第13章:治った…そして今は!

甲状腺の病気の診断と治療を受けることがまず一方にありますが、良好な健康状態と体内の甲状腺ホルモンのバランスを保つことは、それとはまたまったく別のことです。いざ甲状腺疾患患者が健康な状態を保つということになると、いくつか越えなければならないハードルがあります。まず最初に、この《第12章》で述べた薬を飲むことです。2番目は加齢です。甲状腺ホルモンの必要量は年を取るにつれて変化します。普通は、年齢が高くなるにしたがってホルモンの必要量が減ってきます。薬を飲み続けることに加え、定期的に医師の診察を受けること、そして投与量をモニターしてもらうということなど、これらすべてが欠かせません。3番目のハードルは、栄養です。誰にとっても、健康を保つために栄養状態をよくするのは非常に大切なことなのですが、甲状腺疾患患者は栄養不良に普通の人より敏感です。これは栄養が悪いと病気が悪化する恐れがあるためです。

甲状腺外来患者

あなたの甲状腺疾患の長い物語の中で、例え生涯甲状腺の薬を飲むようになったとしても、事実上“治った”という時期がやってきます。とりわけ大事なことは、甲状腺疾患患者から甲状腺外来患者になるということです。甲状腺の病気に対する様々な治療を受けるため、2〜3週おきに医師の診察を受ける代りに、この時点で甲状腺の病気の治療がうまくいき、甲状腺ホルモン補充を通じて甲状腺ホルモンのバランスもとれるようになっています。後は、ただ6ヶ月毎または年1回医師に甲状腺ホルモンレベルをチェックしてもらい、薬の量をモニターしてもらうだけでよいのです。これは、すでにある甲状腺の病気を悪化させたり、投薬治療に悪影響を与えるような健康上の問題が生じたり、あるいは甲状腺ホルモン剤のバランスがうまくとれないというようなことがない限り変わることはありません。基本的には、健康になるにつれ、治療を受ける患者から外来患者へと卒業するということなのです。

もし、治療を断ったら?

甲状腺の病気に罹っているほとんどの人は、治療を受けなければただ悪くなるだけです。実際に、100年前は、循環器不全を起こすため、甲状腺機能亢進症や機能低下症は命に関わる病気だったのです。最初のケースでは、心臓が働き過ぎになります。2番目のケースでは心臓の筋肉がたるんでちゃんと動けなくなるために、やはり心不全が起こります。

《第4章》でも述べましたが、甲状腺炎の一部のケースは治療せずに自然に治ります。多くのケースでは、バセドウ病による甲状腺機能亢進症は15年後に燃え尽きてしまいますが、治療を受けなければ体はめちゃくちゃになってしまうでしょう。そして、非常に希ですが、バセドウ病による軽度の甲状腺機能亢進症が治療せずに自然に寛解してしまうこともあります。

治療を拒否することが、治す方法がない様々な慢性疾患で流行ってきております。例えば、不妊の多くのケースでは、この病気が生命を脅かすものではないため、人は治療を追い求めることはしないと決断します。これはただ、生物学的に子どもが持てないというだけのことです。末期がんまたはそれ以外の末期の疾患では、多くの人がほんの数ヶ月延命するだけのために生活の質を犠牲にすることはないという結論を出します。甲状腺疾患はかならずと言ってよいほど治療がうまくいくため、治療を拒否するだけの正当な理由はないと思われます。

最後に、少なからぬ数の甲状腺疾患患者が、Wilson症候群という症候群に苦しむことになると信じているため、従来の治療法を拒否することがあります。これはフロリダ州オーランドのWilson博士が考え出した実在しない病気です。彼が主張するT3の変換不良による代謝速度の低下により起こるというこの症候群には科学的根拠がないのです。この場合、彼はT4の代りにT3で治療するように勧めています。Wilson症候群と診断された人は誰でも、内分泌病専門医による治療を求めなければなりません。

加齢

甲状腺疾患を10代の終わりか、20代の始めに発病した人は、30歳に近づくにつれ、投薬量が変わることになっても驚いてはなりません。仕事や家庭で責任が重くなってくるにつれ、ストレスレベルも上がってきますし、妊娠を計画している女性はもっと頻繁にモニターしてもらう必要があります。甲状腺の病気が30代に起こった場合、ストレスか妊娠が発病の最初のきっかけとなったか、ある種のストレスまたは妊娠のため、投薬量を合わせてもらう必要があるかのどちらかです。その後、40代に向かう時に、投薬量を合わせてもらう必要があるかもしれません。この時期までにもっと生活が安定して落ち着いている人もいるでしょうし、また仕事や生活の変化(離婚、再婚など)で新たな生活を始め人もいるでしょう。

40代に甲状腺の病気を発病した場合、50歳に近づくにつれ、投薬量をもっと頻繁に合わせてもらうことが必要になるかもしれません。更年期に入りつつある女性は甲状腺ホルモンのレベルにさらに注意を払ってもらう必要がありますが、これは骨粗鬆症が心配であるのとその他の年齢に関連した健康問題が生じたり、あるいは甲状腺ホルモンレベルに影響を与えたりすることがあるからです。例えば、喫煙や貧弱な食餌、そして運動不足などは心拍やコレステロールのレベルなど健康全体に影響を及ぼすことがあります。これらのことすべてが甲状腺ホルモンレベルに影響してくることがあるのです。50代および60代始めに甲状腺疾患を発病した場合、これまでに健康上の問題はすべて出尽くしている可能性が高いのです。言い換えれば、高血圧や骨粗鬆症、高コレステロール、狭心症など、他の病気がすでに出てきているだろうということです。この時点で、甲状腺ホルモンのレベルは、他に飲んでいる薬や何年もかけて出てきた他の健康問題に応じて設定されることになります。女性であれば、ちょうど更年期真っ只中であると思われます。そして、エストロゲンレベルのバランスもとることになるでしょう。

65歳以降の甲状腺

65歳以降に初めて甲状腺の病気になる人がたくさんおります。いくつかの研究で、甲状腺疾患が診断されずに見過ごされることの多い、まさに高齢者の病気であることがわかっております。65歳以上の集団では、甲状腺機能低下症が甲状腺機能亢進症の2倍であり、ある研究では65歳以上の人の4%もが未診断の甲状腺機能低下症に罹っている一方で、未診断の甲状腺機能亢進症は2%であることが示されています。無症候性甲状腺機能低下症(《第2章》参照)には、一般集団では5%、60歳以上の全女性のおおよそ15%が罹っております。治療しないままであれば、無症候性甲状腺機能低下症は毎年5から20%の割合で、重症の甲状腺機能低下症になりますが、その症状が他の症状と紛らわしかったり、あるいは老化により悪化してきます。あなたがこの年齢グループに入っており、甲状腺の病気になったばかりで、女性ということになれば、この確率が高くなります。女性は男性より長生きする傾向があります。しかし、医師にとっては65歳以上の女性の甲状腺疾患の診断は難しいのです。というのは、医師が高齢の女性の甲状腺を触診で触れるのが難しいためですその年齢に達するまでに女性の甲状腺は下に下がってきて、胸や胸骨に隠れて触診がしにくくなります。事実、高齢女性で甲状腺を触れた場合は、異常でなんらかの甲状腺の病気を持っていることがわかります。この問題を解決するために、65歳以上の女性のほとんど(65歳以上の女性はほぼ間違いなく)にルーチンに血清TSHレベルのスクリーニングを行います。65歳以降に甲状腺の病気になった人は、病気の種類にもよりますが、他の人と同じように治療が行われ、甲状腺ホルモン剤を飲むことになるでしょう。一般的に、甲状腺ホルモンの飲み過ぎを防ぐため、2〜3年毎に量を合わせることになる場合があります。

栄養

甲状腺ホルモンは、摂取した食物が適切に体全体に行き渡るのを助けます。甲状腺が活動し過ぎまたは不活発かのどちらかになれば、数多くの栄養上の懸念に対処したり、この問題に体を適応させやすくできるように、食餌内容を変える必要があります。しかし、いったん治療され、ホルモンレベルのバランスが取れれば、再度、正常な甲状腺ホルモンレベルに合わせた食習慣に戻し、甲状腺ホルモン剤の効き目をよくするため、たくさん食べる必要があります。

カロリー

健康な甲状腺を持つ平均的な成人は、正しいエネルギーのバランスと理想的な体重を保つために1日約1,680カロリーを必要とします。甲状腺機能亢進症であれば、同じエネルギーと体重を維持するためだけに、1日あたり160から200%カロリーを増やす必要があります。甲状腺機能亢進症があると、蛋白質や脂肪は正常に分解されません。脂肪の貯えが減り、トリグリセライド(中性脂肪)とコレステロールレベルが低下します。これはこのようなエネルギーのロスを埋め合わせるためにもっとたくさん食べなければならないということです。しかし、ハネムーンは終わるものです(ただし、時に甲状腺機能亢進症では本当の疲労が始まるため、あまり動かなくなって体重がわずかに増えることがあります)。“治って”、甲状腺ホルモンレベルが正常に戻ったら、カロリーを減らす必要があります。さもなければ、間違いなく太ってしまいます。
甲状腺機能低下症の場合、エネルギーと体重を維持するために平均的な人の半分のカロリーしか必要としません。ここでは、脂肪の貯えが増え、コレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)のレベルが上がります。このため、脂肪を減らさなければ心臓のトラブルを起こす恐れがあります。事実、摂取総カロリーを50から60%減らさないで、正常な場合と同じように食べれば太ります。甲状腺ホルモンレベルのバランスが取れれば、甲状腺機能低下症になる前と同じカロリー摂取量に増やすことができます。
甲状腺ホルモンレベルは年齢が進むにつれ、あるいは他の病気のために、時々変動することがあります。それに合わせて食べ方を変えることに慣れる必要があります。

甲状腺機能亢進症の食べ物

甲状腺ホルモンは口から腸まで消化器系全体に影響します。甲状腺は食物の吸収や排泄、胃液の分泌、および消化管の運動を助ける働きをします。甲状腺機能亢進症の場合、大変な食欲があるにもかかわらず、体重が減ったり、下痢をしたり、軽度の貧血を生じたり、またカルシウムが骨から失われたり、尿中に排泄されるために骨の喪失が起こったりすることがあります。女性ではこのようなカルシウムの喪失が骨粗鬆症につながることがあります。一般的に、閉経前の女性は1日1,000mgのカルシウムが必要ですが、閉経後の女性は1日1,200から1,500mgのカルシウムが必要です。しかし、食べるものをコントロールすることで、不快な症状を和らげやすくなります。もっと多くのバターやクリーム、チーズなどの乳製品を摂ることで、カルシウムの摂取量を増やします。このような食べ物は体重の維持にも役立ちます。ピーナッツバターやマヨネーズ、および動物性脂肪も同様に効果があります。下痢を減らすため、フルーツジュースや生の果物を減らします。ピーナッツバターは便を硬くするのにも効果があります。甲状腺機能亢進症の人は時に、突然、乳糖不耐症になることがあります。この状態になるとお腹にガスが溜まったり、他の不快感を味わいます。この場合には、牛乳を避けてカルシウムを他のものから補給しなくてはなりません。脂肪は、乳製品以外から補給する必要があります。
カフェインやアルコール、ニコチンは、心臓を刺激することがあるので摂らないようにしてください。また、ビタミン剤も取る必要があるかもしれません(ビタミンA,D,およびEは体内の脂肪に貯えられ、甲状腺機能亢進症の場合排泄されることがあります)。ホルモンのバランスが再び取れるようになったら、脂肪やカルシウムの摂取を減らす必要があります。

甲状腺機能低下症の食べ物

甲状腺機能低下症では食欲がなくなり(体重は増えるのですが)、便秘や顕性貧血、またカロチンやビタミンAがうまく分散されないため、皮膚が黄色くなったりということが起こります。たくさんの線維が必要です。「ふすま」や全粒粉のパン、豆類、ナッツ、種、果物、そして野菜など。便秘することが多いため、これらの食べ物は規則正しい便通の維持に効果があります。コレステロールやトリグリセライドを下げるため、コレステロールを多く含む食べ物の摂取を減らしてください。内臓や卵、えび、動物性脂肪、および乳製品などです。代りにコーンオイルやある種のマーガリンなどの植物性脂肪を補うようにします。体内に蓄積された様々なビタミンやミネラルを排泄させるため、水分をたくさん摂るようにしてください。また、毎日運動するようにしましょう。栄養士は15分のウォーキングを少なくとも1日3回、長期間続けることを勧めています。甲状腺ホルモンのバランスが取れたら、通常の食餌に戻すことができますが、甲状腺機能低下症のための“生活習慣”をそのまま続ける方がよいでしょう。なぜ運動を止めるのですか。いずれにせよ健康によいことでしょう。なぜ線維の摂取を止めるのですか。

“甲状腺機能正常状態”の栄養

甲状腺機能正常状態とは、この本の中で何度か述べておりますが、正常な甲状腺ホルモンレベルのことを言い表す言葉です。基本的に、いちばん健康的な食餌とは、甲状腺機能亢進症や機能低下症のための食餌と生活習慣の組み合わせです。言い換えれば、線維の多い食べ物だけでなく、カルシウムを多く含む食べ物をたくさん食べることです。できれば植物性脂肪を使うようにし、果物をたくさん食べてください。でも、カフェインやアルコールはそのまま続けて減らすようにしてください。そして、運動を忘れないようにしましょう。どちらの側の甲状腺の世界からも利を得るよう、常識を働かせましょう。甲状腺ホルモンレベルが正常に戻り、治療が完了したら、栄養士に予約を取ります。どの病院にも栄養士が雇われておりますし、あるいは家庭医も紹介してくれます。あなた自身の食生活やライフスタイルに合った現実的な食餌プランを栄養士と一緒にまとめてください。
健康的な食餌をすると消化器のホルモン吸収がよくなるため、合成ホルモン剤の効き目がよくなります。抗甲状腺剤で甲状腺機能亢進症の治療がうまく行き、甲状腺ホルモン剤をまったく飲んでいないのであれば、甲状腺機能亢進症再発の引き金となる恐れのあるヨードを多く含む食べ物は避けるようにしてください〈注釈:ヨード摂取の多い日本では当てはまりません〉。ヨード化塩、海産物、ケルプ、《第12章》に挙げた様々な薬またはビタミン剤などです。良識ある食餌となるよう栄養士にチェックしてもらいましょう。

食餌中の脂肪を減らす

上手に食べて、今日も健康でいたいというのはまったく当然のことです。それは私共のほとんどにとって、食餌に何らかの変化を加えるということを意味します。低脂肪食を食べ、運動する女性は心臓病や卒中になる割合がはるかに低いのです。
上手に食べるということは、主に脂肪を減らし、果物をもっとたくさん食べ、あらゆる色の野菜を食べ、線維を摂るために穀類をたくさん食べるということです。

よい脂肪と悪い脂肪

食餌で摂る脂肪は西洋式の食餌の中で、飛びぬけて害の多い要素です。これには肉や乳製品、および植物性脂肪が含まれます。他の脂肪源としては、ココナッツ(脂肪分60%)、ピーナッツ(脂肪分78%)、そしてアボガド(脂肪分82%)があります。最新の理論では、全カロリーの20%を脂肪から摂るだけで十分であると考えられています。しかし、よい脂肪と悪い脂肪の違いはなかなかわかりづらいものです。でも、違うのです。
例えば、オリーブオイルはよい脂肪です。これは単鎖非飽和脂肪で、血液中の低密度脂質(LDL)を減らす傾向があります。LDLは“悪玉”コレステロールとしても知られております。LDLが減ると、善玉コレステロールである高密度脂質(HDL)が増加します。
オメガ-3油は主に脂肪の多い魚に見出されるものですが、心臓によいことが証明されており、また抗腫瘍作用にも関係しているのではないかと思われています。この種の油を含む魚は鮭(天然物のみ。養殖物はだめ)、サバ、銀ダラ、ホワイトフィッシュ(コクチマス科の魚)、ニシン、イワシなどがあります。明らかに、体に良いものですからこれらの魚を頻繁に食べるようにしなければなりません。
高品質のごま油やコーンオイルもよい調理油と考えられています。ごま油は日本食の中にも入っています。

固まった証拠

悪い脂肪を見分けるのにいちばん良い方法は、室温でどれくらい固まったままであるかを見ることです。例えばラードやバター、マーガリン、そして固形植物性ショートニングのようなものは非常に悪い脂肪です。これらは飽和脂肪をたくさん含んでおり、避けるべきです。事実、脂肪が動脈を通る時には、摂取する前の脂肪の見かけ通りの形になっています。したがって、低カロリーのマーガリンや固形の植物性ショートニングに心をそそられても、だまされてはいけません。循環器病と関連のある転移脂肪酸を含んでいるので、普通のバターやラードよりよいということはないのです。転移脂肪酸は水素添加プロセスを経て作られるものです(これがいろんな油を固形にするものです)。

飽和脂肪

ここに飽和脂肪の定義を述べます。体にコレステロールを作らせるよう刺激するものすべてです。これはコレステロール刺激剤を飲むようなもので、自然にコレステロールを多く含む食べ物より悪いのです。飽和脂肪を多く含む食べ物にはチョコレート、トロピカルオイル(これがココナッツオイルを使ったポップコーンがよくないという理由です)、そしてオリーブオイルとキャノーラオイル(aka菜種油)以外の液体油があります。オリーブオイルとキャノーラオイルは飽和脂肪を含んでいますが、発煙温度が他の液体油より高く、そのことが脂肪を減らしやくします。

現代のミルク

北アメリカではたくさんのミルクが消費されています。アメリカでは、1年間に1人あたり約350ポンド(158キロ)のミルクを消費しています。これは大体72ガロン(272リットル)分のミルクに相当します。これは1頭の牛から取れるミルクを2人で飲んでいる計算になります。しかし、加熱工程や均質化、滅菌、ビタミンDやホルモン、抗生物質、および他の化学物質など添加物をミルクへ添加することから、多くの人がそれでも“自然のままの完全食品”なのだろうかという疑問を投げかけています。全酪農牛の75%が人工受精であることを考えれば、ミルクは何だかその栄養豊富な食品という仮面がはげたような気がします。
現代のミルクについての面白いことは、ミルクを貯蔵したり保存したりできるようになる前、消費される乳製品のほとんどが、消化を助ける酵素や細菌を含むヨーグルトやケフィール(コーカサス地方で飲まれている乳酒)のような発酵乳製品に限られていたということです。
動物のミルク(ヤギ、ヒツジ、またはロバ)はかつては母乳を与えることのできない母親のためのものでしたが、今日のように人が大量の動物のミルクを摂取することは決して自然なことではありません。
おそらくすべての乳製品の消費を止めるということなどできることではないでしょう。そのため、ここにミルク製品の秘密をばらすことにします。

  • 全乳はそのカロリーの48%が脂肪からのものである。
  • 2%のミルクはそのカロリーの37%が脂肪からのものである。
  • 1%のミルクはそのカロリーの26%が脂肪からのものである。
  • スキムミルクにはまったく脂肪が含まれていない。
  • チーズは、スキムミルクチーズでなければ、そのカロリーの50%が脂肪からのものである。
  • バターはそのカロリーの95%が脂肪からのものである。
  • ヨーグルトはそのカロリーの15%が脂肪からのものである。

脂肪を減らす

食餌中の脂肪を減らす最良の方法は、ただ表示を読むだけのことです。カロリーが少ないことを謳っている製品が低塩や低糖であることはあっても、必ずしも脂肪が少ないというわけではありません。“脂肪含有量が低い”と謳っている表示は何か他のものと比べる必要があります。例えば、ラードやバターの含有量より少ない何かであるのかもしれません。“コレステロールフリー”と謳ってある表示を読んだら、おそらくこれは動物性脂肪が入っていないということなのでしょうが、いずれにせよコレステロールレベルを上げる植物性脂肪のような飽和脂肪を含んでいる可能性があります。他にも表示にはトリックがあり、1盛り分の量を低く見積もることなどがあります。例えば、私は大きな目立つ文字でたったの89カロリーという謳い文句が書いてあるポテトチップスか何かの表示にコロッとだまされました。1箱のかなりの量を食べた後で、1盛りあたりまたはポテトチップ6枚あたりで89カロリーであることに気が付いたのです(そして、それはたまたまですが、本物のポテトでさえなかったのです)。
いちばん太りやすい製品の一部が健康食品として売られています。グラノーラバー(赤粗目糖、木の実、干しブドウなどからなる朝食用の食品)(200カロリーの内約半分は脂肪から)、イナゴ豆やヨーグルトキャンディー、そして低脂肪のフローズンヨーグルトでさえたくさん脂肪を含んでいることがあります。特に、フローズンヨーグルトを太りやすい食べ物でトッピングした場合はそうです。
よい脂肪を見付けるのは思ったほど難しくありません。これらはどれもよい脂肪と考えられます。穀物、豆類、種子、および先に述べたよい油です。

たぶん知っているかもしれないし…でも、知らないかもしれないこと

母親のような口調になるのは嫌いですが、直焼きしたり、焼いたり、蒸したり、茹でたり、ローストしたり、あるいは電子レンジで調理する方が、いためたり、揚げたりするより健康にはよいのです。蒸したり、茹でたりした野菜もいけますよ。明らかに、今では茹でた野菜にある種のがんを予防する効果のある耐熱成分が含まれているのではないかと考えられています。蒸したり、ローストするのもよいのです。ここに、もう少し脂肪と戦うためのコツを挙げてみます。

  • 動物性脂肪(スープやシチュー、またはカレーなどに入っている脂肪として)を冷蔵庫に保存する時はかならず再加熱したり、あるいは食卓に出す前に表面の脂肪を掬い取るようにします。
  • 缶入りの食べ物(スープ、ツナなど)から脂肪をいくらか取り除くためには、まず中身をコーヒーフィルターの中にあけましょう。
  • バターの代りに何か他のものを使いましょう。ヨーグルト(ポテトに塗るととてもおいしい)低脂肪のカッテージチーズ、またはジャムやジェリーなど。サンドイッチにはバターやマーガリン、マヨネーズなどを使わなくてもおいしくできます。例えばマスタードやヨーグルトなど。
  • ノンファット粉ミルクはカルシウムをたくさん含んでおり、脂肪の含有量が低いのです。ミルクやクリームが必要な料理にはその代用に使いましょう。
  • デザート用にフルーツを使ったレシピを発掘しましょう。低脂肪ヨーグルトのトッピングをしたシャーベットなど素敵ではないでしょうか。
  • 低脂肪の食べ物にはしっかり味付けをしましょう。そうすれば、加えた油の香りを見逃すことはありません。
  • ポリサッカライドグルコース(多糖類)を含む製品はよい炭水化物です(穀類、野菜、豆類)。単糖類や二糖類(果物、蜂蜜、乳製品、精製砂糖、その他の甘味料)は悪い炭水化物です。
  • よい蛋白質は野菜からのものです(穀類、豆製品)。悪い蛋白質は動物のものです。

最後に、多くの北アメリカ人は赤身の肉の代りに低脂肪の七面鳥を食べています。これはよいスタートです。どうしても肉を食べなければならない場合は、脂肪の含有量が様々に異なるということを頭に入れておいてください。“最高”の肉は脂肪含有量も最高です。“選択”は少ないものを、そして“選り出す”のはいちばん少ないものをということです。脂の少ない牛肉は明らかに矛盾です。というのは脂を少なくするように飼育された牛の肉ではないからです。

近未来の研究

世界的な健康問題に関する世界保健機構(WHO)の最新の調査では、世界全体で2億人以上の人が何らかの形の甲状腺疾患に罹っていることが示唆されています。ヨード欠乏地域では、15億人(世界人口の28.9%)が甲状腺疾患になるリスクがあります。甲状腺疾患の原因や診断、および治療に関するたくさんの研究が行われておりますが、世界の様々な地域で、いろいろな甲状腺の研究が行われております。

未開発国

未開発国では、甲状腺腫やクレチン病、精神発達遅滞などがいまだに普通に見られます。現在、研究者は食物や水の中に含まれるヨード以外の物質で、甲状腺疾患の発症の引き金となるものを見付けだそうとしております。世界の他の地域に、北アメリカ基準の新生児スクリーニング法を導入するための研究資金も使われております。皮肉なことに、世界的には栄養不良が甲状腺疾患の最大の原因であります。ヨード欠乏との戦いもまだ問題となっておりますが、公衆衛生機関がヨード添加食品やヨード剤の配布を試みております。しかし、今のところ飢餓との戦いの方がはるかに切実な問題です。十分な小麦や小麦粉を配るのは非常に困難であります。ヨード化塩はそれよりもっと困難です。
しかし、未開発国で食べられているある種の食べ物がヨードの吸収を妨げ、甲状腺腫またはクレチン病を引き起こしていると思われます。例えば、アフリカではキャッサバが主食となっていますが、ヨードの摂取量が十分であっても、キャッサバをたくさん食べる人達がヨード欠乏症またはヨードの摂り過ぎのどちらかになるのです。同じ事が南アメリカのある地域の井戸水で起こっています。これは現在研究中です。
《第1章》で述べたように、WHOとUNICEFはICCIDDの技術的支援を受けつつ、大規模な食塩総ヨード化プログラム(USI)実施に努めております。パンや油、水はすべて簡単にヨード化できます。牛乳と動物飼料のヨード化も試みられております。ミネラルウォーターはヨード欠乏を治す別の方法です。研究ではミネラルウォーターのナトリウム濃度が低いことから、低ナトリウム食でのヨード欠乏症に効果があることがわかっております。

先進国

先進国での甲状腺の研究ははるかに進んだものです。あらゆる種類の放射線が甲状腺に及ぼす影響に関して、相当な研究がなされているだけでなく、放射性ヨード治療をさらに改良しようという研究も行われています。例えば、将来甲状腺機能低下症を起こさずに甲状腺機能亢進症を治すことができるようになるかもしれません。これには放射性ヨードの線量をもっと正確に計算することや甲状腺内のごく限られた部位に的を絞って照射することなどが必要となります。
甲状腺の研究がもっとも集中して行われている領域は、自己免疫性疾患の性質や自己免疫性甲状腺疾患、ならびにそれに関連した目の合併症です。甲状腺の研究者が自己免疫性疾患の引き金となるものを見付けることができれば、自己免疫性甲状腺疾患を予防するためのワクチンの開発も可能となるでしょう。
他の研究プロジェクトとしては、甲状腺ホルモンの研究とホルモンが重要な体の機能と発達にどのように相互作用を及ぼすかについての研究があります。例えば、甲状腺ホルモンが脳の発達や中枢神経系、遺伝子調節、および消化器系に及ぼす影響などについてですが、これらすべての研究プロジェクトが進行中です。

研究資金

甲状腺の“テクノロジー”は間違いなく進歩を遂げてきましたが、甲状腺の研究には医学研究資金のほんのわずかしか振り分けられていません。最近、AIDS(エイズ)やある種のがんが広がっている最中であるという事実を考えれば、甲状腺疾患のような治療で治せる疾患は現在のところ最優先事項ではないのです。
女性の健康問題では、乳がんや卵巣がん、およびAIDSが主要な医学上の転機を迎えており、現時点では、甲状腺疾患よりこれらの病気に資金を振り分ける方がはるかに大切なことなのです。でも、産後甲状腺疾患は甲状腺研究の前線では相当な進歩を遂げており、また、ベビーブーム世代の女性が年を取るにつれ、甲状腺と更年期の研究が主要な研究プロジェクトとなることは間違いないということを頭に入れておいてください。

1995年:甲状腺の年

1995年は甲状腺疾患への意識を高めるための活動が特に盛んな年でした。1月には、アメリカで全国甲状腺認識月間(カナダでは6月が甲状腺疾患認識月間です)の宣言が行われました。1995年9月には、甲状腺界にとって歴史的な会議が開かれました。それは国際甲状腺連盟(TFI)と呼ばれる世界中の甲状腺関連団体の国際連盟が結成されたことです。TFIへの資金を出しているメンバーの一人として、これほど多くの甲状腺関連団体が一同に集まるのを目のあたりにできたことは、きわめて喜ばしい経験でした。
TFIの組織は巻末に挙げておりますが、次のような共通の使命を持っております〈注釈:日本甲状腺協会も国際甲状腺連盟のメンバーです。赤須先生は国際甲状腺連盟の副会長です〉

  • 世界中の甲状腺疾患患者に対する教育とモラルサポートを行う。
  • 甲状腺疾患に対する意識を高める。
  • 甲状腺疾患の認識、検査、治療の改善をはかるため、家庭医や他の医療専門家に対し、甲状腺専門医と協力して新しい情報を提供する。
  • 医師や他の医療専門家に甲状腺疾患を副専門とするよう奨励する。
  • 甲状腺の研究を支援するための資金調達をする。

現在のところ、TFIはICCIDDやWHO、UNICEFと協力して、世界中のヨード欠乏をなくすために働いております。また、原発事故やヨウ化カリウム(《第11章》参照)についてのガイドライン作成にも関わっております。それ以外にTFIが改善を望んでいる分野は、先天性甲状腺機能低下症のための新生児スクリーニング;出産後の女性のスクリーニング、この内5から18%が甲状腺の病気を起こします(《第4章》《第7章》参照)。;無症候性甲状腺機能低下症のスクリーニング(《第2章》および先の項を参照);甲状腺の病気を起こす引き金となることがある、ケルプやダルス(紅藻の1種)、及び海草類のようなヨード過剰摂取源についての公衆教育があります。《第12章》で述べたように、これらの物質を医療の代りに摂ることはお勧めできません。

甲状腺と「毛皮」のある友人達

この本を終わる前に、私は皆さんがペットも心臓病やがんなど人間が罹るあらゆる病気に罹るのと同じように甲状腺の病気にも罹るということを知っておくべきだと思いました。

甲状腺機能亢進症はイヌで希に見られますが、猫に起こることの方が多いのです。このような猫は食欲があるのにやせてきて、怒りっぽく、神経質になります。調べてみると、甲状腺機能亢進症の猫の心拍も非常に速くなっています。良性の甲状腺腫瘍も猫に多いのです。甲状腺機能低下症は猫にはめったに見られず、ゴールデンレトリーバーやドーベルマンピンシャーズ、ダックスフント、アイリッシュセッター、ミニチュアシュナウザー、グレートデン、プードル、ボクサー、そしてビーグルのようなある種の血統のイヌが罹るようです。肥満や不活発さ、油っぽく厚くなった皮膚、元気のない顔つき、暖かいところを捜す行動、および胴部の脱毛などの徴候に注意を払ってください。心臓肥大や心拍異常を伴う甲状腺に関連した心疾患がグレートデンやドーベルマン、ボクサーに起こります。最後に、信じようが信じまいが、インコはヨード欠乏症や甲状腺腫に罹りやすいのです。

甲状腺機能低下症のイヌに対する治療は、甲状腺ホルモン補充です(人間の10倍から20倍の投与量が必要です)。甲状腺機能亢進症の猫に対しては抗甲状腺剤が投与されます。甲状腺機能亢進症の猫の手術は、心拍が速いため危険です。インコに関しては、費用効率に応じて、様々な治療が行われます。もっと詳しいことはかかりつけの獣医師にお尋ねください〈訳注:本文では甲状腺機能低下症の猫、甲状腺機能亢進症のイヌとなっておりますが、文章の流れからこれは明らかにミスプリントと思われましたので、訂正いたしました〉

研究と技術は常に前進を続けているため、自分の甲状腺の病歴を知り、子どもに自分の甲状腺についての話を伝えるべき時期が来ています。そうすれば、子ども達は自分達が将来甲状腺の病気になる可能性のある患者であり、年齢が進むにつれ、甲状腺疾患のはっきりした症状に注意しなければならないということを知るようになります。そして、かかりつけの医師も将来起こる可能性のある甲状腺疾患に対して注意を払うようになるでしょう。

また、甲状腺の研究のための資金集めを行なっている甲状腺財団の活動もできます。これは甲状腺についてよくわからなくて困ることをはっきりさせるために役立ちます。また、自分で地域の甲状腺財団の支所を始めたり、地域甲状腺協会や支援グループを結成することもできます。この本の初版が出てから、少なくとも4つの新しい組織が活動を始めたのを知っております。事実、研究や教育のための資金集めは最初患者レベルでスタートするのが普通です。例えば、AIDS研究や教育の基礎は、この流行病に対し何かして欲しいと願う、怒った、熱心な人々が地下室やベッドルーム、リビングルームでスタートさせたものですし、最初の甲状腺財団は患者教育用の教材が全くないことに腹を立てたある高齢のバセドウ病の女性がスタートさせたものです。そして、私はこの本を書きました。誰も書いてくれなかったからです。

一般の人に甲状腺疾患のことを教えるいちばん良い方法は、自分が知っていることを他の甲状腺疾患患者や医師に伝えることです。甲状腺の病気のことが載っている本や記事、パンフレットを見付けたら、他の人にも勧めてください。それから、質問をしたり、“こういうことを読んだんですが…”といって話を切り出すのを恐れないでください。
皆様のご健勝とご幸運をお祈りいたします。

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