第10章:専門医に診てもらうには

医師との上手な付き合い方

あなた自身、または家族の誰かが甲状腺の病気に罹っている場合、少なくとも3人の医師と付き合うことになります。内分泌病専門医や眼科専門医(目の合併症がある時)、頭頚部外科医、腫瘍専門医(がんの専門医)、放射線療法医、核医学専門医、栄養士、食餌療法士、老人病専門医(あなた自身が高齢であるか、高齢の両親の世話をしている場合)、そして小児科医(あなたの子どもが病気の時)などですが、いずれ診てもらうことになるであろうこれら一連の専門医にかかる前に、まず最初に家庭医にかかるというのが一般的です。甲状腺の病気が誤診されると、精神科や婦人科、耳鼻咽喉科、形成外科(結節の治療)、心臓病専門医、内科、男性病専門医(男性の生殖器専門医)、そしてそれ以外の数多くの専門医に診てもらうはめになる可能性があります。

これにはちょっと圧倒されてしまいますが、一番大事な関係は家庭医とのものです。具合が悪い時はいつでも、家庭医がまず最初に診察し、診断のための手続きを開始します。これには、一人または複数の専門医への紹介も含まれます。この章の目的は、1990年代の医師と患者の関係がどのようになっているかを説明し、医師を最大限に利用し、誤診によって引き起こされる様々な障害を最小限にする方法を述べることです。

家庭医の利用法

かならずと言ってよい程、家庭医が最初にあなたの甲状腺の病気を診ることになるため、患者の果たす役割だけでなく、家庭医が今日のヘルスケアシステムに果たす役割を理解しておくことがきわめて重要です。

あなたがかかっている医師は、a)ただの人間であり、b)商売をしているのだということを頭に入れておいてください。医療は商売であるため、医師はコストのことを非常に気にします。そのため、多すぎる検査や不必要な処置は行わないようにしています。このために誤診が起こることがあるのです。《第9章》でも述べましたが、甲状腺の病気は症状がはっきり現れるまで、家庭医によって見逃されたり、診断されないままであることがよくあります。

甲状腺疾患患者、あるいはその可能性がある者として、家庭医があなたの最良の内科医としての役割を確実に果たせるようにする責任があります。これによって、患者としての権利を主張することもでき、同時に責任ある行動を取ることにもなるのです。例えば、あなたの病歴についてのある種の情報を医師に告げないでいれば、医師の正確な診断は期待できません。同様に、医師に自分の健康のことについて質問しなければ、医師は質問に答えることができません。

家庭医への誤ったかかり方

ここに、どのようにして甲状腺の病気の誤診が起こったか、その典型的な例を挙げてみます。38歳の女性で、古典的な甲状腺機能低下症の症状がありますが、そのことは知りません。最近、いつもと違うことに気が付きました。疲れて、元気が出ず、おまけに少し気がふさぐ感じがします。そこで、家庭医のもとへ行き、気分が優れないことを言って、どこが悪いのかを調べてもらうことにしました。診療所に着くと、いつものように患者で一杯でした。先生はまた患者の予約を取り過ぎているのです。そして順番は、3人子どもを連れた妊婦の後になりました。やっと順番が来て、診察室に入ります。

医師

今朝はどんな具合ですか。
<本当の意味:ただの健康診断か、それとも何か特別な問題があるのかを知りたい>

患者

今日の午後のことでしょう。
<本当の意味:医師に長いこと待っていたということを知らせたい>

医師

もちろんです。とにかくあんまり忙しくていつ午後になったかわからないんですよ。さて、今日はどうしましたか。
<本当の意味:忙しいということをわからせたい。そして、どこが悪いのかを知りたい。それも早くしないと、まだ3時までに診なければならない患者が30人もいる>

患者

ここ数週間ばかりとても疲れたように感じて、全然元気が出ないんです。どこが悪いのかよく分からないんですが。
<本当の意味:本当にぼろぼろになったように感じていることを言っているのだが、それを証明できない>

医師

わかりました。頭痛や喉の痛み、腹痛とか吐き気がありますか。それと吐いたり下痢をしたり、何かいつもと違うおりものがあったりしてませんか。
<本当の意味:風邪を引いたのか、インフルエンザに罹ったのか、または生理中であるか、あるいは性行為感染症であるかということを聞いている>

患者

いいえ。

医師

ではちょっと診てみましょう。
<本当の意味:こんな症状がどれほどありふれてるか分かっているんだろうか。どんな病気にだってあてはまるのに!もうちょっとちゃんとしたヒントをくれたらいいのに>

この医師は、標準的な身体の診査を行いました。おりものがないかという質問に「いいえ」と言ったので、内診はしないということになります。

医師

そうですね。これで大体全部診たと思いますが、最近職場でいつもよりストレスを受けたり、家庭で何か問題が起きたりしてませんか。
<本当の意味:どこもはっきり悪いところはありませんよ。脈がちょっと遅いようですが、心配するほどのことはないと思います。私は何も言うことはありません。別に何の理由もなくそんなに心配するのですか。たぶん、ただのストレスのせいですよ>

患者

いいえ。
<本当の意味:このような症状があると想像しているんじゃなくて、ちゃんとわけがあってここに来たのに>

医師

ちゃんとお通じはありますか。
<本当の意味:食習慣はどんな風ですか>

患者

お聞きになったので言いますが、ありません。ずっと便秘していて、ちょっと太ったみたいです。
<本当の意味:何でこのことをもっと早く言わなかったのかと自分に腹を立てており、医師が深刻に受け止めていないのではと心配している。やはり、先生は大したことはないと思っている。この頃寒さに弱くなったことも言ったらどうだろうか>

医師

生理は順調ですか。
<本当の意味:子宮類線維腫がありますか>

患者

はい。

医師

最後に生理があったのはいつですか。
<本当の意味:妊娠していますか>

患者

15日です。
<本当の意味:妊娠はしていません>

医師

えーっと、それではいくつか血液検査をしますので、何か異常があればお知らせします。それまで、果物や野菜をたくさん食べて、それからふすま〈注釈:穀物の一種〉を食餌に取り入れるようにしてください。例えば、朝食にふすまマフィンを食べるとか。1ヶ月経っても状態が変わらない時はまた来てください。
<本当の意味:たぶん、食餌にちょっと問題があるみたいです。念のため、コレステロールと血糖値も調べておきます。別にどこも悪くないので、もう帰っていいですよ>

このような家庭医への受診は、誰にとっても時間の無駄です。患者は医師にちゃんとした情報をほとんど与えることがなく、その結果、医師はただいろいろな病気の可能性を退けることしかできません。この医師は脈が遅いのに気が付いていましたが、それは警鐘を与えるほどのものではありませんでした。この患者は、医師がその症状を甲状腺機能低下症と結び付ける前に、脈が非常に遅くなり危険な状態になるまで待つ必要があるでしょう。さらに、医師が頼んだ血液検査は標準的なものです。血液中のTSHレベルをチェックする検査は特別に頼まなければなりません。そのため、医師はしばらくの間甲状腺の病気に気が付きません(それでも、公平を帰すために言うと、たくさんの家庭医がルーチンに甲状腺ホルモンレベルのチェックを行っています)。この間、この38歳の甲状腺機能低下症の女性は帰宅して、医師があれこれ症状を結び付けて考えるに足るほど悪くなるまで、症状を悪化させることになります。それにはもう少し時間がかかります。

実際に、中でもいちばん悪いのは、医師に疲れると言って、はっきりした診断を求めることです。家庭医は患者の訴えでいちばん多いのが疲労であると報告しています。そして、この訴えはあらゆる年齢、職業、人種の人から出てくるものです。この女性は、健康状態が悪いという訴えを医師にもっとはっきり伝えることができるような事実を言う必要があったのです。

主な問題は患者の側にありました。この患者は自分の体のことをよく知らず、いろんな徴候に大して注意を払っていませんでした。疲れて、エネルギーが低下したことに気が付きましたが、それはスタートであって、それだけでは物事をはっきりさせるのに十分ではありません。医師が便秘のことを聞いた時だけ患者は思い出したのですが、同時に3つの症状を言っていたら、もっと違った質問がすぐになされたのではないかと思われます。

家庭医への正しいかかり方

体に何かおかしいことを感じたら(例えばいつも疲れているなど)まず腰掛けて、何か他に気が付いていることがないかチェックします。そうすれば単に疲れるというだけ以外に医師への判断材料を提供することができます。少なくとも、次の質問のいくつかに自分で答えてみるようにしてください。

Q. いつもと違って見えるだろうか?どんな風に?
目の下に前はなかったたるみがあるし、髪が少しぱさぱさしているようだ。考えてみれば、少し太ったようでもあるし。
Q. 朝夕のバスルームでの習慣(洗顔など)に何か変化はないだろうか?ある種のスキンケア用品やヘアケア用品がいつもより早くなくなるようなことはないだろうか?
いつもより皮膚の補湿クリームをたくさん使っているようだ。こんなことは前にはなかった。また、いつもヘアコンディショナーが足りないような気がする(これは皮膚が乾燥しており、その結果ヘアコンディショナーをより多く使っていることを意味します。この質問がどのように、前の髪のぱさつきに関する質問での観察を確かめているかということに注目してください)。
Q. トイレに行く回数が増えたり、減ったりしていないか?
減っている。ずっと便秘している。
Q. この原因として、何かいつもと違うものを食べたり、またこれを治すために食べ物を変えたりしていないだろうか?
そんことはない(つまり、便秘や体重増加は食餌の変化に関係ないということになります)。
Q. いつもと違うように感じていないだろうか?
疲れて、元気が出ない(これも食餌の変化とは無関係です)。
Q. 着る物がいつもと違っていないだろうか?
今ではいつもセーターが必要になったようだ。いつも寒く感じる。
Q. 祖母や母親、父親がこれくらいの年齢の時に何か病気に罹っただろうか?
おばあさんはおかあさんを産んだ後、甲状腺腫ができたし、おかあさんは何か代謝に関係する薬を飲んでいると言っていた。
Q. 脈はどうだろうか?(いつも脈をチェックしている場合、いつもより速くなっているか、遅くなっているかを見てください。例えば、通常の脈拍が80であるのに、65や70になっていれば、ちょっと遅いということになります。自分の普段の脈拍がわからない場合、医師のところに行く前に、診療所に電話して、受け付け/秘書に前回の診察時の脈拍を教えてもらってください)
Q. 最近、異常なストレスを受けていただろうか?
それはない(これでストレスに関連した症状ではないと言うことができます)。

このようにすれば、医師の診察を受ける際にいつも医師がしなければならない推理作業をずいぶん減らすことができ、医師が症状の真相を早く究明しやすくなると思われます。では、もう一度やり直してみましょう。

医師

今朝はどんな具合ですか。
さあ、ここでやらなければ。遠慮してはいけません。できる限りたくさんの情報を与えるようにしてください。症状は時期を異にして現れます。医師に起こっている物事の関連性について考えてもらいたいのです。

患者

実際はあんまりよくありません。日常生活に変化があったわけでもありませんし、ストレスが多くなったようなこともありません。でも、自分が疲れて、元気が出ませんし、便秘だし、少し太ったことに気が付いたんです。自分でもこれはちょっとおかしいと思います。また、脈がちょっと遅くなっているようなんです。普通は80なんですが、それより5つばかり少なくなっています。それから、これが何か意味のあることかどうかはわかりませんが、いつも寒くて、皮膚や髪の毛が乾燥しているみたいなんです。祖母が私くらいの年で甲状腺腫に罹っていたことは知っていますし、母も何か代謝に関係ある薬を飲んでいると言っていました。これと何か関係あるんでしょうか。

お見事です。これならどんな医者でも、この時点でインフルエンザや風邪の標準的な症状ではないと分かるでしょうし、またおそらく妊娠も除外することができます。最後に家族のことをちょっと言ったことがとても役に立つのです。核心をついたというわけではないのですが、このために最初のシナリオより医師の態度がずっと親身になっています。この種の症状には、まだ少し推量しなければならないことがありますが、他の家族にある種の病気に罹りやすい傾向があることを明らかにしたことで、医師にはあなたが罹りやすい病気の種類が分かってきました。

医師

それは相当つながりがあると思いますよ。
この時点から、医師はあなたの病気について、もっと的を絞った質問をしてくるだろうと思われます。そして、もっとはっきりした病像をつかもうとするはずです。医師が何かをカルテに書き込むのを見たら、かならずそれについて尋ねましょう。カルテに何を書いているんですか。これやそれはなぜ大事なことなんですかなどです。言い換えれば、医師へのチャレンジを恐れてはいけないということです。質問をしてください。何かわからないことがあれば、分かるまで聞くことです。

患者

カルテに何を書いたんですか?

医師

いくつか血液検査を頼むことにします。TSHをチェックしたいので。

患者

TSHとは何ですか?

医師

甲状腺刺激ホルモンのことです。脳下垂体から分泌されるものです。

患者

一体それはどういう意味ですか?どこが悪いんですか?

医師

たぶん、甲状腺の病気だと思いますが。

患者

というと…

医師にもよりますが、たぶんいらいらしてきて、これ以上質問させまいとするでしょう。でも、止めないでください。その医師があなたの体に責任を持っているということを思い出してください。もし、本当に質問するのがまずくなってきた場合、そのことを書いた文献やもっと詳しい情報が得られる場所の電話番号を聞くようにしてください。

医師

ちょっと時間が過ぎたようで、申し訳ないんですが今ここで質問に全部お答えする時間がないんです。

患者

すみません、先生。ただ、私の体のことなもので、どんな検査をなぜするのか知る権利があると思いまして。この次にもっとゆっくりお話ができるよう時間をとっていただけるでしょうか。その間、何かこの事について私が読めるようなものはありますでしょうか?

結構です。ちゃんと医師のスケジュールのことを気にしながら、ちゃんと言うべきことは言っています。質問のための予約を別にとってもらうことは、あなたの健康問題をもっとよく理解するために非常によい方法ですし、また医師の時間をうまく使う賢いやり方でもあります。文献のことを尋ねるのは、あなたが自分の病気について学ぼうとしており、何か決定を下す際に自分も参加するということを示唆するものです。

家庭医は、各年齢グループ内での実に様々な病気を治療するのに慣れており、様々な程度の医学知識を持つ患者を扱うのにも慣れています。事実、本当に医師の診断に関心を示す患者は希だと考えられています。そして、家庭医の守備範囲は広いため、当然ながらより一般的な診察を行うことになります。ほんの過去10年足らずの間に、一般医という言葉が家庭医という言葉に置き代ったのです。そのため、質問に対して実に様々な反応に出会うことになります。しかし、質問に答えたがらない医師にかかっている場合、その問題に取り組む必要があります。

よい家庭医になる“素養”のほとんどは、経験と直感の結びつきであることを頭に入れておいてください。医師は人間であるという事実は間違いを冒すことを意味し、また医師はビジネスマンであるという事実は、リスクをおかそうとせず、コストを削るために不必要な検査を避けることがあるということを意味します。

患者の権利

昔は、医師は神のような存在であることを期待されており、一方で患者は非常に従順に振る舞うよう期待されていました。この種の医師と患者の関係はもはや存在しません。患者として、私達は20年前とは比べものにならないほど、ヘルスケアについての情報や知識を持っているだけでなく、今ではヘルスケアの消費者でもあるのです。患者は辛抱する者から、我慢しない者になってきました。私共は結果が欲しいのです。払った金に見合う価値が欲しいのです。アメリカに住んでいようと、カナダに住んでいようと、患者が医者のサラリーを払っているのです(カナダでは税金からヘルスケアへの支払いがなされています)。その結果、医者と患者の関係は、今では双方向(結婚と同じような)の関係となっています。

では、医師からどのようなことを期待できるのでしょうか?

  1. 欲しいだけの情報。これは、あなたが受けた診断や予後(よくなる時期の医師の予測)、別の形の治療、医師の勧告、およびその根拠(研究、直感など)について知るすべての権利を持っていることを意味します。
  2. 質問や心配事に取り組むための時間。主治医に質問に答える時間がない場合、電話で問い合わせたり、質問と答えのために使う時間を別に予約することができるはずです。
  3. 妥当な受診法。あなたと医師とで“妥当”という意味を一緒に決めなければなりません。週1回あるいは3ヶ月に1回、または年1回の予約が必要ですか?それとも自分が診てもらいたい時に受診したいだけなのでしょうか?予約はどれくらい前から入れる必要があるのでしょうか?
  4. 意思決定プロセスへの参加。このためには、自分の病気のことについて質問したり、自分で進んで勉強する必要があります(自分の病気のことに関する文献を医師から入手したりするなど)。
  5. 適切な救急時のケアと代診の先生に診てもらうこと。主治医が病気や休暇を取っている時、時間外に誰が診てくれるのですか?代診の先生がいるのでしょうか?いつか代診の先生に診てもらう必要がある場合に備えて、ちゃんと調べておきましょう。
  6. 誰があなたのカルテを見ることができるかを知ること。あなたのカルテはどの程度の機密性があるのでしょう?医師は、あなたの雇用主や保険会社、政府当局など誰にでも内容をもらすことができるのでしょうか?主治医のカルテに関する法的義務はどのようなものでしょうか?そしてあなたのは?
  7. どれくらいの費用がかかるかを知ること。アメリカに住んでいる場合、請求金額を前もって知る権利があります。見積もりをしてもらい、医師に各費用の内訳を出してもらってください。そうすれば、何に対する支払いであり、保険で何がカバーされているかを正確に知ることができます。カナダに住んでいる場合、何事にも同意する前に、すべての予約や検査、処置が地域の保険でカバーされているかを確かめてください。
  8. 時間通りに診てもらうこと。あなたが予約時間通りにしているのであれば、医師も同じようにすべきです。大体いつも、医師に診てもらうまで待合室で30分以上待たなければなりませんか(明らかに、医師が急患で呼び出されたり、ある特定の患者に思ったより時間がかかるような場合もあります)?
  9. 医師を変えること。そう、あなたは医師をお払い箱にすることができるんです。今かかっている医師に満足していないか、単に変える必要がある場合、そうするすべての権利があります。かならず、カルテの記録もすべて移してもらうようにしましょう。
  10. セカンドオピニオンまたは専門医への受診。主治医が適切な診断を下せない場合、別の医師か専門医に紹介するよう主張することができます。

医師の権利

覚えていますか、これは双方向の関係です。主治医にも不文の権利があるのです。あなたにある種の情報や待遇を受ける権利が与えられているのとまったく同じ権利が主治医にも与えられています。では、主治医はいったいあなたに何を期待できるのでしょうか?

  1. 何も隠し事をしないこと。医師にはテレパシーがあるわけではありません。あなたが情報を隠している場合(ある種の家族歴、病歴、処方を受けている薬、中毒、アレルギー、摂食障害、特定の症状など)、医師に正確な診断を期待するのは不公平というものです。例えば、あなたがアレルギーである薬や、他の薬と相反する効果のある薬を医師が処方したならどうしますか?
  2. 一般的態度。主治医をビジネスのパートナーのように扱ってください。予約をしたらちゃんと行きましょう。キャンセルの必要があれば、少なくとも24時間前には連絡するようにします。
  3. あらかじめ予定を立てる。前もって受診の予定をたて、症状について十分に考えをまとめておきます。「気分がよくないんです。」というようなあいまいな訴えで、ただ医師の診察を受けに行き、完全な診断を期待してはなりません。予約を取る際に、受け付けに全部調べてもらうのにどれくらい時間がかかると思っているかを言ってください。そして、症状を書き留めておくようにします。医師に何か手がかりを与えてください。
  4. 質問と口を挟むこと。何かわからないことがあれば聞いてください。必要があれば医師の話を遮り、何が悪いのかもっとやさしい言葉で説明してくれるように頼んでください。そうしなければ、医師があなたに十分な情報を提供しなかったとして責めることはできません。
  5. アドバイスに従い、それを続けること。薬は指示された通りに飲み、アドバイスにしたがってください。そのために医師にお金を払っているのです。薬の副作用を経験したり、医師のアドバイスに何か問題があったり、あるいはアドバイスにしたがった結果病気が悪化したような場合、医師にそれを知らせてください。ここでも隠し事をしてはなりません。
  6. 迷惑をかけない。もし何か問題が起きた場合、ちゃんとした経路を経て連絡をとるようにします。医師が留守番電話に残しておいた時間外の緊急用連絡先にダイアルするか、診療時間内に診療所に電話するようにしてください。いつもいつも朝の4時に医師の自宅に電話をかけたり、ちょっとした痛みのために1日10回も電話するようなことをしてはなりません。
  7. 診断のための十分な時間。診断は一晩でできるものではありません。医師が十分に診察したり、必要な検査を行ったりするのに十分な時間が取れるようにします。15分で奇跡が起こることを期待してはなりません。このために予約時間より長く待たなければならない場合もあるかと思いますが、そうすれば医師が徹底的に診査するための時間を十分に取ることができます。
  8. 不合意の余地。あなたがいちばんよいと思っていることが、医師が最良だと考えていることではないことがあります。意見の違いを認め、医師に説明するチャンスを与えましょう。むっとして帰ったり、訴えると脅してはなりません。医師の方が正しいのかもしれません。
  9. プロとしての振る舞い。主治医の道徳的信条を損なうような頼み事をしたり、違法なことを頼んではいけません(例えば、雇用主に偽の報告書を書いてもらうことで、身体障害手当ての支給が受けられるというようなことです)。

家庭医を選ぶためのガイドライン

あなたが望むままにどのような医師でも選べるという恵まれた立場にあるか、医師の選択範囲の広い健康保険に入っている場合の一般的なガイドラインをいくつかここに挙げることにします。

家庭医は、伝統的に家族全体を治療し、そのため家族の一人一人と親密になり、家族の健康問題に通じているものです。今日では、家庭医の役割は大きく変り、医師があなたの家族の今までの健康状態や病歴とは何のつながりも持たないことが多くなりました。このような状況にある場合、あなた自身の病歴だけでなく、家族の病歴についても知っているか確かめてください。

しかし、実際にあなたの家族全員を治療してきた医師との間に問題が起きることがあります。ここでも医師によって違うのですが、もしあなたが女性であれば、18歳以降も母親のかかりつけの医師のもとへ行くのが最悪の結果となる場合も多いのです。その医師があなたを子どもとして扱い続ける可能性もあり、あなたの健康状態をあなたに話さず、両親と話し合う可能性もあります。あなたが生まれる時に立ち会った医師に内診や乳房診査をしてもらうというのは、あまり気持ちのよい選択とは言えないことがあります。時にはその関係を断ち切るのが大切な場合があります。あなたが20歳から35歳の間であり、子どもの頃から診てもらっている医師では気まずい場合、その医師によい家庭医を推薦してもらうよう頼むことができます。医師の気分を損ねたくない場合、婦人科を推薦してもらいましょう。いずれにせよ一人かかりつけの婦人科医を持っておかねばならないのですから。そして、それからその婦人科医に家庭医を推薦してもらえばよいのです。もちろん、母親や父親を治療してきたのと同じ医師に診てもらうのに満足している場合、医師を変えることはありません。ただし、医師の評価を忘れないようにしましょう。他にどんな医者がいるかを見るためだけに、別の医者に2〜3ちょっと診てもらいたいという場合もあるかもしれません。

あなたが39歳から55歳の間の女性であれば、再度状況を見直す必要があります。更年期は非常に敏感な時期であり、あなたの状況に鈍感な医師にかかるのは最悪のことです。20代後半から30代始めにかけてうまくいっていたことが、もはやそうはいかない場合があります。忠誠の問題であるなら、そのようなことは忘れてください。自分の医師に満足していないのであれば、行かなくなるでしょうし、その間あなた自身の健康が危険に曝されることになります。

もっと年齢が高い人は、医師の言葉を神の言葉のように受け取らないようにしましょう。年齢が高ければ高いほど、その過程でさらに付け込まれるようになることがあります。

より少ない情報しか与えられず、医師の年齢に近い患者と同じように扱ってもらえないことも多く、また英語が母国語ではない場合、簡単に怖じ気づいてしまうでしょう。

何歳であろうとも、英語をうまくしゃべれなければ、たちまち不利になるのです。あなたの言葉をしゃべる医師を見つけることがきわめて大事です。あなたが広東語をしゃべるのであれば、医師もそうであるべきです。また、あなたがギリシア語をしゃべるのであれば、医師も同じようにしゃべるべきです。そのような医師を見つけることができない場合、あなたの出身国と提携した協会や団体に電話をして、問い合わせてください。

女医と男性の医者はどちらがいいのでしょう。それはあなた次第です。あなたが他の女性のもとへ行く方を好む女性、または男性のもとへ行く方を好む男性であれば、そうしてください。男性や女性は性別が反対の医師と相性がよいことが多いのですが、あなたの好みに従うようにしてください。いちばん大事なことは、あなたがかかっている医師に満足しているかどうかです。どれほど多くの人がそうでないかは、実にショッキングなことです。

ここに、あなたが今かかっている医師にどれほど満足しているかを評価するための簡単なチェックリストを挙げております。

  1. 医師はあなたをどう呼びますか?
    医師はあなたがいちばん好ましく感じる名前であなたを呼ぶべきです。それは姓や名前、あるいはニックネームのはずです。
  2. 医師は何歳ですか?
    あなたがかかっている医師とあなたの年齢との開きは15歳以内であるのが理想です。そうであれば、医師はあなたの仲間であって、父親/母親、あるいは息子/娘ではありません。その方が医師との関係を築きやすいのです。
  3. 医師に質問ができますか?
    医師はどの程度オープンでしょうか?
    あなたが医師に質問できない場合、それはよくない徴候です。
  4. 診療所はどこにありますか?
    その場所は便利なところですか?
    あるいは、そこに行くのに1時間以上かかりますか?
    医師の診察を待つだけでもストレスがかかるのに、ただ医師の診察を受けるためだけに、国内を横断して行かなければならない場合、医師の予約に関わるストレスのことを考えましょう。
  5. 医師に電話で連絡が取れますか?
    いつでも電話をかけるだけで、特別な健康上の問題を医師と話すことができますか?
    そうでない場合、それは医師が本当に忙しいためか、それとも時間外に患者が連絡できないようになっているためでしょうか?
    例えば、一部の医師は緊急連絡先の番号を残して、そこに連絡できるようにしています。
  6. もし、あなたのかかっている医師が医者ではないとしたら、友達でいたい人ですか?
    医師が一緒にコーヒーも飲みたくないような人であったら、何でその人の前で洋服を脱ぐことがありますか?
  7. 医師は家に電話をかけてくれますか?
    もしそうであったら、おそらくあなたは大変な値打ちものをつかんでいるのです。

最後に、家庭医は専門医でなく、そのためその気質や、患者に求める期待が非常に異なっていることを頭に入れておかねばなりません。家庭医は普通、人と接することや患者との親密な関係、変化を好むため、専門医ではなく家庭医療を選んだ人です。中には専門医実習生であることに嫌気がさしたり、神経外科医になるだけのエネルギーがないために家庭医をやっている医師も少しばかりおりますが、いずれにせよ、皆人間であり、あなたが誰か自分とよい関係を作れる人を見つけなければならないのです。

セカンドオピニオンを得る時期

セカンドオピニオンを得るということは、同じ症状を別々の医師に診てもらうということを意味します。その医師は同じ分野、あるいは別の分野の専門医であるはずです。これは病気の診断段階や治療段階のどちらかで生じてきます。セカンドオピニオンは、様々な甲状腺の障害や疾患の診断や治療に影響を与えることがよくあります。医師は自分の診断や特定の治療法の確認のため、仲間の一人か、専門医に診察を頼むことがよくあります。これがコンサルテーション(意見を求めること)として知られているものです。時に、患者が家庭医に、別の診断や治療法を求めて他の家庭医や専門医の紹介を頼む場合もあります。これはコンサルテーションと同じ事ですが、セカンドオピニオンとして知られるようになったものです。

しかし、セカンドオピニオンは慎重を要する場合があります。医師が最良の治療を決めるにあたって、重きを置く様々なファクターがあります。例えば、バセドウ病に罹った30歳の独身女性には、ある医師が抗甲状腺剤を処方する一方で、別の医師は放射性ヨード治療を使いたいということもあります。最初のケースでは、この女性が貴重な出産適齢期にあるため、おそらく医師が放射性ヨードによるリスクを避けようとしたものとおもわれます。この女性が妊娠のごく初期にある場合のことを考え、放射性ヨードのリスクを冒したくなかったか、あるいはこの治療法の長期的影響に対する女性の不安の方が害が大きい可能性があると感じたのかもしれません。2番目のケースでは、医師が結果が早く出て確実な治療である放射性ヨードで治療すれば病気がきれいさっぱり治ると感じたと思われます。結局、病気を長引かせれば女性の苦しみを長引かせることになるし、妊娠していない限り放射性ヨードはまったく安全だからです。どちらも正しい方法ですが、自分がよいと思う治療を選ぶのはこの女性なのです。それでも、この女性に抗甲状腺剤を使いたいと思った同じ医師が、離婚してる4人の子持ちの40歳の女性に放射性ヨードを使おうとするかもしれないのです。

セカンドオピニオンが命を救うこともあります。特に甲状腺の病気の誤診があった場合はそうです。例えば、誤診されたバセドウ病が眼科専門医のところで突き止められる場合があります。このようなケースでは、患者は家庭医のもとへ行き、ストレスによる症状とそっくりの一般的な甲状腺機能亢進症の症状を訴えると思われます。そして、ちょっとゆっくりして、症状が続くようならまた来るようにと言われるのです。急に生じた目の問題をより一般的な症状と結び付けることなく、バセドウ病患者は、突然ものがぼやけて見えたり、目が痛んだりするために眼科専門医への紹介を求めることがよくあります。この時点で、甲状腺の病気により引き起こされる眼球突出症(目が飛び出すこと)の診断をするのは眼科専門医であり、患者を内分泌病専門医に紹介することになります。

生理がないことも含めて古典的な甲状腺機能亢進症の症状がある50歳の女性は、家庭医から更年期症状があると診断され、エストロゲンホルモン剤を処方されるかもしれません(この女性の年齢と症状を考えれば、とんでもない診断ではありません)。このケースでは、ホルモン治療の専門家、すなわち内分泌病専門医に紹介してもらうのが賢いやり方です。内分泌病専門医は、何か薬を処方する前にこの女性のホルモンレベルをチェックするため、様々な血液検査を行います。このケースでは、おそらく甲状腺ホルモンレベルもルーチンにチェックされるでしょう。そして、この女性の病気がここで見つかることになります。

最後に、適切なセカンドオピニオンのケースとして私自身の経験を取り上げることにします。私が20歳の時、首に硬い、痛みのないしこりがあるのに気が付き、家庭医のもとへ行きました。最初、家庭医はそのしこりが大したものではないと考え、毎年何百万人もの人に良性の嚢胞が出来ていると私を安心させました。1ヶ月経ってまだしこりがあるようだったら、また来るように言われました。1ヶ月後、しこりには変化がなく、私はもう一度行きました。この時点で、家庭医は私を形成外科医に紹介しました。これは形成外科医は異常な組織と正常な組織を見分けるのにたけているからです。この場合、私がかかった家庭医は、自分にはこの評価を行うだけの資格がないと感じ、自分自身がセカンドオピニオンを得る必要があると判断して私を送ったのです。形成外科医は直感でしこりの生検をしなければならないと感じ、私は葉切除を受けました。この時にしこりが悪性であることがわかり、次に頭頚部外科に紹介されました。手術が必要だったからです。しかし、もし家庭医が家に帰って、しこりのことなど気にしないようにと言ったていたとしたら、私はそうしていたでしょう。私達は何か悪いことが起きた時にセカンドオピニオンを求める傾向があります。しかし、自分が、聞きたいことを医師が言った時は、あえて運を試すようなことはしないものです。偶然にも、この同じ家庭医が私の母のバセドウ病をほんの2年ほど前に診断していたのです。葉切除を受け、悪性であるという診断を受けた後の私を診た時、彼は私に頭を後ろに反らすように言い、私の甲状腺を触診しました。甲状腺は明らかに大きくなっていました。そして、彼はがっかりしてこう言ったのです。「何でこれを見逃したんだろう。」言い換えれば、その医師は私の家族歴を完全に知り尽くしており、私の甲状腺は目で見えるほど大きくなっていたにもかかわらず、そのしこりの素性を明らかにできなかったのです。正確な診断は難しく、医師は誤りを犯しやすいのです。この場合、彼をよい医師にしたのは、彼が自分が間違いを犯しやすいことを認識しており、私をセカンドオピニオンのために別の医者に送ったという事実です。

セカンドオピニオンを求めるためのガイドライン

セカンドオピニオンを得るだけの正当な理由があるかどうかを知るのは難しいのです。例えば、自分が受けた診断が気に入らないというだけで、別の意見を求めてよいと言うわけではありません。例えば、明らかな甲状腺腫があり、古典的な甲状腺機能亢進症の症状と目の突出があるとすれば、医師は疑いを確かめるために放射性ヨード取り込み試験をしたいと思うでしょう。あなたはこれが気に入らず、代りにホリスティック医か、薬草医の診察を受けようと決心するかもしれません。そして、その人があなたはストレスを受けているので、休養と食餌の調整が必要なだけであると言うかもしれません。もちろん、これははるかに心休まる診断です。しかし、最初にかかった医師が正しいのです。

以下に挙げたのは、セカンドオピニオンを求めるだけの理由があるかどうかを決める手助けとなるはずのガイドラインです。

以下の質問の中で、「はい」という答えが一つでもあれば、おそらくセカンドオピニオンを求めるだけの正当な理由があると思われます。

  1. 診断は不確実なものですか?
    あなたがかかっている医師が、どこが悪いか見つけられないか、自分の診断が正しいかどうかよく分からない場合、他の医師のもとへ行く権利があります。
  2. 診断が生命を脅かすようなものですか?
    このような場合、誰か他の人から同じ事を言われることで、病気に対処したり、診断を受け入れやすくなると思われます。しかし、がんのような診断では、診断が変ることがないのが普通です。その診断は検査結果の徹底的に分析に基づいており、患者の症状だけをもとにして下されたものではないからです。
  3. その治療が論争の的であるか、実験的なものなのか、あるいは危険を伴うものでしょうか?
    診断そのものには疑問はなくても、勧められた治療に問題がある場合があります。例えば、放射性ヨードが受け入れられない場合、おそらく他の医師が抗甲状腺剤や手術の方を勧めることがあります。
  4. 治療の効果はあがっていますか?
    よくならない場合、診断が間違っているか、勧められた治療が合っていない可能性があります。時に、抗甲状腺剤が効かない場合があり、結局放射性ヨードがいちばんよかったということになる場合があります。このような場合は、誰か他の人に診てもらうことで、問題の解決がはかりやすくなる場合があります。
  5. 危険を伴う検査や処置を勧められていますか?
    放射性ヨードスキャンが好ましく感じられない場合、誰か他の人から話を聞くことで、おそらくその処置を容易に受け入れられるようになると思われます。おそらく、血液検査や生検の方があなたにとってはもっとよい方法かもしれません。同じ結果が得られる他の方法がないかどうか確かめてください。
  6. 他の治療法を望んでいますか?
    心臓病と高血圧のある80歳の女性が、甲状腺がんの診断を受けました。この患者はおそらく、成長の遅い甲状腺がんで死ぬ前に、心臓病か卒中で死ぬと思われます。その結果、主治医はこの患者が手術や治療に耐えられないと判断し、そのままにしておこうとするかもしれません。でも、この女性の子ども達がそのようなやり方は受け入れられないと言って、甲状腺がんの治療を要求するかもしれません。
  7. かかっている医師は有能ですか?
    私が産婦人科医に放射性ヨード治療がピルの効果と相反するかと聞いた時、その医師の返事は「放射性ヨードって何だ。」でした。私はそのまま帰り、2度とそこには行きませんでした。最終的に、甲状腺の病気とがんに通じた素晴らしい婦人科医が見つかりました。基本的に、あなたが持つ他の健康問題について、医師があまりよく知らず、よく調べようともしない場合、どこか他のところへ行くようにしましょう。あるいは、主治医がやぶではないかと疑っているだけなら、他へ行ってその医師への信用を再確認するか、あなたの最初からの疑惑を確認するかしてください。

とんでもないことをいう医師達

最近、甲状腺がんの治療を受けている若い女性からの電話を受けた時、私はこの項を付け加えなければならないと確信しました。彼女は甲状腺ホルモン剤の飲んでいますが、用量が高すぎ(このようなことがあります)、その結果重症の甲状腺機能亢進症になっていました。彼女の主治医の返答は、「がんの治療の後は甲状腺機能亢進症になるはずなんで、そうでなければがんがまた再発する可能性がある。」というものでした。用量を減らしたり、血液検査をしたり、またベータブロッカーを処方するというようなことも一切試みられませんでした。この女性が電話をくれた時、彼女の脈は200を超えており、体重も15ポンド(約7キロ)以上減っていました。私は、その医師が誰かと尋ねました。いったいどんな人がこれほどひどい管理ができるだろうということを知りたかったからです。

彼女は、「私がかかっている内分泌病専門医です。町に1人しかいないんです」と答えました。
「では、その医師は甲状腺の病気を治療しているんですか、それとも糖尿病が主ですか」
「糖尿病が主です」

私は彼女に最寄りの甲状腺協会支部の電話番号を教えました。そこには甲状腺専門医のリストがあるからです。甲状腺専門医とは、甲状腺疾患の管理だけを専門にしている内分泌病専門医に使われる言葉です。私は彼女に、自分にあった専門医にかかるためなら、電車やバス、あるいは飛行機に乗って行くだけの価値はあると言いました。それから、確かに甲状腺がん患者はTSHを完全に抑制するために、普通より高い用量の甲状腺ホルモン剤が必要であるが、患者に甲状腺機能亢進症の症状が出るほどに高い用量である必要は絶対にないことを説明しました。私はTSH抑制を1984年からずっとしていますが、それが原因で、軽い甲状腺機能亢進症の症状さえ、経験したことはありません。この女性は、涙ながらに家庭医が放射性ヨード治療で白血病になると言ったとも電話してきました。この時、私は放射性ヨードで白血病や乳がん、あるいは他のどんな種類のがんも起こることはないと説明しました。

要点は、主治医が医学博士号を持っているというだけでは、甲状腺専門医になれないということです。何か間違っているように感じる時は、多分そうなのです。私か(出版社気付で)この本の巻末に挙げた団体のリストのどれかに連絡して、問い合わせてください。

ここに私自身の病歴から適切な例を挙げてみます。家庭医のルーチンな健康診査の後で、医師は私のT4値がちょっと高く、少し低い用量にした方がよいと思うと言って電話してきました。私は、自分の甲状腺の病気を管理しているかかりつけの内分泌病専門医にチェックしてもらうと言いました。しかし、その内分泌病専門医は、甲状腺がんでない甲状腺の病歴のある人には家庭医の直感は適切なものであると教えてくれたのです。事実、私はTSHを抑制する必要がありますし、それがT4値がわずかに高い理由なのです。ですから、繰り返しますが、医学博士号がそのまま“甲状腺専門医”であることを意味するわけではありません。

12通りの誤った管理

甲状腺の病気の診断や管理を行う際に、初期診療を行う医師がいちばん多く犯す12の誤りをここに挙げます。

  1. 医師の多くは放射性ヨード治療についてあまりよく知りません。したがって、たくさんの誤った情報や完全に間違った情報が患者に伝えられます。子どもが生めなくなるとか、白血病になる危険性が3倍になるとか言われる可能性があります。これは全部ま・ち・が・い・です。もっと詳しいことは、《第11章》の「放射能の長い半減期伝説」をご覧ください。
  2. 医師の多くは専門医に見てもらう必要はないと主張します。これは適切なことではありません。初期診療を行う医師の多くは、自分が何を知らないかがわかっていません。甲状腺の病気は、かならず専門医にまず最初に評価してもらうべきです。実際、あなたが罹っている甲状腺の病気はそれ程厄介なものでなく、初期診療の医師でも簡単に管理できるかもしれません。しかし、甲状腺専門医からそのことを聞くまでは、そう思ってはなりません。
  3. 甲状腺の病気で運良く内分泌病専門医に紹介された場合でも、初期診療を行う医師は、内分泌病専門医が必ずしも甲状腺専門医ではないということを認識していません。先に例を挙げた話のように、多くは糖尿病だけに限って治療しており、甲状腺のことは“ちょっとかじっただけ”なのです。もっと詳しいことは、甲状腺専門医の捜し方の項をご覧ください。さらに悪いことに、多くの糖尿病専門医は、甲状腺の病気について何を知らないかが分かっていません。
  4. 医師の多くは、あなたの症状がストレスや食餌に関係したものであるといまだに言っています。
  5. 医師の多くは、首のしこりを無視し、「何ともない。」と言います。体のどこにあるしこりであれ、決して無視してはなりません。必要ならば、それが何ともないと分かるまで、セカンドオピニオンだけでなく、3番目、4番目の意見も求めてください。
  6. あなたが女性なら、多くの医師がいまだに、あなたの症状は閉経後症候群や更年期、慢性疲労症候群、そしてあらゆる事の慢性的刺激によるものだとさえ言います(これはよく聞きます)。
  7. 医師の多くは、あなたの症状を生物学的なうつ病と誤り、精神科に紹介します。あるいは、様々な間違った専門医のもとに紹介します。
  8. 甲状腺腫が硬いため、橋本病を甲状腺がんと間違える医師がおります。そのため、TSH検査や抗甲状腺抗体検査の代りに穿刺吸引生検や甲状腺スキャンを受けることになります。
  9. 医師の多くはTSH欠乏症がどういうものか認識していません。これは甲状腺機能低下症に加え、生殖腺(恥毛が抜け落ちてしまうことがよくあります)や副腎に問題が起きてくるということを意味します。症状は、性欲の完全な喪失から、血糖値の異常、高血圧まで多岐にわたります。このために、専門医から専門医へと次々に送られる可能性があります。
  10. ほとんどの医師は甲状腺の病気と加齢との違いを区別できません。古典的な問題は、高齢者が罹る感情鈍磨性甲状腺機能亢進症と呼ばれる病気が診断できないことです。これは、ごく軽い甲状腺機能亢進症があるが、症状がはっきり出るほどひどくないことを意味しています。脈が少し増えたり、ちょっと元気がなくなったりなど、それだけしか症状がない場合があります。高齢者は最大の未診断の甲状腺疾患患者の集団です。
  11. 一部の医師は、今でも甲状腺ホルモン剤を体重のコントロールのため、まったく健康な女性に処方しています。これはほとんど犯罪と言ってよいほどで、医療過誤の訴訟を起こすに十分な根拠となります。《第1章》《第2章》《第12章》《第13章》でも述べておりますが、一度治療されれば、甲状腺の病気が体重の問題を起こすことはありません。甲状腺ホルモン剤は痩せ薬ではなく、甲状腺機能低下症や他の甲状腺の病気の治療にのみ使うためのものです。健康な人がこの薬を飲むと、最後は心不全で死ぬことになります。甲状腺の病気になった後の体重の問題は、ありふれた原因で起こるものです。間違った食餌と運動不足との組み合わせです。低脂肪と健康的な食餌については、《第13章》の“甲状腺が正常な人のための栄養”の項をご覧ください。
  12. 多くの初期診療に携わる医師は、甲状腺検査のこととなると時代遅れであり、“遊離”した活性甲状腺ホルモンの代わりに結合、または“不活性”甲状腺ホルモンを測定する今では廃れた検査を行っています。《第2章》でも述べたように、適切な検査はTSHとFT4(遊離T4)です。TT4(総T4)は古い検査法ですが、それが行われているのであれば、T3レジン取り込み検査も受ける必要があります。

専門医の利用法

専門医は家庭医とは異なった系統の医者です。より学究的です。専門医学実習プログラムで教えたり、そのプログラムを主催したりしています。研究にも従事しており、定期的に自分の専門分野の論文や本を出しています。専門医は家庭医よりも長い期間のトレーニングを受け、収入もよく(内科や内分泌病専門医の収入はちょっと多いだけですが)、そのサービスに対して請求する料金も高いのです。その結果、専門医の多くは、患者への接し方に関しては、家庭医より独善的で冷たく、なかなか連絡がとれません(普通、何ヶ月も先の予約が入っています)。そして、いつも時間に追われているため、短気です。確かに、非常に思いやりがあり、このような特徴に当てはまらない専門医もたくさんおりますが、まったくこのとおりの専門医に会った時、驚いてはなりません。

さらに、家庭医の時のようにあちこち専門医を捜してまわる余裕は普通ありません。というのは、専門医は必要な時にしか紹介されないからです。この時点で、あなたの主な関心事はできるだけ早くよくなることであり、別の専門医の診察を受けるための“順番待ち”をすると何ヶ月もかかることがあります。病気の時は本当に時間の余裕がないのです。

繰り返しますが、あなたには権利があります。そして専門医にも他の医師と同じように権利があります。専門医の時間は貴重なので(高いのは言うまでもありません)、ここでは専門医を最大限に利用するために守るべきガイドラインをいくつか挙げることにします。

  1. 受診時にその様子をテープに録音する。専門医は短い時間の間にたくさんのことをいうことが多いのです。一度に押し寄せてくる情報にうろたえたり、圧倒された場合、専門医が言っていることが耳に入らないことがよくあります。受診時にテープで録音しておくのは非常に役立ちます。なぜなら、それをいちばんくつろいだ時に再生して聞けるため、言われたことをよく理解できるからです。
  2. 質問のリストを持っていき、その答えを録音する。たくさん質問がある時は、忘れないようリストを作っておきましょう。専門医はあなたの質問すべてに答える義務があります。ただ、医師にそのための時間がない場合、いくつか選択肢があります。質問のリストを渡して、次回の予約時にその質問に答えてもらえるかどうか尋ねます。不可能であれば、専門医があなたの家に電話し、質問に答えることができる時間を打ち合わせます。最終手段としては、質問─回答のための時間を取れる専門医のもとで勉強している専門医実習生がいるかどうか尋ねてください(普通、専門医実習生であれば、誰でもあなたの質問に答えることができます)。
  3. あなたの病気に関する文献やビデオを専門医に貸してくれるよう頼むか、電話でもっと詳しい情報を聞くことができる関係団体の電話番号を聞き出しましょう。私の場合、私が会った専門医の多くは、「あなたの業績」─本当は私の体─は大変興味深いと思いますというお世辞に弱いのです。あなたの病気に関して詳しい情報を持っている場合、普通、専門医は喜んで教えてくれます。
  4. 専門医にあなたの病気に関連した図を描いてもらいましょう。私がかかった頭頚部外科医は、実際に私の甲状腺の絵を描いて、どこにがんがあるか丁寧に説明してくれました。

甲状腺専門医の捜し方

これは、多くの読者の方がご指摘になったとおり、ちょっと大変な場合があります。まず、すべての内分泌病専門医が甲状腺を“専門”にしているわけではないということです。多くは、糖尿病だけを専門にしており、中には生殖腺だけという専門医もおります。ありがたいことに、甲状腺疾患だけを専門にしている医師もたくさんおります。2番目に、甲状腺の手術が必要な場合、すべての外科医が甲状腺の手術をするわけではないということです。また、内分泌病専門医は甲状腺の手術は行いません。そして、一人の内分泌病専門医が地域全体の診療を行っている小さな町に住んでいる場合(これはよくあることで、そういう医師は甲状腺より糖尿病の方に詳しいことが多いのです)、専門医捜しは容易なものではありません。ここに、よい甲状腺専門医を見つける最短ルートを挙げます(ただし、絶対確実というわけではありません)。

  1. この本の巻末に載せてある甲状腺関連団体に電話をして、最寄りの甲状腺専門医をリストアップしてもらう。甲状腺専門医という言葉を使ってください。電話に出た人がよくわからないようであれば、甲状腺の病気を専門に扱っている“内分泌病専門医”と言ってください。
  2. 初期診療担当医のもとへ行き、そのリストの中から最低2名の専門医へ紹介してもらうようにする(健康保険の多くは、専門医にかかるのに紹介を要求しています)。
  3. いろいろなことを聞けるよう両方の医師に予約を入れる。毎年どれくらいの甲状腺疾患のケースを扱っているか聞いてください。その答えが10例以下であれば、贔屓目に見ても、その専門医はそんなに多くの甲状腺疾患患者を診ていないということになります。それから、その専門医に1年当たりどれくらいの糖尿病患者を診ているかを聞いてください。その数が比べものにならないほど多ければ、間違った診療所に来ている可能性があります。また、その専門医が年に何人位の不妊症患者を診ているかも聞いてください(結局、不妊症専門医または生殖腺専門医にかかっていたということにならないよう念を押すためです)。
  4. それでもうまく行かない時は、人に誰か甲状腺の病気に罹っている人を知らないか尋ねる。そして、その人に電話して誰に診てもらっているのか聞きます。よそのもっと大きな町まで出て行く必要があるかもしれませんが、管理ミスをされるのを避けるためにはそれだけの価値があります。管理ミスの方が結局は高くつくのです。
  5. 甲状腺専門医が見つかったら、その医師が眼科専門医(甲状腺性眼症のため)、頭頚部外科(手術のため)、核医学専門医(放射性ヨード治療のため)、腫瘍専門医(甲状腺がんのため)など、他の専門医への紹介を手配してくれます。次の専門用語集の項を参照してください。

専門医一覧

必要かどうか分からない時に甲状腺専門医を捜すのはちょっと難しいのですが、甲状腺の病気では少なくとも3人の専門医に出会うことになると思われます。最初の医師は、普通家庭医ですが、その医師が紹介やコンサルテーションの手続きを始めることになります。次に、あなたが出会うことになるであろう専門医の一覧を挙げてあります。それぞれの専門医にかかる時の参考のために簡単な説明を付け加えております。

内分泌病専門医
これはホルモンの専門医、もっと正確に言えば、内分泌系を専門にする医師のことです。甲状腺はホルモンを作るので、内分泌病専門医は甲状腺ホルモンに関わるすべての複雑な問題がわかります。理由は何であれ、甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症であれば、内分泌病専門医に紹介されます。一般的に、内分泌病専門医は甲状腺ホルモン剤の用量を管理し、放射性ヨード治療や甲状腺切除術を含む、他のあらゆる治療を監督します。
眼科専門医
これは目の専門医です。バセドウ病や橋本病による目の病気に罹っている場合にのみ出会う医師です。家庭医か、内分泌病専門医のどちらかが紹介してくれます。
心臓病専門医
甲状腺機能亢進症のために心悸亢進が起こったり、心臓の働きが悪くなった場合、内分泌病専門医か、家庭医がこの人のもとへあなたを送ることがあります。
頭頚部外科医
一般的に、甲状腺切除術が必要な時に、内分泌病専門医が頭頚部外科医に応援を求めます。(内分泌病専門医の監督下で)例えば、特にたちの悪いバセドウ病のケースで、年齢的に放射性ヨード治療ができない場合、手術しか方法がないことがあります。また、甲状腺ホルモン剤に反応しない、厄介な甲状腺腫がある場合にも手術が必要なことがあります。ただし、甲状腺がんの場合、かならず手術が必要です。このようなケースでは、家庭医が内分泌病専門医を飛ばして、直接頭頚部外科医に紹介する場合があります。
核医学専門医
放射性ヨード治療が必要な場合、短期間核医学科に行き、核医学の専門医に出会うことになります。この専門医が放射性ヨードがどのように効くか説明し、スキャンや治療を行います。これはいわば一夜限りの関係ですが、内分泌病専門医や頭頚部外科医は、治療に関してこの科と日常的に連絡を取り合っています。しかし、核医学科にケアが移されることはありません。
放射線腫瘍専門医
甲状腺がんに罹っていて、外部照射治療が必要な場合、頭頚部外科医か、内分泌病専門医が放射線治療医(放射線外部照射を専門にしている医師)のもとへ送ります。この医師が治療の放射線照射部分を管理します。
腫瘍専門医
これはがんの専門医です。甲状腺がんになった時に出会うことになります。時に、頭頚部外科医が腫瘍専門医を兼ねている場合があります。
小児科医
子どもが甲状腺の病気に罹っており、まだかかりつけの小児科医がない場合、家庭医か、産科医(病気が出生時に見つかった場合)、あるいは内分泌病専門医が紹介します。
老人医学専門医
この医師は高齢者の病気を専門にしています。甲状腺の病気に罹った高齢の両親がいる場合、老人病専門医がコンサルタントとして呼ばれることがあります。時に、老人病専門医が内分泌病専門医の応援を頼む場合もあります。
婦人科医
女性で、甲状腺の病気に罹っている場合、自分で婦人科医を捜すか、内分泌病専門医または家庭医に紹介してもらうようにしてください。
男性病専門医
ENTとしても知られていますが、家庭医が様々な甲状腺の症状(例えば、甲状腺炎や喉のところのしこりなど)で途方にくれた時、この医師のもとに送られるはめになることがあります。
精神科医
家庭医が、甲状腺の症状をストレスのせい、あるいは“ただの想像”だというような時、精神科医に送られることになるでしょう。
消化器専門医
これは胃腸または消化器の専門医です。胸焼けやもたれ、便秘などの症状がある場合に送られることがあります。

もちろん、他にも甲状腺の誤診に関わる数種類の専門医がおりますが、一覧に挙げるほどのことはありません。基本的に、この章の目的は、1990年型の医療ビジネスを知っていただくことにあります。古いルールは消えてしまいました。辛抱強く責務や責任を追求していくことで、より健康な医師と患者の関係への道が開かれつつあります。これは、より多くの情報を求め、自分の病気についての教育を受けることを意味します。《第11章》は、放射性ヨードスキャンや治療を受けたか、これから受ける人が読むためのものです。

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