第12章:甲状腺疾患で使われる薬

あなたが甲状腺の薬を飲んでいる場合、甲状腺機能低下症(甲状腺機能亢進症の治療の結果起こることが多い)の状態を補正するため生涯にわたって甲状腺ホルモン剤、あるいは甲状腺機能亢進症をコントロールするために抗甲状腺剤を飲んでいるかのどちらかです。病状や年齢、性別、体重、そして生活習慣などに応じて、医師がこれら2つの形の投薬治療のどちらか一つを勧めることになります。この章は、甲状腺疾患患者がもらった薬について心配することの中でも多いものを挙げ、また甲状腺の薬と拮抗することのある他の物質や薬剤についてもその概要を述べます。薬剤師と患者の関係についても述べますが、これは生涯薬を飲まなければならない人すべてが気にかける問題です。

甲状腺ホルモン補充療法

甲状腺ホルモンは大きく進歩しました。1890年代には、医学書に甲状腺疾患患者の治療用に使う動物の甲状腺の調理法が載っていました。おそらく、揚げたり、細かく切った甲状腺を朝食としてパンや「すぐり」のジェリーと一緒に食べたのではないでしょうか。20~30年前に使用されていた甲状腺ホルモン剤は、乾燥した甲状腺でした。これは乾燥した動物の甲状腺です。今日使われている合成甲状腺ホルモン剤とは異なり、乾燥した動物の甲状腺剤はT4とT3が混じり合っており、この乾燥甲状腺ホルモン剤のT4とT3の混合割合はどれ一つとして同じではありませんでした。例えば、ある錠剤にはT3が4分の3でT4が4分の1含まれている一方で、別の錠剤ではその割合が逆になっているというようなことがあったのです。その結果、乾燥甲状腺ホルモンには効き目があるのですが、常にT3とT4のレベルにばらつきがあるため、体の他の部分の働きも乱してしまっていたのです。このため、有効期限も短かったのです(それでもまだ、まったくよい薬だと考えられています)。さらに悪いことには 1960年以前に手術で甲状腺を取った人の多くは、乾燥甲状腺ホルモン剤を処方されないことがしばしばでした。多くの家庭医は患者が「必要としない」と思っていたのです(1940年に甲状腺腫を手術で取った私の祖母がそうであったように)。幸いに、医師の甲状腺についての知識は比べものにならないほど進んでおりますし、はるかに質のよい合成甲状腺ホルモン剤が使えるようになったので、乾燥甲状腺はもはや使われなくなりました。合成甲状腺ホルモン剤の処方にかかる費用は、銘柄にもよりますが、どこでも3ヶ月分で15ドルから30ドルの間です。

甲状腺ホルモン剤の錠剤は色分けされています。これは薬剤師が患者の必要量を言い表しやすくするためにそうされたのです。用量毎に色分けされていると、例を挙げれば、患者にとっては「112マイクログラムの錠剤を飲んでいます。」と言うより、「ピンクの錠剤を飲んでいます。」と言う方がはるかに簡単なのです。[表]にすべての色、用量、体重別ガイドラインを挙げておりますので参照してください。これらの甲状腺ホルモン錠は、我々患者から言えば、体が正常な場合に作り出すものを単に補うだけのものです。したがって、アレルギー反応やその他の副作用は非常に希です。ほとんどの人は副作用を気にせずに甲状腺ホルモン錠を飲むことができ、それによりまったく正常な生活ができるのです。

その一方で、甲状腺ホルモン剤を飲んでいる場合、守らなければならない特別な食事法もありませんし、日常生活で何ら制限しなければならないこともありません。ただし、毎日薬を飲む習慣をつけなければなりません。体の中で正常に甲状腺ホルモンが作られているのと同じように体を機能させるために、定期的に甲状腺ホルモン剤を供給しなければならないのです。甲状腺機能低下症では、平均用量はおおよそ112マイクログラム辺りです。ほとんどの人は、50マイクログラムと150マイクログラムの間の7~8種類の用量の中から、ちょうどよい量を見出すことができます。甲状腺がん治療後の平均1日用量は100から200マイクログラムの範囲です。この後でもっと詳しく甲状腺がん患者のための注意事項で述べますのでご覧ください。

めったにないことですが、合成甲状腺ホルモン剤に使われている色素にアレルギーがある場合があります。この場合、胃の具合が悪くなったり、ガスが出たり、吐き気、筋肉痛が起こることがあります。医師は普通、色素を使ってない合成甲状腺ホルモン剤を処方できます。ほとんどの製薬会社から、色素を使わない白の50マイクログラム錠が出ています。アレルギー反応を経験した場合、製薬会社は医師に白色の錠剤(50マイクログラム錠のような)で、錠数を増やして処方してもらうよう勧めています。もっと詳しいことについてはこの中には一体何が入っているの?の項をご覧ください。

高すぎる用量の合成甲状腺ホルモン剤を飲んでいると、甲状腺機能亢進症の古典的症状がすべて出てきます。このようなことが起こった場合、医師にかならずそのことを告げてください。それに応じて医師が投与量を調整します。甲状腺ホルモン剤の正しい用量は、TSHの値が正常であることにより(0.5から5mU/L)定められます。値が5mU/Lより高いということは、甲状腺機能低下症であるということを示すものですが、値が0.5mU/L以下の場合は甲状腺機能亢進症であることを示すものです。T4の値もチェックされます。正常範囲は50から165nmol/Lですが、ほとんどの人は110を超える値の時にいちばん気分がよいと感じます。しかし、医師に相談することなく、甲状腺ホルモン剤の服用を中止したり、量を変えたり(1錠飲む代りに、1日に2錠飲んだりするなど)してはなりません。また、他の医師(いろいろな専門医、または新しい家庭医のような)にかかる際にはかならず甲状腺ホルモン剤を飲んでいると告げることも大切なことです。甲状腺ホルモン剤がある種の処方薬あるいは処方なしで手に入るクスリに影響を与えることもあります。医師が、あなたが甲状腺ホルモン剤を服用中であることを知っていれば、甲状腺ホルモン剤に影響を与えない他のクスリを処方することで問題は回避されます。

甲状腺がん患者のための注意事項
甲状腺がん患者に対する適切な甲状腺ホルモン剤の用量には、少し違いがあります。これは治療の目標もちょっと違うからです。顕微鏡でしか見えないほどの小さな甲状腺組織のかけらであってもそれが体内にあれば、TSHにより刺激されます。その甲状腺組織ががん性のものであるなら、TSHがそのがん組織を刺激して成長させる恐れがあります。このような場合、TSHを抑制するに足るほど高い用量を見つけ出すのがコツです。これはただの甲状腺機能低下症患者よりもT4の値が高くなることを意味します。しかし、甲状腺機能亢進症の症状に苦しむ必要はありません。TSHの抑制は、正確な投与量が得られる甲状腺ホルモン剤の銘柄名薬の一つを使って行うことができます。甲状腺がん患者に対する一般的用量は125または137マイクログラムです(137マイクログラムのものはカナダでは販売されておりません)。TSH抑制の適切な投与量の範囲は100から200マイクログラムの間です。
小児に対する適切な用量
《第9章》でも述べましたが、子ども達も確かに甲状腺疾患や甲状腺がんとは無縁ではありません。子どもが飲む甲状腺ホルモン剤の推奨1日量は、0ヶ月から12ヶ月の赤ちゃんでは体重1キロあたり5から6マイクログラム;1歳から5歳の幼児では体重1キロあたり3から5マイクログラム;6歳から10歳の子どもでは体重1キロあたり4から5マイクログラム;10歳以上の子どもでは[表]に示した大人の体重に応じた投与量に従います。ここでは、原則的に体重1キロあたりおおよそ1.6マイクログラムとなります。
高齢者または心臓病がある場合
甲状腺ホルモンの過度な補充(すなわち、甲状腺機能亢進症になるところまで過量服用すること)となるリスクを避けるため、甲状腺ホルモン剤の投与量は12.5マイクログラム辺りのかなり低い量から始めるべきです(特殊な錠剤カッターで25マイクログラムの錠剤を半分にするのはどの薬局でもできます)。投与量は25マイクログラムずつ増しながら、ちょうどよい甲状腺ホルモンレベルになるまで、ゆっくり時間をかけて合わせていかなければなりません。
「一般薬」対「ブランド(銘柄)名薬」
〈注釈:日本では、甲状腺ホルモン剤は一般薬として薬店では売っていません〉
合成甲状腺ホルモン剤は薬剤師が調剤する製剤の中でもっとも多いものの一つです。アメリカでは、1年あたり1500万件の処方分の甲状腺ホルモン剤が毎年売れています。甲状腺の一部を手術で取っただけであっても、甲状腺ホルモン剤が処方されることがあります。大きな薬局では何千錠という単位で錠剤を注文し、1週間あたり1,000錠もの調剤も簡単にできるでしょう(これは100錠の処方10件分です)。また、薬剤師にとっては100錠を12回分調剤するなど珍しいことではありません。これは約4年分の錠剤に相当するのです。この需要のため、様々な製薬会社が甲状腺ホルモン剤を作っており、そのためブランド(銘柄)名薬または一般薬として購入することができます。一般薬の甲状腺ホルモン剤は、レボサイロキシン(aka L-サイロキシン)として広く知られています。これは値段が安いのですが、一部の専門家は一般薬に対する品質管理がブランド(銘柄)名薬ほど厳しいものではないと論じております。これは正確な用量が必要な高齢者にとっては特に重要なこととなります。このことを考慮に入れると、シントロイドやレボキシル、またはレボトロイドのようなブランド(銘柄)名薬をかならず頼むようにするのがいちばんよいのかもしれません。ただ、これらのブランド(銘柄)名薬はどれも等しくよいものですが、今日までの研究では、いちばん多く調剤されているレボサイロキシンのブランド(銘柄)名薬4種類の間に大きな差はないことが分かっています。臨床的には、これらのブランド(銘柄)名薬は“生物学的同等性”(血液中にまったく同じように吸収されること)であることがわかっており、食品医薬品局規準の現ガイドラインのもとでは、生物学的同等性があるとみなされております。これは研究されたブランド(銘柄)名薬が甲状腺ホルモン剤治療を受けている大多数の患者で、互換性があることを意味します。しかし、甲状腺ホルモン剤のブランド(銘柄)名薬間での生物学的同等性については異論があります。
例えば、ある製薬会社が一部のバッチ〈注釈:同じ時に製造されたもの〉を他の業者から仕入れた“未粉砕”の原料から作ったために市場から回収しなければならなかったのですが、これはその薬は体内で適切に利用される(生物学的利用能と言います)ように作られていなかったということなのです。レボサイロキシン錠製造中のほんのちょっとした変化がその錠剤の効力に大きな差をもたらす可能性があるのです。さらに、甲状腺ホルモン錠のバッチがあまり長いこと薬局で棚晒しになっていた場合、その錠剤が最初に出荷された時と同じ効力がない場合もあります。したがって、かならずその錠剤の有効期限を尋ねるようにしなければなりません。専門家は錠剤の瓶に有効期限が2000年3月と書いてあるものを1999年12月に出された場合、“新しいものではない”として買い手が受け取らないようにしなければならないと警告しています。
甲状腺ホルモン錠の品質の要点は正確な用量です。これにより医師が過量投与あるいは過少投与にならずにもっとも効果の上がる最低量の処方ができるのです。また、甲状腺ホルモン剤のブランド(銘柄)名薬は相互に互換性がないということを頭に入れておくのも大事なことです。内分泌病専門医は患者が別の銘柄名薬に変えた後で、明らかに患者の甲状腺機能にばらつきがあることを見出しています。Aのブランド(銘柄)名薬ではちょうどよい量であったものが、Bのブランド(銘柄)名薬ではそうでないことがあります。したがって、甲状腺ホルモン錠で甲状腺機能を維持するための最短ルートは、以下の如くです。
  1. 正確な用量が得られる品質の高い、有名ブランドの甲状腺ホルモン錠[表]を選ぶことです。これは特に更年期に向かっている40歳以上の女性;60歳以上のすべての人;心臓病がある人には大切なことです。あなたがかかっている医師が一般薬でも変わりはないと言ったとしても(私の初期治療を担当した医師がかつてこう言ったように)、これは本当のことではありません。
  2. 同じブランド(銘柄)名薬を飲み続けること;あれこれ銘柄を変えてはなりません。費用が心配であるのなら、処方を受ける前に医師に銘柄名薬の価格を比較して貰うようにしてください。繰り返しますが、ブランド(銘柄)名薬Aとブランド(銘柄)名薬Bでは異なった用量が必要なことがあるため、今飲んでいるブランド(銘柄)名薬を続けるようにしてください。
  3. 薬剤師が安い一般薬でも同じくらい効き目があると勧めても、ほとんど変わりない費用で品質のよいブランド(銘柄)名薬を手に入れることができるのだということを覚えておいてください。
  4. 甲状腺機能亢進症の徴候に気をつけておくようにします(《第2章》の機能亢進症辞典の項を参照)。これらの症状は飲んでいる甲状腺ホルモン剤の量が多すぎるということです。
  5. 甲状腺機能低下症の症状に気をつけておくようにします(《第2章》の機能低下症辞典の項参照)。これらの症状は飲んでいる甲状腺ホルモン剤の量が足りないことを意味しています。
  6. 錠剤を飲みはじめてから最初の2年間は、3ヶ月毎に甲状腺機能検査を受けてください。その後6ヶ月毎に回数を減らし、さらに年1回に減らしていきます。

この中には一体何が入っているの?

甲状腺ホルモン錠には数多くの添加剤(薬の形を整えたり、品質を一定に保つために添加される物質)が含まれています。これには希釈剤、潤滑剤、結合剤および崩壊剤が含まれます。錠剤にアラビアゴムや乳糖、マグネシウム、ステアリン酸塩、ポビドン、精製粉末糖(これにはコーンスターチが入っています)およびタルクが含まれていることがあります。乳糖は甲状腺ホルモン錠を最小限の大きさにするために使われるもので、例を挙げれば、シントロイド1錠中にコップ1杯半分の全乳の約100倍の量の乳糖が含まれています。乳糖に不耐性である場合、乳糖分解酵素と一緒に甲状腺ホルモン錠を飲んでもよいでしょう。

甲状腺ホルモン錠をいつ飲むのか?

毎日ほぼ同じ時間の空腹時に甲状腺ホルモン剤を飲むのがベストです。空腹時であれば、甲状腺ホルモン剤が効率よく体に吸収されます。毎日同じ時間に飲むようにすると、体内のホルモンバランスを作り出しつつ薬を飲む習慣がつきやすくなります。甲状腺ホルモン剤を飲んでいる患者の研究、特にTSH抑制のために甲状腺を飲んでいる患者を研究したところ、朝、薬を飲んでから1時間待って朝食を食べるようにした方が健康状態が良いことがわかりました。これは乳製品が薬の吸収の改善に何か関係しているのではないかと思われています。総合ビタミン剤または硫化鉄のような鉄剤を飲んでいる場合、甲状腺ホルモン剤を少なくとも2時間前に飲んでおくようにしてください。鉄は甲状腺ホルモンと結合し、体に吸収されて利用される量が減ると思われるからです。

1週間毎の錠剤の整理箱を使うのはよい考えです。毎日薬を飲む上で問題となるのは、忘れっぽさとの戦いです。ほとんどの人は毎日忙しい生活を送っていて、何をしているか気付かずに日常的な仕事を行なっています。例えば、何回ガスの火を消したかとか、仕事に行く途中でいったい何をしたのか、あるいは何を考えていたのかよくわからないのではありませんか。同じ事が毎日薬を飲む際にも起こります。薬は飲んだのだろうか。飲んだかどうか覚えていない。これは実にいらいらする経験ですが、それというのも一度薬を飲んだかどうか疑い出すと、心身症を生じ、例えそうでなくても実際に甲状腺機能低下症であるように感じ始めることがあります。錠剤整理箱はちゃんと飲んだかどうかを確かめるのに役立ちます。一般的に、甲状腺の薬は体内に長く留まるように作られているので、時々飲み忘れてもそうたいした違いはありません。しかし、ただ薬を飲み忘れたということだけを考えてしまうと、「自分が忘れたことを知っている」という精神的影響の方が大きくなり、見せかけの甲状腺機能低下症が始まります。物事をはっきりさせるため、ここに甲状腺ホルモン補充療法がどのようにして効くのかを述べることにします。

今日飲まれている甲状腺ホルモン錠の効果は、飲み始めて5日から10日経たなければ効き目が感じられません(ただし、これは薬を飲むのを忘れたためではなく、甲状腺ホルモン剤を飲まなくても構わないということではありません)。甲状腺ホルモン剤を飲み始めてから約4週間から6週間して、ようやく気分がよくなり始めます。ほとんどの患者は本当によくなったと感じるまで6ヶ月から9ヶ月かかります。さらに、甲状腺ホルモン剤を飲むのを全部止めてしまったとしても、体がすべてのホルモンを使い切ってしまうまでに少なくとも1ヶ月はかかるでしょう。要するに、甲状腺ホルモン剤を飲むのを忘れたような気がするが確かでないという場合、そのまま飛ばしてよいのです。ただ、次の日に薬を飲んで、それを続けるようにしてください。しかし、翌日に甲状腺ホルモン錠を2錠飲んでも害はありません。事実、内分泌病専門医は時たま1~2度飲み忘れたからといって大した事にはならないと言っております。ただ、飲むのを習慣付けるようにしてください。

甲状腺ホルモン補充療法と他の薬の関係

私達は皆、時々様々な薬を一緒に飲んだり、あるいは他にもいろいろな病気のため毎日薬を飲むようなこともあるため、甲状腺ホルモン剤が他の処方薬、または非処方薬とどのような相互作用をするのかを知っておくことが大切です。

経口抗凝血剤(クマリン、ワーファリン、ヘパリン)と一緒に飲む場合
抗凝血剤または血液を薄める薬は、様々な心臓病や術中または術後に処方される血液の詰まりを防ぐ薬です。甲状腺ホルモン剤と一緒に飲んだ時は、抗凝血剤の効き目が強くなってちょっとした出血が起こる可能性があります。医師がクマリンやワーファリン、ヘパリンの投与量を減らす必要がある場合もあります。これは甲状腺ホルモン治療の初期にのみ起こり、甲状腺ホルモン剤をずっと飲み続けている時には起こりません。高齢の患者がこれらの薬を飲んでいる場合、甲状腺ホルモンレベルを6ヶ月毎に検査しなければなりません。
小児に対する適切な用量
この組み合わせでは、《第7章》で述べたように結合T4(サイロキシン)の値が増えることがあります。ピルまたはプレマリン、あるいは他の理由でエストロゲンホルモン剤を飲んでいる場合、年1回甲状腺ホルモンレベルのチェックを受けるのがベストです。しかし、“遊離”T4の値は変わりません。
糖尿病のため、インスリン注射または経口血糖降下薬を一緒に飲む場合
この組み合わせでは、インスリンの効果が下がり、医師がインスリンの投与量を増やさなければならないことがあります。これは甲状腺ホルモン剤を飲み始めた時にのみ起こります。両方の薬が調整されてしまえば、大丈夫なはずです。しかし、糖尿病がある場合、年1回は甲状腺ホルモンレベルのチェックを受ける方がよいでしょう。
ディランチンと一緒に飲む場合
ディランチンのような抗痙攣薬はてんかんに対して処方されるものですが、これは痙攣発作を予防する効果があります。この組み合わせでは、結合T4レベルが下がります。これは甲状腺機能低下症になるということではありませんが、甲状腺ホルモン検査の解釈が難しくなります。
緩下剤(メタムチルなど)、コーヒー、またはアルコールと一緒に飲む場合
甲状腺ホルモン剤と消化器系に影響を与えるようなものを一緒に飲む場合、甲状腺ホルモン剤が確実に吸収されるよう、できるだけ時間をあけて飲むようにしてください。
コレスチラミン(クェストラン)と一緒に飲む場合
この薬はコレステロールのレベルが高い人に処方されるものです。これを甲状腺ホルモン剤と一緒に飲むと、サイロキシンの吸収が低下します。したがって、この2つは一緒に飲んではなりません。それぞれの薬を飲む際に、3時間から4時間間隔をあけるようにし、甲状腺ホルモン剤の方を先に飲むように勧められています。
抗うつ剤と一緒に飲む場合
甲状腺ホルモン剤を飲んでおり、また次の抗うつ剤のうちどれか一つも一緒に飲んでいるような場合、-エラビール、アセンディン、エトラフォン、リムビトラール、パメロール、サーモンティール、トフラニール、トフラニールP.M.、トリアビル、またはノルパラミン-これらの抗うつ剤の効き目が強くなります。それにより、心拍異常につながることもあります。しかし、これは甲状腺ホルモン剤を飲み始めたばかりの時にだけ起こり、薬のバランスが取れてくれば次第に治まってきます。毎年かならず甲状腺ホルモンレベルのチェックを受けてください。そして、あなたへの抗うつ剤投与を管理している人にはすべて甲状腺ホルモン剤を飲んでいることを告げるようにしてください。

リチウムの影響

リチウムは双極性障害(以前は躁うつ病として知られていました)に対して処方されるものです。甲状腺が正常に機能している場合でも、リチウムにより甲状腺機能低下症が起こる場合があります。リチウムを飲んでいる人の8から9%が甲状腺機能低下症になります。リチウムは甲状腺腫や甲状腺機能亢進症の原因としても知られており、またバセドウ病の発病の引き金ともなります。これは、甲状腺機能低下症でうつ病が起こるか、またはすでにあるうつ病が悪化する可能性があるために問題となります。このため、リチウムの投与量が増え、隠れた甲状腺機能低下症をさらに悪化させる場合もあります。このような悪夢が起こる可能性を避けるため、あなたが飲んでいるリチウムをモニターしている人にはすべて、かならず甲状腺機能をまずチェックしてくれるように言わなくてはなりません。それから、リチウムを飲んでいる間は半年毎に甲状腺ホルモンレベルのチェックをするように強く言ってください。検査と検査の間には、毎日自分の気分を記録しておきたくなるかもしれませんが、長い間異常に抑うつした気分が続く場合、念のため甲状腺ホルモンを調べてもらってください。甲状腺ホルモン剤を服用しているときには、リチウムの影響は考えなくてもいいです。リチウムは甲状腺内での甲状腺ホルモンの合成に影響を与えるのみです。甲状腺ホルモンが体の中で作用するところには、影響を与えません。

アミオダロンの影響

これは心拍の病気である心房細動の治療に使われる薬です。この薬にはたくさんのヨードが含まれています。そして、甲状腺機能低下症と機能亢進症の両方を誘発することがわかっています。しかし、北アメリカでは十分なヨードを摂取しているので、甲状腺機能低下症の方が多いのです。また、この薬が橋本病を進行させることもわかっています。しかし、橋本病に最初から罹っていない人にこの病気を引き起こすことはありません。アミオダロンは中毒性多結節性甲状腺腫がある場合、甲状腺機能亢進症を引き起こします。甲状腺疾患に罹りやすい人で、この薬を飲んでいる場合、念のため抗甲状腺抗体検査を受けてください。この薬は脂肪に蓄積するため、飲むのを止めてから12ヶ月経つまでは甲状腺の病気を誘発する可能性があります。

他に頭に入れておくべきこと

  • 甲状腺ホルモン(サイロキシン)を飲んでいても赤ちゃんに授乳して大丈夫です。
  • 妊娠した場合、甲状腺ホルモン剤を飲み続けなければなりません。
  • 血液検査を受ける前に甲状腺ホルモン剤を飲んでもかまいません。いずれにせよ結果に影響することはありません。
  • 甲状腺ホルモン剤を飲んでおり、健康であれば、赤十字は献血を受け入れます(ただし、献血する前に医師のチェックを受けてください)。
  • 甲状腺ホルモン剤を始める前に、医師が通常の心臓検査を行うことが時にありますが、これは心配いりません。医師は甲状腺ホルモン剤を処方する前に何か心臓病の証拠がないか確かめたいだけなのです。なぜですかって。冠動脈性心疾患があれば、最初サイロキシンの投与量を低くして処方することになるからです。

造影剤について一言

多くの診断用検査で、脳や胆嚢、腎臓および脊髄のような臓器の写真撮影するのに造影剤が使われています。この点から見ると、血管造影は特に甲状腺に関係した心疾患の合併症の犯人であると思われます。これらの造影剤にはヨードが含まれていることが多く、それが甲状腺疾患のボーダーライン上にある人、またはすでに甲状腺疾患の診断を受けている人に甲状腺機能亢進症または低下症を発生させることがあります。この検査結果で、医師が健康な甲状腺のある人に、誤って原発性甲状腺疾患という診断を下すことがあります。このことを頭に入れておいて、このような検査を受けた後に、甲状腺疾患が本当にあるのかを確かめるため、甲状腺の検査を受けるようにしてください。

甲状腺機能亢進症の間避けるべき薬

  • 充血除去剤〈注釈:カテコールアミンのような脈を速くするクスリが入っています〉が入っている咳止薬/風邪薬を飲まないようにしてください。これらの薬により、落ち着きがなくなったり、心臓が刺激されることがあります。心臓はすでに甲状腺機能亢進症のために過度の刺激を受けているので、これ以上あえて刺激を加える危険を冒したくはないはずです(しかし、軽度の運動や性的活動はかまいません)。
  • カフェイン(コーヒーやチョコレートの中に入っています)やアルコール、タバコなどの刺激物は避けるようにしてください。繰り返しますが、刺激物によって心拍数が増加します。
  • ヨードをあまりたくさん含む物は何であれ避けるようにしてください。一部の処方薬や店頭で購入する薬には、ある種の喘息治療薬やビタミン剤、咳止薬、日焼け止め、ならびに代用食塩のようなものですが、ヨードが含まれています。甲状腺機能亢進症になっている間は、他の薬を飲む前にかならずラベルを読んでください。また、甲状腺機能亢進症になっている間は、ケルプ(海草)を避け、海産物を食べる量を減らしてください。これらの物質に含まれるヨードが、甲状腺にもっとたくさんのサイロキシンを作らせるようにし、甲状腺機能亢進症を悪化させる可能性があるからです〈注釈:日本人の場合は、最初からヨードを沢山取っていますので、バセドウ病のクスリを飲んでいるときでも、ヨードは普通に食べて結構です〉
  • 甲状腺機能亢進症であればハルドールを飲んではなりません。ハルドールはある種の精神病に処方される薬(抗精神病薬です)で、アルコール中毒を治すため、断酒のコントロールに広く使われている薬でもあります。甲状腺機能亢進症患者がハルドールを飲むことで、極端な硬直や強直が起こることがあり、このため歩くこともできなくなる場合があります。あまりよいことではありませんね。
  • 心拍のコントロールのため、ベータ・ブロッカーの処方を受けており、喘息がある場合、一部のベータブロッカーが喘息発作を引き起こすことがあります。

抗甲状腺剤

抗甲状腺剤を飲むようになるのは、甲状腺機能亢進症である場合のみです。一番多く使われている抗甲状腺剤は、1日量が300mgから400mgで処方されるプロピルチオウラシル(PTU)〈注釈:日本ではプロパジールまたはチウラジール〉と1日量が30mgから40mgで処方されるタパゾール〈注釈:日本ではメルカゾール〉です。これらの薬は甲状腺が甲状腺ホルモンを作らないようにして、甲状腺機能亢進症の症状の元を絶つものです。おそらく2週間以内に具合がよくなり始め、6週間過ぎると違いがわかり、10週間から14週間でまったく元どおり健康に感じるようになるはずです。6ヶ月から12ヶ月、抗甲状腺剤を飲むようになることが多いのですが、医師は6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月目にまだ抗甲状腺剤が必要かどうかをチェックします。もし、甲状腺が正常に機能していれば、家庭医は甲状腺ホルモン(T4)レベルが正常範囲にあるか、あるいは正常よりちょっと高いだけのところに止まっているかを確かめるため、定期的にチェックします。

甲状腺ホルモン剤と違い、抗甲状腺剤を飲み忘れた場合、次は倍量飲まなければなりません。プロピルチオウラシルの効き目は8時間しかありませんので、甲状腺ホルモン剤と違い、1日飲み忘れると問題が起きます。しかし、メチマゾールの半減期はもっと長いので、1日1回しか飲む必要はありません。

副作用

一部の人は抗甲状腺剤に対し、様々な反応を生じます。その反応には皮膚の発赤、かゆみ、蕁麻疹、関節痛、および喉の痛みと発熱(この薬が白血球数減少も起こすため、それによって起こる症状)、黄疸、そしてきわめて希なケースですが、肝不全(他の多くの薬と同じように希な合併症)があります。このようなことが起こったら、薬を中止して、直ちに医師に連絡してください。このような反応が抗甲状腺剤とは無関係な理由によって起こることがありますが、アレルギーのリスクを冒す必要はありません。この時点で、医師は白血球数をチェックして正常であるかを確かめます。正常であった場合でも、そのアレルギー症状が抗甲状腺剤によるものである可能性があり、医師は抗甲状腺剤投与について考え直すことになります。白血球数が減少している場合は、医師が放射性ヨード治療または手術のような別の形の治療について話をすることになります。先の章でも何度か述べましたが、放射性ヨード治療や手術により甲状腺は機能しない状態になります。そのため甲状腺機能低下症が起こります。このバランスを取るために、甲状腺ホルモン補充療法を受けることになります。

注意事項

  • タパゾールまたはメチマゾール〈注釈:日本ではメルカゾール〉を飲んでいる母親は母乳を通じて薬が子どもに行くことがあるので、母乳を与えてはなりません。しかし、少量のプロピルチオウラシルを飲んでいる場合、この薬は量が多くなければ母乳に出てくることはないので、授乳してもかまいません。
  • 抗甲状腺剤を飲んでいる場合、赤十字に献血を行うことはできません。

甲状腺ホルモン剤に代るものは?

ハーブ剤や代替治療で見事に治せる健康上の問題が数多くあるのですが、甲状腺疾患だけはその範疇には入りません。私はハーブやケルプについて頻繁に問い合わせを受けるのですが、きちんと調製された甲状腺ホルモン製剤による甲状腺ホルモン補充療法に代るものは何一つありません。哺乳動物のケンタッキーフライド甲状腺(訳注:ケンタッキーフライドチキンとかけたしゃれ)も、ケルプも、ドロップや他のハーブエキスも全部かないません。錠剤の形で甲状腺ホルモン剤を飲まない限り、甲状腺機能亢進症あるいは低下症になる危険性を冒すことになります。

ただし、甲状腺ホルモン剤を飲みながら、生活に代替治療を取り入れたい場合は、そうしてもかまいません。治療用マッサージやアーユルベーダ(古代ヒンドゥ教の医術)、虹彩診断法など利用できる補完治療は山程ありますし、代替治療はあなたが思うまま好きなことができます。ただ、甲状腺ホルモン剤に代えてケルプやエキス剤のみを使うようなことはしないでください。

薬剤師の利用法

よい薬剤師を持つことは、よい医者を持つのと同じくらい大切なことです。どちらか一方が無能であればあなたの健康が脅かされることになります。薬物治療は甲状腺疾患患者の生活だけでなく、すべての人の生活に影響するので、薬剤師と医師は薬物治療に対し、同等の責任があるのです。

しかし、製薬業界には幾重にも法規制や圧力がかかっているため、私達が飲んでいる薬を誰がコントロールしているのかなかなかわかりづらいのです。基本的に、製剤は他の製品と同じような販売網を通じて売られています。明らかにこの場合の製造業者は製薬会社です。しかし、薬剤師が販売代理店であり、医師がその製品を売る小売業者ということになり、一方私達は消費者、またはその製品の末端使用者ということになります。医師の処方箋は本当のところ単に薬剤師への注文書に過ぎません。これがないと処方薬を売ることはできないからです。でも、この販売網のおかしなところは、実際に製品を売る小売業者にお金を払わずに、販売代理店に払うということです。したがって、薬局につかないうちに品物が売られており、薬剤師は実際のところ何も売らないというのであれば、薬剤師の仕事は一体何でしょうか。

ただ処方箋通りの調剤をするのではなく、この空白を埋めるのは薬剤師の役目です。薬剤師は医師がその病気に対する正しい薬を処方したのかどうかを確かめ、患者が飲み方や保管法、適切な量のところで薬を補充するやり方などがちゃんとわかっているかを確かめます。薬剤師は病歴も聞くべきであり、患者が複数の医者にかかって同じ薬、または拮抗する薬を処方されたり、使ったりしていないかということを確かめなければなりません。このようなことはよく起こります。例えば、患者は必ずしも今かかっている他の医者のことを主治医に言うとは限りませんし、あるいは医師が同じ患者を診ている他の医師の情報を更新し忘れることがあるのです。

普通に見られる問題

典型的な薬物治療の混乱はこのようにして起こります。ドゥさんは70歳の女性で、長年にわたって甲状腺ホルモン剤を飲んでいます。薬が切れたので、彼女は自分の最初の甲状腺ホルモン剤の処方箋を持っている薬局を通じて再調剤してもらいました。2~3日後に彼女は甲状腺の病気とは関係ない健康上の理由で、新しく別の専門医にかかりました。その専門医は通常通り病歴を採取し、たまたまドゥさんが1960年代始めに甲状腺腫の治療のため、甲状腺を取ったことがわかりました。完璧を期すため、その専門医は彼女に甲状腺ホルモン剤を飲んでいるかと尋ねました。

「ええ、もちろん飲んでますよ」と彼女は答え、「でもちょうど切れたところなんです」と言いました。うっかりして、ドゥさんはほんの2日前に甲状腺ホルモン剤を再調剤してもらい、その朝実際にその薬を飲んだということを忘れていたのです。その専門医は、親切な人であったので、ドゥさんに甲状腺ホルモン剤の錠剤の色は何色かと尋ねました(この色によって彼女が飲んでいる薬の量がわかります)。「青です」と彼女は答えました。それから、専門医は150マイクログラムの力価の甲状腺ホルモン剤(青の錠剤)を1月分処方しました。

「これで家庭医か内分泌病専門医の診察を受けて、新しい処方箋をもらうまで切り抜けることができますよ」と専門医は言いました。その専門医は予約が取れるまで何週間も待たねばならないことがあるのを知っていましたし、ドゥさんが甲状腺機能低下症にならないようにと思ったのです。ドゥさんはその専門医の診療所を出て、通りの向かい側にある薬局に行き、その医師がくれた処方箋を渡しました。「新しくかかった先生が別に薬を出してくれたんですよ」とドゥさんは言いました。ドゥさんはそれが何のための処方箋なのかを知る手がかりを持っていませんでした。専門医が処方箋をくれた時に別のことを考えていて、それも甲状腺ホルモン剤を出すためのものだとは気が付かなかったのです。薬剤師は処方箋通りに調剤しました。

「瓶が空になるまでかならず1日1錠毎日飲んでくださいね。いいですか。ドゥさん」「はい。わかりました」そう言ってドゥさんは家に向かいました。翌朝、彼女は新しく補充した甲状腺ホルモン剤と新しく1ヶ月分処方してもらった甲状腺ホルモン剤を飲みました。そして、何も知らずに倍量の薬を飲むことになりました。1ヶ月分の薬を飲み終える頃には、甲状腺ホルモン剤の飲み過ぎで甲状腺機能亢進症になってしまうでしょう。

では、ドゥさんの薬の飲み過ぎとその結果、当然起こる甲状腺機能亢進症の責任は誰にあるのでしょうか。専門医は完璧を期そうとしましたし、薬剤師はドゥさんに薬の飲み方がわかっているかどうか確かめました。そして、ドゥさんはただその指示に従っただけです。でも、医師と薬剤師のどちらにも同じ程度の過失があるのです。明らかに、ドゥさんは高齢者であり、何事にも注意が行き届くというわけにはいきません。専門医はまずドゥさんに誰がドゥさんの甲状腺を診ているかを尋ね、彼女の“甲状腺を治療している医師”に錠剤が切れていることを知らせるべきでした。それから、ドゥさんが甲状腺ホルモン剤を貰っている薬局を聞いて、薬局に電話して再調剤の必要があるかを確かめるべきでした。この時点で、その薬局はドゥさんが実は再調剤分をもらったばかりだということを専門医に言ったはずです。

問題は新しい薬剤師にも見出せます。

ここに、このような問題を避けるための一般的な質問の流れを挙げてみます。

Q. 他に何か薬を飲んでいますか?
ええ。でも何ていうのかちょっと思い出せないんですが。
Q. その薬はここで貰いましたか?
いいえ。家の近くの薬局で貰いました。
Q. いつも行かれているその薬局はどこにありますか?
スミス通りの22番地です。

ここで、この新しい薬剤師はドゥさんの行きつけの薬剤師に電話して、彼女が他に飲んでいる薬と競合するのを避けるために、何を飲んでいるかをはっきりさせるべきでした。スミス通りの薬局が、この新しい薬剤師にドゥさんがすでに甲状腺ホルモン剤を飲んでいることを言ったら、その薬剤師はその甲状腺ホルモン剤の最終調剤日を確かめて、それから処方箋を出した専門医が甲状腺ホルモン剤を追加処方した理由を再確認すればよかったのです。

ここに、もう一つ別に問題をはっきりさせる質問の流れを挙げてみます。

Q. 先生がこれは何の薬かおっしゃいましたか?
そうだと思うんですが、忘れました。
Q. これは甲状腺の薬です。他に甲状腺の薬を飲んでいませんか?(経験を積んだ薬剤師は高齢者でこのようなことを前に経験したことがある)
飲んでますけど、錠剤が切れたと思います。
Q. いつも甲状腺の薬を貰っている薬局はどこですか?

ここでも、薬剤師はチェックして、いったい何が起こっているのかを突き止めるでしょう。

他によく起こる問題は、錠剤の量に関するものです。例えば、ブラウンさんは19歳の女性で、6ヶ月分の甲状腺ホルモン剤の処方箋を4回分受け取ったばかりです。彼女は薬局に行き、薬剤師にこう尋ねられました。
「処方分を全部調剤しますか、それとも処方が切れる毎にここにお出でになりますか?」
「どっちが安いですか?」とブラウンさんは尋ねます。
「そうですね。今ここで全部出した方が、処方箋毎に出すより安いですよ」と薬剤師は答えます(これは本当です。でも、医師は理由があって薬を分けて出すように頼んでいるのです)。
「では今、全部ください」とブラウンさんは言いました。

問題:錠剤を6ヶ月分貰う代りに、ブラウンさんは2年分の錠剤を貰いました。まず、有効期限の問題があります。この錠剤には6ヶ月毎に調剤するのと同じ効力が2年後にもあるのでしょうか。効き目が落ちるようであれば、ブラウンさんは古くなった甲状腺ホルモン錠のために、結局は甲状腺機能低下症になってしまう可能性があります。2番目に、ブラウンさんが2年分の薬を持っているから、2年間医師の診察を受けなくてもいいと思ったらどうなるでしょう。ちゃんとした薬剤師であれば、医師が6ヶ月毎に錠剤を出せば、その度に甲状腺ホルモンレベルのチェックを受けて、必要なら投与量の調製ができるだろうと説明するでしょう。

薬剤師を選ぶ

先に述べたことからお分かりになったと思いますが、よい薬剤師は本当の健康問題が起こらないようちゃんとした質問をしなければなりませんし、薬物治療について完全な説明ができなければなりません。しかし、ほとんどの人は医師を選ぶのとは違った基準で薬剤師を選んでいます。例えば、私達は場所が便利ですぐに薬を出してくれるような薬局を選びがちです。これはドライクリーニングならいいんですが、誰かに自分の薬を出して貰うのですから、もっと選り好みする必要があります。次に薬剤師を選んだり、または今、薬を貰っている薬剤師の評価に使うガイドラインをいくつか挙げておきます。

  1. その薬剤師はどれくらいの経験がありますか。証書はちゃんと見えるところに飾ってありますか。そうでなければ、本当に資格があるのかを確かめるようにしましょう。
  2. 薬剤師はあなたと同じ言葉で話しますか。薬剤師が何を言っているのかわからない時は変えるようにしましょう。
  3. 薬剤師は他のお客をどのように扱っていますか。お客の質問に時間を割き、薬について丁寧に説明していますか、それともいらいらして、横柄な態度をとっていますか。他の人にその薬剤師がどのように接しているかを見ればたくさんのことがわかるはずです。
  4. 薬剤師は親切で、いつも進んで質問に答えてくれますか。あるいは、あなたの質問を避けて、医師に電話をするように言いますか。

同様に、あなたが正しく薬剤師を利用しているかを確かめるためのガイドラインをここにいくつか挙げることにします。

  1. 12種類の処方に対し、薬剤師が12人いますか。もしそうなら、間違っています。かならず、同じ薬局に“処方箋を預ける”ようにしましょう。そうすれば、薬物治療の記録が常に更新されることになります。今では、多くの薬局がコンピューターによる投薬記録システムを提供しており、あなたの処方はすべて定期的に更新され、相互参照できるようになっています。できればこのようなサービスを提供しているところを捜してみてください。
  2. かならず、いつ薬を飲むべきか聞いてください。空腹時か満腹時か、朝か夜かなどです。医師は大体この指示をラベルに書いていますが、2重にチェックしてください。
  3. 必要な服用量(毎日1錠、1日2回1回1錠、などです)や適切な調剤量(1ヶ月分貰うか、1年分貰うか)については薬剤師と必ず話し合ってください。
  4. どこに薬を保管すべきかかならず聞いてください。浴室は薬の保管場所としては最悪だと知っていましたか。薬が湿気に当たって、薬の効力が影響を受けることがあります。そして、子どもは簡単に浴室に入れます。
  5. 薬局にその薬の使用期限をかならず聞いてください。使用期限はその薬がどれだけ薬局に保管されていたかいたかによって変わります。ほとんどの甲状腺ホルモン剤は使用期限がラベルに載っていません。

甲状腺ホルモン剤は正常な甲状腺ホルモンレベルを維持したい患者にとって欠かせないものであり、甲状腺ホルモン剤のバランスを取ることが長く健康を保つための鍵となります。この薬による治療は生涯にわたるのが普通で、薬剤師とは医師と同じように長期にわたる信頼関係をしっかり築くようにしなければなりません。そうすれば、年をとるにつれ、もっと薬に頼らねばならないようになったとしても、医療システムの中で、薬剤師が別の安全策を取ることができます。最近の調査では、処方薬を貰っている患者の半数は正しく薬を飲んでいないことがわかりました。この恐るべき統計の結果から見て、医師-患者と薬剤師-患者のどちらのレベルにおいてもうまくコミュニケーションが取れていないことは明らかです。甲状腺の薬にもっと責任を持ち、正しく薬剤師を利用するための時間をとることで、健康を維持しながら薬のために困ったことが起きるのを防ぐことができます。《第13章》は、近い将来患者や医師、そして薬剤師がストレスを感じずに、正常な甲状腺ホルモンレベルの維持が楽にできるような新しい甲状腺の研究だけでなく、健康を保つためのコツについても述べることにします。

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