第6章:バセドウ病以外の甲状腺機能亢進症

バセドウ病は甲状腺機能亢進症の一番多い原因であるが、その他にいくつかの原因がある。頻度の多い順に原因を並べてみた。

  • 中毒性多結節性甲状腺腫(腺腫様甲状腺腫)
  • 機能性単発性結節
  • 亜急性甲状腺炎
  • 無痛性甲状腺炎
  • 医原性(甲状腺ホルモンの飲み過ぎ)
  • ヨードとりすぎによるもの
  • 甲状腺がんが甲状腺ホルモンを産生
  • 下垂体TSH産生腺腫
  • HCG産生腫瘍

上に述べた原因による甲状腺機能亢進症の症状は眼症以外のバセドウ病と基本的には同じである。

中毒性多結節性甲状腺腫

1913年にこの病名を報告したアメリカの内科医プランマーにちなんで、プランマー病と呼ばれる。この疾患は高齢者に多く見られ、長い間甲状腺腫を持っていて、最終的にシコリができてくる。症状はバセドウ病に似ている。シンチ検査では結節に一致して数個の“ホット”として描出される。治療としては一般的に放射性ヨード治療が用いられるが、甲状腺腫が大きい時には術前に甲状腺機能を正常化した後に手術する方がよい。

単発性中毒性“ホット”腺腫

この病気では結節部の細胞が過剰に甲状腺ホルモンを産生する。結果としてその結節に一致してシンチでホットとなり、ほかの部位にはアイソトープは取り込まれない。ホットな結節から出た過剰な甲状腺ホルモンを下垂体が感知してTSHを抑える為に(ネガティブ・フィードバック)、ホット以外の部位では甲状腺機能は抑制されてアイソトープを取り込まない。
その原因となる甲状腺結節は通常、医師がみれば触診でわかる。結節以外の甲状腺は腫大していないか、もしくは正常より小さい。
中年以降の女性に多くみられる。結節は最初から過剰の甲状腺ホルモンを産生しているわけではない。しかし、時間が経ってくると甲状腺ホルモン、特にT3が高くなり、TSHは抑制される。診断はシンチでホットを証明することである。抗甲状腺剤は有効だが、完全治療は望めない。
手術でもよいが、一番適しているのはアイソトープ治療である(このときは投与量はバセドウ病と比べて多い)。アイソトープ治療がうまくいくと、結節以外の働きを抑えられていた部位の働きも正常に戻ってくる。

甲状腺ホルモン剤の飲み過ぎ

T4、T3の力価が一定しないために今ではほとんど使われなくなった動物の甲状腺粉末などを飲み過ぎている場合がある。甲状腺ホルモン剤の種類によって血中甲状腺ホルモン高値のパターンが少し異なる。もし、T4を飲み過ぎていれば、血中T4とT3が伴に高くなる。もしT3の飲み過ぎであれば、T3は高くなるがT4は低い。もし、甲状腺末を飲んでいるならば、T4やT3は正常でも他の甲状腺に含まれる物質、例えばサイログロブリンなどが増えている。甲状腺ホルモンの種類にかかわらず飲み過ぎの場合は必ずTSHは正常以下に抑制されている。

甲状腺機能低下症の治療

甲状腺機能低下症を治療するときは、時に過量の甲状腺ホルモンを投与されることがある。適正量はどのようにして決めるのかは後程低下症の項で述べる。

自己治療

甲状腺機能亢進状態を好む人がいる。その状態になると、高揚した状態になるために、甲状腺ホルモンを過量をのむ。しかし、普通彼らは甲状腺ホルモン剤を飲んでいることを隠す。

肥満

肥満に対して使用する時に、減量のために甲状腺ホルモンを投与することがあるがこれは必ずしもよいとは限らない。投与量が少なければ、フィード・バック機構のせいで下垂体からのTSH分泌が抑えられるのみである。甲状腺ホルモンの産生は減るが、経口投与された甲状腺ホルモンにて血中甲状腺ホルモンは正常である。もし、投与量が多すぎると血中甲状腺ホルモンレベルは高くなり、甲状腺機能亢進症状を呈するようになって心臓や骨(骨粗鬆症)に対して副作用を引き起こす。過去のある時期に、太っているのは甲状腺の働きが低下しているためと考えられていた。それ以来、肥満に対して甲状腺ホルモン剤が投与されてきた。まだ、診断技術が進んでいない時代になされた診断であり、甲状腺機能低下症の診断自体が怪しい。甲状腺機能低下症を診断する最も信頼おけるTSHは15~20年前に測定可能になった。甲状腺ホルモン服用により体重が数パウンド減ったことが、甲状腺機能低下症が多分あったことを示唆する。
甲状腺ホルモンは体から水分を減少させる働きをもつ。ゆえに初めのうちの体重減少は脂肪の減少のためより、水分減少のためと思われる。その後の体重減少は甲状腺ホルモンの作用というよりは、食事制限のためと思われる。 特に強調したいのは、甲状腺機能低下は肥満の原因としては大変に希であるということだ。 甲状腺ホルモンを長期に服用しているのなら、この治療が本当に必要かどうかを知ることは大切である。そしてもし、服用が必要なら、適正な量を決めることが必要である。なぜなら年をとるにつれて投与量が変化するためである。甲状腺ホルモン剤を6~8週間中止して、本当に薬を服用する必要があるかどうかを調べることがあなたにとって一番よい方法である。

ヨード含有物質

胆のうや腎盂造影などのX線検査で使用する造影剤や昆布などの健康食品は、特定の甲状腺疾患をもつ人では甲状腺の働きすぎを引き起こすことがある。このような人はヨードの比較的欠乏した地域に住み、甲状腺腫を元々もっている。ヨードシンチを行うことで、甲状腺全体に放射性ヨードの取り込みが増加していればバセドウ病であることが分かる。また、ホット結節が認められれば、中毒性腺腫をもっていることが分かるヨード含有物の摂取を中止すれば、甲状腺の働きは元に戻ることがある。甲状腺の働きが戻るまでは、ベータ・ブロッカーを投与していれば症状を軽減できヨード含有物を中止しても甲状腺機能亢進症状が続き、バセドウ病や中毒性腺腫と同じ治療を要することもある。

腫瘍により引き起こされる甲状腺機能亢進症

このような状態は希である。数種類の腫瘍によって甲状腺機能亢進症が引き起こされる。

  • 甲状腺がん。通常は、転移巣が甲状腺ホルモンを過剰に産生する。全身のヨードシンチをすればその部に取り込まれる。
  • 下垂体腺腫。TSH産生腫瘍は甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンを過剰に出させる。ヨードシンチでは、甲状腺はびまん性にヨードを取り込みますが、TSH値は正常か増加しています。これは、他の甲状腺機能亢進症ではTSHが抑制されていることと異っており特長です。
  • 卵巣腫瘍。この腫瘍が甲状腺ホルモンを過剰に産生することがある。ヨードシンチでは、甲状腺は放射性ヨードの取り込みは見られず、甲状腺ホルモンを産生している卵巣に取り込まれる。
  • 胞状奇胎、悪性繊毛上皮腫。HCGを産生する腫瘍で、HCGは大量になると甲状腺を刺激する(HCGとTSHは構造が似ている)。ヨードシンチでは、甲状腺の取り込みは全体的に増えており、胞状奇胎や悪性繊毛上皮腫の局所症状がすでにでていることが多く診断は難しくない。

上記の腫瘍による甲状腺機能亢進症は腫瘍の切除により治療する。

問題と解答

Q1. 単発性中毒性腺腫とはどういうものですか?
それは、甲状腺の他の部位と比べて働きの増した細胞のかたまりです。このかたまりが、甲状腺ホルモンを過剰に産生して、あなたの体重を減らしたり疲れ易くします。
Q2. 中毒性腺腫は悪性のものですか?
違います。
Q3. 甲状腺の手術後20年間ずっとチラージンS300mgを毎日服用しています。減量するよう言われましたが、何故ですか?
一日300mgは多量ですので、多分薬が効きすぎているのでしょう。血中甲状腺ホルモン値が高く、血中TSH値が低値で、これは薬を飲み過ぎていることを示しています。これは心臓や骨にはよくありません。飲み過ぎを続けると、骨がだんだん弱って骨粗鬆症になり易い。閉経後の人なら、骨粗鬆症はもっとひどくなる可能性があります。甲状腺ホルモンを正常にするにはチラージンS200mg/日が丁度良い。
Q4. ヨードは体に良いと思っていたのですが、昆布を食べないように言われたのは何故ですか?
適量のヨードは必要ですが、過量に取るとよくないことがあります。昆布を取りすぎると甲状腺ホルモンを作りすぎになるかもしれません。
Q5. 昆布をやめたら甲状腺の働きはよくなりますか?
良くなるとは限りません。甲状腺の働きすぎが続けば、治療を要します。
Q6. 多結節性の甲状腺腫と甲状腺機能亢進症を指摘されています。体の調子は良いのですが、甲状腺の腫れは見苦しく、最近大きくなったように思う。どうすれば良いか?
甲状腺腫が大きくなって見苦しいとか、圧迫症状が出現しているのなら手術で切除することが望ましい。

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