第1章:全般的な情報

正常な甲状腺機能と異常な甲状腺機能

あなたの甲状腺は、体の中にたくさんある腺の中の一つで、ホルモンとして知られている特殊な化学物質を作っています。ホルモンは血液の流れに乗り、体中を巡り、脳や心臓、肝臓、腎臓、筋肉、骨、皮膚を含む体の中の様々な部分に影響を与えます。したがって、わずかなホルモンレベルの変化が、体全体の異常を引き起こしうるというのは当然のことです。一度、ホルモンが体の中の特定の組織に到達すると、細胞外または細胞内の細胞質か核に存在するレセプターと相互反応を起こし、ある機能を誘発します。甲状腺で作られる特定のホルモンは、核内にあるレセプターに作用し、体内で起こる代謝の速度に影響を与えます。

通常は、血液中の甲状腺ホルモンのレベルは一定で、日々の変動はほとんどありません。しかし、甲状腺が病気になると、高いレベルの甲状腺ホルモンを産生することがあり、その場合、体の代謝がスピードアップされて心臓の鼓動が速くなったり(心悸亢進)、神経質、腸が頻繁に動いたり、またカロリーの燃焼速度が速くなるにつれて体重が減ったりするというような症状が起こります。それとは反対に、ゆっくり機能している甲状腺では、正常レベル以下の甲状腺ホルモンしか産生されず、このため心臓の鼓動が遅くなったり、疲れやうつ状態、便秘を起こすことがあります。甲状腺ホルモンのレベルが低ければ、皮膚や髪の毛、爪の成長も遅くなり、そのため、荒くなったり、乾燥したり、縮れたりするようになります。あまり太る体質でもないのに、体重が大幅に増えることもあります。簡単に言えば、甲状腺が不活発な状態になると、おそらく“疲れきった”ように感じになるのが一般的です。

[図1]
図1"

甲状腺は、首の前の方に認められるのが普通です[図1]。
甲状腺は左右に分かれており左右で重さは、正常な場合、約1オンス(約28g〈注釈:日本人は10〜15gである〉)です。喉仏のすぐ下で気管の両側にあり、峡部として知られている狭い帯状の甲状腺組織でつながっています。時に、少量の甲状腺組織が、気管に沿って峡部から上の方に突き出している場合があります。この組織は、錐体葉と呼ばれるもので、生まれる前に、甲状腺が舌の後部から起こり、そこから首の前に降りてくる際に残ったものです。

甲状腺はどのように働くのでしょうか?

[図2]
図2

甲状腺ホルモンの産生は、ヨードを原料とします。ヨードはたくさんの食物の中にあり、特に海産物、塩、パン、そしてミルクに多く含まれています。甲状腺は食物から取ったヨードを血液中から取り込んで、甲状腺ホルモンを作るのに使います[図2]。

これらのホルモンの中で、もっとも重要なものは、トリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)です(T3やT4というのは、それぞれのホルモン分子が含むヨード原子の数のことを指しています。T3にはヨード原子が3つあり、T4には4つあります)。これらのホルモンは甲状腺内に貯えられます。必要な場合、これらのホルモンが血液中に放出され、特殊な担体タンパクにくっついて体中に運ばれます。体の組織細胞内に入った後、それぞれの細胞の中心にある核に入って行きます。そこで特異的なレセプターと結びつくのです[図3]

甲状腺はもともとある程度自身で甲状腺ホルモンを作る能力を備えていますが、その機能の大部分は、脳の基底部にある脳下垂体により支配されています。甲状腺ホルモンのレベルが低く下がり過ぎると、脳下垂体はそれに反応し甲状腺刺激ホルモン(TSH)を出します。甲状腺が健康であれば、TSHに反応して一生懸命働きます。その結果、血液中の甲状腺ホルモンのレベルが上がって正常に戻ります。
脳下垂体が甲状腺の機能をコントロールするやり方に影響を与えるファクターは数種類あるようです。例えば、血液中の甲状腺ホルモンレベルが低ければ、そのことが脳下垂体に直接影響し、TSHの放出を一挙に高めるようです。
一方で、脳下垂体それ自身も、視床下部や大脳皮質を含む脳のもっと上位センターからコントロールされています[図3]。これらの脳の上位センターと甲状腺との相互作用については、現在研究者による念入りな研究が行われています。

甲状腺の病気に関係するファクター

甲状腺の調子を悪くする事柄はたくさんあります。
甲状腺ホルモンをたくさん作り過ぎることもありますし(甲状腺機能亢進症)、少なすぎることもあります(甲状腺機能低下症)。
感染したり、炎症を起こすこともあります(甲状腺炎)。
嚢胞や腫瘍ができることもあります。おそらく、もっとも普通に見られる甲状腺の異常は甲状腺腫、すなわち甲状腺が単純に大きくなったものでしょう。
これらの状態の一つ以上が同じ患者に存在したり、あるいは時間をおいて出てくることがあります。そして、異なってはいても関連性のある甲状腺の異常が、同じ家族内の数人に起こってくることがあります。甲状腺の病気を起こすメカニズムのすべてが研究者にわかっているわけではありませんが、関係のあるファクターのいくつかについては多くのことがわかっています。

遺伝

ある種の甲状腺の問題を生じる傾向は、遺伝するようです。これらの状態でいちばんよく研究されているのは、甲状腺ホルモンの産生不全から起こるいくつかの希な疾患です。これらの疾患の中には、甲状腺が十分なヨードをうまく血液中から取り込むことができないものがあります。それ以外では、より複雑な甲状腺ホルモン分子を作る際にヨードを利用できないという問題があります。
また、甲状腺がその機能レベルを変化させ、活発になり過ぎたり、あるいは不活発になったりするほとんどの例でも、遺伝が役割を果たしているようです。それでも、そのような甲状腺の状態のどれか一つを生じるような傾向を遺伝している人でも、決して病気にならない場合があるのです。したがって、家族内の甲状腺の病気は、世代を“飛び越す”ことがあるように思えます。ご両親は健康であるのに、あなたには甲状腺の問題があるかもしれません。そして、祖父母にも甲状腺の問題があったことがわかるかもしれません。その他の例では、数種類の異なった甲状腺の問題が一つの家族の中に現れるというものです。親族の誰かが甲状腺が活発になり過ぎ、その外の者は甲状腺が不活発になることがあります。また、非常に病状が重くなる者もいれば、ごく軽い症状しか出ない者もいるということもあります。

性別

実際に、全部と言ってよいほど甲状腺の病気は男性より女性に多いのです。例えば、甲状腺機能亢進症は女性の方に男性の8倍罹りやすいのです。今でも、どうして女性にこのような異常な傾向があるのかが分かっていないのです。それにもかかわらず、このことは、女性の健康問題に関心を持つ研究者にとって、将来優先的に研究を行わねばならない問題です。

年齢

もし、あなたの甲状腺が活発になり過ぎるとしたら、それが起こるのはおそらく20歳から40歳の間であるはずです。その一方で、甲状腺の機能不全の場合は、もっと遅い年代-普通50歳に手が届いた後-で起こってくることがはるかに多いのです。同じように、あるタイプの甲状腺腫瘍は若い人に起こる傾向があり、それ以外のものは年齢の高い人により多く見られます。残念ながら、このような年齢差は興味深いものではあるものの、その理由は全く不明のままです。

食事

たくさんの健康関連組織の懸命な努力にもかかわらず、世界中で何百万人もの人(特に山岳地帯の僻地)が食食事から十分なヨードを摂取していません。その結果、甲状腺腫や重篤な甲状腺機能低下症を起こす傾向が高くなります。一方、アメリカではヨード欠乏症は存在しません。問題はその反対です。我々の食餌の中には、適量以上のヨードが含まれており、薬や健康食品、腎臓や胆嚢、脊髄腔のX線撮影に使われる造影剤からも、さらに多くのヨードを摂取している可能性があります。
ヨードが多すぎると、甲状腺の病気が潜在している人の中には、突然甲状腺の活動レベルが上がったり、下がったりすることがあります。幸いなことに、ほとんどの人は過剰な量のヨードにさらされても余り影響をうけることはありません《第15章》
食物の中には、ゴイトロゲン(甲状腺腫誘発物質)という、甲状腺ホルモン産生を妨げることにより、甲状腺腫を引き起こす可能性がある化学物質を含んでいるものがあります。そのような食物には、キャベツ、ケール、カブカンラン、カブなどが含まれます。しかし、これらの食物の中のゴイトロゲンの量はごくわずかであり、甲状腺の機能に明らかな変化を生じるにはこれらの食物のどれか1種類以上を大量に食べる必要があります。大豆エキスもヨードの腸からの吸収を減らし、甲状腺の肥大を起こしうるものです。例えば、1950年代に、ミルクアレルギーのため、豆乳を与えられていた乳児で、大豆タンパクが甲状腺腫とヨード欠乏症の原因であることがわかりました。この問題は、豆乳に少しヨードを加えるだけで解決しましたが、大豆タンパクは今、安価なタンパク源として成人用の食物に使われる量が増えています。現時点では、大豆タンパクの取りすぎで何か被害があったという証拠は全くありませんが、これはおそらく食餌の中にヨードが豊富に含まれているためだと思われます。

クスリ

時に、クスリによって甲状腺の機能に変化が起こることがあります。例えば、ある種の精神障害の治療に使われるリチウムが一部の人に甲状腺腫と甲状腺機能低下症を起こすことがあります。政府機関は、新薬の副作用に関して、注意深いテストを行いますが、甲状腺に害を及ぼす可能性のある薬を投与される場合は、医師または薬剤師から警告があるはずです。また、薬瓶のラベルは必ず読むようにしてください。

放射線照射

皆さんは少量の環境放射線に常にさらされています。このような形で甲状腺が被爆する線量が有害であるという証拠はありません。その一方で、甲状腺の近くに腫瘍やその他の病気があり、相当大きな線量のX線で治療をしなければならない場合や、かなりの量の環境放射線を被爆した場合(原発事故や爆発で起こる可能性があります)、重大な影響を被る可能性があります。この場合、甲状腺が不活発になる可能性がありますが、これは甲状腺ホルモンの錠剤を服用することで治すことができます。放射線被爆のもっと大きな問題は、甲状腺がんが起こってくる可能性があることです。今では、甲状腺領域の放射線治療を受けた人では、何年も経ってから甲状腺の結節を生じるリスクが高くなるということがわかっています。このような結節の中には甲状腺がんが含まれている可能性があります《第12章》。最後に、甲状腺がある首の領域の放射線照射治療の後で、活動が活発すぎる甲状腺(バセドウ病)を起こしてくる人は相当な数にのぼると思われます。

ストレス

ストレスももう一つの環境上の問題ですが、評価するのは困難です。甲状腺機能異常のある患者を数多く診てきた医師のほとんどは、典型的な形の甲状腺機能亢進症が家族の死や、あるいは失業というような生活上のストレスを受けた後に起こることが多いという事実があるという印象を持っています。最近行われたいくつかの研究では、ストレスが免疫システムを変化させ、次に甲状腺の機能に変化が起きることが示唆されています。このように明らかな関連性があるにもかかわらず、ストレスがどのように甲状腺に影響を及ぼすか、あるいはそのようなストレスに満ちた状況で、どうしてある人は他の人より甲状腺への影響を強く受けるのかということについては、まだはっきりとわかっていないのです。

感染

甲状腺の細菌感染は非常に希です。ウイルス(風邪を起こすようなウィルス)による感染が、甲状腺の病気を起こす可能性が高く、亜急性甲状腺炎と呼ばれる病気の原因と考えられています。

甲状腺の検査

今では、脳下垂体のホルモンである甲状腺刺激ホルモン(TSH)の血中濃度だけでなく、甲状腺ホルモンであるサイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)の血液中のレベルを測定する、非常に感度が高く、特異性のある方法が利用できるようになっています。これらの検査は、以前使われていた、もっと精度の低い基礎代謝率や蛋白質結合ヨードの測定とほぼ完全にとって代わりました。今日では、T4とTSHの測定が、甲状腺機能を測るために医師が行う検査の中で一番重要なものです。
その他の甲状腺の血液検査は、甲状腺ホルモンのタンパク結合として知られる現象を評価するために使われます。
甲状腺ホルモンの一部は、“遊離した”または活性化した形で血液中を移動しますが、ほとんど(99%以上)は、血液中のある蛋白質と化学的親和力により保たれる、“結合した”あるいは不活性化した形となっています。遊離した形のホルモンだけが細胞内で働くことができるのです。妊娠や投薬などのファクターにより、結合型ホルモンの量が変わることはありますが、遊離型のホルモンのレベルは正常なままです。そのために気分はよいのです。遊離型活性ホルモンの量を評価するため、T3レジン取り込み、または甲状腺ホルモン結合指数(THBI)と呼ばれる血液検査が使われます。これらは、活性化ホルモンと不活性化ホルモンの比率を測る間接的な方法で、費用がかかりません。
もっと詳しい情報が必要な場合は、甲状腺ホルモンと結合した蛋白質自体の濃度だけでなく、遊離甲状腺ホルモンの血中レベルも測定することが可能です。甲状腺の機能を測る血液検査すべての中で一番重要なものは、TSHの測定です。幸いに、新しいテクノロジーにより、この測定は感受性と特異性のどちらも非常に高くなっています。もし、甲状腺の機能に異常があることが疑われたら、このTSHの測定を行えば、非常に高い信頼性でその可能性を確認、または否定することができます。
甲状腺の研究の中でもっとも重要な進歩の一つは、1930年代末に起こりました。
その時、医師は甲状腺の機能を研究するため、放射性ヨードの使い方を学んだのです。甲状腺は、甲状腺ホルモンを作るのにヨードを使うので、医師は甲状腺の問題の診断や治療に、いくつかの方法で放射性ヨードを使うことができるのです。もし、放射性ヨード取り込み検査を受ける場合は、ごく少量の放射性ヨードを投与されるでしょう。普通、それはちいさなカプセルに入っていて、簡単に飲み込むことができます。放射性ヨードは、甲状腺内に集まります。24時間後、放射能検知機またはカウンターを甲状腺の前に持っていくと、甲状腺が取り込んだ放射性ヨードの正確なパーセンテージが医師にわかるようになっています。もし、甲状腺の活動が強すぎる場合、飲んだ放射性ヨードがほぼ全部取り込まれていますが、不活発になっている場合は、ほとんど取り込まれないのが普通です。もし、甲状腺が炎症(甲状腺炎)を起こしていれば、その場合もほとんど取り込みはありません。
甲状腺ホルモンの錠剤を飲んでいるか、薬や食べ物(ある種の咳止め薬、ビタミン剤、ケルプ)から過剰なヨードを摂取している場合も、放射性ヨードの取り込みが低くなることがあります。同様に、腎臓や胆嚢などのX線撮影に使われるヨードを含む造影剤の投与後、何週間も放射性ヨードの取り込みが低くなります。
このような状況では、検査をしても、その結果は甲状腺の活動性を正しく反映したものとはなりません。

[図4]
図4
正常な甲状腺のスキャン

また、医師が甲状腺のスキャンも必要と言う場合もあります。さて、あなたの首の前に放射能検知機があり、それにスキャナーが取り付けてあります。それは甲状腺の中の放射性ヨードのパターンを描き出すことができます。これはわずか数分間しかかからず、診察台の上に横になっている間に終わってしまいます。甲状腺のスキャンは、テクネシウムとして知られている別の放射性物質を使って行われることもあります。テクネシウムは放射性ヨードに比べ安価で、時間もかかりません。テクネシウムを注射した後、20分でスキャンを行うことができます。

[図5]
図5
不活発な(“コールド”な)結節

様々な状況で、甲状腺のスキャンから、価値ある情報が得られる可能性があります。甲状腺の活動が活発すぎる場合は、甲状腺全体が異常を来しているのか、あるいは甲状腺の一部だけが活発になり過ぎている(そのような領域は、その過剰な活動と甲状腺スキャンで得られる画像から、“ホットな結節”と呼ばれることがあります)のかが、スキャンにより示されます。残念ながら、がんを含んでいることが疑われる甲状腺の腫瘤の評価には、スキャンはあまり役に立ちません。

[図6]
図6
活発すぎる(“ホット”な)結節

甲状腺嚢胞、良性の腫瘍、およびがんは、すべて放射性ヨードの集積が悪い傾向があります。一方で、甲状腺内部の腫瘤が、甲状腺スキャンで放射性ヨードの取り込みが正常、または増加していることを示している場合、その腫瘤の中にはがんがないことを強く示唆するものです([図4][図5][図6][図7-8]は様々な甲状腺スキャンです)。
医師はこれらの検査を行う間に、甲状腺やそれ以外の体の部分(もっとずっと少ない量になります)に与えられる放射性物質がたとえわずかな量であっても、放射性物質を使うかどうかを決める際には、常にあなたの健康への利益を念頭においています。

[表1]には、甲状腺スキャンを行った場合に、甲状腺と体が被爆するおおよその線量が挙げてあります。これには3種類の放射性アイソトープを含めました(2種類の放射性ヨードと放射性テクネシウムです)。

[表1]甲状腺機能亢進症の原因
ラジオアイソトープ 通常のスキャン線量
(マイクロキュリー)
甲状腺被爆量
(ラド)
全身への放射量
(ラド)
131-ヨード 30〜60 33〜66 0.014〜0.028
123-ヨード 100〜400 1.1〜4.4 0.003〜0.012
99m-テクネシウム 5,000〜10,000 1〜2 0.06〜0.12

見ての通り、今日使われている様々な検査法により、この一般的被爆範囲外に達しているのは、131ヨードの甲状腺線量のみです。異なったアイソトープによる被爆線量の差は、アイソトープが体内に止まる時間の長さだけでなく、体内組織に放射されるエネルギー量によります。
比較してみますと、腎臓のX線撮影の被爆量は約2ラドであり、バリウム注腸で行われる大腸のX線透視での被爆量はそれよりわずかに多い程度です。今日では、甲状腺と全身の被爆量を最小限にするため、ほぼルーチンに123-I(123-ヨード)または99m-Tc(99m-テクネシウム)による甲状腺スキャンが行われています。原子力規制委員会は、全身の被爆量が1年間に5ラドを超える人がないように勧告しています。したがって、これは十分に“安全な範囲内”であります。それでも、医師は価値のある情報を得られる可能性が高く、被爆が正当であると認められた場合にのみ、そのような検査を行います。
甲状腺の結節について、もっと詳しい情報が必要な場合は、もう一つ別のタイプの甲状腺画像診断を医師が勧めることがあります。これは、レーダーと同じ原理で音波を使って得られるものです。この方法は、甲状腺超音波診断として知られていますが、トランスデューサーという小さな器具が甲状腺を通る音波を送り出している間、ただ静かに横になっているよう言われるだけです。組織を通り抜けた音波は反射してトランスデューサーに戻ってきます。そして、甲状腺の画像が得られます。嚢胞が見出されるところには、暗い空間が現れますが、充実性の腫瘍では、明るい部分と暗い部分がある斑紋状の異なったパターンが認められます。
また、結節の中にがんが含まれていないかどうかを確認するため、あるいは甲状腺が大きくなった理由を知るために、医師に甲状腺から少量のサンプルを採る必要があると言われることもあります。一部の例では、細い針での甲状腺の吸引生検を行なうことがあります。この検査では、局所麻酔で首の皮膚をしびれさせた後、医師が甲状腺に細い針を刺し、そこから顕微鏡検査用の組織を少量採取します。もし、その組織にがんが含まれていれば、結節を取り除く必要があります。言うまでもありませんが、甲状腺嚢胞、あるいはその他の害のない腫瘤の甲状腺生検による所見から、何千人もの患者さんが不必要な外科手術をしないで済んでいるのです。
特別な甲状腺の問題を知るために、その外にも様々な検査が使われますが、これらの検査の中には、甲状腺の働き具合を見るために、ホルモンを注射して甲状腺や脳下垂体を刺激する方法もあります。甲状腺の病気が疑われる場合、そのような検査が特に役立つこともありますが、もっと古い検査方法では問題を突き止めることはできません。これらの方法については、この本の後の章で、特定の甲状腺の病気の評価へのこれらの検査の利用法を述べる際に説明することにしています。

甲状腺の治療

もし、あなたの甲状腺が活発になり過ぎ、甲状腺ホルモンを作り過ぎている場合、これをコントロールする方法は3つあります。

  1. 投薬(錠剤)
  2. 甲状腺の手術
  3. 放射性ヨード療法

薬のあるものは、甲状腺ホルモンをつくるのを妨げます。また、その他は体の組織に甲状腺ホルモンが作用しないようにすることで、効き目を表わします。もし、外科医が甲状腺の一部を取り除けば、もちろん血液中の甲状腺ホルモンのレベルは減少します。これは、ホルモンがそこから来ていたためであるからです。放射性ヨードも、甲状腺の組織に損傷を与え、甲状腺ホルモンの産生を減少させるため、活発すぎる甲状腺の治療に使うことができます。甲状腺の組織をやっつけるために必要な放射性ヨードの量、すなわち活発すぎる甲状腺の治療には、甲状腺スキャンの場合よりずっと多い放射性ヨードが使われます。さらに、普通スキャンに使われる傷害を与える程度の低い123-Iよりも甲状腺への照射効果の高い131-Iが使われます。
もし、あなたの甲状腺が不活発になっているのであれば、血液中の甲状腺ホルモンのレベルを正常レベルまで上げるため、甲状腺ホルモンの補充を行いますが、甲状腺ホルモンは錠剤の形で投与することができます。これらのホルモンで、一部の患者では、結節あるいは大きな甲状腺腫のサイズが小さくなる可能性があります。甲状腺がんの最良の治療法は、すべてのがんを取り除くことを目的とした外科手術です。放射性ヨードの利用も役に立ちます。特に、腫瘍が広がり過ぎて手術だけでは取り除けないような時に有効です。最後に、完全に取り除けなかった甲状腺がんが広がるのを抑えるため、あるいは取り除いた甲状腺がんの再発を予防するために、甲状腺ホルモン剤が必ず使われます。

まとめ

私達はあなたの甲状腺が何をしているかわかっており、正確で安全な検査を行うことができます。また、ほとんどの場合、あなたが甲状腺の病気にかかっているかどうか、そしてそれが軽いものであるか、ひどいものであるか告げることができます。甲状腺の疾患の治療には、薬や、放射性ヨード、また外科手術などが使えます。そして同じ病状に対して、1種類以上の治療法を使うことができる場合が多いのです。したがって、あなたがどのような甲状腺の問題を生じたとしても、適切な治療を“あなたに合わせて”行うことができるのです。

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