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甲状腺の病気シリーズ4
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百渓尚子先生が作った患者さん向けのパンフレット
甲状腺の病気シリーズ4:バセドウ病の目の症状
バセドウ病というと目がとび出す病気と思われていますが、目にはっきりした異常がおこるのはバセドウ病の患者さんの一部の方です。バセドウ病におこる目の異常をバセドウ眼症といいますが、この症状にはいくつかあります。
バセドウ病の症状は大きく分けて、甲状腺のはたらきが高まって、血液中の甲状腺ホルモンが過剰になることによるもの(甲状腺機能亢進症)と、バセドウ眼症の2つがあります。甲状腺機能亢進症だけあって目の症状はないという人は少なくありませんが、逆に目の症状だけあって甲状腺機能亢進症のない人もいます。
甲状腺機能亢進症は甲状腺を過剰に刺激する物質によっておこるということがわかりましたが、バセドウ眼症の方の原因はまだよくわかっていません。
目の症状には次の3つがあります。
1. 目が大きくなったように見える(眼瞼後退)
うわまぶたが上の方に引っ張られるため目が大きくなったように見え、その結果うわまぶたと黒目の間に白目が見えるという症状。下方を見る時だけ白目が見えることもあります。これを眼瞼後退と言います。
2. 目が出る(眼球突出)
眼球のまわりに付いている、目を動かすための筋肉(外眼筋)に炎症がおきて腫れたり、眼球の後ろにある脂肪組織の量が増えることが原因です。眼球は三方を骨で囲まれているので(この空間を眼窩と言います)、外眼筋や脂肪組織の容積が増すことによって、眼球は前に押し出されます。
3. まぶたが腫れる(眼瞼腫張)
まぶたの中の脂肪が増えるためにおこります。
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と
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がおこると、それがもとで次のような症状がみられることがあります。すなわち、目の血管が圧迫されることによる白目(眼球結膜)のむくみや充血、まぶたが閉じなくなるための角膜の乾燥や傷による角膜潰瘍などです。その結果、視力も悪くなることがあります。そのほか逆さまつげになったり、光をまぶしく感じたりするようになることもあります。
外眼筋に炎症や癒着がおこると左右の目の動きが合わなくなって、物が二重に見えるようなこともあります。これを複視と言います。
視力低下は、太くなった外眼筋などで視覚を伝える神経(視神経)が圧迫されておこるものもあります。ただし、これは非常にまれです。
甲状腺機能亢進症の治療
バセドウ病の治療薬として用いられるメルカゾールやプロピルサイオウラシル(チウラジール、プロパジール)を服用すると、過剰だった血液中の甲状腺ホルモン濃度が正常になります。この状態が続くと眼瞼後退は早晩よくなります。他の眼症はすぐに目立って良くなることはあまりありませんが、甲状腺ホルモンが過剰のまま放っておくと、以下に述べる専門医での治療がうまくいきませんので、甲状腺の機能を正常にしておく治療は不可欠です。
眼症の治療
白目のむくみや充血、角膜の傷や潰瘍は、近くの眼科でも手当てができますが、
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の症状うちの、どういうタイプの障害なのかを調べるためには、バセドウ眼症をよく知っている専門の眼科の医師による検査が併せて必要です。バセドウ病と関係のない目の病気もありますから、そうしたこともよく調べたうえで、どのような治療が必要か、また現在治療の必要はないかどうかを決めます。治療には副腎皮質ホルモン(内服薬、点滴注射)と放射線(リニアック)があります。治療したあと、目の障害がどの程度良くなったか正確に判断することも大切です。これも専門の医師でないと困難です。いずれにしても、早い時期に適切な検査と治療を受ければ軽いうちに抑えることができます。
バセドウ眼症を悪くするもの
現在、バセドウ眼症に良くないことがはっきりしているのはタバコです。タバコを吸う人は吸わない人に比べて眼球突出の頻度が高く、程度も強いとされています。また、目の症状を悪化させることもわかっています。なおバセドウ病に対してアイソトープ(放射性ヨード)治療をすると、目の症状が悪化することがありますので、治療の前に眼科と相談する必要があることもあります。このようなことは幸い日本人ではまれです。これ以外のもので目に影響するものはあまりわかっていません。
予防はできるのか
現在のところ、眼症がおこる原因がまだよくわかっていないために、バセドウ病の適切な治療および禁煙以外に予防法はありません。しかしこれまでなかった人に目の症状がだんだん現れるとか、いったん落ち着いていた症状がまた進行するようなことはほとんどありません。
2004.2
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