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甲状腺疾患健康ガイド

02:甲状腺:一般知識の紹介
01 甲状腺ホルモン
02 ヨード
03 甲状腺腫
04 視床下部−脳下垂体−甲状腺の軸
05 甲状腺の病気
06 バセドウ病
07 慢性甲状腺炎
08 甲状腺結節
甲状腺は首の前にあり、喉頭の下部と気管の上部に接しています。左右2つ(葉)の部位があり、これらの葉は狭い頚部(または峡部)でつながっています。各葉の大きさは、長さ約4cm、幅約2cmです。「甲状腺(Thyroid)」という言葉は「盾」を意味するギリシア語から来たものです。 図1

01 甲状腺ホルモン ↑このページのトップへ
甲状腺は甲状腺ホルモンを作ります。これらはヨードを含むペプチドです。いちばん重要な形のホルモンが2つあり、テトラヨードサイロニン(サイロキシンまたはT4)とトリヨードサイロニン(T3)です。これらのホルモンは生命に欠かせないものであり、体の代謝や成長、発達に様々な影響を及ぼします。

02 ヨード ↑このページのトップへ
ヨードは甲状腺の機能に重要な役割を果たしています。また、甲状腺ホルモンの主成分でもあり、ホルモンの産生に欠かせないものです。ヨードは飲料水や食べ物から得られます。ケルプ<注釈:昆布>のような過量のヨードを摂取すると、自己免疫性甲状腺疾患が悪化したり、抗体の量が多くなったりします。ヨード欠乏のある世界の地域では、ヨードを食塩やパンに添加しなければなりません。カナダやアメリカの5大湖地域やスイスアルプス、タスマニアがそのような地域です。

03 甲状腺腫 ↑このページのトップへ
甲状腺が大きくなったものを甲状腺腫と呼びます。甲状腺の肥大は思春期や妊娠のような生理学的条件によっても起こる場合があるので、甲状腺腫があるからといってかならずしも病気というわけではありません。

04 視床下部−脳下垂体−甲状腺の軸 ↑このページのトップへ
甲状腺は他の2つの器官が作り出すホルモンによる影響を受けています。
脳下垂体
図2
これは頭蓋の底部にあり、甲状腺刺激ホルモン(TSH)を作ります。
視床下部
これは脳下垂体の上にある脳の小さな部分で、TSH放出ホルモン(TRH) を作ります。
血液中の甲状腺ホルモンレベルが低くなると、視床下部がそれを検知します。TRHが放出され、TSHを放出するよう脳下垂体を刺激します。次に、TSHが甲状腺を刺激してもっとたくさん甲状腺ホルモンを作るようにさせます。そうして血液中の甲状腺ホルモンレベルは正常に戻ります。

この3つの内分泌腺とそれが作り出すホルモンが「視床下部−脳下垂体−甲状腺の軸」を成しています。

世界のヨード欠乏がある地域での甲状腺腫のでき方が、この軸がどのように機能するかを示すよい例となります。通常では、TSHにより甲状腺のヨード取り込みが増し、甲状腺ホルモンの産生が増えます。食餌中にほとんどヨードがない場合、視床下部のTRHが脳下垂体から大量のTSHを放出させます。これでようやく甲状腺が食物や水の中にあるほとんどのヨードを取り込むことができるようになりますが、TSHにはもう一つの作用があります。−甲状腺細胞を増殖させるのです。

この高レベルのTSH分泌の影響を受けて、甲状腺は成長し、非常に大きくなります。したがって、ヨード欠乏地域に住む人のほとんどに甲状腺腫があります。これにより、その人達は体の正常な機能を保つだけの甲状腺ホルモンを作ることができるのです。甲状腺ホルモンレベルが元に戻った後も、TSH分泌量は高いレベルのところで安定します。

健康で、甲状腺腫のある人では、視床下部−脳下垂体−甲状腺の軸が甲状腺ホルモン産生量を非常に精密にコントロールされたレベルに保っており、甲状腺が甲状腺ホルモン産生量を増やしたり、減らしたりする必要がある状況に対応できるようになっています。

05 甲状腺の病気 ↑このページのトップへ
主な甲状腺疾患の原因は
  1. 甲状腺ホルモンの作り過ぎ:甲状腺機能亢進症
  2. 甲状腺ホルモンの作り方が少ない:甲状腺機能低下症
甲状腺の異常は普通に見られ、カナダの人口の20人に1人に異常があります。甲状腺の病気はすべて男性より女性に多くなっています。ヨード添加塩やパンが普及したことで、カナダではもはや、50年前のようにヨード欠乏が甲状腺疾患の原因ではありません。

甲状腺の自己免疫疾患も多く見られます。これらの自己免疫疾患は異常な蛋白質(抗体と呼ばれます)により引き起こされます。そして、白血球<注釈:リンパ球>が一緒に作用して甲状腺を刺激したり、傷つけたりするのです。バセドウ病(甲状腺機能亢進症)と慢性甲状腺炎はこのタイプの病気です。それぞれ100人に1人の割合で罹患しています。

その他のあまり多くない甲状腺疾患には、甲状腺結節や甲状腺癌、亜急性甲状腺炎および原発性甲状腺機能低下症があります。

06 バセドウ病 ↑このページのトップへ
バセドウ病(甲状腺中毒症)は甲状腺刺激抗体と呼ばれる独特の抗体によって引き起こされます。甲状腺細胞が大きくなり過量の甲状腺ホルモンを作るように、この抗体が刺激するのです。この病気では、甲状腺腫はTSHのためではなく、この独特の抗体によるものです。

07 慢性甲状腺炎 ↑このページのトップへ
慢性甲状腺炎では、甲状腺内に白血球<注釈:リンパ球>と液体(炎症)が集積するために甲状腺腫ができます。これは甲状腺細胞の破壊につながり、最終的に甲状腺機能不全(甲状腺機能低下症)になります。甲状腺が破壊されていくにつれ、甲状腺ホルモンの産生量が減っていきます。その結果、TSHが増して、甲状腺腫がなおさら大きくなります。

08 甲状腺結節 ↑このページのトップへ
甲状腺の肥大が甲状腺の一部にだけ限定して起きることがあります。残りの甲状腺は正常です。この原因のほとんどは嚢胞または結節です。時にはたくさん結節があることがあります。これがいわゆる「多結節性甲状腺腫」<注釈:日本では「腺腫様甲状腺腫」と呼ばれる>で、おそらく異常なヨード代謝によって引き起こされるのだと思われます。

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