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[006]
先生に聞こう【Ask The Doctor】 Bridge; Volume 10, No2

09:エストロゲン補充療法対甲状腺ホルモン補充療法

質 問 G.R., Rockland, MD.
製造者のインサート(箱に入れてある説明書等)にこう書いてあったのですが、“甲状腺が機能せず、甲状腺ホルモン補充療法を受けている患者では、エストロゲンまたはエストロゲン含有の避妊薬の投与を受ける場合、甲状腺ホルモン剤の投与量を増やすことが必要なことがあります(しかし、甲状腺の代償機能が十分な患者ではこの必要はありません)”。
バセドウ病患者で、甲状腺が相当破壊されている人はこの違いと、甲状腺ホルモン補充薬にエストロゲンが及ぼす可能性がある影響を知っておく必要があると思うのですが…。

回 答
甲状腺機能低下症の患者で妊娠中にレボサイロキシンの量を増やす必要があることが認識されるようになったのは、ごく最近のことです。正常な女性では、甲状腺がより多くのホルモンを作るようになるだけのことですが、甲状腺機能低下症の患者は一定量の甲状腺ホルモン投与を受けているため、妊娠中はその量を増やす必要があります。これは最近になってわかったことで、過去の患者の大多数は感度の高いTSH測定が行われる前で、ホルモン投与量の必要性が覆い隠されるほどの過剰なレボサイロキシン投与を受けていたためです。
このご質問の件に取り組んだ研究で、発表されたものはまだそれほどたくさんありません。一定量のレボサイロキシン投与を受けている甲状腺機能低下症患者にエストロゲン治療を行う場合、中にはレボサイロキシンの量を増やす必要がある患者さんがいると思われます。しかし、悪影響を受けている患者さんの数や投与量の変更がどの程度可能であるかについては、現在のところはっきりとはわかっていません。甲状腺機能低下症でレボサイロキシンを飲んでいる患者さんでは、エストロゲン含有製剤の投与開始から6〜8週間後にTSHをチェックすることがいちばん適切であろうと思われます。

Douglas S. Ross, M.D.は、ボストンのマサチューセッツ総合病院の副医院長であり、甲状腺科の医師です。
Douglas S. Ross医師が、甲状腺の病気や甲状腺の働きに関する読者の一般的なご質問にお答えします。しかし、患者さんの個人的問題についての細かいご質問にはお答えできかねます。個人的に甲状腺の問題についての助言が必要な方は、ご相談なされるようTFAがお近くの内分泌専門医の名前をお送りすることができます。お問い合わせは、ここボストンのTFAまでお手紙かお電話でなさってください。

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