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甲状腺疾患健康ガイド

06:甲状腺炎
01 橋本甲状腺炎(慢性甲状腺炎)
02 臨床的特徴
03 検 査
04 治療法
05 亜急性甲状腺炎
06 臨床的特徴
07 検 査
08 治療法
09 無痛性甲状腺炎
10 産後甲状腺炎

01 橋本甲状腺炎(慢性甲状腺炎) ↑このページのトップへ
甲状腺炎、すなわち甲状腺の炎症には様々な原因があります。いちばん多い原因は橋本甲状腺炎です。これは異常な血液中の抗体と白血球が甲状腺細胞を攻撃し、傷つけるために起こる甲状腺の慢性炎症性疾患です。このいわゆる「自己免疫性」破壊の最終的な結末は、完全に甲状腺細胞がなくなってしまうために起こる甲状腺機能低下症です。しかし、多くの患者では甲状腺機能低下症にならずにすむだけの十分な甲状腺細胞が残っています。

02 臨床的特徴 ↑このページのトップへ
橋本甲状腺炎の患者は大体、若い女性か中年の女性です。甲状腺の軽い圧迫感と疲れ以外は症状がないことが多く、初期には硬く、ややでこぼこした甲状腺腫があり、時に軽い圧痛を覚えることがあります。症例の約10%に痛みが生じます。

03 検 査 ↑このページのトップへ
橋本甲状腺炎の診断は、血液中に高レベルの抗体を見つけて確認します。この抗体は患者自身の甲状腺蛋白に対し作用するものです。甲状腺の生険を行えば診断は確定します。針を甲状腺に差し込み、少し細胞を取ってそれをスライドガラスの上に塗り広げます。病理学者が、甲状腺の炎症反応を示す多数の血中リンパ球をみとめるはずです。

04 治療法 ↑このページのトップへ
橋本甲状腺炎の治療法は、診断がついたらすぐに、例えその時点で甲状腺機能が正常であっても甲状腺ホルモン剤(サイロキシン<注釈:日本ではチラージンS>)を飲むことです。甲状腺ホルモン剤が投与される理由は3つあります。
  1. 脳下垂体の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の産生を抑えて甲状腺腫を小さくするため。
  2. この病気は時間が経つにつれて進行してくるため、いずれ甲状腺機能不全が生じ、そのために甲状腺ホルモンレベルの低下が起きることが予測されるため。
  3. 甲状腺の損傷と破壊を起こす血中リンパ球に対し、効果があると思われるため。
サイロキシンの量は甲状腺機能低下症の場合と同じですが、最初は甲状腺腫を小さくするために、少し多めの量が必要なことがあります。多くの患者、特に若い人は甲状腺腫自体を気にしますが、消えるまでに数年かかる場合もあります。ほとんどの患者で、甲状腺腫は6ヶ月から18ヶ月の間に小さくなります。甲状腺が小さくなってしまった場合、甲状腺は機能しておらず、治療しなければ患者は甲状腺機能低下症になります。したがって、橋本甲状腺炎に対するサイロキシン治療は生涯続けなければなりません。橋本甲状腺炎患者は少なくとも年1回は家庭医に診てもらい、サイロキシンの量が適切であるか、甲状腺腫のサイズが小さくなっているかをチェックしてもらわねばなりません。

. Dr.Tajiri's comment . .
. 全ての慢性甲状腺炎の患者にチラーヂンSを投与するという意見には反対です。小さな甲状腺腫で、甲状腺機能が正常なら経過をみるだけで十分です。 .
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05 亜急性甲状腺炎 ↑このページのトップへ
亜急性甲状腺炎は橋本甲状腺炎の約10分の1です。甲状腺機能亢進症を起こす一過性の甲状腺炎ですが、放射性ヨードや甲状腺切除による治療は必要ありません。

ほとんどの患者が甲状腺炎になる数週間前に喉の感染があることから、亜急性甲状腺炎はウィルスによる感染症であることがはっきりしています。この病気は小規模な流行、通常は既知のウィルスの感染に伴って起こります。

. Dr.Tajiri's comment . .
. この記載も誤りです。亜急性甲状腺炎の原因は不明です。現在までに原因となるウィルスは見つかっていないのが実状です。 .
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06 臨床的特徴 ↑このページのトップへ
主な症状は痛みを伴う甲状腺の腫れと甲状腺機能亢進症の症状です。これには、暑さに耐えられないことや神経質さ、頻脈、そして脱力感が含まれます。甲状腺機能亢進症は、ウィルスの感染により傷ついた甲状腺細胞から甲状腺ホルモンが漏れ出すために起こります。ウィルス感染症が自然経過をたどれば、甲状腺細胞は正常な状態に回復するので、これは一時的なものです。診察では、患者に触ると非常に痛い甲状腺の腫れと軽い甲状腺機能亢進症の徴候が見られます。

07 検 査 ↑このページのトップへ
亜急性甲状腺炎の患者の約半数が甲状腺機能亢進症を起こしてきます。甲状腺機能亢進症が起きた人では、血液中の甲状腺ホルモンレベルが上がっていることをみて診断を確かめることができます。血沈(ESR)はこの病気に関して非常に役立つ検査ですが、とても高くなります(80を超える)。放射性ヨード取り込み試験では、非常に低い値が出ます。この検査の正常値は15〜20%ですが、亜急性甲状腺炎では普通1%未満になります。これはウィルスに感染した細胞が「具合が悪く」、ヨードを取り込むことができないからです。

08 治療法 ↑このページのトップへ
この病気の軽いものはアスピリンで治療します。アスピリンは炎症や腫れ、痛みに対して投与されます。症状のひどい患者にはステロイド(コーチゾン)を投与することがあります。ほとんどの場合、患者は数日以内に回復します。少数ですが、病気がもっと長く続き、中には再発する人もいます。患者のほぼ4分の1に、甲状腺細胞がひどく損なわれたために一時的な甲状腺機能低下期が起こり、サイロキシンによる治療が必要な場合もあります。最終的に細胞は回復し、サイロキシン治療を止めることができます。

09 無痛性甲状腺炎 ↑このページのトップへ
もう一つの甲状腺炎の原因は、亜急性甲状腺炎と同じくらいの頻度で起こる「無痛性」甲状腺炎です。これは甲状腺の炎症の症状あるいは徴候がないためにそのように名付けられたのです。患者は甲状腺機能亢進症であり、バセドウ病患者と同じ症状を示す場合があります。

10 産後甲状腺炎 ↑このページのトップへ
産後甲状腺炎は過去に甲状腺の病気に罹ったことがあり、最近出産した女性に高い頻度で起こります。ほとんどの面で、無痛性甲状腺炎と産後甲状腺炎は、甲状腺が自然に回復し、甲状腺ホルモン剤による治療を数週間しか必要としないという点を除き、橋本甲状腺炎に似ています。しかし、再発が珍しくない亜急性甲状腺炎とは明らかに違います。

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