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[045]
甲状腺疾患健康ガイド

14:甲状腺疾患患者にとって心配なこと
甲状腺協会の医療顧問であるRobert Volp M.D., F.R.C.P.(C), F.A.C.P.が御自身の診療やメンバーよりの問い合わせ、また協会との会合中に拾い集めた質問とそれに対する答えをまとめてくださいました。
01 甲状腺腫はヨードが足りないためですか?ケルプ(昆布)は効果がありますか?
02 甲状腺が「言うことを聞かなく」なったらサイロキシンの量を調節すべきですか?
03 体温が低いのですが、甲状腺機能検査は正常です。甲状腺治療剤を飲まなければなりませんか?
04 主治医が私の血清T4(サイロキシン)レベルが上がっているのを見つけ、サイロキシンの量を減らしました。でも、まだひどい疲れを感じますか?
05 甲状腺癌は遺伝するのですか?
06 良性の甲状腺結節なのに、なぜ手術した方がよいと言われるのでしょうか?
07 今飲んでいるサイロキシンの量で具合がよいのですが、骨粗鬆症の危険性があるため、量を減らさなければなりませんか?
08 特定のタイプの甲状腺疾患、つまり甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症は遺伝するのですか?
09 バセドウ病のために目が飛出しています。でも、それ以外に具合悪いところはありません。サイロキシンの量を調節しなくてはなりませんか?
10 身体的、感情的ストレスでバセドウ病が引き起こされることがあるのですか?
11 数年前に抗甲状腺剤を使ってバセドウ病は治りました。まだ続けて甲状腺のチェックを受けなくてはなりませんか?
12 抗甲状腺剤には重篤な副作用がありますか?
13 放射性ヨード治療で癌や不妊症になることがありますか?この治療を受けたら、他にも危険なことがあるのでしょうか?
14 一生サイロキシンを飲むことが心配です。合成のものより天然の製剤の方がよいのですか?
15 甲状腺機能低下症がどのように記憶力低下に影響するのですか?
16 偏頭痛は甲状腺の機能が悪いことと関係があるのですか?
17 どのような同種療法(すなわちホメオパシー)が甲状腺機能亢進症に使えますか?
18 甲状腺に悪い化学物質が飲み水の中にあるのですか?
19 甲状腺疾患について現在行われている最新の研究にはどのようなものがありますか?
20 子供を産んだ後、慢性甲状腺炎になりました。子供もこの病気になる危険性があるのでしょうか?
21 CTスキャンの後、ヨードにアレルギーがあることがわかりました。これが甲状腺の病気の発病原因でしょうか?
22 甲状腺の病気が治る早さに年齢が影響するのですか?TSHとT3 の正常値の範囲はどうなっていますか?
23 長年、甲状腺機能低下症の治療を受けています。突然、甲状腺機能亢進症のようになりました。ストレスで甲状腺機能亢進症が引き起こされることがあるのでしょうか?
24 甲状腺機能低下症になった後、具合がよくなるまでにどれくらいかかりますか?
25 フッ化物と甲状腺機能低下症との間に関係がありますか?

01   ↑このページのトップへ
[質 問] 食餌中のヨードが足りないために甲状腺腫になるのですか?この甲状腺腫を治すためにはケルプを食べるべきでしょうか?
[回 答] 世界的にはヨード欠乏が甲状腺腫の最大の原因ですが、我が国(注釈:カナダのことです)では違います。2世代にわたってヨード化塩を摂取しています。そして、今ではそれ以外にもたくさんのヨード摂取源があります。そのため、何らかの形で世界のほとんどの地域よりもたくさんのヨードを摂っているのです。健康食品店でよく売られているヨード含有量の高い海草であるケルプを含め、これ以上のヨードを食餌に加えるのはまったく意味がありません。問題は、ヨードの過剰はヨード欠乏と同じくらい危険であることです。ヨードの過剰でも甲状腺腫ができますし、また甲状腺が不活発な状態(甲状腺機能低下症)になったり、あるいは甲状腺ホルモンの作り過ぎ(甲状腺機能亢進症)が起きたりします。甲状腺炎も悪化します。カナダではケルプを摂取するのはよくありません。

02   ↑このページのトップへ
[質 問] 長年、甲状腺機能低下症のコントロールのため、サイロキシンを飲んでいます。それなのに、時々とても神経質になって、いらいらしたり、あるいはものすごく疲れることがあります。甲状腺が「言うことを聞いていない」のだと思います。サイロキシンの量をどのようにすればいいのですか?
[回 答] 面白いことに、何らかの病気にずっと罹っている患者さんは、どのタイプの症状であれ、自分がもともと罹っていた病気のせいだと思ってしまうのです。そのため、甲状腺の病気の治療がうまくいっている患者さんも、気分や疲労等、様々な症状の変化を自分の「甲状腺の病気」のせいだと思い続けるわけです。事実は、適切な量のサイロキシンを飲んでいるのであれば、血液や組織の中の甲状腺ホルモンレベルは正常になり、何であれ甲状腺の病気に関連した症状が出るはずはないのです。実際に経験なさっていることは、普通の人が誰でも耐えるべき健康な範囲内の変化です。中にはこの変化の程度がとてもひどい人もいますが、甲状腺の状態によるものとは考えられません。

03   ↑このページのトップへ
[質 問] 長年ひどい疲労を感じています。また、便秘や嗜眠、集中力低下、体重増加もあります。内分泌病専門医を含め、何人かの医師に診てもらい、何度も甲状腺の血液検査をしてもらいました。でも、いつもまったく正常だという検査結果が戻ってくるのです。それでも、そのような検査はあまり正確でなく、体温を測る方がもっと正確だと本で読みました。さらに、甲状腺機能検査が正常であっても自分は甲状腺の薬を飲むべきだと思っています。
[回 答] 実際のところ、日常的に行われている甲状腺の血液検査はきわめて正確かつ厳密なものです。さらに、甲状腺刺激ホルモン(TSH:これは甲状腺の機能が落ちてくるとさらに甲状腺を刺激するために出される脳下垂体ホルモンです。)の血液検査も非常に正確なものです。甲状腺機能が落ちてきた時、まず甲状腺刺激ホルモンが上がります。実際に甲状腺ホルモンレベルの低下が検知できる前にはもう上がってきます。これは潜在性甲状腺機能低下症と呼ばれる範疇のものです。この状態では、甲状腺ホルモンレベルはまだ正常で、患者さんも正常に思っていますが、すでにTSHが甲状腺自体に問題があることを示しているのです。あなたの場合、TSHが正常であるので、甲状腺機能低下症であるとはまったく考えられません。他の多くの病気で甲状腺機能低下症とそっくりの症状が出るということを覚えておくことが大切です。特に慢性の不安やうつ病、ストレスがそうです。しかし、そのような甲状腺の病気ではない人が甲状腺の薬を飲んで「効き目が出る」可能性があるというのも本当です。効き目が出るのは 甲状腺の薬の「偽薬効果」のためです。薬自体にはもともと何の効果もないのですが、その薬が効くと思えばそうなるのです。まったく同じに見えるけれども、全然作用しない薬を飲んで自分をだましているようなものです。もし、何かいいものが入っていると信じ込めば、とても具合がよくなるのです。時には、この偽薬効果で本当に驚くような効き目があり、それが長い間続くことがあります。必要ではないのにサイロキシンを飲むと、少し危険なこともありますのでお勧めできません。最後に、一部の人はそうでないと言っておりますが、皮膚温は甲状腺機能低下症の診断にはまったく役に立ちません。そのような説は完全に人を惑わすものであり、本当に無意味なものであるということがはっきり証明されております。甲状腺機能低下症の患者の皮膚が冷たいのは本当ですが、他の多くの病気でもそうなります。これには血行不良やひどいストレス、貧血などがあります。

04   ↑このページのトップへ
[質 問] かなり長い間、1日0.15mgのサイロキシン<注釈:チラーヂンS(50)3錠>を飲んでいます。大抵はそれで具合がいいのですが、最近脈が速くなったり、汗をかいたりするようなことがありました。主治医が血清サイロキシン(T4)が上がっているのを見つけ、サイロキシンの量を半分に減らしました。今では、ひどく疲れます。どうなっているのでしょうか?
[回 答] 脈が速くなったり、汗をかいたりするのは甲状腺の状態やサイロキシンの薬とはまったく関係がないと思われます。問題は、血清サイロキシンはサイロキシンを口から飲んでいる患者さんのモニターには役に立たないということです。その目的のため、すなわち薬の量が適切であるかを見るには、総血清トリヨードサイロニン(総T3)がいちばんよい方法です。もう一つの問題は、「T3検査」と言う言葉が人によって異なるものを意味することです。総血清T3とは無関係のT3レジン取り込み検査と呼ばれるものがあります。医師でさえもこれらの検査を混同しています。総T3検査は、放射標識免疫アッセイ(RIA)と呼ばれる方法を用いて行われます。この検査では正常範囲1.2-3.4nmol/Lの真ん中、すなわち2.1〜2.8nmol/L付近にある方が好ましいのです。総T3がその程度であれば、サイロキシンの量は適切であるということです<注釈:この答えには補足が必要です。甲状腺ホルモン治療の一番良い指標はTSHです>。

05   ↑このページのトップへ
[質 問] 叔母が乳頭癌になり、治療を受けました。数ヶ月前に私の家庭医が私の首に甲状腺結節を見つけ、専門医に紹介しました。甲状腺癌は遺伝すると承知しています。そして、主治医は大丈夫だと言っていますが、私も甲状腺癌なのではないかと恐れています。
[回 答] ほとんどの甲状腺結節は良性であることを強調しておかねばなりません。最終的に悪性であると判明するのは、甲状腺結節の約20%だけです<注釈:これも多すぎます。5%程度です>。そしてそのほとんどが乳頭癌で、これは予後がよいのが普通です。甲状腺癌は一般的に遺伝するものではありません。一つだけ比較的まれなタイプのもので遺伝性のものがありますが、これは髄様癌と呼ばれるものです。これは甲状腺癌全体の5%を占めるに過ぎません。

06   ↑このページのトップへ
[質 問] 1年ちょっと前に、主治医が結節を見つけ、様子を見てたぶんサイロキシンを処方するようになるかもしれないと言いました。その後、また別の結節と嚢胞が出来てきて、喉に痛みを覚えました。この時に私がかかっている医師がサイロキシンの治療でなく、手術を勧めるようになりました。私は70歳ですし、そのような治療はしたくありません。手術を避けると何か危険なことがありますか?穿刺吸引生検はマイナスでした。他に何か治療法はないのでしょうか?
[回 答] 結節が時間の経過と共に大きくなってくるような場合、あるいは痛みや気道の圧迫などを起こしてくるような場合、医師は懸念します。そのような理由が何かあれば、手術を考慮することになるでしょう。もちろん、結節が悪性かもしれないと医師が思っている場合は、別にはっきりした手術の理由があります。一般的に、サイロキシン治療で結節は小さくなりませんし、ほとんどの結節では他に効果のある療法はありません<注釈:この方は腺腫様甲状腺腫と思われます。このような場合にはアイソトープ治療が効きます。また、高齢ですし、癌の心配がないのなら、経過観察で十分です>。

07   ↑このページのトップへ
[質 問] 過去30年間、毎日0.15mgのサイロキシン<注釈:チラーヂンS(50) 3錠>を飲んできました。新しい家庭医にこの前診てもらった際に、薬の量が多すぎると言われました。具合はとてもよく、ホルモン剤のレベルを変えるのは気が進みません。でも、甲状腺ホルモンレベルが高すぎると骨粗鬆症になる危険があることはわかっています。その危険性がどのくらい高いのか、またサイロキシンの量を変えることにする場合、今の健康感を考慮するべきかどうかよくわからないのですが。
[回 答] サイロキシンによる治療は2つの目的、甲状腺組織を抑制するか、あるいは単に甲状腺機能低下症の治療のいずれかで行われます。甲状腺腫または以前甲状腺癌の治療を受けた場合は、TSHを抑え込むのが適当です。しかし、甲状腺機能低下症を治療しようとする際は、TSHを抑え込むのではなく、TSHを正常範囲に下げるのが理想的な治療です。それでも、ここ数年ほどTSHをサイロキシンで抑え込んだ場合に骨粗鬆症のことを多くの医師が懸念していたのですが、これは最近正しくないことが証明されました。研究では、たとえ抑制量のサイロキシンを飲んだ場合でも骨密度の減少や骨粗鬆症は示されませんでした。患者さんに実際バセドウ病−「活動し過ぎの甲状腺」がある場合にのみ、骨粗鬆症が起きる危険性がありますが、その危険性もわずかなものです。そうであっても、理想的な治療を求めて努力すべきですし、甲状腺機能低下症にとって理想的なのは、甲状腺機能検査がすべて正常になることです。

08   ↑このページのトップへ
[質 問] 私の甲状腺は活動し過ぎなんですが、姉のは不活発で、まったく正反対です。このように2つの病気が家族内に出るのは不思議なことではないのですか?
[回 答] これら2つの病気は どちらも「自己免疫性」甲状腺疾患と呼ばれています。つまり、両方とも抗体のためにおきる病気です。活動し過ぎの甲状腺の場合は、抗体が甲状腺を刺激して病気が起こります。それがバセドウ病の原因です。一方、お姉さんの甲状腺機能低下症にも抗体がありますが、それは甲状腺を傷つけ、正常なレベルの活動ができないようにします。これらの病気は互いに相対するものですが、本当は密接な関係があるのです。

09   ↑このページのトップへ
[質 問] バセドウ病のために目がひどく飛出しています。バセドウ病は放射性ヨードで治療を受け、実際に甲状腺腫は消えてしまい、前よりもずっと具合よく感じています。今、放射性ヨード治療が原因で起きた甲状腺機能低下症の治療のため、サイロキシン療法を受けています。でも、目もよくなると思っていたのにそうなりません。サイロキシンの量を変えなくてはなりませんか?
[回 答] サイロキシンの量を変えても、眼症の進行にはどっちみち影響はないので、意味ありません。眼症は甲状腺の状態、あるいは治療には影響されないのです。実際のところ、これは私の私見ですが、眼症は甲状腺疾患とはそれぞれの病気の基本的な原因を通じてのみ関連性があるのです。すなわち、それぞれの病気の基本的原因が、一方では活動し過ぎの甲状腺の原因であり、他方は眼症の原因であるわけですが、非常に密接な関係を持っているのです。しかし、甲状腺疾患を治療することが目の治療にはなりません。 それは「自分の事」しかしないのです。眼症は普通、発病後1年以内に安定期に達し、ほとんどの例でその後はそれ以上進むことはありません。重要なポイントは、重症の場合、この病気のことを熟知したよい眼科医の治療を受けるべきだということです。

10   ↑このページのトップへ
[質 問] 以前、甲状腺の病気に罹ったことのない人に、交通事故が原因の身体的、感情的ストレスのためにバセドウ病が発症することがあるのでしょうか?
[回 答] ある特定の身体的、感情的ストレスがバセドウ病の発病のきっかけとなるということは、それを疑うことはできても、それ以上のことは証明できません。しかし、そのようなストレスが免疫系に有害な影響を及ぼし、そのために遺伝的にそのような病気になりやすい素因を持つ人のバランスが病気の方に傾くのだという状況証拠がたくさんあります。

11   ↑このページのトップへ
[質 問] 4年前にバセドウ病になり、プロピルチオウラシル<注釈:日本ではプロパジールまたはチウラジール>で治療を受けました。甲状腺腫は小さくなり、1年後にプロピルチオウラシルを止めました。それ以来、具合が悪いことはありません。まだ甲状腺のチェックを受ける必要がありますか?
[回 答] その必要があります。生涯、寛解状態(クスリを飲まないでいい状態)を保つかもしれませんが、誰もそうだと予測することはできません。甲状腺の状態は不安定なものだと考えるべきで、少なくとも年1回のチェックを受けなければなりません。徐々に甲状腺機能低下症の状態に進むかもしれませんし、あるいは甲状腺機能亢進症が再発してくる可能性もあります。再発の傾向はひどいストレスにより強まります。

12   ↑このページのトップへ
[質 問] バセドウ病のため、薬局からもらった抗甲状腺剤の薬剤情報シートを読んだのですが、この類の薬に非常な不安を感じています。主治医はそんなに詳しいことを話してくれませんでしたが、重大な副作用もあると聞いたことがあります。このような危険性があるので、主治医に他の治療法を試してくれるよう頼むべきでしょうか?
[回 答] 一般的に、抗甲状腺剤は安全です。重大な副作用の発生率は約1%で、軽い副作用発生率は3〜4%です。いちばんひどい副作用は、突然白血球数が非常に低いレベルに落ちてしまうもので、これは実際きわめて危険なものです。その前触れはものすごくひどい喉や口の痛み、および高熱です。患者さんがそのような症状が出てすぐに薬を止めれば、普通は速やかに回復します。しかし、ほとんどの場合、白血球数は正常であることがわかり、まった薬を飲み始めることができるのですが、そのような症状が出たらすぐに薬を中止することが大切です。ごくまれに中毒性肝炎が起こることがあります。一方で、皮膚の発疹や関節痛はもう少し高い頻度で見られます。これはそれほど重大なものではありません。
抗甲状腺剤を飲み始める患者さんには副作用に対して警告し、副作用が起きたら薬を止めるように言っておかねばなりません。患者さんの97%には何の副作用も出ません。

13   ↑このページのトップへ
[質 問] 主治医が私の活動し過ぎの甲状腺の治療のため、放射性ヨードを使いたいと言っています。でも、その治療で不妊症や癌になることがあるそうなので、恐ろしいのです。さらに、他の人に危険を及ぼすことも恐ろしくてたまりません。
[回 答] 放射性ヨードを活動し過ぎの甲状腺の治療に使う場合は、線量がそれほど高くないのが普通で、他の人に危険を及ぼすことはありません。実際のところ、放射能はほとんど、ほんの2mm程度の短い距離しか伝わらない形になっています。これは1インチの8分の1に満たない距離です。また、甲状腺に隣接する組織に傷害を与えることもありません。放射性ヨード治療を受けた後に甲状腺や他の臓器の癌発生率が高くなることもありません。さらに、不妊症になる危険性はまったくなく、将来子供を産むときにも危険なことはないのです。放射性ヨード治療を受けてから6ヶ月待って妊娠するように勧められますが、治療後に子供を作るのはまったく安全です。主治医が治療直後(普通は2〜5日以内)に守ることをいくつかガイドラインとして出すと思います。

14   ↑このページのトップへ
[質 問] 生涯、サイロキシンを飲むことが心配です。妊娠中も飲めるのですか?他の薬と一緒に飲んでもいいのですか?飲み忘れたらどうなりますか?もし、うっかり余分に飲んでしまったらどうなりますか?何で合成薬でなく、天然製剤を飲んだらいけないのですか?
[回 答] サイロキシンは、合成の薬ですが、あなた自身の甲状腺が作るものとまったく同じものです。人が飲む薬の中でもっとも安全なものの一つです。このため、患者さんがサイロキシンのせいではないかと思ういろいろな症状は、実際のところ薬そのものが原因ではなく、薬を飲むことに対する不安のためなのです。サイロキシンは妊娠中や授乳中にも飲むことができますし、どちらの場合にも悪影響はまったくありません。この薬は胎盤を通りませんので、子宮内の赤ちゃんに届くことはありません。ほんのわずかな量が母乳に出ますが、これは自分の甲状腺でサイロキシンを作り出している授乳中の母親の誰にでも起こることです。めったに薬と相互作用を起こすことはないので、他のどのような薬とも一緒に飲むことができます。1日薬を飲み忘れたからといって、何か起こるわけではありません。また翌日薬を2錠飲んだとしても、何も起こりません。その日のいつ薬を飲むかは問題ではありません。効き始めるのに1週間ほどかかるからです。恐れることなく、生涯飲んでよいのです。
天然製剤、すなわち乾燥甲状腺(時たまサイロキシンの結合剤や染料にまれなアレルギーがある場合に処方されます)を飲むことには、不都合なことはあっても、いいことはありません。乾燥甲状腺の使用期限はずっと短く、精度の高い方法でアッセイ(定量分析)が行われていません。そして、ロットによってその有効性にかなりのばらつきがあります。したがって、サイロキシンの方がずっと好ましいのです。

15   ↑このページのトップへ
[質 問] 甲状腺機能低下症がどのように記憶力低下に影響するのですか?
[回 答] 重症の甲状腺機能低下症で、短期間の記憶力低下が誘発されることがあります。しかし、先天性の病気に起こるものだけが永久的なものです。甲状腺機能低下症が小児期に起きても、また成人期に起きた場合は間違いなく、甲状腺機能低下症に関連した記憶力低下がどのようなものであれ、サイロキシンで治療を受ければ正常に戻ります。正常な状態を維持するに十分なサイロキシンを飲んでいる限り、甲状腺の活動に関連するあらゆる機能も正常であります。

16   ↑このページのトップへ
[質 問] 偏頭痛は甲状腺の機能が悪いことと関係があるのでしょうか?
[回 答] 真の偏頭痛は甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症では起きません。しかし、甲状腺ホルモンのレベルが高くても、低くても、どのような類の頭痛であれ悪化することがあります。甲状腺の検査が数週間正常な状態であったなら、まだ頭痛が続いていても甲状腺の状態に関係したものとは思われません。

17   ↑このページのトップへ
[質 問] どのような同種療法(すなわちホメオパシー)が甲状腺機能亢進症に使えますか?
[回 答] 自己免疫性甲状腺疾患に対するホメオパシー治療で効果が証明されたものはありません。しかし、バセドウ病では自然寛解に進むことがあります(30%の発生率)。これはおそらく鎮静やリラクゼーション、あるいは休息によって起きたものと思われます。

18   ↑このページのトップへ
[質 問] 飲み水に入っているどのような成分や化学物質が甲状腺に悪いと考えられますか?
[回 答] このようなことは我が国では記録されていませんが、世界のある一部の地域では飲み水と甲状腺腫の流行との間に関係があるというのは本当です。これらの研究では、甲状腺腫誘発物質の有機化合物で、ある地域の水道水が汚染されていることが示唆されています。水に含まれる甲状腺腫誘発物質の源は、有機物や石炭、頁岩、チャート(無水珪酸からなる固い堆積岩)等を多く含む堆積岩です。
コロンビア州の水の活性炭抽出物内に、抗甲状腺作用のある30種類以上の有機化合物があることが突き止められました。レゾルシノールおよびそれ以外のフェノール酸、および炭酸フェノールの親化合物には特に甲状腺腫誘発性があります。
再度強調しておかねばなりませんが、カナダでは水に含まれる甲状腺腫誘発物質のうち、重大なものは見つかっておりません。我が国では、流行性甲状腺腫は見られず、甲状腺の病気のほとんどはそのようなファクターによるものではありません。

19   ↑このページのトップへ
[質 問] 甲状腺疾患について現在行われている最先端の研究にはどのようなものがありますか?どのような研究が今行われていますか?
[回 答] 私共の研究室を含め、世界中で最先端の研究が行われています。世界中のたくさんの研究室で実施されているいろいろなタイプの研究があります。これらの研究は甲状腺の病気を様々な角度から見るもので、例えば遺伝学や基礎的な免疫性の原因、甲状腺と異常な免疫細胞との相互作用、眼症の原因と治療などがあります。研究者はこれらの病気の原因を見付けたいと願っていますし、それと同時にどうしたらもっとよい治療ができるか、あるいはどうしたら予防できるかということも知ろうとしているのです。

20   ↑このページのトップへ
[質 問] 2人目の子供を産んでからまもなく慢性甲状腺炎になり、ほぼ10年経ちます。子供もこの病気になる危険性があるのでしょうか?もしそうならば、どのようにしたらその危険性を最小限に抑えることができますか?
[回 答] お子さんには慢性甲状腺炎を起こしてくる危険がある程度あります。しかし、きちんと診断され、治療を受ければそれ程重大な、あるいは深刻な病気ではありません。女の子は男の子に比べ、この病気を発病してくる可能性が4倍高くなっています。どの年齢でも起こり得るのですが、思春期前に発病することはまれで、出産後に発病してくる場合がほとんどです。実際、この形の病気は産後甲状腺炎と呼ばれています。あなたが危険性を最小限に抑えるためにできることは本当に何もないのです。しかし、家庭医にお子さんを診てもらう際に、そのことを頭に入れておくべきで、そうすれば年1回の割合で、甲状腺機能検査と甲状腺抗体検査をしてもらえると思います。思春期以降はこのことがもっと大切になります。

21   ↑このページのトップへ
[質 問] CTスキャンの後、ヨードにアレルギーがあることがわかりました。このアレルギーのために自己免疫反応が引き起こされたのでしょうか?
[回 答] たとえヨードにアレルギーであっても、このアレルギー、あるいはその他のアレルギーで自己免疫反応が引き起こされることはありません。慢性甲状腺炎は非常にありふれたものであることを頭に入れておいてください。先に述べたように、出産後に起こる場合がいちばん多く、遺伝性の免疫障害と関係があります。

22   ↑このページのトップへ
[質 問] 甲状腺の病気が治る早さや甲状腺ホルモン補充量に年齢が影響するのですか?TSHとT3の正常値の範囲はどうなっていますか?
[回 答] 確かに甲状腺の病気、甲状腺機能亢進症と機能低下症のどちらも年齢によってその治る早さが影響を受けます。高齢の人では治りが遅く、特に甲状腺機能低下症の人ではそうです。また、サイロキシンの量を増やす場合、高齢者では非常な注意を払う必要があります。TSHの正常範囲は使われるアッセイのタイプによって違います。現在は感度の高いアッセイが利用でき、それによれば通常の正常範囲は0.3と3.5ミリ単位/Lの間です。総血清トリヨードサイロニン(T3)もやはり検査施設毎に多少違いますが、平均的な正常範囲は1.2〜3.4nmol/Lです。

23   ↑このページのトップへ
[質 問] 4年間サイロキシンで治療を受けています。この間突然、甲状腺機能亢進症になりました。サイロキシンがしばらくの間、体内に留まり、その後突然作用しだすというようなことがあるのでしょうか?ストレスを受けるようなことがあるとそのような状態に突然なるのでしょうか?
[回 答] これはきわめてまれなことで、今までに30例しか報告されていません<注釈:慢性甲状腺炎でサイロキシン(チラーヂンS)を服用中に、バセドウ病になる人はまれにいます。わたしも今までに、同じような人を20〜30人経験しています。バセドウ病も慢性甲状腺炎も、同じ自己免疫性甲状腺疾患ですから、このようなことが起こっても不思議ではありません。甲状腺刺激抗体が出現したので、バセドウ病になったのです。甲状腺専門医は、このようなことはたまに経験していますが、論文に書かないのです>。しかし、普通考えられることは、医師がサイロキシンを飲んでいる患者に甲状腺機能検査を行い、血清サイロキシンが上がっているのを見つけるということです。これが「甲状腺機能亢進症」と解釈される場合があるのです。しかし、総サイロキシンはサイロキシンを口から飲んでいる患者に対する測定方法としては適当でありません。むしろ総血清トリヨードサイロニンが血清サイロキシンよりもはるかに優れています。もし、総血清トリヨードサイロニンの値が正常範囲の中程にあれば、患者に出ている症状はサイロキシンのせいではないということになります。サイロキシンが体内にしばらくの間留まっていて、それから突然作用しだすというようなことはありません。サイロキシンは体内で一定の速度で分解され、それが変ることはありません。私が言ったように、一握りの人がサイロキシンを飲んでいる最中に自分の甲状腺が活動し過ぎになったという報告もありますが、これはきわめてまれなことです。私はこのご質問をなさった人に起こったことは、血清サイロキシンが上がっており、症状は実際のところ甲状腺の薬とは無関係なのではないかと思っております。

24   ↑このページのトップへ
[質 問] 不活発な甲状腺になり、4ヶ月サイロキシンを飲んでいます。また具合がよくなるまでどれくらいかかりますか?
[回 答] これに対する答えは、もし症状がそもそも甲状腺ホルモンが足りないために起こったもので、適切な量のサイロキシンを飲んでいるならば、ほぼ元のように具合がよくなるか、少なくとも相当の改善を見るまでに6週間もかからないはずです。自分の具合に応じて薬の量を調節するのは適切なことではありません。それよりも、定期的な血液検査によって 量を「調整」してもらうことです。

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[質 問] フッ素と甲状腺機能低下症との間の関係について何か情報をお持ちですか?H. Winter Griffith, M.D.の書いた「ビタミン、ミネラルおよび栄養剤」という本に、不活発な甲状腺がある場合、フッ素を摂ってはいけないと書いてありました。このようなことは聞いたことがありませんし、どういう意味だろうと思っています。
[回 答] フッ素はヨードのようなハロゲンで、そのため短期間甲状腺に取り込まれます。しかし、ヨードとは違い、フッ素が甲状腺ホルモンと結合することはありません。いずれにせよ甲状腺機能を妨げることはありませんし、実際に甲状腺機能低下症の人がフッ素を使っても心配することはありません。当然ながら、これはサイロキシンを飲んでいる人にも当てはまります。サイロキシンの作用がフッ素やその他の栄養剤で妨げられることはありません。

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