第15章:甲状腺の病気と合併しやすい病気

ある人や家族では、他の人よりも自己免疫疾患を起こしやすい傾向があるようです。この理由はまだ完全にわかっていませんが、自己免疫性甲状腺疾患のある患者は、他の自己免疫疾患も起こしやすいのです。例えば、あなたが橋本甲状腺炎を発病したとすれば、おばあさんにバセドウ病による甲状腺機能亢進症があったことを見出すことがあります。つまり、2種類の異なったタイプの自己免疫性甲状腺疾患が同じ家族に起こっていますが、1世代とばして発病しています。これはよく起こることです。自己免疫性甲状腺疾患は、家族全員が病気になるわけではないにせよ、他の自己免疫疾患と同じように間違いなく家族内で遺伝します。もし、あなた自身あるいはあなたの親類が自己免疫性甲状腺疾患にかかる可能性があるか、またはすでにかかっている場合、たとえ希なものであっても将来発病する可能性のある甲状腺以外の自己免疫疾患について、知っておかなければならないものがいくつかあります。
これから述べる自己免疫疾患は、自己免疫性甲状腺疾患に将来併発してくる可能性があるものです。

悪性(アジソン)貧血

これは特殊なタイプの貧血で、非常に簡単に治療できるためもはや“悪性”というべきではないでしょう。アジソン貧血(1855年に最初にこの病気を記載したガイ病院の医師の名を取ったもの)では、体が胃壁にあるある種の細胞に対する抗体を作ります。これらの細胞は腸管からのビタミンB12の吸収を促進する物質を分泌します。ビタミンB12は、赤血球を作るのに欠かせないものです。アジソン貧血は大体6週間毎にビタミンB12を注射することで簡単に治すことができます。

糖尿病

インスリン依存型糖尿病は、特に若い人に発症するタイプで、インスリンによるコントロールを必要としますが、自己免疫性甲状腺疾患のある患者の家族内で発病率が高くなっています。おそらく、少なくとも部分的には、糖尿病は、ホルモンであるインスリンを分泌する膵臓の細胞を抗体が攻撃することによって引き起こされる、自己免疫疾患であると思われます。急激に発症することのある思春期またはインスリン依存型糖尿病に現れる症状は、大量の尿排泄、喉の渇きがひどくなる、疲れ、そして体重減少などです。治療は食餌療法とインスリンの注射によるものです。

副腎アジソン病

腎臓の真上にある2個の小さな内分泌腺の副腎で、コルチゾンのようなステロイドホルモンを分泌します。これらのホルモンは生命の維持や血圧の調節、感染やストレス、身体的損傷、および外科手術に対する反応の制御に欠かせないものです。副腎の機能不全は1855年にアジソン医師によって記載されました。この医師は、悪性貧血を記載した人でもあります。副腎は結核で破壊されることもありますが、今日では副腎細胞の自己免疫性の破壊が、もっとも多く見られる原因です。アジソンの副腎機能不全の特徴は、著しい衰弱と疲労、低血圧、そして皮膚の色が黒くなることです。コルチゾンや関連ステロイドの経口投与に非常によく反応します。

リューマチ性多発筋痛症および巨細胞性動脈炎

これら2つの病気には関連性があります。最初のものは筋肉と関節にひどい痛みがあるのが特徴です。巨細胞性動脈炎は、頭部動脈炎とも呼ばれますが、頭痛や発熱、および全身の倦怠感を引き起こします。これらの病気の片方、または両方が、時に橋本病により引き起こされる甲状腺機能低下症を併発することがあり、甲状腺機能低下症の症状がはっきり現れる前か後に発症することがあります。

失読症〈注釈:読書障害〉

失読症は一般集団に比べ、自己免疫性甲状腺疾患を持つ家族に多く見られるようです。失読症の子どもは読む能力に遅れを見せ、後にはつづりや書くことに困難を覚えるようになります。これらの子どもたちはけっして知能が低いわけではなく、非常に頭がよいことが多いのですが、このハンディキャップのために学校でついていけなくなります。男の子の方が女の子よりこの病気にかかることが多く、左利きの傾向があります。

白斑症

これは皮膚の異常で、白皮症(白い皮膚)としても知られています。これは正常な色素の発達を欠いた白い皮膚の斑があるものです。白斑症にはあらゆる種類の自己免疫疾患を伴うことが多く、今後数年間は発症しないと思われるある種の自己免疫病の“マーカー”またはインジケーターとみなしてもよいでしょう。

重症筋無力症

これは自己免疫障害により引き起こされる希な筋肉の病気です。一般集団に比べ、バセドウ病患者では発病率が約10倍になります。最初に目の筋肉が冒されることが多く、そのため複視が生じます。後に、四肢や体幹の他の筋肉にも広がっていきます。日が経つにつれ、患者は衰弱の度を増し、何かしようとすればする程、ますます弱り、疲れるようになります。ものを飲み込むのが困難になったり、声が鼻にかかってきたり、また呼吸も苦しくなってくることがあります。治療に対する反応は、普通は満足のいくものです。ここに我々の患者の一人に話しをしてもらいましょう。彼女は最初バセドウ病にかかり、次に糖尿病になりました。その後に白斑症を伴ったアジソン貧血になり、最後に橋本病による甲状腺機能低下症にかかりました。

私は今55歳です。弁護士としてのトレーニングを受けましたが、ずっと地方自治体、ロンドンの一つの区の税務課で仕事をしてきました。12歳の時バセドウ病にかかりました。馬のようにたくさん食べていたのを覚えていますが、それにもかかわらず体重は大きく減りました。目はやや大きく見開いた感じになりました。とても不器用で、いつも何か落としていました。私の活動し過ぎの甲状腺は、抗甲状腺剤でうまくコントロールされ、17歳で体重が再び減り始めるまでは何事もなく過ぎました。とてものどが乾いて、ポット一杯の水を持ってベッドに行くようにしていました。夜に数回排尿のため起きなければならず、睡眠が妨げられました。主治医は私が糖尿病にかかっていることを見つけ、食餌療法と1日2回のインスリン注射で治療をしました。これにもすぐに慣れました。30歳の時、私は自分の課の次長に就任しました。いつもはとても元気がいいのですが、疲れるようになり、おばからとても顔色が悪くなったと言われました。また腕に変な白い斑点がいくつか出てきました。糖尿病の治療に通っている病院の医師は、私がアジソン貧血になっていることを見つけました。これは、かかりつけの医師からビタミンB12の注射をしてもらい、すぐによくなりました。でも、この注射はインスリンの注射で慣れているので、自分でできたはずです。45歳くらいの時にひどく寒く感じるようになるまでは、元気でした。よく技師に部屋の温度のことで文句を言っていたものですが、私には何の注意も払ってもらえず、温かくなるよう厚い衣服を着込んだりしたのですが無駄でした。次の冬にかかりつけの医師にこのことを告げて、ようやく医師は私が甲状腺機能低下症になっていることを突き止めました。明らかに、私は橋本病と呼ばれる別の種類の甲状腺の病気を起こしていたのですが、バセドウ病になった時のように首の腫れはありませんでした。橋本病はサイロキシンの投与を受けてよくなりました。今は元気です。甲状腺の錠剤を毎日飲み、ビタミンの注射を毎月受け、1日に2回インスリンの注射を自分でしています。

アジソン貧血のように、後になって症状が現れてくる可能性のある自己免疫性疾患が他にないか確かめるために、あなたの主治医が甲状腺の病気と関係のないテストを行うことがある理由がこれでお分かりになったと思います。

問題と解答

Q1. 祖母は20年前に粘液水腫をわずらったと言っています。祖母はサイロキシンで治療を受けています。今、私は甲状腺が活動し過ぎの状態です。これには何か関係があるのでしょうか?
おそらくあると思われます。おばあさんとあなたのどちらも、種類は違いますが、自己免疫性の甲状腺疾患にかかっています。そして、これは家族内に遺伝する傾向があるのです。
Q2. 私は50歳ですが、何年も橋本病を患っています。今、アジソン貧血にかかっていると言われました。次に何が起こるのでしょうか?
その他の自己免疫疾患が発病する確率は非常にわずかです。

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