慢性腎臓病と甲状腺機能の関連性について

最近、話題になっている慢性腎臓病をご存知ですか? 慢性腎臓病はCKD(Chronic Kidney Disease)という略語で記載されることが多いです。すなわち、慢性腎臓病=CKDです。以下のお話では、CKDで統一します。

CKDの診断に必須であるeGFR(推算糸球体濾過量)は、血清クレアチニンと年齢から算出します。基準値は、eGFR 60 mL/分/1.73m2以上です。なので、eGFR 60 mL/分/1.73m2未満をCKDと診断します。CKDは、2040年には死亡原因の第5位になると予測されています。このことが、CKDが臨床上、注意を要する所以です。CKDの原因として、糸球体腎炎、肥満、高血圧、糖尿病などが知られています。もちろん、CKDを放置すると腎機能が低下して腎不全になって人工透析が必要になることもあります。

ここからが、本題です。いくつかの研究で、甲状腺ホルモンが腎機能に影響を及ぼし、逆に腎機能障害が甲状腺疾患の一因となる可能性が報告されています。CKDでは、腎機能が正常な人に比べて、甲状腺機能低下症の頻度が高いことが知られています。一方、甲状腺機能亢進症とCKDの関連性については、まだ結論が出ていないのが実情です。したがって、今回は甲状腺機能低下症とCKDの関連性についてお話していきたいと思います。

現時点では、メタアナリシス(より信頼性が高い論文です)の結果から、甲状腺機能低下症(潜在性甲状腺機能低下症も含めて)では、CKD発症のリスクが高くなることは間違いないようです。ここで、重要なことは甲状腺機能低下症を甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)で治療すると、CKDが改善するという事実です。したがって、甲状腺機能低下症でeGFRが低下している患者さんでは、チラーヂンSでちゃんと治療することが腎機能を改善する上で重要です。

最近の研究では、TSHが正常範囲にある人を18年間にわたり追跡調査を行った結果、TSH正常範囲内で低正常、中正常、高正常の3群に分けると高正常群は低正常群と比べて、CKD発症のリスクが有意に高かった。これは、CKDの他の危険因子を調整したあとでも、結果は同じでした。すなわち、TSHが正常範囲にあっても、TSHはCKD発症の独立した危険因子である可能性を示しています。

以上の結果をまとめますと、チラーヂンSで甲状腺機能低下症の治療を行う際、TSHは正常範囲内の下1/3を目標にすることが望ましいと思います。具体的には、TSHの正常値は0.61-4.23 μIU/mlですから、TSH 0.61-1.82 μIU/mlを目標に治療を行えば、CKD発症のリスクを最小限に抑えることができ理想的と考えます。

甲状腺機能低下症の治療は、ただTSHを正常に保てば良いというのではなく、CKD発症のリスクを最小限に抑えるために、きめ細かい投与量の調節を要します。

文責: 田尻淳一

この情報は、以下の論文を参考にしました。

Interrelationship between thyroid hormones and reduced renal function, a review article. Thyroid Res 17: 14, 2024

The association of thyroid hormone levels and incidence of chronic kidney disease: the Tehran thyroid study (TTS). Thyroid Res 18: 13, 2025