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[006]
先生に聞こう【Ask The Doctor】 Bridge; Volume 11, No1

04:ヨードの過剰摂取

質 問 ハワイ
わたしは6年前に甲状腺を手術で切除され、シントロイド<注釈:甲状腺ホルモン剤、日本ではチラージンS>でうまくいっています。今度1ヶ月ほど水の質が悪い国へ旅行することになりました。それで、ここに同封した浄水機を買おうとしたのですが、これはヨードを使っており、わたしは、病気になったり、甲状腺のバランスをくずしたくないのです。何かご意見や情報がありましたら教えていただきたいのですが…。

回 答
浄水に使われていたり、その他多くの状況下で使われているにせよ、高濃度のヨードはあなたの甲状腺機能をだいなしにする可能性があります。しかし、これはヨードの濃度が非常に大きい場合だけに起こることで、ヨード添加塩やほとんどの総合ビタミン剤中に含まれる150μgのヨード、あるいはシーフード中に見出されるヨードについては心配する必要はありません。ただし、ケルプ錠やその他の海草製剤の経口摂取、ベタジン浣腸の使用、またアミオダロンやヨード添加グリセロールまたはレントゲン造影剤など大量のヨードを含む薬物の使用により、問題が起きる可能性があります。
これら過剰ヨード摂取源は、甲状腺機能が正常なほとんどの患者やこの手紙を書いた人のように、甲状腺がない人(外科手術や放射性ヨード治療により)や甲状腺機能低下症でホルモン補充療法を受けている患者、あるいはコールド結節のある患者では問題を生じることはありません。レボサイロキシン<注釈:甲状腺ホルモン剤、日本ではチラージンS>の治療を受けている患者のほとんどは、ヨードが甲状腺に及ぼす効果を心配する必要はありません。
それ以外の状況では、ヨードが甲状腺の問題を持つ患者に、甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症のどちらも起こしえます。自己免疫性甲状腺疾患のある患者では、ヨード摂取の後に甲状腺機能が低下することがあります。危険性のある患者は、甲状腺機能が正常、またはボーダーラインにあり、甲状腺機能低下症に対し、レボサイロキシン<注釈:甲状腺ホルモン剤、日本ではチラージンS>を飲んでいない橋本甲状腺炎患者<注釈:慢性甲状腺炎>です。ヨードで甲状腺機能低下症になることがあります。
バセドウ病の甲状腺機能亢進症患者では、ヨードでよくなることがありますが、バセドウ病にヨードを使うことは、甲状腺のヨード取り込み測定や、スキャンニング、放射性ヨードによる治療ができなくなることがあります。
グレーブス病患者は、ヨードを使う前に必ず医師の診察をうけるようにしなければなりません。
多結節性甲状腺腫のある患者、特に低いTSHがある場合(潜在性甲状腺機能亢進症)、多量のヨード摂取後に甲状腺機能亢進症になることがあります。しかし、ヨード曝露が絶対に必要な場合は、抗甲状腺剤を飲むことでこれを予防できます。
繰り返しますが、どのようなものでもヨードを使う場合は、前もって医師と話し合うことが重要です。

Douglas S. Ross, M.D.は、ボストンのマサチューセッツ総合病院の副医院長であり、甲状腺科の医師です。
Douglas S. Ross医師が、甲状腺の病気や甲状腺の働きに関する読者の一般的なご質問にお答えします。しかし、患者さんの個人的問題についての細かいご質問にはお答えできかねます。個人的に甲状腺の問題についての助言が必要な方は、ご相談なされるようTFAがお近くの内分泌専門医の名前をお送りすることができます。お問い合わせは、ここボストンのTFAまでお手紙かお電話でなさってください。

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