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[045] |
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11:高齢者の甲状腺疾患 |
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年齢が高くなるにつれて甲状腺機能障害を起こす危険性も増してきますが、これは高齢の女性に非常に多いのです。甲状腺機能障害は臨床的になかなか見つけにくいことが多いのですが、これはその症状が加齢自体に伴って起こる変化とそっくりなことが多いからです。 甲状腺機能低下症はその主な臨床症状が、精神および身体機能の全体的低下や低体温傾向、寒さに弱い、体重増加、動脈硬化、血清脂質(コレステロール)の上昇、血圧上昇、および貧血などを含む加齢の症状と共通しているために隠されてしまうことがあります。感覚鈍磨(無関心)行動が加齢の一部であるかもしれませんが、高齢者の甲状腺機能低下症をあらわす所見であるかもしれません。甲状腺機能亢進症は、不整脈やうっ血性心不全、神経質、発汗、体重減少、筋力低下を伴う場合、やはり加齢プロセスの一部と誤解されることがあります。 高齢者の甲状腺疾患で起こる可能性がある臨床所見は、非定型的かつ非特異的ではっきりしないため、ちゃんと見つけられるかどうかは医師の側が大いに疑いを持ち、適切な検査で確認するかどうかにかかっています。しかし、甲状腺の検査の解釈には加齢自体に関連した血中甲状腺ホルモンレベルのわずかな低下についてよく知っておく必要があります。さらに、様々な薬剤やX線造影剤だけではなく、カロリー摂取量の減少や甲状腺以外の急性、慢性疾患などが同時に存在しているとやはり検査値に影響してきます。そのような病気が既存の甲状腺機能障害を隠すか、あるいは脳下垂体の甲状腺刺激ホルモン(TSH)のレベルだけでなく血液中の甲状腺ホルモン濃度[(サイロキシンT4)またはL-トリヨードサイロニン(T3)]のみせかけの増加または減少を誘発して甲状腺の検査値を変えてしまうことがあるのです。これらの合併ファクターを除外すると、若い人の通常の正常範囲を年齢に応じて少し修正するだけで、甲状腺機能低下症や機能亢進症の診断に十分使えるはずです。さらに、新しく考案された極めて感度の高い血清TSHの測定方法は高齢者の甲状腺機能障害の早期診断ができるように改良されてきました。これは先に述べたような合併ファクターが除外されている場合に特に有効です。 |
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この記事はトロント州トロント大学マウントシナイ病院内科小児科教授Paul G. Walfish, CM, MD, FRCP, FRSMが書かれたものです。 |
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