第3章:医師はどのようにして甲状腺の病気を見つけるか?

甲状腺のどこが悪いか知るために、医者は症状についてあなたに詳しく聞くでしょう。あなたは医者にすべてを話さなくてはなりません。あなたが無関係と思っている症状が実はとても重要なことがあります。あなたの話を聞いた後で、医者はあなたが何を悪いと感じているかをはっきりさせるために多くの質問をしたり、あるいはあなたが言及しなかった問題を質問します。その後あなたは診察を受けます。一般的な身体の検査のほかに体重の変化(子どもだと身長の伸び)、脈拍数や首に注意が向けらます。医者はあなたの首の周囲を測るかもしれません。もしあなたが眼症状を持っているなら、甲状腺疾患を専門に扱う診療所に行けば、眼球の突出度は簡単に測ることができます。眼症の別の試験を追加されるかもしれません。例えばあなたの眼の写真とか。また血液検査と他のテストが追加されるであろう。これらの試験は2つのグループに分けられる。1つは甲状腺ホルモンが多いか少ないかをみること、2つめはあなたの甲状腺についてどこが悪いかをしらべること。これらの検査は以下のような質問に対しての答えの助けになるであろう。

  1. なぜ私の甲状腺は大きくなっているか?
  2. なぜ私の甲状腺は働きすぎであるか?
  3. あるいは働き不足であるのか?
  4. なぜ私の甲状腺にシコリができたのか?
  5. それは悪い病気であるのか?
  6. なぜ私の首の前部に痛みがあるのか?

甲状腺機能検査

あなたの甲状腺が甲状腺ホルモンの正しい量を作っているかどうか決定するために多くの方法が長年かかって試された。最近では静脈からほんの少しの血液をとるだけでよく、結果は非常に速く出る。しかし、診断上この血液検査だけでは不十分である。なぜなら甲状腺ホルモンの高低はいろいろな原因で起こるからである。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)

最近の進歩した測定法ではTSHの正確なレベルまで測ることができる。もちろんTSHのレベルはすべての健康な人で全く同じであるわけではない。正常値というのは健康な人々の95%にあてはまるものである。正常値の幅は測定手技と使われた母集団により検査室によって少しずつ違ってくる。

働きの低下した甲状腺

甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンの分泌が減った時、下垂体は衰えた甲状腺の活動を増やすためにもっと多くのTSHを分泌する。サイロキシンレベル(T4)が減少するとTSH値は増える。典型的な甲状腺機能低下では、TSH値は非常に高い。甲状腺ホルモンが正常下限で、まだ無症状の軽い甲状腺 機能低下でも、TSHはその小さな変化にも反応して増やされる。事実、臨床の場で、甲状腺機能低下症の診察において、TSHの反応が甲状腺機能低下状態を発見することに対して最も鋭敏な検査であることが証明された。

働き過ぎの甲状腺

甲状腺が働きすぎて甲状腺ホルモンの分泌が増えたら、下垂体はフィードバック機序によって分泌を抑えられる。TSH値は正常値以下になる。TSH値が正常以下か若くは測定感度以下の時、甲状腺機能亢進症を診断するうえでTSH値は価値がある。しかしながら、TSH低値は甲状腺機能亢進以外の状況で起こるかもしれない。血液中で主にたんぱくに結合している総サイロキシン(T4)や血液中で浮遊しているようなごく小量の遊離サイロキシン(FT4)を測ることができる。ある検査室ではT4をまた別の検査室ではFT4を測る。この2つの測定法の利点と欠点はあとで述べます。

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症では普通、血中T4値が高くなっているが、トリヨードチロニン(T3)のレベルだけが高い場合もあり注意を要します。甲状腺のはたらきが増せば、甲状腺ホルモンの値も増す。

甲状腺機能低下症

たいていの甲状腺機能低下症では血中T4は減少してるが、早期にはT4値が低下しているとは限らない。
総サイロキシン(T4)は 結合している蛋白に影響を受けやすく、遊離サイロキシン(FT4)と比較して不利である。場合によっては、結合蛋白を補正するやり方が用いられる。このテストはT3-レジン摂取率として知られている。そして結果から遊離サイロキシン指数が計算することができる。

遊離サイロキシン指数

確かに、遊離サイロキシン指数は蛋白と結合していないT4を反映しているが、我々が知りたいのはこの遊離T4である。なぜなら遊離T4が真の甲状腺機能を反映するからである。多くのセンターで遊離T4の測定法が総サイロキシン、T3摂取率、遊離サイロキシン指数に比べて優先的に使われるのはこの理由のためである。

血清トリヨードチロニン(T3)

総T3と遊離T3は測ることができる。甲状腺のはたらきが増していれば、T3値は高くなる。若干の甲状腺機能亢進症患者でT3値はT4値が増える数週間あるいは数ヶ月前に増加する。事実、サイロキシン(T4)の増加しない甲状腺中毒症患者がいる。甲状腺機能こう進症の疑いがありTSH値が低いとき、総T3、遊離T3高値はT3-甲状腺中毒症として知られている疾患を考慮に入れなければならない。機能低下した甲状腺はT4よりT3を作り易いために、T3値測定は甲状腺機能低下症の診断では少し有用性に欠ける。T3のレベルは後にT4に比べていっそうゆっくりと落ちる。甲状腺と無関係な多くの疾患で苦しむ患者でT3低値が見られることがある。これは“sick euthyroid”症候群と呼ばれ、T3値は、患者が回復するにつれて、次第に正常になる。

2つ以上を組み合わせた試験

2つの異なった甲状腺機能検査をすることによって2つの異なった角度から甲状腺のはたらきをみることができる。一つは、甲状腺ホルモン値、もう一つはTSHの分泌。診断が明白である時以外は、甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症の疑いがある場合には総T4、遊離T4、TSH値を測定する。遊離T4、遊離T3、TSH値を測ることによって得られるかも知れない結果のいくらかを[表1]に要約する。

[表1]甲状腺ホルモン検査の結果の解釈
フリーT4値 フリーT3値 TSH値 解釈
高い 高い 低い 甲状腺機能亢進症または甲状腺ホルモンの飲み過ぎ
正常 高い 低い T3甲状腺中毒症
正常 正常 正常 正常甲状腺機能
正常または高い 正常 正常 甲状腺ホルモン剤治療中の甲状腺ホルモン機能正常状態
正常または低い 低い 正常または低い 甲状腺以外の重傷疾患の場合
低いまたは正常 正常 高い 潜在性甲状腺機能低下症
低い 低いまたは正常 高い 甲状腺機能低下症

甲状腺機能の間接試験

いくつかの間接試験が甲状腺分泌機能を算定するために使われる。

放射性ヨード摂取率

この試験では放射性ヨードの甲状腺への取り込をみる。甲状腺機能亢進症では甲状腺ホルモンの産生に不可欠な原材料、すなわち、ヨードを必要とする。それ故甲状腺はホルモン合成のために血流からもっと多くのヨードを受け取る必要がある。逆に甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンは少ししか作られていないからより少ないヨード、あるいは放射性ヨードが取り込まれるだけである。放射性ヨード摂取率は経口や経静脈ルートから放射性ヨードを入れて測定する。甲状腺の放射性ヨード摂取率は甲状腺機能こう進症を持つと思われるなら2~6時間後に、そして甲状腺機能低下症を持つと思われるなら24~48時間後に首の上に置かれたカウンター測定される。
これは甲状腺ホルモンの産生を算定する間接的なやり方である。ヨードが甲状腺に取り込まれるのは自動車工場において鉄が製造工場に運び込まれるのに似ている。鉄が多く運び込まれれば、自動車がより一層作られる。長期的に見れば、これは恐らく当てはまるであろう。しかし短期的にみた場合、誤りが起こるかも知れない。
工場は鉄を備蓄だけして、自動車産生を増やさないで貯えるかも知れない。工場は自動車を決められた数だけ作り、工場に備蓄して、市場に出さないかもしれない。同様にヨードの場合も、甲状腺がしばらくの間ヨード不足になっていた為に、ヨード摂取率の増加は単に備蓄を示しているにすぎないかもしれない。このように、ヨード摂取率の増加が常に甲状腺ホルモン産生増加と同等に扱われるわけではない。たとえ甲状腺は甲状腺ホルモン合成の能力があるとしても、T4あるいはT3を服用中なら、脳下垂体からのTSH分泌を抑制し放射性ヨードの取り込みは減少する為に、甲状腺は休んでいる状態になる。
甲状腺分泌機能を評価するために放射性ヨード摂取率を測る場合、最も紛らわしいのは亜急性甲状腺炎である。この状態では甲状腺細胞はウイルスによって起こされた炎症によってダメージを受ける。甲状腺細胞はまともに働くことができず、それ故ヨードの取り込みはゼロになる。甲状腺の炎症のために甲状腺内に溜まった甲状腺ホルモンが血中に放出され甲状腺機能こう進症の症状を呈するようになる。
種々の放射性ヨードが使われる。131-Iが一番使われるが、半減期のより短い123-Iあるいは125-Iがしばしば使われる。それらは、一般にからだから早くクリアーされ被爆量が減る。それらは子どもたちに対する検査や繰り返される検査のときに好まれて使用される。もしほんのわずかな量でもこれらの放射性物質を与えられるなら、放射線被爆が取るに足りないということを説明してもらえば安心ができる。しかし、もし妊娠しているなら、放射性ヨードが赤ん坊の甲状腺に取り込まれるために、この検査は受けてはいけない。
最近便利なためにテクネシウム(99mTc)と呼ばれるアイソトープが放射性ヨードの代わりにしばしば使われる。ヨードが取り込まれるのと同様にテクネシュムも甲状腺細胞に取り込まれる。しかし、ヨードと異なり、テクネシウムは甲状腺ホルモン合成には使われない。今日では、テクネシウムと放射性ヨードは甲状腺機能を調べるよりむしろ甲状腺の腫瘍や形態をみるのに使われる。

アキレス腱反射時間

よく知られている膝蓋腱反射のような腱反射のスピードは甲状腺ホルモンのレベルによって影響を与えられる。実際の臨床では、アキレス腱反射がよく用いられる。反射時間は機械で測定される。
反射時間は甲状腺機能低下症できわめて遅く、そして甲状腺機能亢進症で速い。このテストは甲状腺ホルモンのレベル以外の要因によって影響を受ける。これは治療の反応をみるのに有用であるが、それは甲状腺機能検査としては限界がある。

コレステロール

血中の脂肪分のひとつコレステロール値は甲状腺ホルモンの量によって影響を受ける。甲状腺機能低下症でコレステロールは通常普通より高くなり、甲状腺機能亢進症でそれはしばしば低い。しかしながら、コレステロールは多くの他の要因によって影響を与えられる。甲状腺疾患でのコレステロールの異常値は、甲状腺ホルモンの異常が高度で期間の長いときに見られるかもしれない。

甲状腺疾患の原因を調べるための検査

甲状腺がちゃんと働いているかどうか調べて、医者はどこが悪いのかを見つけだす必要がある。例えば、あなたは甲状腺が腫れているだけで、甲状腺機能は正常かもしれない。なぜ甲状腺が腫れたか?同様に甲状腺の働きに異常があれば、医者はなぜそのような状態になっているかを調べなくてはならない。
例えば、遊離サイロキシン(FT4)が低く、TSH値が高いこと見つけて甲状腺機能低下症と診断するだけでは、十分ではない。次のステップは、この甲状腺機能低下症の原因を調べることである。これは、もし甲状腺機能亢進に対して以前、放射線治療や外科治療を受けているなら、原因は明白である。ひんどは減るが、その他にヨード欠乏や橋本病などの原因もある。
検査によって、甲状腺のシコリが嚢腫あるいは充実性結節であるか、そしてそれが、悪性か良性であるかどうかが分かる。
甲状腺機能亢進の原因がバセドウ病や甲状腺炎などの自己免疫に依るものなのか、シコリが甲状腺ホルモンを産生しているためなのかを診断することは大切である。
治療法が異なるために、この鑑別は重要である。それ故、この章で論じられる検査は甲状腺異常の原因を調べるためのものである。これらすべての検査が必要なわけではなく、医師がその状況に応じて適宜指示を出す。

甲状腺自己抗体

《第2章》で述べたように、甲状腺自己抗体はあなたの体のなかで作られ、甲状腺細胞に対して異なる作用をする。これらの抗体の存在と力価は診断の上で重要です。

甲状腺を抑制する抗体

いろいろな抗体が甲状腺機能を害するが、その中で最も重要なものはマイクロゾーム抗体である。これは細胞毒に働く、すなわちそれが甲状腺細胞を破壊することを意味する。この抗体は通常橋本病患者の血中で見いだされて、そしてその抗体は甲状腺を破壊し、患者は甲状腺機能低下症に陥る。この自己免疫による破壊はゆっくりした過程で、何ヶ月もあるいは何年もかかる。破壊的な過程を抑制する安全で効果的な方法を持たない現在においては、抗体を持っているという認識を持って、甲状腺のはたらきが落ちたら直ちに、またはそれ以前でも、T4によるホルモン補充療法をはじめることが重要である。
あなたが、甲状腺の自己免疫疾患を持っていることを知ることは重要である。なぜならば、早晩、他の自己免疫疾患が出てくる可能性が高いから。
例えば、医者は赤血球を作るのに要るビタミンB12の吸収に必須な胃液を分泌する胃の特定の細胞を破壊する抗体を調べることを望むかも知れない。もしこの抗体が存在するなら、ヘモグロビンレベルをチェックして、貧血があれば、B12を注射する。

甲状腺刺激抗体

甲状腺活動を増やす抗体はバセドウ病の原因と考えられている。これらの甲状腺刺激物質はバセドウ病患者のおよそ90%で陽性であり、また、甲状腺機能正常な甲状腺眼症の患者の約60%で陽性となる。
同じ抗体は、橋本病で一時的な甲状腺機能亢進症を起こした時に陽性になることがある。

甲状腺シンチ検査

甲状腺シンチでは、テクネシウムやヨードなどの甲状腺に取り込まれるラジオアイソトープが投与される。一時的に甲状腺は放射能を帯び、この放射能を首の上に置かれたカウンターによって測定する。被爆する放射性物質の量は非常に小さいので、からだへの影響はなく心配ない。
シンチグラムの取り込みの記録は、紙にカラー印刷されるか、レントゲンフィルムに撮られる[プレート1]
正常な甲状腺シンチでは甲状腺は正しい場所に位置していることを示すであろう。右葉と左葉はおよそ同じ大きさであること分かる。峡部はいつも、みえるとは限らない。アイソトープの取り込みは両葉全体で均一である。甲状腺の厚みのある両葉の真ん中では、端より取り込みは大きい。 もし甲状腺が正常に発育しないか甲状腺の下降がその起始の舌根部から首の正常な位置までの間で異常であるなら、シンチでは取り込みがわずかであるかシンチの取り込みの位置が顎の下の高い位置にあるかもしれない。これらの検査は、赤ん坊あるいは子どもで甲状腺機能低下の原因を調べる時、特に重要である。甲状腺が正常の位置より下がりすぎた時、走査は通常首より低い部分で若干の活性を示す。例えば縦隔や胸骨後部でアイソトープの取り込みがみられる。

甲状腺機能亢進症

甲状腺が働きすぎの場合、シンチグラムでは原因によって4つの異なったパタ-ンを示す。

  1. バセドウ病では全体的にアイソト-プの取り込みが増えている。そして甲状腺両葉は普通腫大している。
  2. 甲状腺機能亢進症が腺腫によってひき起こされている時はアイソト-プはその腺腫に一致して取り込まれる[プレート2]。これはこの領域に過剰のアイソト-プ取り込みがみられるのでホットな結節と言われる。
    ホットな結節以外の甲状腺は取り込みが著しく低くなる。これをホットと比較してコ-ルドと言う。過剰な甲状腺ホルモンのためにTSHが抑制されて取り込みが低下する。
  3. 中毒性多結節性甲状腺腫ではシンチをするとアイソト-プは数個のホット結節が見られる。
  4. 亜急性甲状腺炎の場合は甲状腺組織が破壊され、一時的に働きが停止し、アイソト-プの取り込みはなくなる。炎症によって破壊された甲状腺から漏れ出た過剰の甲状腺ホルモンの為に甲状腺機能亢進症を呈する。炎症がおさまると甲状腺へのアイソト-プの取り込みは正常に戻る。

これらの異なった原因の甲状腺機能亢進症は治療が異なるので、鑑別は大切である。もちろん明らかに眼症があるときなどは、バセドウ病であるので甲状腺シンチは必ずしも必要ではない。
又、亜急性甲状腺炎の場合も風邪のような症状の後に甲状腺部に痛みが出現していれば診断は明らかである。
しかし、無痛性甲状腺の場合は痛みもなく風邪症状の先行もないので鑑別の為に甲状腺シンチを要する。

結節性甲状腺腫

アイソト-プ検査は甲状腺の結節性病変の診断に有用である。我々は度々首のところに痛みのないブドウ粒大のシコリを持つ患者を見ることがある。
検査をするとそれは甲状腺にできたシコリで、物を飲み込む時に甲状腺と一緒に動く。
123-Iや125-Iシンチでアイソト-プの取り込みのないシコリはColdと言われる[プレート3]。Coldを示すことは悪性を疑わせるが、Coldの80%は手術や生検において良性である。
単発性のシコリと思ってシンチをしたときに、そのシコリ以外に手にも触れないColdなシコリが見つかることがある。この多発性のColdなシコリを診断することは有用です。なぜなら、多発性の場合はそのシコリが悪性のものである可能性は低いからです。
このようにアイソト-プによる甲状腺シンチ検査は、甲状腺のシコリを持つ患者を調べるのに大変有用で甲状腺がんの診断にも役立つ。

超音波

この検査は痛くもない簡単なものである。ゼリ-を首にぬって、プロ-ブ(探触子)が前後に動いて甲状腺を調べる。このプロ-ブは耳には聞こえない痛みを伴わない音波を甲状腺に送り、その波は反射して帰って来て記録される。プロ-ブが走査するにつれて形を現わす[プレート4]。それはあたかもこの方法で潜水艦や海底に沈んだ難破船を探す様なものである。
超音波で甲状腺の大きさや、シコリが充実性のものなのか、のう胞性のものなのか、またはシコリが単発か多発かが分かる。

生検

生検とは顕微鏡で見るために小さな甲状腺組織を取る検査である。この検査はシコリが悪いものかどうかを診るのに有用である。特に穿刺吸引細胞診は痛みもそれ程でなく外来で数分あればできる検査である。
ベッドに首を伸展して仰臥位をとる。針を甲状腺に入れて少量の組織をとる。局麻をしてから穿刺をすることもあるが多くの患者には必要ない。又ある医者は局麻下にもっと太い針を使用することがある。これは少し圧迫感があり若干恐いが害はない。生検後はしばらく圧迫するだけで家に帰ってよい。
病理医が診断するのに、不十分な量しか細胞が取れないことや、間違った部位からの採取もありうる。
がんの疑いがあるときは、切開して生検することを勧められるかもしれない。これは普通の手術と同じもので診断と治療を兼ねる。なぜなら疑わしいシコリとその周辺も含めて切除するからである。

X線検査

X線検査で、甲状腺が腫大して気管を圧迫しているかどうか、又は、もし甲状腺の片方にシコリがありそれの圧迫によりどちらに気管が偏位しているかがわかる。後胸骨や縦隔の異所性甲状腺腫は、別の目的でX線をとったときに偶然に見付かることがある。後胸骨部の異常陰影はシンチをすれば甲状腺かどうか分かる。甲状腺眼症では、眼窩CTはバセドウ眼症の診断に有用である[プレート5]

問題と解答

Q1. 何度も採血されますか?
一度か二度程度採血するだけです。一回の採血で、沢山の項目の検査ができます。採血はさほど痛いものではありません。
Q2. もし、甲状腺機能異常があるときはどのようにして調べるのですか?
症状や診察で分かるかもしれないが、多分血液検査で、血中TSHとFT4をみるでしょう。
甲状腺機能こう進症があれば、T3を測るかもしれません。
Q3. 甲状腺中毒症は甲状腺の働きすぎや甲状腺機能こう進症と同じ事ですか?
はい。それらの言葉は全て甲状腺が沢山の甲状腺ホルモンを作っていることを示します。
Q4. もし、ヨードシンチ検査を受けたときは甲状腺がんを持っていることを意味しますか?
違います。
Q5. 甲状腺の働きすぎや働き不足の原因はいくつかありますか?
はい。《第5章》《第6章》で機能こう進の原因、《第8章》で低下症の原因について述べます。
Q6. 甲状腺自己抗体とは何ですか?
甲状腺細胞に影響を与える体の中で作られる化学物質です。それらは、甲状腺細胞を破壊したり刺激します。
Q7. シンチ検査を受けたら不妊になりますか?
全く心配ありません。被爆量は胸部レントゲンのときより少ない。
Q8. なぜ甲状腺機能こう進症の原因を詳しく調べるのですか?
それは原因によって治療が異なるからです。
Q9. 外来で針生検をするように言われたが大丈夫ですか?
針生検は安全で簡単ですので外来で十分です。
10. X線検査はあまり受けない方がいいですか?
X線検査は甲状腺疾患ではあまり重要ではありません。

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