甲状腺機能障害

アメリカ合衆国では人口の20から25%が、自己免疫疾患になる傾向を持っています。これらの人の多くは甲状腺機能亢進症あるいは甲状腺機能低下症を生じます。これらの人の中では、甲状腺機能不全の最初の徴候が血液中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルの増加です。

甲状腺機能亢進症:バセドウ病

この病気は女性に男性の5倍多く見られます。

女性(15歳以上)男性(15歳以上)
罹患率診断され治療を受けた3.2%(3,221,760)0.32%(289,000)
診断されていない0.5%(503,000)0.05%(46,302)
年間発生率(新しいケース/年)0.3%(302,040)0.03%(27,852)

甲状腺機能低下症(治療を必要とする重篤なもの)

この病気は女性に男性の5倍多く見られます。

女性(15歳以上)男性(15歳以上)
罹患率診断され治療を受けた1.47%(1,409,502)0.1%(92,840)
診断されていない0.33%(332,244)0.033%(30,637)
年間発生率(新しいケース/年)0.15%(151,020)0.015%(13,926)

潜在性甲状腺機能低下症

これは女性が男性の5倍多く、ほとんど症状が出ないため、気付かないのが普通です。
50歳までに、女性の10%にTSHの血中レベルの増加があり、これは甲状腺の機能が落ちている可能性を鋭敏に示す徴候です。

女性5,910,700人

60歳までに、女性の16.9%、また男性の8.7%にTSHの血中レベルの増加が見られます。

女性2,000,000人
男性1,470,000人

診断されている全甲状腺疾患の罹患率

これは女性が男性の5倍多く、ほとんど症状が出ないため、気付かないのが普通です。
50歳までに、女性の10%にTSHの血中レベルの増加があり、これは甲状腺の機能が落ちている可能性を鋭敏に示す徴候です。

女性と男性
重篤な疾患912,200人
潜在性甲状腺機能低下症6,839,000人
合計7,851,000人

したがって、1300万人のアメリカ人は甲状腺が活発すぎるか、不活発になっており、その半分以上のほぼ800万人が病気であることに気付いていません。

産後甲状腺炎

甲状腺は産後に機能不全を起こすことがよくあります。女性が産後に甲状腺機能亢進症または機能低下症になる確率は5%です。そして、これが産後うつ病を引き起こすことがあります。アメリカ合衆国では毎年約4,000,000人の女性が妊娠することから、この内200,000人が産後に甲状腺機能不全になることを意味しています。この病気の発生率は、女性にインスリン依存性糖尿病のような他の自己免疫疾患がある場合は25%に増加します。
そのため、家族にインスリン依存性糖尿病や慢性関節リューマチ、悪性貧血、若白髪、白斑症などがある女性は、産後に十分な注意を払って経過をみていくことが特に重要となります。医師の多くが妊娠初期に血液サンプルを採取し、抗甲状腺抗体が存在するかどうか検査するようにしています。抗甲状腺抗体が見つかった場合は、産後甲状腺機能障害を起こす可能性が高くなります。そのため、産後に注意深く経過をみていくことになります。

ヨード欠乏症と甲状腺腫

10億人の人が食餌中にヨードが欠乏している危険性のある地域に住んでおり、そのため甲状腺腫や知恵遅れ、子どもの成績不良、ひいては地域の経済的生産性の減少につながることがあります。アメリカ合衆国では食餌中に十分なヨードが含まれているため、ヨード欠乏症は見られませんが、世界中では少なくとも2億人の人が甲状腺腫に罹っており、そのほとんどはヨード欠乏によるものです。

結節

甲状腺のしこりはよく見られるものです。ほとんどは検知されることはないものの、50%のもの人が生涯のうち、いつかは結節を生じるのです。今では、4%の人の結節は丁寧な頚部診査で検知できるはずです。ほとんどは無害なものです。あるものは甲状腺ホルモンを産生することができ、甲状腺機能亢進症を起こします。あるものはがん性です。どちらも治療が必要です。

甲状腺がん

毎年、100万人あたり25人に新しく甲状腺がんが発生します(6,000人)。
男性の全がん患者の0.6%が甲状腺がんです。
女性の全がん患者の1.6%が甲状腺がんです。

子どもの頃の頚部放射線照射

アメリカ合衆国では、200万人の人が過去ににきびや胸腺肥大、反復性扁桃腺炎、および慢性の耳感染症のような病気に対し、頭部や頚部にX線治療を受けています。この人達は現在甲状腺結節や甲状腺がんになる危険にさらされています。
このような状況にあり、なおかつ脳下垂体からのTSH産生が増加している人は、それにより甲状腺結節やがんの発育が刺激される可能性があるので、特に危険性が高いのです。

新生児甲状腺機能低下症

約4,000人に1人の赤ちゃんが甲状腺機能低下症で生まれてきます。そのような赤ちゃんのほとんどは甲状腺の血液検査による効果的な新生児スクリーニングプログラムを通じて、生後間もなく見つけられます。甲状腺機能低下症の新生児が生後2ヶ月以内に甲状腺ホルモンで治療を受ければ、知恵遅れや発育不良、発達異常などの合併症は普通予防できます。これらの子どもは生涯にわたって甲状腺ホルモン治療を続け、フォローアップ診査を受ける必要があります。
先に述べた情報についての御質問があれば、米国甲状腺協会宛てに手紙でお問い合わせください。御質問の内容と共に、切手を貼り、ご住所とお名前を記入した定型封筒を同封してください(米国甲状腺協会の住所は[付録4]のページをご覧ください)。

この章の統計は、1990年以降の米国人口国勢調査局の報告と次の参考文献から引用しました。

  1. Articles from The Bridge, a quarterly publication of the Thyroid Foundation of America, Inc., Boston, Massachusetts.
  2. Braverman, Lewis E., and Robert D. Utiger. Werner and Ingbar's The Thyroid, A Fundamental and Clinical Text, 6th ed. (Philadelphia: J. B. Lippincott Compan 199l)
  3. Tunbndge, Mrchael G., et al., "The Spectrum of Thyroid Disease in a Community: The Whickham Survey," Clinical Endocrinology 7 (1977): 481.
  4. Wood, Lawrence C., David S. Cooper, and E. Chester Ridway. Your Thyroid, A Home Reference, (New York: Ballantine Books, 1995).