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濾胞癌:2番目に多い甲状腺癌

このページは特定のタイプの甲状腺癌について、さらに詳しい情報を述べたものです。

さらに理解しやすくなりますので、まず、甲状腺癌:概説を先に読むようにしてください。

濾胞癌は2番目に多い甲状腺癌です(15%)。濾胞癌は乳頭癌より悪性度が高い(侵略的)と考えられています。この癌は乳頭癌よりやや年齢の高いグループに発生し、また子供にはあまり見られません。乳頭癌とは対照的に、放射線治療の後に生じることはめったにありません。死亡率は血管への浸潤の度合いに関係します。予後に関しては、年齢がきわめて重要なファクターとなります。40歳以上の患者では、より悪性度が高くなり、典型的な腫瘍は若い患者の場合においてもヨードを濃縮することがありません。血管への浸潤が濾胞癌の特徴で、そのため遠隔転移が多くなっています。
遠隔転移は、小さな原発性病変から起こることがあります。転移する可能性のある部位は、肺や骨、脳、肝臓、膀胱および皮膚です。リンパ節が冒されることは、乳頭状癌に比べ、はるかに少なくなっています。

濾胞癌の特徴
  • 発病のピークは40歳から60歳である。
  • 3対1の比率で男性より女性に多い。
  • 予後は腫瘍のサイズに直接関係する(1.0cm以下のものは予後がよい)。
  • 放射線被爆に関係することはめったにない。
  • リンパ節に広がることは少ない(10%)。
  • 甲状腺内の血管組織(動脈や静脈)への浸潤が普通に見られる。
  • 遠隔転移(肺や骨への転移)はまれだが、乳頭癌より多い。
  • 全体的な治癒率は高く(若い患者の小病変ではほぼ95%)、年齢が進むにつれて減少する。

濾胞癌の治療
.分化度の高い甲状腺癌(乳頭癌および濾胞癌も含むことあり)の治療については、相当の異論があり、一部の専門家は腫瘍が小さく、他の組織に浸潤がない場合(通常のケース)は、単に腫瘍がある側の甲状腺葉(および峡部と呼ばれる中央部の小さな部分)を取り除くだけで甲状腺全摘と同じくらいの治癒率が得られると強く主張しています。保存的外科治療の支持者は、反対側の葉の甲状腺組織の88%までに少量の腫瘍細胞が見付かるという事実があるにもかかわらず、臨床的な腫瘍再発率が低い(5〜20%)ことに関連付けているのです。また、そのような人達は、甲状腺全摘術(首の両側に関わる手術であるため)を行った患者で副甲状腺機能低下症や反回神経の損傷のリスクが増加することを示した一部の研究をも引用しています。甲状腺全摘術(より侵襲度の高い手術)の支持者は、熟練者の手がけた手術では反回神経の損傷や永久的な副甲状腺機能低下症の発生率がきわめて低い(約2%)ことを示すいくつかの大規模な研究を引き合いに出しています。もっと重要なことは、これらの研究で、甲状腺全摘後に放射性ヨード治療や甲状腺抑制療法を行った患者では腫瘍が1.0cm以上であった場合でも再発率がきわめて低く、死亡率も低くなることが示されていることです。放射性ヨードを取り込む正常な甲状腺組織の量をできるだけ減らしておくことが望ましいことも覚えておかなければなりません。

また、凍結切片標本(腫瘍を顕微鏡下で調べて癌の特徴を知る迅速な方法)は、術中に濾胞癌の確定診断を下すにはあまり信頼できない場合があることも頭に入れておかねばなりません。このような問題は他のタイプの癌では見られません。
これらの研究や先に述べた濾胞癌の自然経過や疫学に基づいた、代表的な治療計画は以下の通りです。放射線被爆歴がない若い患者(<40歳)で、限局的かつ孤立している、1cm以下の濾胞癌は、片側甲状腺葉切除と峡部切除により治療できる場合があります。それ以外のものはすべて、おそらく甲状腺全摘を行い、頚部中央部および側方部の肥大したリンパ節を全部取り除くことにより治療されることになります。手術の選択肢にもっと詳しく述べております。

術後の放射性ヨード治療の使用
甲状腺細胞は、ヨードを取り込む細胞性メカニズムを持つユニークな細胞です。ヨードは甲状腺細胞が甲状腺ホルモンを作るのに使われます。体の中でヨードを取り込んだり、濃縮できる細胞は他にありません。医師はこのことを利用し、甲状腺癌に放射性ヨードを与えることができるのです。放射性ヨードには数種類のタイプがあり、細胞に対して毒性のあるタイプのものが一つあります。濾胞癌細胞はヨードを取り込み(高齢の患者ではその程度は低くなりますが)、そのため毒性のあるアイソトープ(I-131)を与えることによって、癌細胞をねらって殺すことができます。繰り返しますが、すべての濾胞癌患者がこの治療を必要とするわけではありません。しかし、大きな腫瘍があったり、腫瘍がリンパ節やその他の領域に広がっている患者、顕微鏡で腫瘍の悪性度が高いように見える場合、腫瘍が甲状腺内の血管に浸潤している場合、そして高齢の患者はこの治療により恩恵を受けると思われます。これはきわめて個別性が高く、このウェブサイト上ではどこにも基準となる勧告は作られておりません。…あまりにも数多くの変数が関与しているのです。しかし、これはきわめて効果的な タイプの治療法であり、不利益が生じる可能性はほとんど、あるいはまったくありません(髪が抜けたり、吐き気や体重減少などを起こすことはありません)。

取り込みはTSHが高レベルであれば促進されます。したがって、この治療を受ける少なくとも1〜2週間前に患者は甲状腺ホルモン補充療法を中止し、低ヨード食にしなければなりません。普通、術後6週間(これは異なる場合があります)で放射性ヨードが投与され、必要があれば6ヶ月毎に繰り返すことができます(線量はある範囲内に限定されます)。

甲状腺の手術を受けた後の甲状腺ホルモン剤についてはどうなのですか?
患者が片方の甲状腺葉と峡部だけを取ったにせよ、甲状腺をすべて取ってしまったにせよ、生涯甲状腺ホルモンを補充しなければならないということではほとんどの専門家の意見は一致しています。

これは、甲状腺が残っていない患者では甲状腺ホルモンを補充し、頚部にいくらか甲状腺組織が残っている患者ではこれ以上の腺組織の成長を抑制するということになります。濾胞癌(乳頭癌のように)は脳下垂体で分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)に反応するということがはっきりしており、そのため外部から甲状腺ホルモンを与えることで、TSHのレベルが下がり、残存癌細胞を発育させる刺激が低くなるのです。抑制療法を行った患者では、再発率と死亡率が低いことがわかっています。

どのような長期的フォローアップが必要ですか?
通常の癌のフォローアップに加え、患者はサイログロブリンレベルの検査だけでなく、毎年胸部X線写真の撮影を行う必要があります。サイログロブリンは甲状腺癌の初期診断のスクリーニングにはあまり役に立ちませんが、分化度の高い癌のフォローアップには非常に役立ちます(甲状腺全摘術が行われた場合は)。甲状腺全摘後に低かった血清サイログロブリンレベルが高ければ、特にTSHの刺激が徐々に増加している場合、実際に再発の指標となりうるものです。10ng/mlより大きな値は、放射性ヨードスキャンでマイナスであった場合でも、再発が起こっていることが多いのです。

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