第16章:甲状腺が原因で太りますか?

この章は、今太り過ぎであり、過去に甲状腺が不活発であるために太っているのだと言われた人のために書かれたものです。ここでの目的は2つあります。まず最初に、なぜ甲状腺機能低下症と言われたか、その理由を理解することと、次に、今本当に甲状腺機能低下症であるかどうかを見つけるための手助けをすることです。

あなたが甲状腺機能低下症になったら、一般的に言って同時に太るということはありません。体が使う酸素(その代謝速度)は減少し、甲状腺が正常であった時に比べて身体的活動が不活発になることがあります。しかし、おそらく太るに十分なほどの食べ物は食べないと思われます。さらに、甲状腺ホルモンによる甲状腺機能低下症の治療を始めた場合、最初から明らかに肥満であったとしてもたいして体重は減らないことがあります。治療初期に3〜4ポンド(1〜2キロ)体重が減ることがあるかもしれませんが、これは脂肪の減少というよりむしろ貯まっていた組織液がなくなるために起こるものです。

それでも、あなたは他の多くの人と同じように、過去に甲状腺が不活発になっており、そのために肥満が起きていると言われ、今現在甲状腺ホルモン剤を飲んでいるかもしれませんね。おそらく、基礎代謝率検査(またはBMR)、あるいはタンパク結合ヨード(PBI)の血液検査を受けており、それが医師により低い、または“境界域”にあると判定されたのを思い出されるかもしれません。もし、甲状腺ホルモンによる治療を始めてから何週間か経って体重が減り始めた場合、おそらく甲状腺ホルモン治療による“臨床試験”の結果、実際に甲状腺機能低下症であることが確認されたことを告げられることもあるかと思います。

しかし、BMRやPBIは甲状腺機能低下症の確定診断を下せる程感度の高いものではなく、特に甲状腺の機能がわずかに下がっている程度の場合ははっきりしません。肥満それ自体がBMRの低下を来すので、甲状腺機能低下であるという誤った印象を与えることもあったかと思われます。今では、軽度の甲状腺機能低下症の診断をつけるのに、医師は血液中の甲状腺ホルモン(サイロキシンまたはT4)レベルの低下と脳下垂体の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の血中レベルの上昇の方を信頼するようになっています。TSHレベルは、甲状腺の機能不全の指標としてずば抜けて感度の高いものですが、血液中の甲状腺ホルモンの量が少なすぎることを感知して脳下垂体がTSHを血液中に放出すると、このレベルが上昇します。1970年以前は、血清TSHを測定することはできませんでした。そのため、医師はもっと感度の低い検査や臨床的判断、そして甲状腺ホルモン治療に対する反応などに頼らざるを得なかったのです。もちろん、最初に検査を受けた時に甲状腺機能低下症であり、今でもその問題を抱えている場合もあるでしょう。その反対に、甲状腺はずっと正常であった可能性もあります。

甲状腺ホルモン剤を飲んでいて体重が減ったのであれば、甲状腺ホルモン剤による治療の効果というより、徹底したダイエットを続けたためであるとも考えられます。また、甲状腺ホルモンの錠剤からの偽薬効果もあったかもしれません。:錠剤が体重を減らす効果を持つと信じることで、実際に体重が減った可能性があります。

今では、血清TSHを測定することにより、確実に甲状腺機能低下症であるかどうかがわかります。これは3つの理由から重要なものです。まず、診断が古い、感度の低い方法でなされたものであれば、本当に甲状腺に問題があるかどうかを見るために役立ちます。もし、甲状腺が正常であれば、甲状腺の薬にお金を使う必要はありません。長年にわたって甲状腺ホルモン剤を飲んでいた場合であっても、薬が本当に必要ないのであれば薬を止めることができますし、甲状腺の機能は速やかに正常に戻ります。2番目に、高齢者では甲状腺ホルモンの量が多すぎると、頻脈や不整脈、筋肉の弱り、睡眠障害などの症状を引き起こし、健康に害を及ぼすことがあります。3番目に、実際に甲状腺機能低下症がある場合、生涯にわたって甲状腺ホルモン剤を飲み続けなければなりません。家庭医に定期的な血液中の甲状腺ホルモンとTSHのレベルを測定してもらい、甲状腺ホルモン剤の量が正しいかどうか確認する必要があります。これは、若い時に軽度の甲状腺機能低下症であった人が、後になって甲状腺の機能不全の程度が進み、甲状腺ホルモンの量を徐々に上げていく必要があることがよくあるため、大切なことです。

これらの理由から、何年も前に不活発な甲状腺あるいは肥満の治療のため、甲状腺ホルモン剤の投与を受けた場合、甲状腺が今正常であるかどうかを見る必要があります。正常であれば薬はいりません。正常でない場合、医師は検査を行い、今必要な甲状腺ホルモンの適正量を決めることができます。

医師は甲状腺ホルモン剤の服用を中止させることで、あなたが甲状腺ホルモン剤を必要としているかどうかを、簡単かつ安全に知ることができます。6週間後、血液中のT4とTSHレベルの測定ができます。T4は甲状腺機能の一般的な指標となります。甲状腺機能低下症であれば、T4は低くなっているはずですが、甲状腺がわずかに不活発になっているだけの場合は“正常範囲”内にとどまっているでしょう。その一方で、TSHは、甲状腺機能低下症であれば、軽度のものであっても必ず正常値以上に増えています。さらに、血清TSHは甲状腺ホルモンの適正な投与量のガイドとして使うことができます。何年間も甲状腺ホルモン剤を飲んでいた場合でも、甲状腺が健康であれば血清TSHは正常になります。

まとめとして、あなたが体重の問題に対処しやすくなると信じて、甲状腺ホルモン剤を飲んでいるのであれば、おそらく間違っています。体重がコントロールできているのであれば、成果が出たのはあなた自身の努力のためであり、甲状腺ホルモンの錠剤のためではありません。それでも、甲状腺が正常であるかどうかをはっきりさせることは大切です。医師の監視のもとで、甲状腺ホルモン治療を中止し、サイロキシンとTSHの血液検査を受ければ、そのような薬が必要かどうかがわかります。甲状腺ホルモン剤が必要であれば、定期的に投与量の再チェックをしなければなりません。必要がない場合、甲状腺ホルモン錠に不必要な費用を費やし、しかも健康を害する可能性もあります。

あなたの甲状腺は大丈夫ですが、それなのになぜ太り過ぎなのでしょうか?

あなたが太り過ぎであれば、それは消費する以上のカロリーを取っているからです。他の人が太らずにどれだけの量を食べることができるかにはまったく関係なく、むしろあなた自身の代謝の状態と個人的な食餌パターンに関係するファクターによるのです。科学者が見つけたいのは食物摂取をコントロールする“引き金”であり、薬や治療で“スイッチを切る”ことができるものなのですが、あなたの食習慣を決めるたくさんの様々なメカニズムがあります。体重の問題がうまく解決できるかどうかは、あなた自身の状況を理解し、それをコントロールできるかどうかにかかっています。

どのように食べるかは、まずあなたの感覚が食物を識別する方法によります。
どのように見え、どんなにおいや味がするかです。それから、実際に食べ始める前であっても、脳の中でホルモンの変化が起こり、消化器内で何種類かの化学物質やホルモンの分泌が起こります。これらの中には胃酸や腸内酵素、および膵臓からのインスリンがあり、消化と代謝を助けます。最後に、いつ食べるのを止めるかを知らせるフィードバックシステムがあります。ある人にとっては、胃が食べ物で膨らむにつれて感じる、満腹感であるでしょうし、他の人はめったに満腹感を感じることがなく、ただ、いらいらが治まったり、テーブルの上に食べ物がもうなくなった時に食べるのを止めるだけであるかもしれません。私達をある一定の体重に保つ傾向を持つ、長期的フィードバックシステムはさらにわかりにくいものです。一部の人は、何週間、何ヶ月も食べたいだけ食べ続けた後でも体重がほとんど変わらないこともあります。

多くの太り過ぎの人にとっては、そのようなことはありません。調査によると、アメリカ合衆国の成人の26%にあたる約3400万人が太り過ぎであるとなっています。1992年の合衆国国立衛生研究所の会議で、成人女性の40%と成人男性の24%が体重を減らそうと努力していることが報告されました。1年間ダイエットを行った後、実際に体重が減った人は約1%しかいないことから、簡単なものでないことは明らかです。したがって、体重があなたの問題である場合、その確率を変え、やせるためにはどのようにしたらよいのでしょうか。

私共は、まず最初にあなたの食餌パターンの中で重要と思われるファクターを見ることに答えがあると考えています。ここでは、カウンセラーや栄養士がお役にたてるかと思います。おそらく、ある食べ物やアルコール飲料からどれだけのカロリーを摂取しているか気付いていない場合もあるでしょうし、食べるまで長いこと待ち過ぎて、やっと食餌にありついた時に食べ過ぎているのかもしれません。間食が多すぎたり、脂肪を取り過ぎている場合もあるでしょうが、そのカロリーは蛋白質や炭水化物の倍以上あるのです。時に、配偶者にもっと小さな食器で食餌を出してもらうようにしたり、間食をやめるなど行動パターンを変えることが有効な場合があります。

しかし、これはあなたにとって、体重は減らすことができ、甲状腺の問題やそれ以外の遺伝的問題が基礎にあるから“他の人と違う”ということではないことを証明する上で非常に大きな意味を持っています。そうするために、あなたの主治医が認め、あなたが費用を負担することができれば、ウェイトウォッチャーズのような既製の食餌パックプランを試してみてもよいでしょう。そうでなければ、同様なプログラムに従って、特別な食餌を自分で用意できるよう、栄養士に綿密な指導をあおぐようにしてください。ただ、これはあなたが自分で食餌の割り当て分をはからなければならないことを意味しますので、その分難しくなります。何ポンド減らすかある数字を目標に定めてください。ダイエットの期限を限るようにします。一度、本当に体重を減らすことができることがわかったら、体重の問題の長期的コントロールに成功する確率が高くなります。

これより以下は患者からの私記です。

肥満  T.D.より

私は、現在今まででいちばん長く、またうまくいったダイエットを行なっている最中です。しかし、過去10年間に成功の度合いは様々でしたが、ずっとダイエットを行なってきたのです。
絶食したり、ダイエットのための薬やトランキライザーを飲んだりし、1日コップ10杯の水も飲みましたし、ウェイトウォッチャーズにも加わりました。また、毎食グレープフルーツを食べたこともあります。ダイエットセミナーに参加したり、カナダ空軍の体操を行い、Aydsを食べ(2日で一箱全部食べてしまいました。あまり食べ物を食べていなかったのでものすごくおいしかったのです)、ウェイトウォッチャーズにもう1度加わり、朝ご飯を抜き、昼ご飯を抜き、間食を止めました。私は新しい夏用の服を、そして冬用、春用、秋用の服を勧められました。
もし、この世に正義があり、例えば5ポンド(約2.5キロ)やせられるダイエットを始めていたら、今では100ポンド(約45キロ)になっているはずです。でもそうなっていません(まだです)。ダイエットを始めることは、明らかに計算することではありません。計算した通りにすることなのです。
なぜ私がダイエットを始めたかですか?誰もが聞いたことのあるドラマチックで印象的な、そして破滅的な理由からではありません。飛行機のシートベルトのバックルがはまらなかったり、心臓発作を起こしたこともなく、また回転ドアに挟まってしまったり、買い物に行って何も合うものが見つからないというようなこともありませんでした。どこにだっておデブさん用の店はあるのです。私にとっては、大体いつもいろいろなことが積み重なった結果でした。私のルームメートのように格好よく見えなかったり、あるいはすっきりした着こなしにならないこと(なぜ、太った人は必ずやせたルームメートと一緒になるのでしょう)。一生懸命音楽を聴くのが好きなふりをして、大学の親睦パーティーでほとんど一人で立っていたこと。よく気のつくセールスレディーからちょっとひだやギャザーを寄せたものが私の姿を引き立たせるかもしれないと言われたこと(またはその原因がなくなれば)。私の母から、迷いに迷ってやっと買ったドレスがいかにも堂々として見えると言われたこと。定期的にこれらのことすべてが混ざり合って、私は落ち込んでしまい、私に付いている余分な脂肪に対し何かせずにいられなくなるのです。
そのため、私はまた別のダイエットを始めることになるのです(ダイエットという言葉に異議を唱える気はまったくありません。イーティングプログラムとか栄養バランスパターンとかなんとか言っても、結局ダイエットはダイエットなのです。何で言葉を弄ぶのですか)。どのダイエットも最初の2〜3日は簡単です。私は大体、自己満足や他の人からの励まし、そして私だってやせるための自制心があり、やせることができることを見出す喜びなどの感情の高まりで励みがつきました。やせたい人のほとんどは、どのように食べるべきかよくわかっていると思います。よい朝食は、コーヒーには砂糖の代用品、トーストは一切れ、マーガリンをつけ過ぎないようにすること。また、昼食にはたぶんサラダに肉と果物を少々。夕食には肉と魚、鳥肉、野菜。そして、間食やデザートを食べないなどです。これは学校でも習いましたし、テレビで見たり、人気のある雑誌で読んだりしています。でも、私はといえば、全部よくわかっているのに、まだうまくいかないのです。
それでも、体重をうまく減らし、もとに戻らないようにすることは可能です。危険な徴候に気付いたら、それに立ち向かうための対策を講じることができます。

  1. よく考えずにダイエットを始めてはいけません。医師のもとへ行き、あなたが太っている医学的理由がある可能性を探って貰うようにします。衝動的にダイエットを始めてはいけません。そのような勢いは長く続かないからです。
  2. あなたが長く続けられるような良識のあるダイエットとプランを選ぶようにします。本当に生涯グレープフルーツを食べ続けられると思いますか?
  3. 辛抱強く、長期的な視野を持つようにしましょう。例えば、1ヶ月で5ポンド(約2キロ)、2年で100ポンド(約45キロ)を目指すようにします。私は、ここがいちばん難しい部分だと思いますが、これが唯一理にかなったアプローチ法です。
  4. 誰か話せる人を持ちましょう。これは友人や同僚ではありません。というのは、その人達は興味を持つかもしれませんが、普通は、果てしなく続くダイエットの話しに飽きてしまうからです。グループミーティングや医師の元に行ったり、あるいはうんとやせることができた人と話すようにしましょう。そのような人は、よく気持ちがわかってくれますし、勇気づけてくれる聞き手であることがわかりました。注意:まだ低い段階で、モラルに縛られている時に食べ物を買いにいくのは悲惨な結果となることがわかりました。何もかもとてもよいものに見えるし、その後買ったものを全部食べなくてはと感じ、そうすれば使ったお金は無駄にならないと思うのです。
  5. 自分自身を元気付ける他の方法を見つけるようにしてください。このことは、ただ冷蔵庫に向かうよりずっと時間も食いますし、頭を使う必要があります。何を選んだにせよ(散歩、サイクリング、博物館巡り、テニス、ショッピング)大体いつも最小限の身体的活動に関わる付加効果があります。
  6. 上に述べたことのどれ一つとしてうまくいかなかったり、本当にあきあきしてしまった場合(私はどのような長期間のダイエットにはこれはほとんど避けられないことだと思います)は、そのままにして、好きなようにしますが、本気でダイエットを再開する前に、5〜10ポンド(2〜4キロ)しか太らないよう限度を設定しておきます。全体からみれば、これは時間の無駄ですが、これしか方法がないことが時にはあるのです。何ヶ月もダイエットを続けた後、2〜3日自分を甘やかすと、普通は何か悪いことをしているように感じ、また再び始めるようになることを私はよく知っています。

まとめとして、ダイエットには2つの大きな問題があることがわかりました。それは

  1. 忍耐力がないこと。
  2. 悪いことをしていると感じ、落ち込むこと。

約6ヶ月程常に進歩を続けていると、忍耐力のなさはほとんど消えてしまいます。罪の意識はどのようなダイエットでも、断続的に続けている限りついて回ります。私は以前、私には意思の力など全くなくて、動機付けもなく、始めたことを最後までやれないのだと考えていました。それはたいそう気の滅入る考えです。しかし、長い間の経験から、ダイエットは困難なものだということに気が付きました。やるだけのことはありますが、難しいのです。あまり度々でなく、やり過ぎないのであれば、時たま怠けるのも許されると思います。

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