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国際甲状腺連盟(TFI)ニュースレター【ThyroWorld】の抜粋<1>

02:甲状腺眼症:治療

眼窩減圧のための手術
骨性眼窩(がんか)は、四角い底部が前を向いたピラミッドのようであり、卵ケースの1区画にそっくりです。甲状腺眼症に見られるように、眼球を取り巻く脂肪や筋肉の量が増えると、眼球は前に押し出されてしまいます。眼科医は重篤な病気のより重大な結果には十分注意を払うのですが、患者はほとんどすべてと言ってよいほど美容上の外観のためにつらい思いをしているのです。目の転位がひどく、それ以外の治療ではうまくいかないことがはっきりすれば、手術による減圧が勧められることがあります。この手術は眼科医によって行われ、内分泌病専門医の協力をあおぐ場合もそうでない場合もあります。

減圧とは、単に眼窩の中にあるもののためのスペースを作り出すことを意味し、眼球が眼窩の中の元の位置ににおさまることができるようにするものです。このためには、ピラミッドの4方の壁のどれか一つ以上を取り除くことがありますが、必要なスペースの量や手術の程度は、アプローチの仕方によって様々です。
もっとも大掛かりな手術の一つは、眼窩上壁と頭蓋内部の間の骨を取り除き、上方から目の真後ろへアクセスできるようにするものです。いちばん多く行われているのは、目と鼻の間および眼窩底と頬骨で占められている上顎洞との間の骨壁を取り除く方法です。

これらの領域に達するには様々な方法があります。顔面にうまく治るような小さな切開を入れるか歯肉に切開を入れる、あるいはいちばん新しいもので、外部の切開を避け、光ファイバーシステムを使って鼻からのみアクセスする方法などがあります。骨を除去した後、眼窩内壁を被っている線維性の被膜を切開し、脂肪が隣接する上顎洞内へ脱出できるようにします。手術直後に、患者がある程度の複視を経験することがよくありますが、普通は時間の経過とともによくなります。ただ、再手術が必要になる場合が時にあり、この時には目の位置を再調整するため、目の筋肉の手術となります。涙目やある程度のしびれ感、頬の紅潮なども手術後短期間起こる場合があります。

どの程度目が眼窩内に戻るか予測はつけにくいのですが、ほとんどの患者は、術後数週間で外観が明らかに改善されたことに気付きます。

Peter Fells, FRCS, FRCOphth
Valerie J Lund, MS, FRCS, FRCSEd


患者の個人的見解
わたしがこの恐ろしい手術を受けなければならなかった時に、どれ程恐れ、不安に思ったか言い表すことはできません。顧問医であるLund女史がおっしゃるには、わたしの目はこの恐ろしい甲状腺眼症に罹る前の状態には戻らないということでした。それでも、わたしの見かけはずっとよくなるだろうということでした。わたしの目の見えかたと感じから、手術以外に道はなかったのです。;わたしは病気のため、とても惨めで、醜い状態にありましたし、他の人からじろじろ見られるのが嫌でした。

今、手術は全部終わり、主人と3人の子供はわたしの目は前よりずっと見かけがよくなったと言ってくれました。
でも、手術で複視が残ったため、わたしはこのことを自分で確かめることができません。何週間か経てば、目の筋肉がしっかりしてきて、複視も治るだろうと思っています。もしそうでなければ、複視を治すためにもう一度手術を受けることになります。

減圧手術は、わたしが最初に考えていたほど悪くはありませんでした。手術から数日以内で、複視がある以外は非常に具合がよくなりました。

わたしの家族がもう目が飛び出していないと言ったように、手術によって主な目的は達せられました。

わたしは、同じように苦しんでいる人に、手術は受けるだけの価値があることを知ってもらいたいと思いますし、Lund女史や同僚の皆様には、そのご親切とご理解にどれ程感謝してもしきれないくらいです。どの方も皆素晴らしく、わたしがロンドンのロイヤル耳鼻咽喉科病院に入院中、どのようなことも丁寧に説明していただきました。
Lund女史はこれがわたしにとってどれ程の意味があったかご存知ないでしょう。わたしは、同じ病気に罹っている人に、わたしがどのようにしてこの恐ろしい旅に足を進めたかを知らせるつもりです。

Gwyneth Ost

Ostさんはムーアフィールド眼科病院医師Peter Fells氏とロンドンのロイヤル耳鼻咽喉科病院医師Valerie J Lund女史の共通の患者です。

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