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甲状腺機能低下症の「症状」としての線維性筋痛の痛み

John Lowe博士の学説に注目して
日付:1999年4月27日
甲状腺機能低下症に関節や筋肉の痛みが伴う場合、それは別の病気−線維性筋痛−なのでしょうか、それとも甲状腺の病気自体の症状なのでしょうか?

線維性筋痛は普通、筋骨格系の痛みと疲労が特徴の病気です。痛みがひどく、数多くの筋や腱、靭帯および軟組織が冒される場合があります。

甲状腺機能低下症があり、筋肉や関節の痛みを生じた場合、線維性筋痛の発病、あるいは中には慢性関節リューマチが起きたのかと心配になる人もいるかもしれません。甲状腺ホルモン補充療法を受けていて、いわゆる「正常な」TSHレベルである甲状腺疾患患者の多くは、時間の経過と共に関節や筋肉の痛みと関節炎様の症状が多く出始めるのに気付きます。医師は、甲状腺機能低下症に「加えて」線維性筋痛があると診断する場合もありますし、慢性関節リューマチがあるかどうかを見るための検査をする場合もあります。

知る必要があるのは、今起こっていることが実際は甲状腺機能低下症の治療が不十分な場合の症状であるかもしれないということです。

革新的な臨床家が線維性筋痛と慢性疲労が多くのケースで、それが単に底にある不活発な甲状腺の病気の症状の一つであるという説をまとめ始めています。この考えを慢性疲労症候群、線維性筋痛および自己免疫性甲状腺疾患に関するこのサイトで述べることにします。

もうすぐ出る私の本、「甲状腺機能低下症とうまく暮らす」を書いている間に、John C. Lowe博士と知り合い、インタビューをする機会を得ました。博士は、線維性筋痛研究財団の研究部長であり、甲状腺機能低下症の診断と治療では我が国のトップクラスの一人でいらっしゃいます。線維性筋痛の専門家が甲状腺機能低下症の専門家でもあることはちょっと驚きのようですが、Lowe博士の長期にわたる線維性筋痛患者の治療と共にその慢性的な健康上の問題に対する解決法へのたゆみない探求への努力を通じて、博士は代謝性疾患とその解決法に関し、非常に深い洞察を得られました。Lowe博士は、近く出る新しい本、「線維性筋痛の代謝治療 」の中で、博士の学説を深く掘り下げて述べておられます。

私は、博士の考えや態度、患者への献身に深く感銘し、私の本の中の特集で2名の医師の一人として挙げさせていただきました。博士は人々を健康にすることに力を尽くしておられ、それは博士の皆との接し方にはっきり現れております。

博士の長年にわたる診療から、博士は線維性筋痛が多くの人にとって、底にある甲状腺の病気の症状であり、必ずしもそれ自体が病気というわけではないという結論を導き出されました。博士は、典型的な線維性筋痛の患者には実際に甲状腺ホルモンによるある種の組織の制御がほとんどきかないという証拠があると考えておられます。Lowe博士によると、
患者の中には、甲状腺ホルモンに対する細胞の抵抗が原因で甲状腺ホルモンによる組織の制御がうまくいかない者がいる。それ以外では、甲状腺ホルモン欠乏が原因で適切な制御ができないのである。したがって、私が線維性筋痛と言う場合は、組織の甲状腺ホルモンによる制御がうまくいかない場合のある種の症状や徴候を言っているのである。
Lowe博士は、甲状腺疾患の診断に関して「正常範囲」という狭い定義から、T3欠乏やTRH検査に注目し、−TSH検査だけでなく−もっと全体的な甲状腺機能低下症の評価まで含めて、その範囲を広げられました。

TSHが「正常範囲」内にある場合でも、Lowe博士は甲状腺機能低下症に罹っている可能性があり−そしてそれが線維性筋痛の痛みを含め、すべて症状に関連している可能性があると考えておられます。「正常範囲」であり、従来の医師であれば甲状腺は正常な状態であるというはずであるのにどうやって甲状腺機能低下症になるのでしょうか。Lowe博士によれば、
現在の内分泌学モデルには4つの誤った前提がある。1]甲状腺ホルモン欠乏症状の原因が甲状腺機能低下症だけであるということ、2]甲状腺機能検査の結果が原発性の甲状腺機能低下症を示している人のみが甲状腺ホルモン剤の使用を許されるべきであるということ、3]甲状腺機能低下症の患者にはT4(すなわち、シントロイドやレボキシル等のレボサイロキシン製剤<注釈:日本ではチラーヂンS>)だけを使うようにするべきだということ、4]患者への投与量は「補充量」−TSHを正常範囲内に保つ量に留めるべきであるということである。
Lowe博士の考えでは、従来の臨床医はこれらの証明されていない前提を臨床での必須事項として受け入れてきたため、多くの患者に不適切な甲状腺ホルモン制御の症状が起こり続けることになったということです。これらの症状は、−T4の補充量を使っているにもかかわらず、−現存する病気−甲状腺機能低下症の適切な治療が出来ていないための症状であるとする代りに、今は線維性筋痛や慢性疲労症候群のような新しい病気として定義されています。

患者がすでに甲状腺機能低下症の診断を受けている場合、様々な筋肉の痛みや睡眠障害のような線維性筋痛様症状がはっきり出始めても博士は驚きません。甲状腺機能低下症が起きた場合、Lowe博士は時間の経過と共に次のようなことが起きると考えています。
甲状腺機能低下症が生活習慣を変えてしまい、それがさらに甲状腺機能低下症をややこしいものにしてしまうことがある。例えば、甲状腺機能低下症の患者は正常な筋量を維持するに十分な身体活動ができなくなることがある。代謝状態は主に筋量に依存する。その人の筋量が減少すればするほど、その代謝速度は遅くなる。
Lowe博士は、外傷後に線維性筋痛を起してくる患者の多くは、外傷を受ける前からすでに低代謝であったと考えておられます。Lowe博士がおっしゃるには、
甲状腺機能低下症の症状が実に様々なものであることが分かってから、これら線維性筋痛患者の多くがこのようなことを言っているのに気付いた。『そうですね、考えてみたら、10代の始め頃からこんな症状が時々出ていました。』外傷後の短期間の身体的非活動が筋量を減少させ、さらに代謝速度が低くなったように思える。少し時間が経ってから、その間に筋量が大幅に減ってしまうのだが、多くの人が外傷後線維性筋痛を起している。多くのケースで、患者の代謝不足は典型的なアメリカ式の食餌や栄養剤を飲まないことで悪化したのだと思われる。長い話をかいつまんで言うと、甲状腺機能低下症(境界型であっても)や栄養不足、および不適切な身体活動のようなファクターが絡み合い、その人の代謝を妨げるように働き合うということである。中には患者を私が診察する頃までに、患者に障害を起す一因となったファクターの相互作用があったかどうかほとんどわからなくなってしまう場合がある。私がそのような患者に精一杯してあげられることは、現在、線維性筋痛を起していると思われる様々なファクターに対処し、いろいろなアドバイスをし、一緒に協力して取り組むことである。患者に数ヶ月間忠実に試すように努めてくれと言うのが普通だが、主観的によくなったと感じ、客観的にも線維性筋痛の状態が改善されたことがわかるまでにそれくらいの時間がかかると思われるからである。
従来の臨床家のほとんどは、甲状腺機能低下症や線維性筋痛に対して、Lowe博士のようなアプローチはしておりません。Lowe博士によれば、ほとんどの患者にとって、ホリスティック診療科か、整骨医にかかるのがいちばん効果があるということです。特に、線維性筋痛患者を診る最良の医師は、哲学や教育の資格を持つ自然療法医であるとLowe博士は考えておられます。Lowe博士がおっしゃるには、
私が自然療法医と言う場合は、正規の自然療法医学の学校を卒業し、自然療法医としてのきちんとした免許を持っている医師のことを指している。そのような医師は自然医学と従来の医学のどちらをも使うことができ、また一般的に言って、治療がうまくいくために必要な時間を患者と共に積極的に費やそうとするものである。さらに、そのような医師は従来の医学ではあらゆる診療上の目標が失われたような場合でも、進んで臨床的に原因を突き止めようとする作業を行うのが普通である。自然療法医の免許が受けられる州に住んでいるのであれば、よい自然療法医を捜すことをお勧めする。
よい自然療法医の捜し方については、私が最近書いたトップクラスの医師を捜すという記事を参照してください。

Lowe博士のプロトコール(患者治療実行計画)に従った甲状腺機能低下症患者は、非常に高い割合で成功したと報告しております。Lowe博士は、通常の場合、乾燥甲状腺(すなわち、Armour甲状腺)(訳者注:Armourは米国最大手の精肉加工業者で、そこで取り出され乾燥された甲状腺のことです)を使って甲状腺機能低下症患者の治療を始めます。博士が乾燥甲状腺を使う理由は、合成T4/T3製剤よりもT3の含有量が多いからです。Lowe博士によれば、
多くの甲状腺機能低下症患者には甲状腺ホルモンに対する細胞の抵抗があることもわかった。これらの患者のほとんどはT4だけではあまり効果がないが、一部は乾燥甲状腺で効果が出る。これはおそらくT3の含有量が比較的高いためと思われる。中には乾燥甲状腺では効果の出ない患者もおり、合成T3に変える必要がある。患者にT4だけを投与することは一切止めている。
John C. Lowe博士は次の専門医委員会から認定を受けております。アメリカ疼痛管理学会、また線維性筋痛研究財団の研究部長です。Lowe博士の学説やプロトコール、また近く出版される本についてもっと詳しいことをお知りになりたい方は、博士のウェブサイトhttp://www.drlowe.comをご覧ください。

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