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甲状腺結節の超音波検査

甲状腺結節があることがわかったら(あるいは疑われたら)、何らかのとるべき手段を勧める前に、医師が知っておきたいことが2〜3あります。もう一度、大多数の結節は良性であり、何も心配することはないということを思い出してください。したがって、どの結節が癌性である確率が高いかを確かめるのが焦点となります。それが結節がある部分の甲状腺も一緒に手術でとる必要がある心配な結節なのです。

必ずといってよいほど行われる最初の検査の一つが穿刺吸引細胞診(FNA)です。
穿刺吸引細胞診で普通(必ずではありません)、結節が良性か悪性かがわかります。
この検査だけしか必要としないこともよくあります。穿刺吸引細胞診の使用と甲状腺結節が悪性である可能性についての詳しい情報は、甲状腺の針生検(穿刺吸引細胞診)に載っております。

日常的に行われるもう一つの検査は、超音波検査です。この簡単な検査は、超音波を使って甲状腺の画像を得るものです。音波は手に持って操作する小型のトランスデューサー(変換器)から発信され、それで甲状腺の上をなでます。潤滑ゼリーを皮膚にぬって、音波が皮膚を通って甲状腺やその周辺組織に届きやすくします。この検査は素早く行うことができ、正確で費用が安く、痛みもありません。
そしてまったく安全です。大体、10分程しかかからず、結果をすぐ知ることができます。すべての結節にこの検査が必要なわけではありませんが、ほぼ日常的に行われています。

この検査を受ける必要があるの?
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これが典型的な甲状腺結節の超音波画像です。…ただ、この結節が通常のものよりちょっと大きいことを除いてですが。2つのスキャンはまったく同じもので、何が見えるのかをわかりやすくするために、右側のものに外形線を入れただけです。写真のいちばん上側の皮膚の上にプローブが置かれ、音波は首の深部と甲状腺(写真の下側の方)に向かって進みます。この結節(赤で示されています)は、甲状腺の中のこの領域に限れば、約80%の正常な甲状腺組織(黄色で示されています)から成っております。しかし、甲状腺の他の部分を見てみると、結節は見られず、正常な甲状腺組織しか見えないでしょう。

超音波検査で見られる結節で、他よりも心配なものにはある種の特徴があります。しかし、超音波検査だけでは癌の診断がつかないことを頭に入れておいてください。この検査で普通わかるのは、結節が癌である可能性が低い(良性の結節である特徴がある)か、あるいは癌性結節の特徴がいくつかあり、したがって生検の適応があるということです。

良性の結節であることがうかがえる超音波検査上の特徴
  • 結節の周囲にはっきりした形のよい縁がある。
  • 結節が生体組織ではなく、液体で満たされている(嚢胞)。
  • 甲状腺全体にたくさんの結節がある(ほぼ間違いなく良性の多結節性甲状腺腫です)。
  • 結節内に血液が流れていない(生体組織ではなく、嚢胞の可能性が高い)。
  • このトピックに関しては、甲状腺の針生検(穿刺吸引細胞診)にもっと詳しく載せております。
.これらのポイントのいくつかをもう少しはっきりさせるため、上と同じ超音波の写真を次に示しますが、これはプローブで血液の流れを検知するようにプログラムしたものです。この結節が複合性のものであることがはっきり見えるかと思います。…これは結節のある部分は嚢胞性であり、その他の部分は十分な血液の供給がある生体組織からなっていることを意味します。もしこれが漿液で満たされた単純な嚢胞であるとすれば、赤(動脈)や青(静脈)の血流はないでしょう<注釈:この記載は間違いです。これはカラードップラーという機械で、赤色は皮膚に近づいてくる血流を、青は皮膚から遠ざかる血流を示します。この血流は多くは動脈です>。この患者は、甲状腺内にこれ以外の結節はなく、そのため“甲状腺右葉の混合性結節”と診断されました。

この結節には心配な特徴が2〜3あったため、穿刺吸引細胞診(FNA)を行いました。
この検査では、非常に細い針を結節に刺し込み、細胞を少し吸引して採取し、それをスライドグラスに載せて病理学者が染色し、悪性かどうかを調べます。この検査は非常に簡単で、30秒とかからず、また痛みもほとんどない上にきわめて正確です。もし癌であるという結果が出た場合、この検査はほとんど必ずといってよいほど正しいものです。それでも、時には十分な細胞が採取されなかったり、あるいは一部の細胞は異常であるが、全部がそうでない場合もあります。このようなケースでは、病理学者は良性の結節と悪性のものを区別できません。この場合、普通は検査をもう一度行うか、または甲状腺のこの部位を手術で取ることになります。ただ、大多数の結節は良性であり、例えそれが癌であったとしても、ほとんどの甲状腺癌はきわめてなおりやすいものであることを覚えておいてください。

この患者は2度、穿刺吸引細胞診を受けましたが、診断がつきませんでした。どちらの穿刺吸引細胞診でも良好な組織標本が採取されたのですが、病理学者が癌と良性の鑑別ができなかったのです。したがって、この患者は簡単な甲状腺右葉切除術を受け、最終的に良性の濾胞性腺腫であると診断されました。術後の経過は良好で、正常な甲状腺組織がまだ十分残っていますので、この患者は甲状腺ホルモン剤を飲む必要はありません。

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