レボチロキシン(商品名チラーヂンSまたはレボチロキシンNa)で治療しているにもかかわらず「脳の霧」になるのは何故?

ご存知かもしれませんが、甲状腺ホルモンにはT3とT4の2つがあります。実際に甲状腺ホルモンのはたらきをしているのはT3です。実は、みなさんが飲んでいるレボチロキシンはT4です。T3も必要なのになぜT4だけを飲めば良いのか不思議に思われるかもしれません。

この疑問に答えるためには、甲状腺学の大発見についてお話しなければなりません。その発見とは、体の中でT4がT3に変換されるという事実です。レボチロキシンが世に出てくる前は、長い間、ブタの甲状腺末(もちろん、T3とT4が「あり」です)を飲んでいました。この発見後、甲状腺機能低下症の治療はレボチロキシンだけで大丈夫ということになりました。現在まで、体の中でT4からT3に変換されるという前提のもとに甲状腺機能低下症の治療にはレボチロキシン(T4)のみが使われてきました。

「脳の霧」を訴える患者さんが出てきたのは、甲状腺機能低下症の治療がブタの甲状腺末からレボチロキシン(T4)に変更になった50年前からなのです。しかし、甲状腺ホルモン値が正常であるため、「脳の霧」は別の原因(更年期障害や精神疾患など)で起こると考えられてきました。

最近になって、多くの研究からレボチロキシン(T4)のみで治療している患者さんの一部では、体の中でT4からT3への変換がスムーズにいかないことが分かりました。この人たちが「脳の霧」を訴えているということも分かってきました。そこで考案されたのがT3+T4併用療法です。現に、「脳の霧」を訴える人にT3+T4併用療法を行い、症状が劇的に改善することは多くの医師が気づいています。

「脳の霧」の治療は、ようやくスタートラインについたところです。これから、日本だけでなく世界中の多くの患者さんがT3+T4併用療法を行うことで元気になる日が訪れることを確信しています。

文責:田尻淳一