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38
[006]
先生に聞こう【Ask The Doctor】 Bridge; Volume 15, No2

38:甲状腺の手術

質 問
甲状腺葉切除術、甲状腺亜全摘術、および甲状腺全摘術ではどの程度の甲状腺を取ってしまうのですか?また、それぞれの手術はどのような場合に行われるのですか?

回 答
甲状腺には右葉と左葉があり、峡部でつながっています。また、気管の上に重なっており、その一部を取り囲んでおります。どちら側も頚動脈と頚静脈に隣接しています。声帯に行く神経(反回神経)が胸部から出て気管に沿って走り、喉頭に達する途中、甲状腺の後ろを通っています。副甲状腺は片方に2個ずつ4個あります【図】。このような組織構造に隣接しているため、甲状腺の手術にはかなりの技術が必要です。
【図】
図
甲状腺葉切除術は甲状腺の片方の葉を取る手術です。甲状腺は峡部で切りはなされます。 甲状腺亜全摘術は片方の葉を全部と、もう片方の葉の一部を取るか、あるいは両方の葉を部分的に取る手術です。甲状腺全摘術は、副甲状腺を保護する組織を少量残す以外は、すべての甲状腺組織を取ってしまう手術です。

手術の範囲は、原因疾患と外科医の技術の両方によって異なります。甲状腺手術に多く見られる合併症は2つありますが、反回神経の損傷と副甲状腺を4個とも損傷してしまうことです(副甲状腺機能低下症を起こします)。片方の反回神経をうっかり切断してしまうと、患者の声は永久にしゃがれたままになります。両方の反回神経を切断してしまうと、声帯が気道を塞いでしまうため、気管切開が必要になります。これは喉頭の下の気管に小さな穴を開けて患者が呼吸できるようにするためのものです。

4個の副甲状腺すべてが損傷されると、血液中のカルシウムレベルが下がります。カルシウムレベルの低下は体中の筋肉がケイレンし、生命を脅かすこともあります。このケイレンを予防するため、カルシウム剤と強力なビタミンD製剤で治療しなくてはなりません。この状態は副甲状腺への血流が減少したために副甲状腺が不活発になっているのであれば、一時的なものと思われますが、時に生涯カルシウム剤を必要とする永久的なものとなる場合もあります。

葉切除術は、手術時に良性と思われる片側性の結節性病変に対して行われます。甲状腺亜全摘術は、両側性の良性の結節性病変とバセドウ病に対して行われます。甲状腺全摘術は通常、甲状腺癌患者に対して癌を取り除き、放射性ヨードスキャンやサイログロブリンの測定(次の質問の項参照)を行いやすくするために行われます。ただし、癌が小さな結節状で、甲状腺内に留まっている場合や手術が技術的に難しい場合は、外科医師は手術の合併症を避けるために甲状腺亜全摘術か葉切除術を行うと思われます。

Douglas S. Ross, M.D.は、ボストンのマサチューセッツ総合病院の副医院長であり、甲状腺科の医師です。

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. 甲状腺の手術については以下のページを参考にしてください。
甲状腺の手術
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