第8章:その気にさせるホルモン

私が甲状腺分野で仕事を始めた時、結婚カウンセラーの役割を果たすようになるなどとは思いもしませんでした。ほとんどいつも患者は甲状腺ホルモンバランスの乱れのせいで、結婚生活や性的な困難を抱えておりました。私は彼らを夫婦セラピストやセックスセラピストに紹介しております。それでも私がイニシアチブを取って患者のカウンセリングをし、甲状腺ホルモンバランスの乱れが性的機能に及ぼす影響を説明しなければ、セックスセラピーや夫婦セラピーがうまくいかないのです。甲状腺ホルモンバランスの乱れが様々な困難を引き起こす源であることを説明し、結婚生活の問題を解決するための夫婦に対する指導を行うのはまさに甲状腺の病気を治療する医師の役目なのです。医師は心理療法士とも連絡をとり、甲状腺ホルモンバランスの乱れがどのようにしてこれらの問題を引き起こすかを説明する必要もあります。

甲状腺機能低下症と甲状腺機能亢進症の患者のどちらも性生活に変化をきたします。この章で述べる例のいくつかは、甲状腺がどのように性的欲求や行為に影響するかという重要な面を明らかにしてくれます。

ベアトリスとレオナードは結婚して15年ほどになり、娘が一人おります。大きな会社のCEO(最高執行責任者:社長)であるレオナードは非常に成功した人で、家族は裕福でした。結婚生活のほとんどの期間、幸福で安定した関係を保ってきました。これらがすべて突然と言ってよいほど変わってしまったのです。

ベアトリスのかかりつけの婦人科医が彼女を私の元に紹介してきました。その医師が彼女の甲状腺腫と手の震えに気付いたからです。検査の結果、ベアトリスの甲状腺ホルモンレベルが高いことがわかりました。最初にベアトリスを診た際に、バセドウ病であると診断がつき、治療を開始しました。数日後、私はレオナードからちょっと相談したいことがあるという電話を受けました。彼はここ何ヶ月間、妻が自分を裏切っており、そのために離婚するつもりであると言いました。彼は、甲状腺の病気と彼の妻にここ1年程の間に現れた性格や性的欲求の変化の間にひょっとしてつながりがあるのではなかろうかと思ったのです。夫の要請で、ベアトリスは再び私の元に来て彼女の視点から状況を説明することになりました。
彼女が言うには

私は25歳の時に結婚しました。私はレオナードを愛しており、彼に引かれましたが、最初からセックスにはほとんど興味がありませんでした。結婚する前でさえ、セックスについてそれがどれ程大事なものかということが本当にわかっていなかったんです。実際のところ、主人と何か問題があったとすれば、それは私が何年にもわたってセックスにそれ程興味がなかったためです。子どもが生まれた後、かろうじて主人に応えようという気持ちがあったのがすっかりなくなってしまったことは間違いありません。私は性的には良い妻でないということにいつも罪悪感を抱いておりました。

ベアトリスは、前の夏に体重が減り始め、暑く感じ、汗をたくさんかくようになり、時に震えを感じ始めたことを思い出しました。それから、徐々にですが、彼女は前よりも夫とセックスをすることに興味が出てきたのです。
彼女が言うには

朝1回かならず、そして夜寝る前にかならず、またほとんどの場合夜中にもという具合で、少なくとも1日3回、そして機会があれば4回ということもありました。これは私一人でいる時とは別にです。そのことがいつも頭を離れなくなりました。

私は自分達のコンピューターにログオンし、インターネットのチャットルームへ行くようになりました。その時点では、私は誰かと関係を持ったり、性的夢想にふけるというようなことは考えておりませんでした。でも後ではセックスできるかもしれないという思いに取り付かれてしまったのです。私は主人が家を出るのが待ちきれないところまで行きました。そうすればコンピューターがつなげるからです。主人が出かけるはずなのに家にいるといらいらしました。

ほとんどいつも性的に興奮した状態にありました。私が1日中オンラインでつないでいる時にこのようなことが起こりました。私が主人と一緒にいた時にそうなったことはまず間違いありません。私はコンピューターを通じて他の人と話している間にマスターベーションをしました。そして次に私が話し掛けている間に彼らがマスターベーションをしたのです。そのようなありとあらゆる悪趣味な事が数ヶ月続きました。

そのような事が続いているちょうど同じ頃に、私と主人はしょっちゅうパーティーをしたり、飲みに行ったり、ダンスをしに行ったりしていました。私はただ絶え間なくエネルギーに満ち溢れていました。前よりも自分のことを意識するようになり、他の皆のことも意識するようになりました。そしてどこかよそに行って、やりたいと思うようになったのです。私は娘をあまり構わなくなっていました。

絶え間ない性的妄想と躁的行動からベアトリスは浮気をしてしまい、それがもとで家族関係が破綻寸前となりました。彼女がコンピューターで話していた男の一人が彼女に会うことにしました。
彼女はその出会いを次のように語っています。

私は彼と何ヶ月もの間コンピューターと電話を通じて話しをしていました。私はレオナードにいとこと一晩泊まってくると言いました。浮気は一晩だけのものでしたが、レオナードにはすぐにばれてしまいました。一体どうして他の人は生涯浮気を続けて、決してばれないようにできるのに、私は15年間も貞淑な妻でいながら、たった一晩だけのことがばれるんでしょうか。おそらくレオナードは今までにの私の行動から、すでに疑いを抱いていたのかもしれませんね。彼は私にそのことについて面と向かって聞いてきました。私はうそがつけませんでした。私はその通りだと言いました。それから何もかも坂道を転げ落ちるように悪くなっていきました。

レオナードは完全に落ち込んで、自信をなくしてしまいました。私達の関係はローラーコースターのようになりました。1日か2日は2人とも大丈夫なんですが、それから彼が私のことをあてこすったり、口喧嘩になってしまうんです。カウンセラーのところに行き始めたんですが、何の助けにもならないように思えました。

ベアトリスとの面談が終わった後、レオナードが私に電話をかけてきました。彼は妻の不貞に甚大なショックを受け、なかなかそれと折り合うことができないでいるということを改めて話しました。私はレオナードに彼と彼の妻が経験したことは、脳の機能に及ぼされた甲状腺機能亢進症の影響のせいであると思われると説明しました。ベアトリスの性格がすっかり変わってしまったこと─あまりセックスの欲求がなく、落ち着いて献身的な、愛情深い妻と母親から性的思考に取り付かれた自己中心的な人間になってしまったのは、脳内の化学的変化のためで、それが彼女をまったく違った人間にしたのです。

彼は私の説明に安心したのですが、レオナードはまだ心から信じたわけではありませんでした。彼の疑いは、2〜3ヶ月後にベアトリスの甲状腺機能亢進症を治す薬の効き目が出て、ベアトリスが元どおりの人間に戻ったにもかかわらず、まだ残っていました。彼女は性的夢想にふけったり、見知らぬ人とコンピューターでチャットするのを止めました。ベアトリス自身、自分が本当にそのようなことをしていたなどとは信じられない思いだったのです。その後のレオナードとの話しの中で、私は甲状腺機能亢進症のためにベアトリスの本当の性格が現れたのだとは考えないようにと言いました。甲状腺機能亢進症で隠れた欲求や隠れた性格が現れることはありません。それが引き金となり、感情や欲求、感覚の変化をきたすのです。甲状腺の機能障害は、他の多くの人でもそうであるように、ベアトリスの生活のもっとも個人的な面を変えてしまいました。

甲状腺の病気は重大な性的問題を突然引き起こしたり、その誘因となる場合があります。そしてそれがしばしば夫婦間の葛藤の源となって、夫婦関係の悪化をきたすことがあります。片方が甲状腺の病気に罹っている場合、そのような問題が夫婦どちらともが感じる感情的混乱をさらに悪化させるのです。

甲状腺の病気に罹っている患者のほとんどは、もっとも個人的な行動について医師と話すことはしませんし、時たま性生活が変った。というようなあいまいな言い方をする以外は、性的障害を話しに持ち出すことはめったにありません。性の問題は隠され、説明されないままです。それでも、それがよそよそしくなったり、重大な結婚生活上の問題の原因となりうるのです。甲状腺疾患患者が経験しているかもしれない性的困難について、医師が尋ねることはめったにありませんし、説明やカウンセリングを行うこともまずありません。性的な困難を経験している人はそれを隠すことが多く、またそれが甲状腺の病気のせいだとは思わないのです。極端な場合、性的機能障害が夫婦関係の重荷であり、配偶者間の争いの源となった時、その夫婦は心理学的カウンセリングを求めるかもしれません。中にはセックスセラピストに助けを求める人もいるでしょう。そうだとしても、性的機能障害のある甲状腺疾患患者の大多数は、甲状腺ホルモンバランスの乱れが治らない限り、そしてセラピストと配偶者が甲状腺の病気とその影響についてよく理解していない限り、心理療法でもセックスセラピーでも効果は期待できません。

甲状腺機能がどのように性生活を支配するのでしょうか?

性行動には、性的満足あるいはオルガスムに達するまで普通4つのステップまたは段階がありますが、そのそれぞれが甲状腺機能に影響されます。性的思考、接触、あるいは脳が性欲として感じる信号が脳のある部位に化学伝達物質の放出を引き起こします。これらの伝達物質が性的興味や幻想を高め、もっと親密になろうという気持ちにさせるのです。脳の化学作用が自律神経系を刺激します。それにより一連の身体反応起こります。皮膚はより敏感になり、呼吸や脈拍が速くなり、血液が生殖器に急激に流れ込むことなどです。この興奮期(あるいは応諾期)の長さは人により様々に異なります。刺激が続くにつれ、自律神経系によって生み出される身体反応は一層強まり、女性では外陰部が潤い、充血が起こります。膣口は狭まり、大陰唇は膨れ、クリトリスは引き寄せられ、恥骨に近づきます。男性では、自律神経反応により、血液がペニスに充血するため、勃起が起こります。

性的刺激と興奮に関わる脳内の化学作用は、甲状腺ホルモンレベルによって影響されます。それによりオルガスムの最高潮に達する快い身体─精神の反応が促されます。クライマックス時に、脳はオキシトシンというホルモンの血液中への放出を増加させます。それにより、生殖器、肛門、および子宮の筋肉が独りでにリズミカルな収縮を起こします。これらのオルガスム時の収縮は正常な甲状腺ホルモンレベルに依存します。オルガスムに達した後、弛緩期が起こります。女性では潤いと充血が引くのに数時間かかりますが、男性では射精直後にペニスの充血が引いて、もとのしぼんだ状態に戻ります。

甲状腺ホルモンは自律神経反応と性的満足につながる脳内化学物質の相互作用に直接影響を及ぼすだけでなく、性ホルモンレベルにも影響を与えます。男性では、甲状腺機能低下症がテストステロン(男性ホルモン)レベルの減少を起こすことがよくあり(1)、一方で甲状腺機能亢進症は男性ホルモンに対する女性ホルモンの比率を変化させ、そのためある種の女性ホルモンレベルが正常より高くなります(2)。女性では、甲状腺機能低下症によりエストロゲンとプロゲステロンのレベルが減少し、排卵が止まる原因となることがあります(3)。エストロゲンの欠乏は脳だけでなく、生殖器の潤いにも重大な影響を及ぼします。
甲状腺機能亢進症の女性では、血液中の男性ホルモン濃度が上昇し、エストロゲンレベルが正常のままか、あるいは減少する場合があります(4)。甲状腺ホルモン過剰により、一部の女性ではアンドロゲンレベルの増加と脳内化学作用に対する直接的影響が合わさって性欲が強まることがあります。事実、この同じアンドロゲンの増加がにきびや顔面の毛の成長、および毛嚢の寿命が短くなることによる頭髪の脱毛を起こすことがあります(5)

甲状腺ホルモンが脳や自律神経系、そして性ホルモンレベルに及ぼす様々な影響が甲状腺疾患患者がよく経験する多岐にわたる性的障害の原因となります。甲状腺ホルモンバランスの乱れは男性より女性の方にはるかに多いため、その性的機能への影響がより複雑になることが非常に多く、そのためこの章では主に女性の性的問題について述べることにします。

甲状腺機能低下症と性的エネルギーの低下

女性が甲状腺機能低下症になると、エストロゲンレベルが減少するのと甲状腺ホルモンレベルの低下が脳に及ぼす影響のため、セックスに対する興味が失せることがよくあります。欲求は次第に減り、最終的にはまったく消え失せてしまう場合もあります。甲状腺機能低下症の発病前には存在した健康的な幻想も次第に起こらなくなってきます。甲状腺機能低下症の女性のほとんどは以前ほどマスターベーションをしなくなる傾向がありますが、これも性欲が失せたことの反映です。

女性は配偶者あるいは誰とも性的関係を持ちたくないと思う場合があります。多くの女性で、性的な変化が甲状腺ホルモンバランスの乱れの主要症状となります。それが非常に目立つようになり、そのために女性がどこか悪いのではないかと婦人科の診察を受けることも多いのです。婦人科医はしばしば、興奮や潤いがないこととあいまって性交への欲求がないことをホルモンの変化あるいは年齢のどちらかのせいにしてしまいます。

甲状腺機能低下症の女性が経験する性的機能障害に関連したフラストレーションは、その変化に対処できないことから来るのです。自尊心に対する影響とその変化の理由を理解できないという事実がこれらのフラストレーションをさらにつのらせます。別のフラストレーションは、これが障害自体よりも女性の心を占めていると思われますが、不満足である配偶者と折り合いをつけなければならないということです。配偶者のどちらも問題が単に年のせい、あるいはホルモンやストレスのせいだと思ってしまう場合があります。

一方で、男性の配偶者は拒否されたとか、もはや欲求の対象にならないのだと思う人もいますが、理解を示す(あるいは少なくとも分かっているという印象を与える)人もおります。女性の方は自分の問題が相手とはまったく無関係なものであり、それを治そうとしているのだと安心させる場合もあるでしょう。婦人科医にそのような状況を訴える甲状腺機能低下症の女性は性的機能障害を改善するためにエストロゲンの投与を受けることもありますが、多くは無駄に終わります。配偶者間のフラストレーションと摩擦はエスカレートしていきます。友人がその女性に争いを減らすために、配偶者が望んだらその気があるかどうかに関わりなくセックスしさえすればよいのだとアドバイスをするかもしれません。しかし、女性がその気にならなければ、セックスなんかにわずらわされたくないと思うことが多いのです。

この問題の良い例がオリビアです。彼女は少なくとも2年前から甲状腺機能低下症に罹っておりました。彼女は「甲状腺機能低下症の時、誰にもそばに近付いて欲しくなかった」と言っています。また他の甲状腺機能低下症の女性は「いくら寝ても寝足りなくて、髪が抜け落ち、そして性欲がないというのは、若い結婚している女としては異常な事です。何かエッチな番組をテレビで見ても何ということもないし、何かおかしいと思うでしょう。そんなことにわずらわされたくないし、触られるのも嫌なんです。でもたぶんそれは自分の問題だし、彼にノーとは言いたくないんです。彼がかわいそうですから」

性的問題に寄与するもう一つのファクターは、甲状腺機能低下症の女性に多くある疲労です。仕事から帰宅するとすぐに横になって眠りたいのです。この疲労とその他の身体症状が甲状腺ホルモン欠乏の直接、間接の影響とあいまって、様々な活動から身を引き、他の人に対する興味も失せる結果を生じます。「自分がとても惨めに感じます」と甲状腺機能低下症の診断を受けたばかりのアンは言いました。「疲れて、気分が悪く、体のあちこちが痛むんです。関係を持つなんてこの世でいちばんしたくないことです。誰かマッサージをしてくれて、ゆっくり寝かせてくれる人が欲しいんです」

体重増加も自尊心の低下と体のイメージの知覚を歪めることにつながります。これがさらに著しい性的活動の減少の一因となります。メラニーは結婚してまだ2年しか経っていませんが、甲状腺機能低下症のために夫とセックスしないですむ言い訳を捜すところまで行ってしまいました。彼女は他の多くの甲状腺機能低下症患者と同じように、体の外観にひどく傷付いていました。彼女はこう言いました。「これだけ太り、膨れ上がってしまってまるでひき蛙のように見えるのに自分のことをセクシーだなんてとても思えません。この病気の身体的な面が精神的に大変な悪影響を与えます。自分の楽しみやそうしようとすることにさえそれが邪魔をするようになるんです」

ただ相手を喜ばせるためにだけ甲状腺機能低下症の女性が性行為に関わる場合、以前に比べ鈍くはなっているものの、幾分かその気が起こることがあります。でも、正常な性的興奮状態に達するのが困難な場合があります。女性は前技の間に、普通10分から20分以内に興奮の極に達するのですが、その女性が甲状腺機能低下症であれば1時間前技をしてもそのレベルに達しないことがあります。多くの甲状腺機能低下症の女性は努力を続けますが、疲れきっているのとそれほど長い間前技をしても適切なレベルの性的興奮状態に達しないことから、あきらめて性行動を中止してしまうことがよくあります。

ニコルは最初に私の診察室に来た時、甲状腺機能低下症の症状に苦しんでいました。
そしてこの問題を次のように述べたのです。

私は今まで真から性欲が強い人間ではありませんでした。1週間か2週間に1度のセックスで十分でした。結婚した当初はもっとたくさんセックスしましたけど、子どもが生まれたのと落ち着いてきたのとで、大体週に1回程になったと思います。昨年は、まったくそれに興味が持てませんでした。だから寂しいとも必要だとも思いません。たぶん、2ヶ月に1度くらいセックスしたでしょうか。興奮するまでに前よりも時間がかかるようになりました。時々あなたはこんなことする資格があるのとさえ考えることがあります。ますます時間がかかるようになり、さらに努力が必要になりました。

甲状腺ホルモンはクリトリスの充血と膣を潤滑にするに必要な女性の反応に欠かせないものであるため、正常な性行為ではこの状態に達しないことがあります。膣の乾燥は特に性交時の女性に痛みを起こすことがあります。そのため、欲求の欠如に加え、この痛みがセックスを避けるもう一つの理由になります。痛みを恐れることも不安の源となり、それがセックスを楽しむ程リラックスできなくしてしまいます。性交時の痛みと喜びのなさが甲状腺機能低下症の女性の大きな精神的重荷となり、しばしば性的接触を避ける方を好むようになります。相手の要求に応えて性的な活動を続けている女性は、オルガスムに達しないことが多く、また達したとしてもほんの短い間です。甲状腺機能低下症になる前は普通にあったとしても、何度もオルガスムに達することはまずありません。

不活発な甲状腺の治療を受けている若い女性によると

セックスはもはや楽しめるものではありません。膣の乾燥と性交時のひどい痛みは恐ろしい経験となりました。甲状腺が治って来た時、私は前よりセクシーだと思えるようになりました。実際にセックスしたいと思うようになったのです。性交中の痛みも消えました。甲状腺のコントロールがうまく行っていない時、甲状腺ホルモンレベルが低すぎる時ですが、それは考えたくもないことでした。それから、セックスが仕事のようになり、そのため大変な不快感を覚えました。

多くの夫婦が同じ問題に直面しています。痛みを伴う性交が性生活の喜びの大変な障害となっています。調査では、全女性の15から30%がセックスの時に痛みや身体的不快感を経験していることが示されています(6)。その原因には高吸湿性タンポンや避妊用発泡剤あるいはクリームに対するアレルギー、そして膣の感染症などが含まれますが、婦人科医が膣や腹部にはっきりした異常を認めない時に、単に心理療法を勧められるだけという場合も多いのです。それでも、この問題の原因と思われるものがいくつかありますが、それには不適切な性的興奮や潤いにつながる甲状腺ホルモンバランスの乱れが含まれます。

性交時の痛みや不快感が硬化性苔癬や非常なかゆみを起こす生殖器皮膚の炎症により起こることもあります。最近、ある医師がこの皮膚病に罹っている女性のほぼ50%に甲状腺の病気があることを報告しました(7)。医師は硬化性苔癬をハイドロコーチゾン軟膏または2%テストステロン軟膏を1日2回塗布する治療を2から3ヶ月間行います。硬化性苔癬は陰唇部皮膚(膣の外側)上に斑状の白い病変として現れます。この病変は時に下肢の間から肛門部まで広がることがあります。治療で甲状腺ホルモンバランスの乱れが治った後でも、性交時の痛みと不快感が続く場合、婦人科医に硬化性苔癬がないか診てもらってください。見逃されることが多いのですが、もう一つの乾燥の原因はシェーグレン症候群です。これは自己免疫疾患で、甲状腺疾患患者の相当数に起こります。これにより目や口、および膣の乾燥が起こります(《第14章》参照)。

うつ病が問題を悪化させる場合

女性がうつ病で甲状腺機能低下症の場合、セックスにまったく興味がなくなり、忌み嫌うようになることさえあります。これらの女性は甲状腺ホルモン治療で多くの症状が改善されるでしょうが、性的欲求の欠如がいつまでも続くことがあります。甲状腺機能低下症が治った後もなごりのうつ病が残っていたある患者がこう言いました。「薬の量を増やしてからも性的に興奮しやすくなったとは思いません。前よりエネルギッシュになったし、疲れなくなりました。寝る時間も短くなりました。PMS(月経前症候群)症状も軽くなりました。前よりせっかちになったと思います。でもセックスがしたいかということとなると、それには変化がありません。まだ何の興味も湧かないのです」性欲の欠如が続く場合、それはおそらくうつ病か、長い間に夫婦間に生じた溝のためだと思われます。

ダナは28歳で、甲状腺ホルモンバランスの乱れの後遺症に苦しんでいますが、こう話してくれました。「こんなになってしまう前はセックスしたいという欲求があったのを覚えています。そして私達はとても性に関して積極的でした。今では、甲状腺の薬を飲んでいる時でさえ、そのような欲求はほとんどなくなってしまいました。もちろん欲求はありますが、それは非常に希で、しかも前のようではありません。私は主人と一緒にいて、話したいんです。私が主に望んでいるのはセックス抜きでただ彼と仲良くしたいということです」

愛情と思いやりに満ちた関係を維持しようと一生懸命に努力するのは甲状腺機能低下症に罹っている人の間に普通に見られることです。夫は、彼の妻がセックスをしようという欲求を失っていてもそのことがわからない場合がありますが、それでもまだ妻は夫のことを愛しているのです。夫が献身的であれば、女性は彼を喜ばせようとするでしょう。しかし、それが無駄に終わることが非常に多いのです。しかし、甲状腺ホルモンバランスの乱れから来る性的機能障害により、夫婦関係に深刻な破綻が生じることがあります。次のケースは甲状腺ホルモンバランスの乱れから来る性的機能障害と夫婦間のよそよそしさが、雪だるま式に膨らんでいき、その関係をだめにしてしまうかをはっきり見せてくれます。

結婚して最初の2年間、ベティーは幸福な夫婦関係にあり、性的にも非常に積極的でした。でもその後、彼女の甲状腺が不活発になり、そのために彼女が疲れ切って引きこもりがちになると、彼女の性的欲求は消えてしまいました。
彼女はこう言いました。

私達の親密さはどんどん失われていきました。私が彼のことを十分に構わないので、彼は怒りっぽくなりました。また彼は仕事のためにまいってもおりました。私は夢想することを止めました。あまりにも疲れていたのでどうでもよかったのです。セックスは痛みを伴うことが多く、不快な仕事となりました。急に私達は離れていくように思えました。私は引きこもりがちで、いらいらしていました。そして彼は仕事のせいでストレスの罠に落ち込んでいたのです。私達は前のように親しくありませんでした。

2人の間の距離がどんどん開くにつれ、ベティーの夫は町の外に出張する口実を見付けるようになりました。彼女はただ一人でいたいと思っていましたし、甲状腺機能低下症のためにうつ病になっていました。

ベティーは「私はますます一人ぼっちになりました。仕事から帰るとすぐに寝ました。主人が出張から帰ってくると、私に浮気をしたと告げ、私と結婚したのは間違いだったというのです。また、これ以上私と暮らすのは我慢できないとも言いました」

ベティーとご主人にとって残念なことは、ベティーの甲状腺機能低下症の診断がつくまで3年もかかったことです。

甲状腺機能亢進症の女性の激しい性欲とその他の性的問題

甲状腺機能亢進症が性生活に及ぼす影響はより複雑で、多岐にわたります。多くの甲状腺機能亢進症の女性は甲状腺機能低下症の女性と同じような反応をします。徐々にセックスに対する興味を失いますが、これは支離滅裂な思考に圧倒されてしまうのとうつ病の特徴である快楽への無関心の両方によるものです。一部の甲状腺機能亢進症の女性にはよりひどいうつ病が出ます。そして、それに伴う身体的疲労と疲れがセックスに対する興味を失わせる原因と思われます。

私がロビンを最初に診たのは、彼女が甲状腺機能亢進症で紹介されてきた時でした。彼女は結婚して3年になり、夫と別居したばかりでした。その夫は離婚の訴えを起こしていました。
彼女が言うには

私は自分の性欲がなくなっているのに気がつきました。それが最初に起こったことでした。私達は半年前に結婚し、それはとても素晴らしいことでした。私達はすごく素敵なセックスをしていました。それから突然、私には何の興味もなくなってしまったのです。興奮するまでに際限ない時間がかかりました。それでもかつて自分が完全にリラックスできたのですからまだその気になることはできるだろうと思っていました。でも夫は私がもはや彼のことを愛していないのだと思ったのです。私はそうではないと説明しようとしました。私は誰も他に興味のある人はいないし、ただ性欲がなくなっただけなのだと言いましたが、彼にはその理由がわかりませんでしたし、私もどうしてなのかわかってもらうことができませんでした。

彼女の夫は私立探偵を雇い、何ヶ月もロビンを尾行させました。探偵が結局何も見付けられなかった時、ロビンの夫はあきらめてしまいました。それから彼は望むものを与えてくれる女性と出会いました。何ヶ月もの間、ロビンは自分の性欲に起こっていることをコントロールできないことに罪悪感を抱き続けていました。後で、ロビンの活発すぎる甲状腺が治った時、彼女が正常な性生活を取り戻すためのカウンセリングと心理療法に何ヶ月もかかりました。

ジュリアは結婚した年に甲状腺機能亢進症になったもう一人の若い女性です。
彼女はこう言いました。

私は自分がセックスに興味がなかったのは、疲労に関係していたと思います。性的興味は私に他にたくさんの甲状腺機能亢進症の症状が出始めた時に失せ始めました。私はただ話しができるよう誰か他の人にいてもらいたかったのです。特に誰か一緒に苦しみを分かち合える人が欲しかったんです。私が診断を受けた時、私がかかっていた医師は非常にオープンで、セックスへの影響以外はうまく行かない可能性があることを何もかも話してくれました。

甲状腺機能亢進症の女性の不安や気分の変動がひどくなると、彼女と配偶者の間によそよそしさが生じることがよくあります。そしてそれが性的関係を持つことを避ける原因となる場合があります。気分の変わり易さと自尊心の問題からコミュニケーションをとり、集中することが難しくなります。セックスについて考え、興味を覚えるかもしれません。そして性的夢想と欲求に襲われるかもしれませんが、それは不安の波に飲み込まれるようにすぐさま消え失せてしまいます。

しかし、多くの甲状腺機能亢進症の女性は性欲を失いません。興奮期間は影響を受けず、あるいは短くなることさえあります。潤って、充血状態に達するまでにかかる時間は短くなりますが、性交時に甲状腺機能低下症の女性が経験するのと同じようなひどい痛みを経験することがあります。時に、その痛みが膣の他の場所の不随意な痙攣により引き起こされることがあります(膣痙攣)。性交時に痛みがあるのを恐れることで、甲状腺機能亢進症の女性に著しい不安が生じることがあります。そのような人は性交をまったく避けようとするでしょう。

甲状腺機能亢進症が軽い躁状態(軽躁病)を引き起こすことがあります。これは長い間続くことがあります。軽躁病の状態では、性欲が増す場合があります。そして性的な考えに取り付かれてしまう場合もあります。甲状腺機能亢進症の女性の中には、軽躁病の症状や激しい性欲が出る前であっても膣より多量の潤滑液が分泌されるようになる人もいます。

これがアレキサンドラに起こったことですが、彼女は日中でさえどうしてこれほど潤滑液が出るのかがわかりませんでした。最初彼女はイースト菌に感染したのではと考えました。
彼女が言うには

私は婦人科医に電話して、日中でも粘液の量が異常に多く、その理由がわからないことを話しました。先生は分泌液の塗抹標本を調べてくれ、何もかもきれいだと言いました。私は感染症を心配していましたが、先生は粘液が透明だから何も悪くないと言いました。その頃、私はすぐに濡れるようになっていました。でもオルガスムに達するまでの時間が長くかかるようになっていました。私にはよかったのですが、夫には大変なストレスでした。

甲状腺ホルモンの過剰が、性的興味を司る脳内化学物質に直接影響する可能性があります。軽躁状態の結果、性欲の増大が甲状腺機能亢進症の女性の関心の的となることがあります。

この状況はカレンのケースにはっきり見ることができます。彼女は38歳の主婦で、結婚後12年経って、突然、性的興味と夢想の高まりを経験しました。
彼女の言葉によると

私は非常に外観を気にするようになりました。私はその時太り過ぎていました。私は性的夢想にふけるようになりました。私はよりエッチな本を読み始めました。それは何だか突然起きたように思えました。何時間もエッチな本を読み、横たわって夢想にふけっていました。私の夢想の中には夫は出てきませんでしたし、私が知っているどの男も出てきませんでした。ただ誰か─見知らぬ人を夢想していました。

その時、私は家に居て働いていませんでした。1日数回マスターベーションをしていました。私はテレビのショーで見た男性と関係を発展させていく夢を見始めました。また、甲状腺機能亢進症の他の症状も出始めました。脈が速くなり、暑く感じ、時に震えていることがありました。私は前よりも早口になり、間違いなく大きな声で話していました。

甲状腺ホルモンの過剰で誘発される軽躁状態は、躁鬱病の高揚期に見られるものと同じです。その時に女性は普通、よりセックスを求め、性的な思考に取り付かれるようになります。性欲の増大が他の高揚症状を伴わずに起こることはめったにありません。女性は自分の体や見かけに一層興味を持つようになります。新しい、贅沢な服に通常では考えられないほどの金額を費やしたり、整形手術をもくろむことも多く、時には手術を受けることを決心することさえあります。

甲状腺機能亢進症からくるメリー・リンの高揚期は、彼女がバセドウ病の診断を受けるまで1年ほど続きました。彼女は結婚して10年になり、子どもが4人おりました。
彼女はこう話してくれました。

私の性生活は突然、昔していたことに比べ、まったく違ったものになってしまいました。私はいつもボスになり、セックスを誘うのは私の方でした。夫にその気がない場合、私は本当に腹が立ちました。

でも奇妙なのは、以前は思いもしなかった性的なことを考えるようになったことです。私はそのようなことを言われもしないのに自分のものにしていました。私の友人は皆クリスチャンで、性的なことを話し合うことはありませんでした。そしておそらくそれがいちばん夫を混乱させたことだと思います。彼は私にこう聞きました。「一体どこでそんなこと仕入れてきたんだい」

かなり長い間付き合ってきた女性のそのような劇的な変化を目の当たりにした配偶者のほとんどは、疑いを持つようになり、完全に混乱してしまいます。メリー・リンの夫であるエリックは、妻の性欲の亢進が浮気した結果であると考えました。彼女はこう言いました。「彼がこのことをわかるだろうとは思いません。彼はまだとても混乱しています。時々、私達はそのことについて話し、彼は私に説明させようとするんですが、いくら一生懸命やっても、ちゃんと答えたり、どのようにしてバセドウ病がこのような過度の性欲亢進を起こすことがあるのかということが本当に理解できるとは思えません」

メリー・リンの性格の変化は軽躁病の記述に一致するものです。彼女はバセドウ病の発病前も、また治療後もそのようにセックスに取り付かれるようなことはありませんでした。実際、メリー・リンの軽躁病的行動はあらゆる面で彼女らしくないものでした。間違いなく、性的症状の発現は普通ではありませんが、彼女は変った品も買っており、自分の子どもに異なった種類の注意を向けており、また両親とも違った種類の関係を持ち始めておりました。
彼女はこう記しています。

私は今まだ回復しつつあるところです。今ではそんなことはおかしいと思っています。私らしくないのでおかしいのです。ちょっと決まり悪くさえ感じます。今では、何もかも私が思い出せる限り、本当に正常に戻ってきています。私はまた体重が増えました。着ることのできない洋服が山程あります。ランジェリーでさえ─きつすぎてはいりません。他の人にあげるにはちょっと恥ずかしすぎます。私の性欲はバセドウ病になる前の状態に落ち着いてきました。

男性の性的問題

この章の最初で言ったように、甲状腺ホルモンバランスの乱れは男性より女性の方にずっと多く、それが女性の性的機能に及ぼす影響ははるかに複雑なことが多いのです。それでも、甲状腺ホルモンバランスの乱れのある男性も性的行動に著しい変化をきたすことがあります。甲状腺機能低下症の男性は、性欲がなくなり、性的夢想が鈍ることがよくあります。興奮したり、刺激を受けた場合でも、勃起しないことがあります。甲状腺機能低下症が重篤な場合、勃起は一過性のもので、性行為の中断を引き起こすことがあります。女性に見られるように、疲労とうつ病がセックスに対する興味を失わせ、配偶者の性的欲求を満たすことができなくなります。

甲状腺機能亢進症の男性は相手を興奮させるための前技を行うだけの忍耐力がなくなります。身体的な行為に取り付かれるようになり、性交前に相手が適切なレベルの興奮状態に達するまで待てないことがあります。
ある甲状腺機能亢進症の男性の妻はこうこぼしておりました。

それはいきなりで、それが終わるとお終いでした。以前、私達はたっぷり前技をして、終わった後もベッドに腰掛けて何時間も話したものでした。それから、数ヶ月前にジョンが甲状腺機能亢進症になってからというもの、彼はほとんど毎日セックスをしたがりました。1分か2分程キスをしただけで、すぐに交わりたいという風でした。私はまだ準備ができていなかったのにです。それにはいらいらしましたが、拒絶することはできませんでした。私はすぐに腹を立てるようになりました。

甲状腺機能亢進症の男性はセックスの感情的側面をも失うことがあります。セックスは単なる身体的活動になります。リチャードと彼の妻のどちらも彼の性生活の変化に気付きました。
リチャードが言うには

最初、セックスは非常に大事なものでした。単なるセックスではなく、愛情の交換だったのです。そして確かに違っていました。それから後で、セックスは単なるセックスになりました。私達はただ何もしない時期がありました。以前は、週2〜3回はセックスをしていたんですが、たぶん3週間に1度くらいになったと思います。後では、欲求がなくなってしまいました。バセドウ病の不思議なところは、周囲のものすべてに感情的に無頓着になってしまうことです。エネルギーがありあまって、四六時中何か体を動かしていなきゃと思うのです。

他の男性は、朝セックスに興味が湧きますが、夕方になると身体的に疲れきってしまい、セックスしようという欲求も、また行為を行うだけの元気もなくなります。ある男性が言っていましたが「朝、自分はスーパーマンみたいですが、寝る頃にはものすごく疲れているのです」

甲状腺機能亢進症の男性は正常なオルガスムも得られなくなります。
ある甲状腺機能亢進症の男性が言うには

以前、セックスはもっとずっと長く続いていましたし、たぶん1回以上していた時もあったと思います。今ではたった1回だけで、時にはそれさえだめな時があります。バセドウ病に罹っていると、そうあるべきものの100%を目指して元気よく取り掛かるのですが、突然マイナス20%になってしまうのです。ひどく疲れてしまうのです。夜8時から10時の間はいつもぼろぼろです。まるで持っているエネルギーをすべて使い果たしたようで、何も残らないのです。

よりよい性生活に向けて

理論的には、女性の甲状腺ホルモンバランスの乱れが治れば、セックスへの無関心と回避はなくなるはずで、また性的夢想と正常な欲求が戻ってくるはずです。でも残念ながら、全部がそうというわけではありません。その場合、患者は性生活の変化が甲状腺以外の原因のためだと信じることがあります。ある者は年のせいにし、他の者はセックスへの興味がなくなったことに戸惑うばかりです。《第2章》で記したごとく、甲状腺ホルモンバランスの乱れは大きなストレスの源となる出来事です。女性の中にはバランスの乱れが治った後も、まだうつ病やあるいは外傷後ストレス症候群に悩まされている人もおります。うつ病や外傷後ストレス症候群はそれ自体、セックスへの興味を失わせ得るものです。2人の間が疎遠になってしまえば、何事もなかったように元どおりの生活を取り戻すことは難しいでしょう。セックスへの無関心が続けば、性的関係を結ぶのはさらに難しくなります。それでも、徐々に興奮を高めるテクニックを使い、どのようにセックスを楽しむかということを再度学び直すことは非常に効果があります。

定期的に刺激を加えたり愛撫したりする機会を持って、練習する必要があります。最初は実際に性交は行いません。このようなテクニックの一部はセックスの贈り物:性の満足を得るための手引き(8)のような本に載っています。相手にあなたの充血ゾーンを再発見してもらいましょう。あなたの脳が性的興奮を引き起こす刺激に反応するようトレーニングする必要があります。

甲状腺機能低下症が治った後も、性的問題やうつ病が続いている場合、サイロキシンによる治療をT4/T3の組み合わせによる治療に変えることを考えてみてください(《第17章》参照)。これはうつ病がなかなか治らず、セックスへの興味が持てない多くの女性に効果があります。抗うつ剤も飲んでいる場合、この薬が原因でセックスが困難になることがあるのかどうか担当医に聞いてください。抗うつ剤のためにセックスに困難を覚える男性はヨヒンビン(ヨーコン〈注釈:この薬剤は日本では入手できない。しかし、最近、同じような作用のバイアグラが発売された〉)を飲むと効果がある場合があります。この薬はペニスの静脈系に作用し、勃起を誘発し、それを保ちます。閉経後であれば、少量のテストステロンを使うことを医師に相談してください。これはうつ病や頭痛、エネルギーの欠如を緩和し、性欲が戻ります(9)。ただし、多少毛深くなることはあります。また、エストロゲン補充療法を最適なものにするよう調べてみてください。エストラテスト、これはエストロゲンと少量のテストステロンを組み合わせたホルモン製剤ですが、セックス上の困難が続く更年期女性に好んで処方される治療の一つです〈注釈:日本では、商品名ダイホルモン、プリモジアンとして発売されています〉

甲状腺ホルモンバランスの乱れが治った後も、気持ちが離れ、なかなか解決しない性的問題に悩んでいる場合、心理療法士またはセックスセラピストに相談するのが役立つ場合があります。

セックスセラピストのリストを入手するには、下記に連絡してください〈注釈:これは英語でのコンタクトになります〉

アメリカセックスエデュケーター、カウンセラー、およびセラピストの会
P.O. Box 238
Mt. Vernon, IA 52314

この章で述べた甲状腺ホルモンバランスの乱れの性的影響はきわめてありふれたものです。多くの夫婦で、これらが夫婦関係の問題の原因となっています。それ以外の夫婦では、これらが甲状腺疾患患者の行動や性格の変化により引き起こされる夫婦関係の問題の触媒となっています。これは大きな疑問にみられる多くの側面の一つです。「これは私の脳のせい、それとも甲状腺のせい?」甲状腺疾患患者とその配偶者はこの問題が甲状腺ホルモンバランスの乱れが治った後も続いている場合、それを自分達で、あるいはセックスセラピストの助けを借りて解決しなければなりません。

覚えておくべき重要なポイント

  • 正常な性欲と性的満足に導く正常な身体反応のためには、最適な甲状腺ホルモンレベルが絶対に必要です。
  • 活発すぎる甲状腺のため、性交時の痛みやセックスに対する興味の喪失が起こることがあり、あるいはそれが原因で過剰な性欲や思いやりのない行動が出ることがあります。
  • 不活発な甲状腺のため、性欲が鈍り、潤いがなくなり、セックス時の痛みが起こることがあります。
  • 甲状腺ホルモンバランスの乱れが治った後も、性的な問題が続く可能性があります。あなたと配偶者はこの影響について学び、オープンに話し合い、心理的問題やよそよそしさが消えない場合はセックスセラピストの助けを求める必要があります。

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