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甲状腺疾患健康ガイド

05:甲状腺結節
01 甲状腺結節のタイプ
02 臨床的特徴
03 検 査
04 甲状腺の生険
05 治療法
06 再発予防
07 良性結節の治療
08 甲状腺と頸部領域への放射線照射
09 多結節性甲状腺腫
甲状腺「結節」は甲状腺の中に限局した腫れものです。1個だけ腫れものがある場合がほとんどですが、時には数個の腫れものがある「多結節性甲状腺腫」<注釈:日本では腺腫様甲状腺腫と言われます>の一部である場合があります。多結節性甲状腺腫は高齢者に多く見られ、何の症状もないことがよくあります。1個だけの結節(単発性結節)も珍しいものではありません。おそらく人口の5%にあると思われます。ただほとんどの人は甲状腺にどこか悪いところがあるとは気づいていませんが。甲状腺内に単発性結節ができる原因はたくさんあります。癌はまれですが、甲状腺結節を調べる主な理由は、その結節が悪性ではないかということであるため、これらの原因の中ではいちばん重要なものです。癌が単発性結節より、むしろ多結節性甲状腺腫にある可能性は低いのです。

01 甲状腺結節のタイプ ↑このページのトップへ
単発性甲状腺結節は普通、次に挙げた4つのうちのいずれかのものです。
  1. 液体を含む嚢腫
  2. 変性した良性腫瘍/腺腫
  3. 徐々に発育する腺腫
  4. ごく少数の悪性のもの
甲状腺の残りの部分は普通正常であるため、甲状腺の機能は正常で、患者は甲状腺機能低下症や機能亢進症にはなっていません。

02 臨床的特徴 ↑このページのトップへ
甲状腺結節は普通、小さく痛みがありません。頸部に圧迫感を生じるようなこともありません。ほとんどの患者は腫れものがあることにさえ気が付いていないのです。この腫れものは通常の健康診断を受けた時、あるいは他の病気で診察を受けた時に医師が見つけることが多いのです。通常の場合、甲状腺結節は硬く滑らかで、皮膚の上から簡単に触れることができます。甲状腺の他の部分は正常に触れます。

甲状腺癌は良性の結節とは異なっているのが普通です。結節が非常に硬いことが多く、腫瘍が広がっている場合は頸部リンパ節に腫れがあることがあります。しかし、触診などの身体検査だけでは良性と悪性の結節を見分けることはできません。

03 検 査 ↑このページのトップへ
結節の検査の中でもっとも大切なものの一つが放射性ヨードスキャンで、これにより医師は結節だけでなく、甲状腺の周辺組織まで見ることができます<注釈:この記載は適切ではありません。まず、超音波が一番最初に行う検査です。シンチは症例を選んで、行います。最初から行う検査ではありません。何故なら、高価な割には、シンチでは悪性か良性かを判断できないからです>。

もし医師がスキャンを行う際に皮膚の上に結節の外形を描いていれば、スキャン上に現れた異常がその結節の部分と一致します。放射性ヨードを取り込まない結節は「コールド」結節と呼ばれます。時には残りの甲状腺組織に犠牲を強いて、ほとんどのヨードを取り込んでしまう結節があります。このような結節は「ホット」結節と呼ばれます。「ホット」結節は活動し過ぎになり、甲状腺機能亢進症を起こすことがあります。残りの甲状腺と同じ量のヨードを取り込む結節は、「ウォーム」結節または機能結節と呼ばれます。悪性の可能性があるのは「コールド」結節だけです。実際のところ、「コールド」の約10%以下が甲状腺癌であるにすぎません。

04 甲状腺の生険 ↑このページのトップへ
次に行うステップは、甲状腺の穿刺吸引生険です。甲状腺から細胞や液体を取り出し、それを病理学者が調べて悪性か良性か確かめます。針を甲状腺嚢腫の中に差し込んで、注射筒の中に液体を吸い出す場合もあります。この液体は、良性または悪性の腫瘍内で破壊された甲状腺組織上の血液が変性したものであるため、通常は赤みがかった茶色をしていますが、先天性嚢腫であれば透明な黄色い液体です。ごくまれに、結節が甲状腺膿瘍であることを示す膿が吸い出されることがあります。

05 治療法 ↑このページのトップへ
治療法は先に述べた2種類の検査で明らかにされる結節の性質によって異なります。結節が「ウォーム」であり、生険で悪性細胞がみとめられなければ、その結節は悪性でないと思ってまず大丈夫です。しかし、スキャン上で「コールド」結節であることが示され、生険で「悪性の疑いがある」細胞がみとめられたら、その結節は取ってしまわなくてはなりません。手術時の病理学検査で結節が悪性であることがわかったら、異常のある甲状腺はすべて取り除かなくてはなりません。外科医は頸部も注意深く調べ、悪性組織を含んでいる恐れがあるリンパ節を取り除きます。

06 再発予防 ↑このページのトップへ
多くの医師は、手術で結節を取り除いた患者全員に、残りの組織内に新たに結節が生じてくるのを予防するため、生涯甲状腺ホルモン剤を服用させます。

07 良性結節の治療 ↑このページのトップへ
良性の甲状腺結節は、甲状腺ホルモン剤(サイロキシン)で治療されることがありますが、これはTSHの働きを「押さえ込み」、それにより結節が小さくなることを願って行うものです。この方法で治療を受ける患者は、6ヶ月ごとに診査を受けなくてはなりません。結節が大きくならない限りは心配ありません。しかし、サイロキシンで治療しているのに結節が大きくなってくる場合は、悪性になっている可能性があり、手術で取るべきです。また、このことも強調しておかねばなりませんが、ほとんどの良性甲状腺結節はサイロキシン治療では小さくなりませんし、この方法で治療が行われている結節は少なくなってきています。

08 甲状腺と頸部領域への放射線照射 ↑このページのトップへ
1940年代と1950年代初めにたくさんの子供たちが、胸腺やアデノイド、扁桃腺、そして皮膚の様々な良性の病気に対し、X線治療を受けました。後になって、この放射線照射が甲状腺に悪影響を与えることがわかったのです。いくつかの研究で、そのような治療を受けた人の最大25%に後で甲状腺結節が生じ、そのような人の3分の1に甲状腺癌ができたと示されています。

放射線照射後にできたと思われる甲状腺結節は、他の甲状腺結節と同じように診察や甲状腺スキャン、および生険で調べねばなりませんが、悪性の疑いがある場合は、その甲状腺結節を取り除き、残りの組織にも癌がないかどうか慎重に調べます。実際、多くの臨床家が放射線照射後にできた単発性甲状腺結節はすべて取り除くよう勧めております。

では、放射線照射は受けたが結節はないという人はどうなのでしょうか。そのような人は結節を生じてくる可能性が高いので、甲状腺専門医に丁寧に調べてもらうことが大切です。甲状腺結節がみとめられないか、触れない場合はスキャンや生険を行う理由はありませんし、6ヶ月後に再度調べてもらうだけでよいのです。医師が甲状腺結節を見つけた時にのみ、もっと詳しい検査が行われます。そのような患者もサイロキシン治療を受けることがありますが、この場合はサイロキシンが結節のできるのを予防すると思われるからです。

09 多結節性甲状腺腫 ↑このページのトップへ
甲状腺の中にたくさん結節がある場合は、その結節の一つが悪性であるかどうかはっきりさせるのが難しいのです。幸いなことに、癌を伴った多結節性甲状腺腫は非常にまれです。ごくまれにサイロキシンで多結節性甲状腺腫が小さくなることがありますが、これは普通、変性した領域か自律性を持つ領域、あるいはその両方の性質を持った領域があるためです。実際のところ、この病気を持つ患者の一部はサイロキシンで甲状腺機能亢進症を起こしてくることがあります。甲状腺腫が大きい場合や、気道を塞ぐ可能性がある場合、あるいは時間の経過とともに大きくなってくる場合は、手術で取ってしまうのが適当です。

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