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［005］

患者さんとの橋渡し【Bridge】 Bridge; Volume 13, No4

13：甲状腺機能亢進症とバセドウ病の治療後に起こる問題は？　／　Peter A. Singer, M.D.

その結果はこの中に！ 質　問 “TSHレベルは正常ですが、私はまったく自分が正常だと感じていません。まだ症状が残っているのです”　Patton, PA “治療法についての意思決定が困難です。情報はなかなか手に入りませんし…”　La Jolla, CA “最初に記事を読んだ時、治療の後に前と同じでないと感じているのは私一人ではないのだと思いました”　College Station, TX 調　査 私共のニュースレターでは、甲状腺機能亢進症の治療を終えた読者の皆さんに、治療の方法や現在の健康状態についての質問にお答えいただくようお願いいたしました。290名よりの回答の内、223名は少なくとも1年前には治療を終えており、すべての質問にお答えしてくださいました。調査報告からは、診断があいまいなものやすべての質問にお答えのなかったものは除外いたしました。 結　果 【表1】バセドウ病の診断を受けた患者 治療法 治療総数 治療後の平均経過年数 症状のある人の総数 現在ある症状 筋肉痛 嗜眠 うつ病 放射性ヨード 162 11.6 100(62%) 72 66 61 抗甲状腺剤 31 10.6 16(52%) 16 10 15 手術 19 28.3 9(47%) 8 7 7 　 212 11.4 125(59%) 95 83 83 ［バセドウ病患者では］ − 140名(66%)が体重の増加を訴え、67名(32%)が適正体重を20ポンド(約9kg)超えていました。 ［中毒性結節性甲状腺腫患者は］ − 中毒性結節性甲状腺腫の診断を受けた患者さん11名からの回答の内、5名(45%)が筋肉痛や嗜眠、あるいはうつ病を経験していました。 ［その他の結果］ − 数人の患者さんが精神的機能や記憶の減退をみとめたことに対して様々な懸念を表わしておられました。これは必ずしもうつ病に伴うものではありませんが、特徴的なパターンが現れておりませんでしたので、別個の問題としては挙げておりません。また、筋肉痛の訴えは非常に多かったにもかかわらず、関節炎の訴えが見事に欠けていたことにも驚かされました。 両相性疾患(躁鬱病としても知られている感情の高揚と落ち込みにより特徴付けられる精神病)は、甲状腺機能亢進症またはバセドウ病に併発することのある甲状腺に関連した病気であることがすでにわかっています。私共の調査では、回答者の言ううつ病が感情的なものというより、医学的な問題による疲労のためであるのかが必ずしも明らかではありせんでした。

これはどういうことを意味するのでしょうか？ この調査の結果は最近アメリカ甲状腺協会年次総会で発表されましたが、私共と発表を聞いた医師の双方にとって非常に有意義なものでした。明らかに、甲状腺機能亢進症に罹っていた多くの人が、今でもあまりよくなったと感じていないのです。この調査からは、これらの訴えが甲状腺に問題があるためか、治療のためか、あるいはそれ以外のファクターによるものかどうかを言うことはできません。年齢が進むにつれて、多くは筋肉の痛みや疲労、うつ病をみとめるようになり、ある程度の体重増加はほとんど誰にでも起こります。その一方で、過去に甲状腺機能亢進症またはバセドウ病の治療を受けた患者の健康状態を注意深く研究する新たな臨床研究を行うに足る情報がここにあると考えられます。 この調査はきわめて興味深いものでしたが、別の種類の研究が必要であることも示唆しています。 例えば、甲状腺病棟の一連の患者100名に同じようなアンケートに全部答えてくれるよう頼むこともできるわけです。私共の調査に詳しく答えてくださった患者さんは、気分が悪いためにそうしたのだと考えられ、何も訴えることがないため、回答しなかった人が何百人もいるのではないかと思われます。 質問はできる限り特異的にしたつもりですが、いくつかは異なった解釈が可能であったようです。 したがって、一部の患者さんは“筋肉痛”または筋肉の痛みで、実際は関節の痛みをも表わそうとした可能性があります。また、同じアンケートを甲状腺の病気に罹ったことのない同年齢の人にも行う価値があると思います。 甲状腺疾患患者の中で、他にも病気のある人とそうでない人との間での体重増加パターンを比較してみるのもよいと思います。また、ある種の体重減少プログラムが甲状腺疾患患者にいちばん効果があるかという研究もぜひ行って欲しいと思っています。また、体重を減少させることが筋肉痛や嗜眠、うつ病などの他の訴えを改善するのかどうかも役に立つはずです。 アンケートにお答えくださった皆様に感謝し、またそれにより皆様の健康に関する心配に研究者の注意を喚起し、バセドウ病やそれ以外の甲状腺機能低下症に罹ったことのある患者の長期的な健康状態についてもっといろいろなことを学ぶための臨床研究を依頼するきっかけを与えてくださったことに深く感謝いたします。

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