺正常状態であるかということがわかります。

AACEはTSHが正常範囲外(正常0.5〜5.0μU/ml)の人に治療と甲状腺疾患管理のために内分泌病専門医にかかるように勧めています。3.0から5.0μU/ml TSHレベルは正常範囲内ではあるが、甲状腺が不活発になっていくケースのシグナルである可能性もあるため、疑わしいと考えるべきであります。新しい甲状腺刺激ホルモン検査は、甲状腺機能低下と甲状腺機能亢進性の疾患のどちらも検知できるだけの感度があります。「TSH検査は医師が甲状腺疾患の診断と管理を行ないやすくする上で中心的な役割りを果たすものである」とAACE副会長であり、メイヨー医科大学内科教授のHossein Gharib, M.D., F.A.C.E.は言っております。

『今や首の時代』:あらゆる年代を通じての甲状腺
一生の間に甲状腺疾患を起こしてくるリスクが高まる時期が数回あります。甲状腺疾患の罹患率が高くなるため、AACEでは以下に挙げた時期にTSH検査を受けることをお勧めしています。

誕生から思春期まで:精神的、身体的発育への影響
アメリカで生まれる赤ちゃんの4,000人から5,000人に1人は甲状腺機能低下症です。幸いなことに、甲状腺ホルモン欠乏によって発達障害と精神障害を引き起こすクレチン病を見つけるため、北アメリカではすべての新生児に対してヒールパッドテストによる甲状腺機能低下症のスクリーニングが行なわれています。
親は甲状腺疾患が子供の発達時期の後になって出ることもあるということを知っておく必要があります。時には子供の成長速度の変化が唯一甲状腺に問題がある徴候を示すものである場合がありますが、子供はあまり具合が悪いことを訴えたり、助けを求めたりすることがないからです。甲状腺機能亢進症の子供はすぐに新しい服が小さくなりますが、甲状腺機能低下症の子供は不可解にも成長が止まってしまうことがあります。しかし、学校での集中力低下や注意力欠如、説明できない成績の変化、多動性、あるいは説明できない日中の疲労などはすべて甲状腺疾患が原因である可能性があります。甲状腺疾患の家族歴のある子供は特に甲状腺疾患を起こしてくる可能性が高いのです。

子供を産める年代の女性:妊娠に対する影響
妊娠できない女性は甲状腺機能を調べてもらうべきです。甲状腺疾患が受胎を妨げることがあるからです。さらに、最近の研究で妊娠中の甲状腺疾患が未治療であると、子供の精神発達に影響を及ぼし、その結果I.Q.の低下や運動能力低下、注意力、言語能力、読解能力の低下を起こす恐れがあることがわかりました。その他の研究でも、甲状腺機能低下症の妊婦は第2三半期中に流産するリスクが4倍高いことが示唆されています。事実、流産100症例毎に6例は妊娠中の自己免疫性甲状腺疾患に関係していると思われます。AACEはやがて母親になる人に妊娠前、あるいは標準的な妊婦の血液検査の一部としてTSH検査を受けることをお勧めしています。

甲状腺の病気の症状はあいまいで、なかなか気付かないことが多いのです。特に出産後に症状がある場合にはわかりにくいものです。多くのケースで、その症状がうつ病のような他の病気のものと間違えられてしまいます。現実には、産後うつ病と診断された多くの母親になったばかりの女性が実際はありふれてはおりますが、めったに診断されることのない産後甲状腺炎として知られている甲状腺疾患に罹っている可能性があります。この時期に、女性はうつ病だけでなく、心拍数の増加や不眠、不安に苦しむことがあります。このような状態は赤ちゃんが生まれてから最初の数週間に起こるのが普通です。そして、1年ほど続きます。TSH検査で産後甲状腺炎を特定できますし、薬で甲状腺機能は正常になり、うつ病も元通りに治る場合が多いのです。

中年期:月経停止は 必ずしも「停止」を意味するものではありません
AACEのデータによれば、50歳以上の女性の3人に1人は、ホルモン補充療法(HRT)にもかかわらず、一般的な更年期症状をまだ経験しています。事実、一般的な更年期症状−気分変動、うつ病、睡眠障害、疲労、忘れっぽさ、体重増加、髪や皮膚、爪の変化−は、実際のところ元にある甲状腺疾患の徴候である可能性もあるのです。AACEは40歳以上の女性は全員、TSH検査を受けるよう勧めております。この年齢グループの女性の10%に未診断の甲状腺疾患があることが研究でわかっているからです。

老年期:年をとったと感じないで年齢を重ねる
一部の高齢者にとっては、疲労やうつ病、忘れっぽさ、不眠、そして食欲や体重の変化が突然起こるため、人生の黄金期が期待はずれのものになってしまいます。ほとんどの高齢者は、本当は甲状腺疾患が元にあってその徴候が出ているのに、誤ってこれが加齢で自然に起きるものだと思ってしまうのです。このような症状を医師に訴える高齢者は、うつ病あるいは軽度の痴呆などと誤診されてしまうことがあります。AACEは、病気がなければ、加齢に上記の症状がかならず付随するはずはないということを力説しています。年齢が進むに連れて甲状腺疾患の発生率が高くなるため、また60歳以上の女性のほぼ20%に何らかの形の甲状腺疾患があるため、この年齢グループではTSH検査が特に重要となります。

アメリカ臨床内分泌専門医会と頚部チェック
TSHの血液検査がもっとも感度が高く、正確な診断用ツールでありますが、最初のステップとしてAACEは甲状腺の頚部チェックと呼ばれる簡単な自己検査を行なうことをお勧めしています。この自己検査はAACEが1997年に発表したものですが、アメリカ人が自分で大きくなった甲状腺を見つけることができるようになっています。患者さんが異常を見つけたら、検査や治療を受けることについて医師と話し合うようにしなければなりません。頚部チェックのやり方を順を追って説明した説明書については、AACEのウェブサイトwww.aace.comをお訪ねください。

アメリカ臨床内分泌病専門医会(AACE)は1991年に設立された、アメリカ最大の臨床内分泌病専門医の組織です。会員は内分泌疾患を持つ患者の治療に努めている3,500名以上の臨床内分泌病専門医からなっております。当会は内分泌疾患に対する一般の理解と意識を高め、その疾患を診断し、治療する臨床内分泌病専門医の価値を高めるよう努力をしております。

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