第5章:活動し過ぎの甲状腺

私が知っている限りこれまでに考えられていなかったこの理論の根拠となる点、すなわち22歳の甲状腺腺腫のある患者は間違いなく増殖性甲状腺腫(バセドウ病)とそっくりの症状を呈する場合があり、最高の訓練を積んだ診断医でさえ、常にこの2つの病状を見分けるのに苦労するということに注意を喚起したい。

Plummer HS. 増殖性甲状腺腫と非増殖性甲状腺腫の臨床的、病理学的関係
アメリカ医師会雑誌, 1913; 61: 650

前の章で、バセドウ病として知られる甲状腺機能亢進症について述べましたが、それは甲状腺全体が活動し過ぎの状態になります。甲状腺機能亢進症という言葉には、血液中に正常より多い量の甲状腺ホルモンが出るため、ちょうどグレーブス病になったのと同じような病状を呈する他の病気も数種類含まれています。神経質になり、びくびくして、暑さを嫌い、涼しい方を好むようになったり、また心悸亢進の発作を経験する場合があります。さらに、当たり前か、それ以上に食べているのに体重が減ることもあります。ただ、この章で述べる甲状腺機能亢進症には、バセドウ病との重要な相違点がいくつかあります。

  • バセドウ病は、この病気を起こしやすい傾向、あるいは罹りやすさを遺伝した人に起こるようで、いくつかの付加的ファクター(ストレスの多い生活状況など)が発病のきっかけとなります。他の形の甲状腺機能亢進症には遺伝的傾向はそれほどないようです。
  • バセドウ病では、病気の自然経過の一部分として、晩期になると徐々に甲状腺の機能が落ちていくことを示すはっきりした証拠があります。甲状腺機能低下症が起こった時に、それがすぐにわかり、治療できるよう生涯にわたるフォローアップが重要となります。ここに述べる形の甲状腺機能亢進症の中では、一つだけ(無痛性甲状腺炎)が甲状腺機能不全を続発します。対照的に、これらの病気の多くは自然に治ってしまったり、適切な治療で完治することができます。
  • バセドウ病は、20歳から40歳の間の女性に起こることがいちばん多いのです。他のタイプの甲状腺機能亢進症のほとんどは、やはり男性より女性に多いのですが、異なった年齢グループが罹患する傾向があります。例えば、中毒性多結節性甲状腺腫は、30歳から40歳の間の年齢がいちばん多いのです。
  • バセドウ病患者は、他にもはっきりした関連症状を生じる傾向があります。これには目の突き出し(眼球突出症)や脛の上の皮膚が固くなったり(前脛骨粘液水腫)、それ以外の自己免疫に関係した症状が含まれます《第9章》。他の形の甲状腺機能亢進症患者にはこのような傾向はないようです。
  • バセドウ病では、抗体として知られる物質が血液中に現れ、甲状腺の活動し過ぎを起こします。これらの甲状腺刺激抗体が、他の種類の甲状腺機能亢進症を起こすような役割は果たしていないようです。
  • 最後に、これら他の種類の甲状腺機能亢進症はバセドウ病に比べ、希なものです。

これらの違いを頭に入れて、甲状腺機能亢進症を起こすことのある他の病気の重要な特徴をこれから述べていくことにします。

ホットな結節

[図20]
図20
活動し過ぎの“ホット”な結節

単発の甲状腺結節、実際は無害なタイプの甲状腺腫瘍の過活動は、甲状腺機能亢進症の約5%を占めています。これは、甲状腺スキャン上の外見から時にホットな結節と呼ばれることがあります[図20]が、1913年に活動し過ぎの結節による甲状腺機能亢進症を最初に記載したメイヨー診療所の医師の名を取って、プランマー病とも呼ばれます。活動し過ぎの単発結節は、年配の女性に見られるのが普通ですが、年齢、性別を問わず起こり得るものです。

もしあなたがびまん性中毒性甲状腺腫(バセドウ病)であれば、あなたの甲状腺全体が多すぎる量の甲状腺ホルモンを作っています。しかし、あなたにホットな結節がある場合は、甲状腺の中の結節だけが過剰に機能しているのです。結節がもっとたくさん甲状腺ホルモンを作り出すようになると、次第に甲状腺の残りの部分はその機能を減じていきます。最後に、その結節が体全体に必要なだけのホルモンを作るようになる時が来ます。しかし、その結節で作り出されるホルモンの総量がまだ“正常”なうちは、具合が悪くなることはありません。結節が必要量以上のホルモンを作るようになって初めて、甲状腺機能亢進症の症状に気付きはじめるのです。
時に、検査を行う前であっても、診察した医師が“ホットな結節”が甲状腺機能亢進状態の原因だと疑う場合があります。診断のための手がかりは次のようなものです。

  • 甲状腺機能亢進症状がある。
  • 甲状腺全体が大きくなっているというよりむしろ、甲状腺の中の一つの塊だけが大きくなっている。
  • 甲状腺の残りに部分は正常な場合より小さく感じることがあります。これは結節が体全体の必要量以上の甲状腺ホルモンを作っているため、働くのをやめてしまったからです。
  • 親族にも甲状腺の問題あるいはその他の“関連”症状《第9章》があることが多いバセドウ病患者と違い、ホットな結節がある場合はバセドウ病の家族歴がある可能性は低いです。

普通は、医師にとってあなたの甲状腺機能亢進症がホットな結節のためであると証明するのは、簡単なことです。
あなたの血液サンプルの中に含まれている甲状腺ホルモンの量は増えているでしょうし(T3のみか、あるいはT3とT4の両方)、甲状腺のスキャンでは、ホットな結節に対応する機能が活発になっている領域が一個だけ認められるでしょう[図20]。また、脳下垂体から放出される甲状腺刺激ホルモン(TSH)の量も下がっています。時に、血液中のT3とT4が正常な範囲内に留まっているのに、TSHのレベルが低いことがあるため、これはきわめて重要な指標であります。脳下垂体は、甲状腺から出る甲状腺ホルモンの生産量のわずかな変化にもきわめて敏感であり、血液中のホルモンレベルがまだ正常範囲内にあったとしても、ホルモンの生産量の増加を感知できるのです。この状況は潜在性甲状腺機能亢進症と呼ばれますが、ホットな結節のある患者に普通に見られます。
それでも、ホットな結節のある患者に特有なものではありません。わずかに多すぎる甲状腺ホルモンを飲んでいる甲状腺機能低下症患者だけでなく、他の形の軽い甲状腺機能亢進症にも見られることがあります。
《第17章》にも述べていますが、なぜこのような形で甲状腺の一部が活動し過ぎになるのか、やっとわかり始めたところです。しかし、まだこれが起こらないですむようにする方法はわかっていません。幸いに、ホットな結節のある患者のほとんどは、バセドウ病患者ほど具合が悪くなることはないようです。もし、あなたのホットな結節が甲状腺機能亢進症を生じないか、あるいは潜在性(軽度)甲状腺機能亢進症であれば、医師は単に定期的に診査を行い、血液中の甲状腺ホルモンの量をチェックして甲状腺機能亢進症がひどくなっていないか確かめるだけの場合もありますし、ごく早期あるいは軽症のうちに治療をした方が良いと感じる場合もあります。
抗甲状腺剤による治療では、この形の甲状腺機能亢進症を寛解に導くことはできません。したがって、これらの薬剤はホットな結節の治療にはめったに使われません。あなたの結節が、病気になるほど多量にホルモンを作り出している場合、医師が手術で結節を取り除くよう勧めることがあります。それは、取り除く必要があるのは結節だけであり、甲状腺の残りの部分はそのまま残すことができるため、手術で治るはずだからです。結節が取り除かれれば、正常な甲状腺組織は再び機能し始め、手術後の甲状腺機能低下症はめったに起こりません。
もう一つ別の方法として、医師がホットな結節を放射性ヨードを使って治療することを勧める場合があります。放射性ヨードは、普通錠剤または水薬の形で服用しますが、甲状腺に行って、ホットな結節にのみ集まります。これは甲状腺の残りの部分が不活性なためです。放射性ヨードは体から尿中に排泄されたり、あるいは崩壊として知られるプロセスにより、非放射性の状態に変わって排出されてしまうまで、結節内に数日間留まります。しかし、短期間結節内に留まっている間に、結節内の活動し過ぎの甲状腺組織の一部を破壊します。そのようにして、これ以上甲状腺ホルモンを作ることができなくなるのに十分な量の組織が破壊、あるいは損傷を受ければ、病気は治ってしまいます。理由は分からないのですが、通常ホットな結節はバセドウ病患者が必要とするよりも高い量の放射性ヨードを必要とします。しかし、多い放射性ヨードの量を必要とするにもかかわらず、そのような治療の後で甲状腺機能低下症が起こることはまずありません。それは、甲状腺の大部分が放射能による損傷を免れるからです。何週間か経って、ホットな結節の機能が放射能被爆の効果により、低下してくると、甲状腺の残りの部分が再び働き始めます。その後、具合がよくなり、永久に治ってしまいます。

中毒性多結節性甲状腺腫

[図21]多結節性甲状腺腫
図21

時に、甲状腺の中に複数の活動し過ぎの結節が存在することがありますが、これはもう一つの形のプランマー病です。この状態は、中毒性多結節性甲状腺腫として知られており、甲状腺機能亢進症全体の約10%の原因となっています。患者の年齢はバセドウ病になる人より年齢が高い傾向があり、そのため甲状腺ホルモンのレベルが高いために起こる頻脈や衰弱、体重減少から病状が重くなることがあります。ほとんどのケースでは、甲状腺腫が長年存在しており、甲状腺機能亢進症が生じるまで徐々に活動が活発になっていくのです。
あなたが中毒性多結節性甲状腺腫に罹っていれば、医師は甲状腺機能亢進症の症状と甲状腺が大きくなり、ごつごつした感触があることでこの病気を疑います。
診断は、普通血液検査で甲状腺ホルモンのレベルが高く、TSHレベルが低いことと甲状腺スキャンで甲状腺の活動が活発になっている領域が数個示されることで確定されます[図21]。

何が原因で多結節性甲状腺腫が活動し過ぎの状態になるのかわかっていません。
希なケースですが、結節性甲状腺腫のある患者が、心拍の乱れを治療するのに使われるアミオダロンのようなヨードを含んだ薬を飲んだ後、あるいはCTスキャンや腎臓のレントゲン撮影などで画像のコントラストを増強するためのヨード含有造影剤を使ってX線撮影をした後に突然甲状腺機能亢進症を発病することがあります。しかし、もっと多いのは何年もかかって徐々に甲状腺機能亢進症が起こってくるものです。したがって、医師は年に1〜2回甲状腺の機能をチェックするだけですみます。ホットな結節の場合と同じで、この形の甲状腺機能亢進症の治療は直接的であるのが普通です。初診時に体の中の甲状腺ホルモンのレベルが高いために具合が悪いのであれば、アテノロールまたはプロパノロールのようなベータ遮断薬で、甲状腺ホルモンが体に作用するのを妨げて、脈拍を遅くしたり、一般的に気分をよくしたりして、症状自体はすぐに軽くすることができます。さらに、プロピルチオウラシルやメチマゾール(タパゾール)などの抗甲状腺剤も、活動し過ぎの結節による甲状腺ホルモンの産生を落とすのに使うことができます。しかし、中毒性多結節性甲状腺腫は自然に治まる(バセドウ病では時々起こります)傾向はないため、医師が甲状腺内の活動し過ぎの細胞の数を減らさずに、永久的に病状のコントロールをすることはまずありません。
活動し過ぎの細胞は放射性ヨードを使った治療で減らせますが、その治療効果はホットな結節で見られるものとは少々異なっています。放射性ヨードが甲状腺内の数箇所の活動し過ぎの場所に入っていくため、将来いつか甲状腺機能低下症になる可能性が高くなります。同様に中毒性多結節性甲状腺腫で手術が選択された場合、おそらく外科医が甲状腺のほとんどを取り除くことになるため、術後に甲状腺機能低下症がより起こりやすくなります。あまり多く組織を残せば、新しい結節ができ、過剰な量の甲状腺ホルモンを作り出すため、甲状腺機能亢進症が再発する可能性があります。
どちらの方法でも、甲状腺機能亢進症は安全にコントロールすることができます。また、治療の結果甲状腺機能低下症が起きたとしても、1日1回甲状腺ホルモンの錠剤を飲んで、血液中の甲状腺ホルモンのレベルを正常にまで上げるだけですみます。活動し過ぎの結節が再発し、体の中の甲状腺ホルモンレベルに変化を来たし、時には甲状腺機能亢進症も起こす可能性もあるので、医師は何年にもわたってフォローアップするために定期的に甲状腺の検査を行います。そのようなことがおきた場合は、治療の原則は前に述べたものと同じで、通常は放射性ヨードを使います。

甲状腺の炎症に関連した甲状腺機能亢進症

[図22]
図22
亜急性甲状腺炎の患者は、気分が悪く甲状腺の炎症と圧痛があります。

時に、ウィルス感染に関係した亜急性甲状腺炎として知られる甲状腺の炎症が起きることがあります。あなたが亜急性甲状腺炎に罹った場合、おそらく熱があり、体中が痛み、また圧痛のある炎症を起こした甲状腺のために喉が非常に痛むため、インフルエンザあるいは非常にたちの悪い咽頭炎に罹ったと思うかもしれません[図22]。

甲状腺ホルモンは炎症を起こした甲状腺から漏れ出す傾向があり、十分な量が体の中に入れば、甲状腺機能亢進症の症状が現れることになるのです。
この場合、あなたの甲状腺は活動し過ぎではないため、血液中の甲状腺ホルモンレベルは高くなっておらず、またTSHレベルも低くなく、それでも甲状腺による放射性ヨード取り込みは低くなっている(甲状腺が不活性である証拠)ことから、医師はこの形の甲状腺機能亢進症を見分けることができるのです。血沈の値が高いことも、医師がこの診断を下すためのもう一つの重要なファクターです。これは甲状腺の炎症の程度を反映しているからです。この病気は定型的(定まった期間に定まった経過をとる)であるため、通常の場合、喉の痛みや、熱、筋肉の痛みはアスピリンまたは同様の薬で、また甲状腺機能亢進症の症状に対しては、アテノロールまたはプロパノロールのようなベータ遮断薬を使った治療で十分です。急速な症状の改善が期待でき、その後2〜3ヶ月以内に完全に治ってしまいます。時に、アスピリンでは症状の適切なコントロールができないため、コーチゾンが必要なこともあります。
この病気では、引き続いて甲状腺機能低下症期になることがあります。これは普通、軽度なもので、1ヶ月以上続くことはありませんし、甲状腺がもう一度働き始めるのにかかる時間を表わしているのです。もし、甲状腺ホルモンのレベルが低いためにだるさや疲れを感じる場合には、医師が甲状腺ホルモンの錠剤を処方することもありますが、普通は必要ありません。

甲状腺機能亢進症は、甲状腺の大部分を切除する手術によっても治すことができます。そのような方法を取った後、残った甲状腺の組織はまだ機能亢進の状態にありますが、組織の量が少なくなっているので、前ほどたくさんのホルモンを産生することはできません。したがって、血液中の甲状腺ホルモンのレベルは下がり、甲状腺機能亢進症の症状も治まるのです。
外科手術の準備のため、医師が数週間抗甲状腺剤で甲状腺機能のコントロールをすることになるでしょう。通常、ヨード錠も手術前に10日間処方されますが、それにより手術中の出血が少なくなるのです。
ほとんどの外科医は、患者が確実に治るに十分な量の甲状腺組織を取り除くため、甲状腺の約90%を切除します。甲状腺機能低下症が手術直後、あるいは後になって起こってくることがあります。しかし、もし甲状腺機能低下症が起こっても、甲状腺ホルモン錠で簡単に治療することができます。甲状腺ホルモンの投与量が正しければ、甲状腺ホルモンを飲んでいる患者は、まったく健康に感じているはずです。

無痛性甲状腺炎は最近になって初めて認められた病気ですが、これが妊娠の後で起こると出産後甲状腺炎と呼ばれます。アメリカ各地の様々な報告では、この病気は出産後の女性の約8%に発生しています。これは亜急性甲状腺炎に伴う甲状腺機能亢進症の特徴と多くの共通点があります。血液中の甲状腺ホルモンのレベルは高いが、放射性ヨードの取り込みは低いことなどですが、亜急性甲状腺炎の患者とは異なり、この病気の患者は甲状腺がひどく痛んだり、血沈値が非常に高くなることはありません。要するに、甲状腺の炎症症状とその徴候がないということです。
あなたがこの病気になったら、この病気には痛みがないのでアスピリンが必要ない以外は、ちょうど亜急性甲状腺炎であるかのような治療が行われます。通常、医師はアテノロールやプロプラノロールのような薬で、2〜3週間して自然に病気が治まるまで甲状腺機能亢進症の症状のコントロールを行います。亜急性甲状腺炎に見られるのと同じように、甲状腺機能亢進症の後に甲状腺機能低下症への移行期が来るのが普通です。最近の研究では、この形の甲状腺機能亢進症では、甲状腺機能亢進期の直後、または何年も経ってから、一次的な、あるいは時に永久的な甲状腺機能不全を起こす可能性があることが示唆されています。したがって、自然に治った甲状腺機能亢進症があった場合は、定期的な検診を受けることが大事です《第7章》

ヨードにより起こる甲状腺機能亢進症

ある種の感受性の高い人では、ヨードが甲状腺機能亢進症の原因となる場合があるということがずいぶん前から知られていましたが、この興味をそそる現象が起こる理由はわかっていません。1972年以前は、この問題は世界のヨード欠乏地域にしか見られませんでした。これらの地域に必要なヨードを食べ物に添加した栄養食品が導入された時、住民の一部が甲状腺機能亢進症を起こしたのです。この甲状腺機能亢進症は自然に治ることもありましたが、多くは薬剤や放射性ヨード、あるいは甲状腺の手術でコントロールする必要がありました。
もっと最近になって、食餌中のヨードの量が正常な人であっても、過剰なヨードにより甲状腺機能亢進症が起こる可能性があることがわかってきました。過剰なヨードは、ケルプ(海草の一種〈注釈:昆布のこと〉)などの食物や去痰薬、心臓病薬のアミオダロン、あるいはCTスキャンや腎臓、膀胱、脊髄、血管などのX線撮影に使われるX線造影剤などの薬剤に含まれています。潜在性の甲状腺腫のある患者では、このヨードの“甲状腺中毒”効果を経験する可能性がいちばん高いのです。
あなたが過剰なヨードのために起こった甲状腺機能亢進症に罹っているのであれば、医師はまず、余分なヨードの取り込みがなくなっているのを見ようとするでしょう。そして次に、甲状腺の活動し過ぎが自然に治まるかどうか見定めるまで、アテノロールやプロプラノロール、あるいはその他のベータ遮断剤のうちのどれか一つを使って症状のコントロールをすることになります。もし、甲状腺機能亢進症が続くようであれば、他の手段がとられるはずです。治療には、甲状腺を手術で取り除くだけでなく、抗甲状腺剤も含まれます。この病気には放射性ヨードは効きません。すでに過剰なヨードが体の中に存在しているため、放射性ヨードの治療効果が薄められてしまうからです〈注釈:日本ではこの病気は非常に希です。わたしは、まだ経験がありません〉

甲状腺ホルモン剤の過量投与

多すぎる甲状腺ホルモンを飲んでいる人は誰でも、甲状腺機能亢進症を起こす可能性があります。感情障害のある患者は、わざと多すぎる量の甲状腺ホルモンを飲むということが知られています。そのような人は、自分自身を薬で傷つけるというより、問題があってその助けを求めていることを知らせるため、わざとそうしているのです。一方で、自分ではトラブルを起こす意図がない人でもこの種の問題が見られることが時にあります。甲状腺ホルモンを飲み過ぎたり、間違った種類の甲状腺ホルモンを飲んだりしてはならないことは明白なように思えますが、今ではそれほど簡単なものではないことがわかってきました。医学研究で、甲状腺が不活発な場合、適切な補充療法として1日に必要なサイロキシンの投与量はおそらく100から200マイクログラムであるだろうということがわかっています。
もし、飲んでいるサイロキシンの量がこれより多ければ、服用している薬のために甲状腺機能亢進症の症状が出る可能性があります。医師は、血液中のTSH量を測定することで、甲状腺ホルモンの投与量が正しいか、多すぎるかを知ることができます。薬の量が多すぎる場合は、血液中のTSHレベルは下がります。そのようなケースでは、血液中のTSHレベルが正常になるまで、これは体の中にある甲状腺ホルモンの量が正しいことを脳下垂体が感知できたことを示すものですが、徐々に薬の量を減らしていくことができます。一度甲状腺ホルモンの必要量がわかれば、医師が年1回以上甲状腺ホルモンとTSHのチェックを行うことはあまりありません。

甲状腺機能亢進症を起こすことがある腫瘍

時に甲状腺機能亢進症を起こすことがある数種類の腫瘍が今までに見つかっています。甲状腺がんはそのような腫瘍の一つです。甲状腺がんの細胞に甲状腺ホルモンを作る能力がある場合が時にあり、体の中にそのような細胞が十分に存在する時に、甲状腺機能亢進症が起こると思われます。
非常に希ですが、体の他の部位にできた腫瘍が甲状腺に影響を与えることがあります。例えば、脳下垂体に腫瘍のある患者は、過剰な量のTSHを作るという報告が数百ほどあります。この治療は通常、甲状腺に対してというより、脳下垂体に対して行うのがもっとも効果的です(これが本当の犯人だからです)。この例では、甲状腺は無実の傍観者であります。その他に甲状腺機能亢進症を起こした希な腫瘍としては、生殖器に発生したものがあります。そのような腫瘍が認められた時は、直接問題の原因に対する治療が行われます。

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