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患者さんとの橋渡し【Bridge】 Bridge; Volume 13, No3

06:甲状腺結節 / Elsie M. Allen, M.D.

一般集団を検診すると、1個以上甲状腺結節が約4%見つかります。ほとんどの結節は偶然に見つかるのですが、何の症状も起こしません。甲状腺結節は女性に多く、年齢が上がるにつれて発生頻度が高くなります。甲状腺結節が見つかったら、経験を積んだ医師に見てもらわなければなりません。甲状腺結節の原因と考えられるものには、良性腫瘍(腺腫)、液体の貯留(嚢胞)、炎症(甲状腺炎)、そして癌がありますが、甲状腺癌はまれなものです。

診断用検査
悪性のものは甲状腺結節の5%以下であるため、医学的検査はどの結節が手術を必要とし、どれが観察あるいは治療で管理できるかということを見極めるためのものです。検査には、血液検査、穿刺吸引生検(FNA)、超音波検査、または甲状腺スキャンなどが含まれます。
甲状腺機能の血液検査では、甲状腺が正常な量の甲状腺ホルモンを産生しているかどうかがわかります。時に、甲状腺結節から産生される甲状腺ホルモンが多すぎることがあります。甲状腺ホルモンが多すぎる時の徴候と症状には、神経質、暑さに弱い、過度の発汗、そして体重減少があります。
それに対し、甲状腺ホルモンのレベルが低い場合は甲状腺が不活発であることを示し、これは慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)と呼ばれる免疫性疾患により引き起こされることが多いのです。時に、慢性甲状腺炎が甲状腺結節として現れることがあります。慢性甲状腺炎は自己免疫疾患で、徐々に甲状腺機能がやられていき、甲状腺機能低下症になります。甲状腺機能低下症の徴候と症状には、疲労、寒さに弱い、過度の傾眠状態などがあります。甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモン補充療法で簡単に管理できます。
穿刺吸引生検(FNA)は、外来ででき、30分もかからない安全な方法です。直接細い針を結節に直接刺入し、シリンジの中に少量の甲状腺細胞を吸引して採取します。局所麻酔も使えますが、多くの患者は麻酔無しで大丈夫です。主な副作用は、ちょっと痛みがあることと生検を行った部位の内出血です。
普通FNAで、正確な診断がなされます。しかし、 約15%のケースで“疑わしい”とか“不確定”などの不確実な範疇にある結果が出ることがあります。FNAの結果が“疑わしい”と出た場合は、疑わしい結節が癌であるリスクは15〜25%であるため、治療法としては手術の方が好んで選ばれます。
時に、 不確定の結節を“甲状腺ホルモン抑制”試行で管理しますが、この形の治療は必ずしも効果的とはいえません。甲状腺ホルモン抑制は、甲状腺ホルモン剤(レボサイロキシン)を甲状腺の機能を抑制するだけの量、投与します。そのことで、甲状腺結節が小さくなることがあるのです。甲状腺結節が甲状腺ホルモン抑制療法の間に小さくなれば、その結節は良性である可能性が高いと考えられます。
超音波画像診断は、甲状腺の写真を撮るのに音波を使う方法です。外来で、首の上からプローブを動かしながら行います。超音波で結節のサイズと一致性を測ることができます。また、他にも結節があるかどうかがわかります。実際に、触ってわかる結節が1個ある患者の50%に、数個の結節が見つかるのです。超音波は、小さかったり、触知しにくい結節のFNAを行う際のガイドとして、非常に役立つものです。また、甲状腺ホルモン治療を行った後や行わなかった場合の結節のサイズのチェックにも役立ちます。
甲状腺スキャンは、少量の放射性物質(テクニシウムまたはヨード)を投与した後甲状腺の画像診断を行う核医学による方法です。甲状腺のスキャンは、FNAで診断がつかない時に役立つ場合があります。スキャンでは、甲状腺結節が機能している(“ホット”)か機能していない(“コールド”)かがわかります。機能している結節が癌性のものであることはめったにありません。事実、甲状腺癌はすべて“コールド”なのですが、それでもコールド結節の中で、癌である可能性があるものは5%以下です。

良性結節
癌性でない甲状腺結節は単発性の良性の腫瘍か、あるいは数個の結節のみられるものです(これは本当の腫瘍ではありません<注釈:腺腫様甲状腺腫のことです。これは過形成といわれているために、本当の腫瘍ではないと説明しています>)。これらの結節の特徴は成長が遅いことです。
普通は治療をせずに様子を見ます。良性の結節のサイズが大きくなった場合は、甲状腺ホルモン抑制療法で小さくなる可能性があります。しかし、ホルモン抑制療法で結節のサイズが50%以上減る確率はわずかです。
過剰な甲状腺ホルモンを作り出している機能性結節は、普通放射性ヨードで結節を破壊する治療が行われます。これは外来で放射性ヨードを経口投与する核医学治療です。この治療で活動し過ぎの結節だけが選択的に破壊され、重大な副作用が起きることもありません。ほとんどの患者で、この治療を行ってから1〜2ヶ月以内に正常な甲状腺機能になります。

嚢胞性結節
15から25%の結節は一部嚢胞性です。悪性のものは嚢胞性結節の10%以下です。
FNA時に液体が採取されて、嚢胞が診断されることが多いのです。普通は、FNAの際に内容液を吸引し、その後再発しないかどうか様子を見ます。
甲状腺ホルモンには、嚢胞を小さくする効果がないことが多く、嚢胞が非常に大きく、頚部の不快感や嚥下困難などの症状がある場合や、繰り返し再発する場合は外科手術が必要なことがあります。
ヨーロッパでは、嚢胞腔内にアルコールを注入して治療する医師もいますが、この方法はアメリカでは一般的に行われていません。

多結節性甲状腺腫
甲状腺に2つ以上の結節がある場合、“多結節性甲状腺腫”と呼ばれます。甲状腺腫とは、大きくなった甲状腺のことです。多結節性甲状腺腫患者での癌の発生率は、結節が1個だけの患者と同じ程度です。一部の結節は非常に小さいため触知できず、超音波甲状腺スキャンでのみ検知されます。多結節性甲状腺腫には、甲状腺機能亢進症を起こす活動し過ぎの結節を含むことがあります。多結節性甲状腺腫が大きい場合も、頚部の不快感や嚥下困難が起きることがあります。
見つかった時に何の症状もない多結節性甲状腺腫は、普通様子を見て、定期的に血液検査をします。これは多結節性甲状腺腫が時間が経つにつれ、活動し過ぎの状態になる可能性があるからです。しかし、例外的に大きな結節以外は手術が必要なことはまずありません。

悪性結節
甲状腺結節で悪性のものは5%以下です。甲状腺癌のリスクファクターには、頭部や頚部の放射線照射歴、若年であること(20歳以下)、および甲状腺癌の家族歴などが含まれます。甲状腺結節が悪性である可能性が高い場合の特徴は、成長が速く、サイズが1.0インチ(約2.5cm)以上であり、声がしゃがれることです。
甲状腺癌の治療は常に外科的に行われます。多くの患者は手術後に放射性ヨード治療も受けます。

何をすればいいのでしょうか?
ほとんどの甲状腺結節は良性で、治療の必要はありません。FNAで癌の可能性を排除できないため、外科的な切除を必要とする結節はわずかであり、また癌性のため外科的な切除が必要なものもわずかです。時に良性の甲状腺結節や多結節性甲状腺腫で、多量の甲状腺ホルモンを産生したり、大きくなり過ぎたために治療が必要なことがあります。
甲状腺結節が見つかったら、医師と甲状腺癌の症状とリスクファクターについてよく話し合ってください。あなたと医師が一緒に診断法や治療法についての計画を立てるべきでしょう。

Dr. Elsie M. Allenは、バルチモアのメリーランド大学医学部内科の助教授です。

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