情報源 > 患者情報[002]
02
オリジナル→
[002]
米国甲状腺協会及び米国甲状腺学会から出版されている患者向けパンフレット

02:甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症とは、体の中に甲状腺ホルモンが多すぎる状態のことをいいます。これは、甲状腺全体の活動が活発になりすぎたことによるものが一番多く、その状態はまん性中毒性甲状腺腫またはグレーブス病(バセドウ病)としてよく知られています。甲状腺にできた結節またはかたりの一つか、それ以上のものの活動が活発になりすぎることがあり、その状態は結節性中毒性甲状腺腫または多発性甲状腺腫として知られています。最後に、甲状腺炎と呼ばれる状態にある人、または甲状腺ホルモンの錠剤をたくさん飲みすぎた人は甲状腺機能亢進症の状態になることがあります。
甲状腺機能亢進症の症状としては、神経質、いらいら、汗をよくかく、皮膚が薄くなる、細く縮れた髪、筋力の低下(特に上腕とふともも)などがあります。手がふるえたり、心臓の鼓動が早くなったり、腸の動きが活発になったりすることがありますが、下痢をすることはまれです。食欲があるのにやせてくるというのが、普通よく見られる症状です。女性の場合は、生理の量が少なくなり、回数も減ってきます。
びまん性中毒性甲状腺腫(グレーブス病)では、上のまぶたがめくれ上がるため目が大きく見えることがあります。頻度は少なくなりますが、片方、または両方の目が突き出す“眼球突出症”が起こることもあります。

甲状腺機能亢進症の原因は何でしょう?
甲状腺機能亢進症の患者の70〜80%にびまん性中毒性甲状腺腫が見つかりますが、これは血液の中の抗体が甲状腺を刺激し、甲状腺の成長を促して多量の甲状腺ホルモンが分泌されるようになるものです。このタイプの甲状腺機能亢進症は遺伝する傾向がありすが、なぜ特定の人にこの病気が起こるのかということは、まだわかっていません。また、なぜ甲状腺の機能が時々活発になり過ぎるのかもわかっていません。何らかの理由で一つまたはそれ以上の結節の活動が徐々に活発になり、その結果分泌される甲状腺ホルモンの総量が正常より多くなるのです。甲状腺炎は感染によって引き起こされると考えられていますが、原因となる特定のウィルスや細菌は特定されていません。

甲状腺機能亢進症の診断はどうやってするのでしょうか?
医師が甲状腺機能亢進症を疑った場合は、まず血液中の甲状腺ホルモンの量をはかり、診断が正しいかどうか確かめます。もし、この検査でホルモンの量が境界線上にある時は、医師は甲状腺の活動が活発になり過ぎているのかどうかを知るために、もっと感度の高い血清TSH(甲状腺刺激ホルモン)を調べる血液検査を行ないます。
これらの検査が甲状腺機能亢進症であることを示していたら、医師は甲状腺全体の活動が活発になり過ぎているのか、それとも中毒性甲状腺腫や甲状腺炎(甲状腺の炎症)があるのかを調べるため、甲状腺の写真を撮る(甲状腺スキャン)ことにするでしょう。

甲状腺機能亢進症のいちばん良い治療法は何でしょうか?
すべての患者にとって一番いい治療法というものはありません。医師が治療法を選択するにあたっては、様々な要素が影響してきます。それには、年齢や甲状腺機能亢進症のタイプ、よい甲状腺外科医にかかれるかどうか、薬に対するアレルギー、またそれ以外の健康に影響する可能性のある内科的状態があります。
薬 剤
医師が、血液中の甲状腺ホルモンの量を減らすことにより甲状腺機能亢進症の治療を行なうことにした場合は、抗甲状腺剤として知られているメチマゾール(日本では商品名メルカゾール)またはプロピルチオウラシル(PTU、日本では商品名チウラジールまたはプロパジール)などの薬剤が処方されます。これらの薬剤は、甲状腺で使われるヨードを甲状腺が利用しにくくするものです。甲状腺が甲状腺ホルモンを作るのにヨードを使うため、結果的に甲状腺ホルモンの産生量が減ることになります。
放射性ヨード
甲状腺機能亢進症のもう一つの治療法は、甲状腺ホルモンを作っている細胞に損傷を与える方法です。これらの細胞は甲状腺ホルモンを作るのにヨードを使うため、血液の中からどのような形のヨードであっても取り込みます。
1930年代後半に、医師が甲状腺が放射性ヨードを正常な非放射性ヨードとまったく同じように取り込むことを見出し、この観察から放射性ヨードを使った治療法が生まれました。この治療法では、医師が放射性ヨードを含んだ無味無臭のカプセル、または液体の飲み薬を出します。この薬を飲むと、放射性ヨードが血液中の入り、活動が強すぎる細胞がすぐにこれを取り込みます。数週間の間(この期間中に甲状腺機能亢進症の症状をコントロールするための薬剤療法が行われることがあります)に、放射性ヨードがそれを取り込んだ細胞を壊します。この結果、甲状腺のサイズが縮小し、甲状腺ホルモンの産生も落ち、血液中のレベルが正常に戻ります。
医師は、この病気をコントロールするために必要な放射性ヨードの最適量を計算するため、あらゆる努力を払っていますが、それでもすべての人がこの治療を受けた後に正常な状態に戻るわけではありません。治療前より症状は軽くなったものの甲状腺機能亢進状態のままである患者も時たまおります。このような人には、必要があれば2回目の放射性ヨード治療を行ないます。もっと一般的には、治療の2〜3ヶ月後に甲状腺機能低下症(甲状腺の活動低下)が起こるのが普通です。実際に、放射性ヨードで治療を受けたほとんどの患者で、治療後数ヶ月から、あるいは何年も経ってから甲状腺機能低下症がおこります。幸いに、甲状腺機能低下症は、甲状腺が作ることができなくなった甲状腺ホルモンを1日1回補うだけで、簡単に治療できます。この甲状腺ホルモン剤は生涯飲み続ける必要があります。
外科手術
時に、甲状腺機能亢進症のある患者に、医師が甲状腺の一部を取り除く手術を勧めることがあります。甲状腺組織の単一の結節、またはかたまりが過剰に活動している場合は、この手術は直接的な治療となります。このような患者では、活動が活発になり過ぎた部分を含む甲状腺の一部を取り除くことにより、残りの組織は正常な機能に戻ります。
その一方で、活動が活発になりすぎた結節がたくさんあったり、甲状腺全体の活動が高すぎる場合は、医師は患者の健康を取り戻すため、甲状腺の大部分を取り除かなければなりません。そのような場合は、普通手術の後で甲状腺機能低下症が起こり、患者は甲状腺ホルモン剤を一生飲み続けなければなりません。
しかし、甲状腺の大部分を取り除くことにより、患者に甲状腺機能亢進症が残る危険性は著しく減少します。甲状腺の手術に関する考慮すべき要件は、大事なことですが複雑でもあります。したがって、医師がこの形の治療を勧めた時は、他に代わりの治療法があるのかどうか、また予定された手術の性質や範囲、外科医師の選択などについて十分に話し合う必要があります。患者がこの手術の必要性について納得できなかったり、よく分からない時は、セカンドオピニオン(他の医師の意見)を求めるのもよい方法です。
その他の治療法
ベータ遮断剤として知られている種類の薬剤は、体内の甲状腺ホルモンの作用を遮断し、普通は何時間かの間に気分がよくなってきます。しかし、この薬は血液中の甲状腺ホルモンのレベルを変えることはありません。プロプラノール(商品名インデラル)は最初に開発されたものです。これに類するもので、アテノロール(商品名テノーミン)やメトプロロール(商品名ロプレッサー)、ナドロール(商品名ナディック)およびインデラル-LA(商品名)などのような作用時間の長いベータ遮断剤が、1日1〜2回の投与で済むため、好んで使っている医師もいます。
甲状腺炎のため甲状腺機能亢進症が起こっているものを除き、これらの薬剤だけで治療を行なうことはなく、他の甲状腺自体に対する直接的な治療と組み合わせて使われるのが普通です。

もどる