第11章:甲状腺の不規則な腫大(シコリ)と良性結節

時として、甲状腺内に1個から数個の甲状腺のシコリができることがある。甲状腺の大きさが正常の場合や以前から甲状腺が腫れていたような場合のどちらでも甲状腺のシコリはできる。しかし、以前から甲状腺の腫れている女性、特に橋本病や甲状腺疾患の家族歴を持つ人によくみられる。事実、甲状腺のシコリは大変多く、多くの場合は小さすぎて医師でも触れないし、自分でも触れない。シコリの大部分は無害で放置しても良い。シコリ内に出血しなければこのような良性のシコリは急に大きくなることはまずない。皮膚癒着もなく、所属リンパ節も触れていない。不規則な甲状腺腫大はがんでもみられるが、橋本病や、他の良性疾患でもみられる。

単発性結節

甲状腺内に単発結節が出来るかもしれない。又、自分自身や医師も単一と思っていても、超音波でみると数個の結節のこともある。小さすぎて触れにくかっただけである。だから、医師が甲状腺結節を一つと思っていても実は、多結節性甲状腺腫のこともありうる。単発結節は通常痛みのない表面がなめらかな丸いシコリである。それは、液体を溜めていることもあり、これらを嚢腫という。しかし、超音波または針生検のときに液を吸引するこでのみ嚢腫は診断される。小さな数個の嚢腫は悪性である〈注釈:この著者の意図がわからない。このようなことはないと思う〉
もし、シコリの中に出血が起こったら、シコリは痛みを伴って急に大きくなる。これは、どのような誘因で起こるのかは、分かっていない。数時間のうちにシコリの大きさが増し、内圧が高くなるので硬くなり、痛みがでてくる。もし、注射針による穿刺吸引が行われたら、血性の液が吸引されてくる。それに伴って硬さも和らぎ、痛みもとれる。単発性結節は通常、良性非中毒性の細胞の塊である。悪性でないので良性と、甲状腺ホルモンを過剰に作っていないので非中毒性と言われます。しかし、良性非中毒性結節も、数年すると甲状腺ホルモンを過剰に作り出し、甲状腺機能亢進症になるかもしれない。これについては《第6章》で述べています。シコリが中毒性ではないこと、悪性ではないことを診断することは必須である。悪性かどうかを鑑別することは易しくない。この鑑別のために3つの方法があるがこれらは単一では100%の信頼性はない。

1. 針生検

常に顕微鏡で観察するのに十分な量の細胞が摂取できるとは限らない。又、ある種のがん(濾胞がん)では、診断不能である。

2. 超音波

シコリ内に液体を溜めているかどうか、すなわち嚢腫がどうかの鑑別には有用である。全くの嚢腫は多分良性であろうが、充実性や混合性(嚢腫と充実性の混合したもの)の場合は悪性かどうかの診断には使えない。

3. アイソトープシンチ

ヨード又はテクネシウムシンチが使われ、特にヨードシンチが好まれて使われる。
良性の場合はアイソトープが取り込まれるが、悪性ではアイソトープはほとんど取り込まれないか、全く取り込まれない。アイソトープを全く取り込まないシコリは“Cold”と表現されるが、この場合は“Warm”や“Hot”の場合よりがんを疑う〈注釈:“Warm”はアイソトープが正常甲状腺組織と同じ程度取り込む。“Hot”は正常甲状腺組織より多く取り込む〉。しかし、多くの良性結節や嚢腫は“Cold”であり、“Cold”結節のたった10%ががんであるのみである。もし、シンチで数個の結節があれば、がんの可能性は低い。さらに、シコリの大部分は良性のものであることも強調されなければならない。

良性と悪性の鑑別は完全にはできないので、医師が手術を勧めたとしても腹をたててはいけない。手術によって診断が確実につくのみならず、シコリを除去することであなたの心配も解決するであろう。

多発結節

触診やシンチの所見にかかわらず、結節が多発性であることが分かればがんである可能性は低い。

治療

がんの可能性が除去されたのなら、特別な治療は必要としない。しかし、定期的な経過観察は受けている方がよい。
時として、今あるシコリをこれ以上大きくしないために、又、新しいシコリが出来ないためにサイロキシンを投与されるかもしれない。単発性の結節が甲状腺ホルモンを作り出して、甲状腺機能亢進症になったら、手術よりはアイソト-プ治療の方を好んで行う。アイソト-プ治療の成績は手術と変わらない程、素晴らしいものである。
多発性結節が甲状腺ホルモンを過剰に作りだしたときには、手術でもアイソト-プでもどちらでもよい。

問題と解答

Q1. わたしの首に出来た小さなシコリはがんですか?
シコリは甲状腺の中に出来たものですが、リンパ節は腫れていません。甲状腺がんとは思えませんが、はっきりさせるために検査が必要です。
Q2. 検査をすれば100%わかりますか?
いつもそうとは限りません。特に針生検をしてもがんの疑いが晴れない時は、手術を勧められるかもしれません。単発結節の約半数は手術を受けなければならない。
Q3. シコリが急に大きくなって痛みます。どのような病気でしょう?
甲状腺のシコリの中に出血したのだと思います。急に大きくなって痛いのはそのためです。液を抜くと縮んで痛みも取れます。後日、医師はこのシコリについて検査するでしょう。
Q4. 液を抜いたらシコリがなくなりました。甲状腺嚢腫と言われました。又、シコリが大きくなりますか?
腫れてくるかもしれません。もしも、腫れてきたら再び液を抜くか、何回も溜まるようなら手術で切除します。

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