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甲状腺ブルース【Thyroid Blues】

04:ミッドナイトブルース…男性の甲状腺疾患と欝病

40歳のコンピューター開設会社の企業家として、ジョンは仕事と結婚し、週に70時間以上働くのは当たり前でした。彼は、自分の事業を新しい、高度の競争力を持つ産業に育てようとしていたため、これは必要、かつわずかな犠牲のように思っていました。ジョンには深く愛する妻と2人の子供がおり、成功したビジネスマンであることに加え、忠実な夫と父親でもあろうと努力を重ねていました。しかし、ジョンは徐々に説明のつかない症状に気付きはじめました。彼は、暑くもないのに多量の汗をかくようになり、また不眠や神経質、集中力の低下もおぼえるようになりました。ほぼ毎日のように午前3時に目覚めるようになってから後、疲れることが多くなり、事実上睡眠のとれない状態が続くにつれ、ジョンは職場でも家庭でもいらいらすることが多くなってきました。いつもは物静かな態度だったのが、ジョン自身が気付かぬうちに、いつも苛立っている男に変身していたのです。彼は自分の症状について心配はしましたが、ストレスの多い仕事と年をとってきたためだろうと思っていたのです。同僚との軋轢とクライアントや家族とうまくいかなくなったことで、ジョンは彼の世界が粉々にくだけていくように感じたのです。
以下の事実が分かっています。
  1. アメリカ合衆国では、ほぼ400万人の人が甲状腺機能亢進症と呼ばれる甲状腺が活発すぎる状態になっています。
  2. この国では、甲状腺機能亢進症にかかっている男性の約20%が気付かれないままであると見積もられています。
  3. 様々なファクターが甲状腺機能亢進症発病のきっかけとなりますが、それでも専門家のほとんどがこの病気の発症には年齢と同様にストレスが重要な役割を果たしていると信じています。それは、この病気がいちばん多く出やすいのは20歳から40歳の間であるためです。
  4. アメリカ人の33%、または4,000万人が甲状腺機能亢進症に普通に見られる症状である不眠症に悩んでいます。
  5. いちばん多いタイプの甲状腺機能亢進症はバセドウ病として知られていますが、それ以外にも、甲状腺結節や甲状腺の炎症なども含めて、甲状腺の活動が活発になり過ぎる原因があります。患者が甲状腺ホルモン剤を飲み過ぎると、甲状腺機能亢進症になる頻度が多くなります。
これらの症状のある男性の多くは甲状腺機能亢進症ではないと思われますが、それでもグラス1杯の水と鏡を使って行うことができる 簡単な自己検査である甲状腺と頚部のチェックを行うことをお勧めします。
今日の企業世界につきものの長時間労働で、その従業員が犠牲になることがよくあります。特に、自分のキャリアを進めることと、よい一家の大黒柱であろうとすることの両方からの圧力を感じることの多い男性がそうなるようです。これらの状況の片方、または両方で“実績”を上げることができないということは、大変なストレスとなり得るものですし、またそのために眠れなくなったり、いらいらして気分の休まる間もない状態になってしまうこともあります。しかし、一部のケースでは毎日の圧力というよりも、甲状腺疾患がこれらの症状の原因である可能性があります。
1300万人の人が甲状腺疾患に罹っていますが、それでもなお診断の付いていない人が800万人はいると見積もられています。甲状腺機能亢進症も含め、甲状腺疾患は女性や高齢者に見られるのが普通であるため、中年男性の甲状腺疾患は軽視されがちです。しかし、現実に甲状腺機能亢進症は中年男性をも襲うことがあり、人生の重要な時期(20歳から40歳の間)にある人がいちばんかかりやすいのです。
症状でいちばん多いのは、実のある結果を生み出すことなく、やたらに働き過ぎているという感じですが、これが甲状腺機能亢進症のためかもしれないということには気付かないのです。それ以外に、甲状腺疾患によって起こる可能性のある問題には次のようなものがあります。:体重の減少、暑さに弱くなる、汗の量が増える、髪が抜ける、筋肉の震え、そして甲状腺腫として知られている甲状腺肥大です。
これらの症状のある男性の多くは甲状腺機能亢進症ではないと思われますが、それでもグラス1杯の水と鏡を使って行うことができる 簡単な自己検査である甲状腺と頚部のチェックを行うことをお勧めします。もし、甲状腺が大きくなっていたら、医師の診察を受け、甲状腺の活動状態を一番正確に測ることができる、簡単できわめて精度の高いTSH(甲状腺刺激ホルモン)テストを頼むべきです。一度診断がつけば、甲状腺機能亢進症の治療は簡単に行うことができます。アメリカでは、放射性ヨードによる治療が選択されます。放射性ヨードによる治療の後、血液中の甲状腺ホルモンのレベルを正常に戻すため、甲状腺ホルモンの補充療法を受けることになります。
睡眠不足のために自分の仕事と正気を失いかけたため、ジョンはとうとう1日休みをとって医師のもとへ行き、彼の症状を説明しました。医師は、TSHテストも含めて、数種類の検査を行い、ジョンが臨床的な甲状腺機能亢進症になっていることを確認しました。彼の場合は幸いにも軽症でした。ジョンは、放射性ヨードを服用するように言われ、たちまちその治療に反応しました。今、ジョンは甲状腺ホルモンの産生を補うため、1日1錠のレボサイロキシンを飲んでおり、再び生産的でエネルギッシュな生活を取り戻しました。

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