第10章:甲状腺のしこりと腫瘍

甲状腺の結節はありふれたものです。多くは良性であり、悪性のものはごくわずかです。しかし、はるかに数が多い良性の結節の中から、ほんのわずかの悪性病変をかぎ出すのは難しいことです。

Wang CA, Vickery AL, and Maloof F
甲状腺の針生検より
外科、産婦人科1976; 143: 365-68

[図28]
図28
首にしこりを見つけたら、医者にみせてください。

甲状腺のしこり、または結節は一般集団の中でも比較的ありふれた病気です。甲状腺を丁寧に調べると、人口の約4%に直径1cm以上の甲状腺のしこりがあることが明らかになりました。さらに、剖検で甲状腺全体を丁寧に調べたところ、実際はもっと数の多いものであり、人口の半分以上に見られる可能性があることがわかりました。

幸いなことに、ほとんどの結節は無害であり、がんを含むものはほとんどなく、またほとんどは治療の必要がありません。甲状腺がんは起こりますが、非常に希な病気です。アメリカ合衆国の公衆衛生総局は、甲状腺にがんが見つかるのは、1年に人口100万人あたり25人にすぎないことを報告しています。したがって、自分で、あるいは医師が首のところにしこりを見つけたとしても[図28]、慌てることはありません。結節の診査を受けることは重要ですが、悪性である可能性はあまりありません。それよりも良性である可能性の方がはるかに高いのです。

甲状腺結節の評価

医師は十分注意を払って病歴を聞き取り、頚部を調べ、甲状腺のしこりが内科的、または外科的治療が必要なものであるかどうかを定めるのに必要な情報を得るため、血液検査(検査室検査)をいくつか行います。[表3]に示したように、病歴の聞き取りを行うことで、医師は結節が良性のものであるか、あるいは悪性であるのかを判断する手がかりとなる情報を得ることができます。例えば、甲状腺が活発すぎるか、不活発である症状を伴っている、あるいは慢性リンパ球性甲状腺炎か甲状腺腫のような良性の病気のある親族がいる成人女性では、しこりが良性である可能性が高くなります。その一方で、甲状腺がんの家族歴があったり、結節がどんどん大きくなる、結節にリンパ節の肥大を伴っている、あるいは過去に顔面や頚部のX線治療を受けたことがあれば、しこりががんである確率が高くなります。また、声が変ったり、しゃがれてきたり、ものを飲み込みにくくなったりすることがあれば(がんが近接する首の各部を圧迫していることを窺わせる症状です)、がんである可能性は非常に大きくなります。

理学的検査では、医師が甲状腺を触診します。良性の結節はやわらかく、肉様である傾向があり、近接するリンパ腺の肥大がありません。甲状腺の残りの部分にも触診で異常をみとめることがあります。もし、甲状腺内に複数の結節が触れる場合は、結節性甲状腺腫のような一般的な甲状腺の病気であることがうかがわれるため、安心してよいのです。その反対に、医師が固く、固着したしこりを一つだけ触れ、甲状腺の他の部分は明らかに正常である場合は、結節にがんを含んでいる可能性があります。しこりが近接する組織に“固着”していたり、近くにある。

リンパ腺の肥大を伴っている場合、がんである可能性が高くなります。
医師が頚部を調べた後、診査での所見に応じた検査を勧められるはずです。幸いに、今日使われている検査で、取り除かなければならないがん性腫瘍と放置、または内科的に治療できる無害なしこりを大体見分けることができます。

甲状腺結節の検査

甲状腺の結節を評価する血液検査(検査室検査)や画像診断法は数多くあります。
これらは[表4]にまとめてありますが、次のものが含まれます。

  • 甲状腺の活動が活発すぎるか、不活発であるかを見るための血液検査。
  • 音波を使う超音波画像診断だけでなく、放射性ヨードスキャンを含む画像診断。
  • 小さな針で結節のサンプルを採る甲状腺生検。

医師の多くは血液検査と甲状腺の画像診断の方を好んで行い、結節があまり機能していない固いしこりであることを窺わせる結果が出た時にのみ生検を勧めます。これはがん性であることがめったにない機能性のしこり、あるいは液体で満たされた嚢胞よりむしろ、がんの存在を示唆していることの可能性が高いからです。反対に、画像診断では結節の性質についての確かな答えが得られることがめったにないため、血液検査や甲状腺の画像診断の前に、まず最初の検査として生検を行う甲状腺の専門家が増えてきております。また、スキャンや超音波診断を受けた患者のほとんどで、その甲状腺のしこりの大多数が固く、ほとんど機能していないということが判明し、さらに検査が必要となることから、結局は生検も受ける結果となるのです。したがって、医療費に重きがおかれるようになった時代では、ほとんどのケースで生検が必要になることから、甲状腺の画像診断を最初に行わずに生検を行う方がより費用効率がよいのです。この章の残りの部分では、生検の後に必要であれば、超音波、またはそれ以外のスキャンニングを行う従来のアプローチ法を使う甲状腺結節の評価について述べることにします。ただし、医師が診査の最初のステップとして、生検を勧める場合にはそうするべきですし、その方法が選ばれる頻度はますます大きくなっています。

従来のアプローチ法

[図29]正常な甲状腺のスキャン
図29

血液検査で甲状腺ホルモンレベルが高い、あるいは低いということ、または抗甲状腺抗体の存在(慢性リンパ球性甲状腺炎の存在を示唆しています)が明らかになれば、おそらくそのしこりはがん性のものではないということが考えられます。しかし、放射性ヨードによるスキャンの方がもっと役に立つと思われます。これは、結節自体の機能状態をはっきり示してくれるからです。

甲状腺スキャンを行うために、少量の放射性ヨードを経口カプセルまたは水に溶かしたもので与えられるか、他にはテクネシウムと呼ばれる放射性物質の注射を受けることになります。24時間後(テクネシウムの場合は20分後)、甲状腺全体の画像を得るためのスキャン写真が撮影されます[図29]。

[図30]多結節性甲状腺腫
図30

スキャンでは結節の位置をはっきりさせることができ、甲状腺の機能状態を周辺組織と比較することが可能になります。さらに、他にも甲状腺内に異常な領域をみとめることが時にあり、甲状腺の残りの部分の機能状態についても有益な情報を得ることができます[図30]。
スキャンのパターンが、数個の結節の存在を示している時は、おそらく多結節性甲状腺腫として知られている無害な病気であると思われます。

[図31]スキャンでは活動し過ぎの“ホット”な結節
図31
ほとんど全ての放射性ヨードが集まっているのがみとめられます。

一般的に、甲状腺の結節はホット(機能している)またはコールド(機能していない)とみなすことができます。ホットな結節では、放射性ヨードが甲状腺周辺組織と同じかそれ以上に集積しています。時に、ホットな結節が甲状腺ホルモンをあまりたくさん作っているために、残りの甲状腺組織が抑制され、スキャン上では目に見えなくなっていることがあります[図31]。
経験上、ホットな結節が悪性であることはめったにありません。

コールドな結節は放射性ヨードの集積が少ないか、まったくないものです[図32]。
がんはすべてコールドですが、ほとんどの良性の結節と嚢胞もコールドです。

[図32]不活発な(“コールド”な)結節
図32

事実、孤立性のコールドな結節の5から10%が悪性であるにすぎません。しかし、コールドな結節が存在すれば、かならずもっと詳しい検査を受ける必要があります。さらに、放射性ヨードスキャンで正常に見える甲状腺の中に、不活発な領域が限局してみとめられる場合は、がんを含んでいる可能性が高くなります([図32]にある結節のようなもの)。

甲状腺結節の管理の進め方

ホットな結節は、甲状腺ホルモンを作り過ぎることで甲状腺機能亢進症を起こす可能性があります。一般的に、ホットな結節で、小さなもの(直径1cm以下)は甲状腺機能亢進症を起こしませんが、サイズが大きくなるにつれて甲状腺ホルモンの作り過ぎになる確率は、はるかに大きくなってきます。したがって、そのサイズを測るだけで、医師はホットな結節の活動性についてある程度知ることができます。ホットな結節がある場合、まったく治療を必要としないこともありますが、結節が産生している甲状腺ホルモンの量がわずかでも上昇すれば、骨からカルシウムが失われるのを防ぐため、治療が必要になることがあります。今では、甲状腺ホルモンがわずかでも過剰になると、骨粗鬆症を引き起こす可能性があることがわかっているからです。治療を行っていなければ、たとえ小さな結節でも、そのうち成長して過剰な甲状腺ホルモンを作るようになることがあるため、フォローアップを受けることが大切です。もしこのようなことが起これば、甲状腺機能亢進症をコントロールする治療を行うようにします《第5章》

[図33]
図33
超音波画像に甲状腺嚢胞がみとめられます。液で満たされた暗い像の中には少量の甲状腺組織が含まれています(矢印)。

しかし、結節がスキャン上でコールドである場合、結節が機能していないのは結節にがんがあるためなのか、液体に満たされた嚢胞であるためなのか、あるいは単に無害なタイプの充実性甲状腺腫瘍であるためかを医師は知ろうとします。そこで、医師はレーダーと同じような音波を使って甲状腺の画像が得られる超音波検査を勧めることになるでしょう。嚢胞は、暗い、または“エコーフリー”な領域として現れ、充実性腫瘍とはまったく異なっています[図33]。

しかし、超音波検査の欠点は、充実性腫瘍が無害なものであるのか、がんであるのかがはっきりわからないことです。コールドな結節でいちばんよい検査は、細い針で吸引する生検です(穿刺吸引細胞診)。

甲状腺の生検

生検と言う言葉は、顕微鏡検査用の甲状腺組織のサンプルを採る2つの方法のどちらかのことをいいます。この検査を行うには、まず局所麻酔で首の皮膚をしびれさせ、細い針を甲状腺の結節に刺します。穿刺吸引細胞診では、シリンジが付いた細い針を通じて、甲状腺の結節から少量の細胞が吸引されます。これとは対照的に、針切生検ではもっと太い中空の針を使って、検査用の甲状腺組織の円筒形標本を採取します。今日では、穿刺吸引細胞診が非常に正確で、簡単にできるため、針切生検はめったに行われなくなりました。これらの方法は、熟練した医師の手で行われれば安全ですし、医師の診療所で行われるのが普通です。穿刺吸引細胞診に熟達した医師は、非常に正確な結果を得ることが多いのです。しかし、慣れていない医師が行うとあいまいな結果しか出ないことがあります。
したがって、甲状腺の生検が必要な場合、医師がこの方法を専門に行なっている人を紹介することがよくあります。

生検では約70%の頻度で、甲状腺の結節が良性(無害)なものであることが示されます。良性の診断が出れば、通常医師は、結節が大きくなったり、新しい症状が出たりしないか再チェックするための追加検診の予約をするだけですみます。この章の後の方で述べますが、患者に甲状腺ホルモン剤を投与することも時々あります。この薬で結節が小さくなることがあるからです。結節の約5%で、生検標本内にがんがみとめられます。結節にがんがみとめられた場合は、医師はまず間違いなく結節と甲状腺の一部、あるいは全部を手術で取り除くことを勧めます。

生検標本の約20%で、疑わしいという報告がなされ、また約5%で診断不能といわれますが、これは診断を下すのに十分な量の組織が採取されなかったためです。
結節が疑わしいものであれば、医師は、甲状腺ホルモン剤を与えながら、結節のサイズが小さくなるかどうかしばらく観察するようにするか、あるいは直ちに手術で甲状腺をとることを勧めると思われます。幸いなことに、疑わしい結節のほとんどは、最終的に良性であることがわかります。生検で診断不能であった場合、ほとんどの医師が適切な標本を得るため、もう一度生検を行うように勧めるでしょうが、これができない場合、おそらく甲状腺ホルモンによる治療か、外科的切除が勧められることになるでしょう。

また、結節が独特の性質をもってたり、子どもの頃に頭部や頚部の放射線治療の既往のような特別のファクターがある場合、生検を行う代わりに直ちに結節を手術で取り除くよう勧める可能性もあります。このステップで正確な診断がつき、もちろん治療法もはっきりしますが、どのような状況であれ、心配なことがあったり、他にも情報が欲しい場合は、結節について他の医師の意見も求めるようにしてください。実際に、医師から手術を勧められた場合、健康保険ではそのような意見を求めることを必要としているものがあります。

甲状腺結節の甲状腺ホルモン治療

[図34]多結節性甲状腺腫のスキャン
図34

甲状腺の中に数個のホットな結節がある場合は、おそらく多結節性甲状腺腫として知られているありふれた病気であると考えられます《第2章》。これらの結節にがんが含まれることはまずありません。これはホットな、またはコールドな複数の結節からできており、甲状腺スキャン上では甲状腺全体に特徴的な“まだら状”の放射性ヨードの取り込みが見られます[図34]。

このような場合、あるいは生検ができないほど結節が小さいか、生検ができないような場所に結節がある場合、医師は数ヶ月結節の様子を見ることを選ぶでしょう。この観察期間中、甲状腺ホルモン剤で治療を受けると思われますが、これは結節を小さくするか、結節の周辺組織を小さくして結節が触れやすいようにするためです。甲状腺ホルモンの錠剤はこのように使われることが多いのですが、これは脳下垂体の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の産生の“スイッチを切る”ことで作用します。TSHによる刺激がなくなることで、一部(全部ではない)の結節はサイズが小さくなり、正常な甲状腺組織は小さくなってきます。実際に、甲状腺ホルモンの錠剤を使った治療で、結節が小さくなれば、そのことで医師には結節が良性の可能性が高いことがわかります。

この理由から、医師の多くは生検で良性とみとめられた結節を小さくするために甲状腺ホルモンを処方します。結節が小さくなるようであれば、それはその結節が無害である間違いない証拠なのです。甲状腺ホルモンで治療を受けている場合、医師は定期的に検査のため再来するようにいうと思いますが、この検査の理由は飲んでいるホルモンの量が多すぎないか確かめるためです。もしそうであれば、医師は甲状腺ホルモンの量を減らし、後でもう一度調べるようにするでしょう。甲状腺ホルモンの量が正しいかどうか確かめる方法としては、TSHの血液検査がいちばん正確です。

結節ががんであることがわかったら、その後はどうなりますか?

コールドな結節ががんであることが証明されるような希な例であっても、慌てる必要はありません。甲状腺がんは成長が遅いのが普通で、ほとんどは手術で完全に取り除くことができます。腫瘍を完全に取り除くことができないような例でも、甲状腺ホルモンや放射性ヨードを使った治療によく反応し、時にX線治療や化学療法が追加されることがあります。

悪性の甲状腺腫瘍には数種類のタイプがあります。これには乳頭がん、濾胞がん、ヒュルトレ細胞がん〈注釈:濾胞がんの一種〉、髄様がんおよび未分化がんが含まれます。乳頭がんが抜きんでていちばん多く、過去に頭部や頚部の放射線照射治療を受けた人に、その変異形が起こる傾向もあります。幸いなことに、このタイプの甲状腺がんは普通いちばん治りやすいものです。近くのリンパ腺にのみ転移し、体の他の部位に転移することはめったにありません。濾胞がんやヒュルトレ細胞がんは甲状腺から離れた骨や肺、肝臓など体の他の部位に転移する傾向が強く、そのためコントロールがもっと難しくなります。乳頭がんまたは濾胞がんがある場合、医師は胸部X線や放射性ヨードスキャン、骨スキャンなどを含む特殊な検査を指示するでしょう。髄様がんはいくつかの特殊な性質を持っており、この章の後の方で述べることにします。

未分化がんはもっとも重篤な形の甲状腺の悪性腫瘍であり、常に予後は不良です。

どのような甲状腺がんの治療も複雑なため、医師は甲状腺がん専門医またはがん専門医に助言を求めることになるでしょう。

勧められる治療は存在する腫瘍のタイプと広がりによって異なります。一般的に、甲状腺がんのほとんど、あるいは全部を取り除く手術で治療が始まります。普通は、全部ではありませんが甲状腺のほとんどを取り除きます。甲状腺内に残っているがん細胞の除去を試みる放射性ヨード治療を手術の後に行うこともあります。甲状腺がんの再発や転移を監視するため、医師は血液サンプル中のサイログロブリンとして知られる物質のレベルを測定する必要があります。サイログロブリンは、甲状腺内で甲状腺ホルモンの貯蔵庫として働く大きな蛋白質です。正常な場合、血液中のサイログロブリンの量はわずかですが、甲状腺がんが体の他の部位に転移すると増加することがあります。したがって、血液検査でサイログロブリンのレベルが高いということは、甲状腺がんが転移したか、あるいは一度治ったと考えられるがんが再発したことを意味する可能性があります。ほとんどすべての患者が甲状腺ホルモン剤による治療を生涯にわたって受けることになります。良性の甲状腺結節や正常な甲状腺組織の場合と同じで、多くの形の甲状腺がんは、その成長をTSHに依存しています。したがって、脳下垂体のTSH分泌を抑え、甲状腺がんの成長を予防するために甲状腺ホルモンが投与されるのです。ほとんどの甲状腺がんは完全に治癒し、治療の予後も素晴らしいものです。

特殊な甲状腺がん

甲状腺がんの約10%は髄様がんとして知られている、いくらか変った腫瘍です。これらの腫瘍は、他の形の甲状腺がんのように、頚部に単一の固いしこりとして見つかることがあります。そのようなケースでは、他の甲状腺結節と同じように検査を行うべきで、外科的に取り除くことでうまく治すことができることが多いのです。しかし、中にはこれらの腫瘍が遺伝性疾患の一部である患者もおり、そのような人では甲状腺内に複数の髄様がんが見付かるのが普通です。この病気を持つ患者は、副腎(高血圧を起こすことがあります)や副甲状腺(血液中のカルシウムレベルを上昇させることがあります)にも腫瘍ができる場合があり、中には神経の腫瘍(神経腫)も現れる人もいます。

髄様がんの細胞は、カルシトニンというホルモンを産生します。これは血液検査で突き止めることができます。カルシトニンの測定はいくつかの点で役に立ちます。まず、血液中にカルシトニンが存在することで、患者に髄様がんがあることがわかります。2番目に、手術が終わった後にまだ患者の血液中にカルシトニンがあれば、腫瘍が全部取りきれておらず、さらに腫瘍の治療が必要であることを意味します。最後に、患者が遺伝性のタイプの髄様がんであれば、医師はカルシトニンの血液検査を使い、親族内の同じ病気を持つ人を、腫瘍が完全に発育してしまう前に見つけることができます。そのような親族ではこのがんを子どもの時に見つけ出すことが腫瘍細胞が甲状腺から他の場所へ転移する前に治す最大の機会となるため、生命に関わる重要なこととなります。

明らかに、髄様がんは他のタイプのがんと異なる多くの特徴を持った腫瘍です。したがって、あなた自身か、家族の者がこのタイプの甲状腺の病気であれば、他の家族もこの病気を見つけるための検査を受けるべきかどうか医師に聞くことが大切です。

まとめ

まとめてみますと、医師は甲状腺結節の原因を正確に突き止める方法を自分の裁量で自由に選ぶことができます。
ほとんどの場合、検査では結節が無害なものであり、手術は不必要であるという結果がでます。検査の結果、甲状腺の結節内にがんがあることがうかがわれる場合は、病気を治す効果があるのは手術のみですが、必要であれば他の形の治療法もあります。

これより以下は患者からの私記です。

甲状腺の生検  S.S.より

医師は静かで落ち着いたやり方で、診査を始めました。最初に指で私の首に触れましたが、全然痛くありませんでした。その後、紙の上に絵を描いて、甲状腺のどの部分にしこりがあるのかを見せてくれました。これから何をするのか、またそうするのがなぜ大事であるのかを説明してくれました。それから、一緒に診察室に歩いて行きました。私はシャツのボタンを上の方から3つか4つはずし、診察台に仰向けに寝ました。看護婦さんが肩の下に枕を置いたので、私の頭は後ろに下がりました。まるでさかさまになっているように感じました。この姿勢で、私の首のところがあらわになり、そこをアルコールで洗われました。先生が、これからノボカインを首に注射すると言いました。針が刺さった時、ちょっとピンでつついたような、あるいは蚊に刺されたような感じがしました。
数分経って首の皮膚がしびれてから、先生が生検を始めました。これは首の皮膚がしびれたところから針を甲状腺のしこりに刺し込むことです。この間、首のところが少し押されているような感じがするだけで、痛みや不快感はまったくありませんでした。終わりに近付いた頃、私は少しめまいがしてじっとりと冷たい感じになりましたが、これはたぶん私が神経質になっていたのと、枕のせいで頭が後ろの方に下がっていたためと思います。先生は全部終わるまでずっと、何をしているか説明し、話し続けてくださったので、恐くありませんでした。
生検が終わった後、生検をした首のところをガーゼをあてて抑えていました。肩の下の枕が取り除かれ、10分程静かに横になっているように言われました。この間にめまいも完全にとれました。それから間もなく、看護婦さんが首の生検をしたところに小さなバンソウ膏を貼りました。それから、私は起き上がり、あるいて外来へ行き、そこで2〜3分待ってから車を運転して家に帰り、夕食も食べました。痛みやめまい、不快感はありませんでした。
夜遅くなってから、首のところに打ち身ができたような感じの痛みに気付きました。生検をしたところに少し腫れもありました。しかし、本当に痛かったり、ひどく不快に感じることはありませんでした。

見つかった甲状腺の結節の検査を受け、取り除いたこと  H.J.より

[図35]不活発な“コールド”結節
図35

触診中に、医師が私の甲状腺の中にしこり、または“結節”があるようだと言いました。このため、先生は私の甲状腺ホルモンレベルを測るための血液サンプルを採り、甲状腺のスキャンを指示しました。血液検査は正常でしたが、一昨日飲んだ少量の放射性ヨードを使って行われたスキャンでは、疑われたとおりの結節があり、それが“機能していない”ことが示されました。これは、結節のところが甲状腺の残りの部分のようにヨードを取り込んでいないことを意味しており、スキャンの画像では空洞のように見えます[図35]。
次のステップは甲状腺の生検でした。これは外科医師が行い、結節の中にどのような甲状腺組織があるかを調べ、手術して取るかどうかを決めるために行われるものです。
生検が血液サンプルの採取より難しいものでもなく、痛くもないことがわかって安心しました。外科医師はシャツのボタンをいくつか外し、枕をしいて仰向けに寝て、甲状腺のある首の部分がよく見えるようにするよう言いました。首をアルコールで消毒した後、局所麻酔で皮膚をしびれさせました。皮膚がしびれてから、外科の先生が甲状腺の結節に針を刺して、生検用の標本を採りました。生検の間、首のところを押されているような感じがしましたが、痛みはありませんでした。また、先生が気管を押した時、咳が出そうになりました(でも我慢しました)。その後、綿のガーゼを5分間生検をしたところにあてていました。その後で、“傷”の上にに小さなバンソウ膏が貼られました。気分が悪くなることもなく、起き上がり、家に帰って結果を待ちました。
生検標本を調べた後で、主治医の先生は手術の方に賛成しました。外科の先生が予定している手術、“甲状腺部分切除”について話してくれました。これは結節がある甲状腺の左の葉だけをとることです。また、手術中の検査で病気が思ったより広がっていれば、もっと広範な手術が必要になること可能性があるとも言われました。
一般健康状態を調べるための診察と検査のため、手術の前々日に入院することになりました。手術の後で、数日間のどの痛みがあるだろうが、手術後の朝食は食べられると言われました。疲れると思うので、術後2〜3週間は仕事を休むことにしました。
1週間後に入院しました。午後に胸部X線や心電図、血液検査、尿検査などの型通りの術前検査が行われました。夕方に、麻酔医が部屋に来て、これから起こることについて少し話してくれました。夜中以降は何も食べたり飲んだりしてはいけないと言われました。もしそうしたければ、朝手術室に行く前にリラックスできるような注射も受けられるということでした。腕の静脈に針を入れ、そこから眠らせる薬を注射すると言われました。眠った後で、口から気管に管を差し込み、手術中にそこから酸素と麻酔ガスが送られるということでした。目が覚めた後、2〜3時間はふらつきを感じ、吐き気があるかもしれないと言われました。
みんなが言っていたとおりに物事は進んでいきました。手術の前夜は少しばかり恐かったのに、びっくりするくらいよく寝られました。手術の朝、完全に目が覚め、お腹が空いていました(もちろん何も食べることはできません)。手術衣を着て、頭にネットをかぶり、マスクをはめた手術室助手の人が私を乗せるストレッチャーを持って来ました。いろいろな廊下を通って手術室のあるところに運ばれました。ストレッチャーは私の手術が行われた手術室の外にある小部屋で止まりました。すぐに手術室看護婦と麻酔担当看護婦が来て、私の名前やアレルギーがあるかどうか聞き、他にも前に聞かれたことを2〜3尋ねました。これは、ただすべてちゃんとなっているか確かめるためのものです。最後に麻酔担当看護婦が私の腕に静脈針を刺しました。その後すぐに担当の外科医が側に立っているのがわかりました。担当外科医とちょっと話し、回りにいる人から励ましの言葉を聞いた後、モルヒネの静脈麻酔が注射されました。これで、体全体がびりびりして、眠くなってきました。この時点で手術室に運ばれたのですが、私はまだ意識があり、手術台の上できちんとしようとしていましたが、ペントタールナトリウムが静脈に注射されるにつれ、回りにいるマスクをした人の顔がだんだんぼやけてきて、眠りに落ちました。
目が覚めた時、私は回復室のベッドの上に横になっていました。ここで、手術の後の合併症がないことがはっきりするまで、もう2、3時間過ごしました。とても喉が痛く、飲み込むのが困難でした。まだ薬が効いていているようで、とてもむかむかしました。5秒ほど目を開けていたり、人に気がついたり、壁の時計で時間を見たり、また話すこともできたのですが、その後また眠りに落ちてしまいました。この間痛み止めは必要ありませんでした。約4時間後に病室に戻されましたが、そこで午後9時ごろまでうつらうつらしたり、眠ったりしていました。それから、術後約8時間経っていましたが、まだ喉が痛く、飲み込みにくい状態でした。非常に弱った感じでしたが、数時間起きていました。手を貸してもらい、トイレまで歩いていくことはできました。ただ、明らかに膀胱がいっぱいになっているのに、全部出してしまうのに数度トイレに行かなくてはなりませんでした。これは麻酔薬の影響です。
一口毎に痛みましたが、なんとかストローでジンジャーエールを飲むことができました。その晩はずっと眠ったり起きたりしていました。そして、薬によるふらつきと吐き気の方が手術からくる喉の痛みより、もっと悪いように思えたので、痛み止めは断りました。
次の朝はもっと意識がはっきりし、やわらかい朝食を何とか飲み込むことができました。静脈の針が外れ(手が痛かったので、とても嬉しかった)、その後首に付けてあったゴムの小さな管が外され、管が入っていたところを縫いました(全部痛みはありませんでした)。入院している間に、喉の痛みはだんだんひいていきました。2日目に糸が取れ、家に帰りました。1週間ほどは、弱っているように感じ、疲れやすかったのですが、手術から2週間経つ頃にはすっかり元気になりました。手術部位のまわりの腫れや首の左側(結節と甲状腺葉を取った側です)の痛みもその間によくなりました。

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