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[006]
先生に聞こう【Ask The Doctor】 Bridge; Volume 13, No1

05:子供の頃の頚部放射線照射
〜TFA本部に寄せられたたくさんの質問の中から〜

回 答
子供の頃に、頭部や頚部に放射線の外部照射を受けると甲状腺腫や甲状腺癌のリスクが著しく高まることが約25年前に初めて認識されました。放射線照射装置を使うヘルスケアワーカーで、甲状腺癌のリスクが2倍になったという中国の研究が一つありますが、大人になってから同じように照射を受けても、リスクの増加を伴うかどうかはまだ明らかではありません。
子供の頃の放射線照射治療の適応症でいちばん多いのは、胸腺肥大や扁桃腺炎、様々な種類の腺組織の炎症、およびにきびです。その他に照射を使うのは、頭部の白癬や様々な良性腫瘍、気管支炎、聴覚喪失、および頭部と頚部の悪性疾患です。
そのような患者の甲状腺癌のリスクは、非照射グループに比べ53倍高いと見積もられています。回顧的研究では、子供の頃に放射線照射を受けた既往のある患者の3分の1に甲状腺腫が見出され、そのうち約3分の1は悪性であることが明らかになりました。シカゴ地域で、子供時代に放射線照射を受けたある登録患者グループでは、12%が甲状腺癌と診断されました。
原子爆弾の爆発や原発事故からの放射性降下物による被爆でも、甲状腺癌にかかるリスクが高くなります。現在チェルノブイリ周辺地域で、子供の甲状腺癌の多発があります。
これらの統計から鑑みて、子供時代に頭部と頚部の放射線照射を受けた患者はすべて、生涯にわたる注意深い甲状腺の結節性病変に対する診査が必要です。ほとんどの医師は、初診時の甲状腺超音波診断(甲状腺スキャンを好む医師もおりますが)を勧めています。はっきりした結節があればどのようなものであれ、細い針を使った吸引生検で悪性の可能性をみる必要があります。年1回の念入りな身体検査が欠かせません。そして、初診時の超音波診断の所見と医師の甲状腺診査能力にもよりますが、フォローアップのための甲状腺超音波診断が勧められることがあります。一般的に、子供の頃頚部に放射線照射を受けた既往のある患者での甲状腺結節性病変の評価に、医師はより積極的な方法をとります。多発性結節や結節性甲状腺腫の評価には細い針を使った吸引生検が使われる可能性が高くなります。
生検で、結節に悪性の疑いがあるか、または悪性であることがわかった場合、ほとんどの外科医師は、被爆した甲状腺組織をすべて取り除くために甲状腺全摘を行います。子供時代の外部照射の既往がある患者での甲状腺癌は、非照射患者のものと同じタイプのものです。概して、これらの癌は非照射患者のものに比べて、よりたちが悪いことはありません。したがって、分化型の甲状腺癌のある若年患者の大多数は、予後が良好です。

Douglas S. Ross, M.D.は、ボストンのマサチューセッツ総合病院の副医院長であり、甲状腺科の医師です。
Douglas S. Ross医師が、甲状腺の病気や甲状腺の働きに関する読者の一般的なご質問にお答えします。しかし、患者さんの個人的問題についての細かいご質問にはお答えできかねます。個人的に甲状腺の問題についての助言が必要な方は、ご相談なされるようTFAがお近くの内分泌専門医の名前をお送りすることができます。お問い合わせは、ここボストンのTFAまでお手紙かお電話でなさってください。

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