第2章:甲状腺に関して良くないこと

甲状腺に関してまずいもの

ただ甲状腺だけに特徴的な症状である場合もあり、また他の臓器ででも起こるうる症状のこともある。例えば、多くの甲状腺ホルモンが分泌される状態(甲状腺機能亢進)とわずかのホルモンしか分泌されない状態(甲状腺機能低下)は甲状腺だけのものであって、特有の症状を作り出す。他方、感染、炎症、がんのような他の甲状腺の疾患は、甲状腺にそれほど特有ではない、なぜなら類似の病変が他の臓器でも起こるから。にもかかわらず症状と感染、炎症、あるいはがんにとって引き起こされた臨床症状は疾患が甲状腺内で起こっている事実によって特色ずけられる。甲状腺に影響を与えるかも知れないいくつかの疾患について説明したいと思います。

甲状腺の大きさの増加

原因がなんであれ甲状腺の増大は甲状腺腫と呼ばれる。 甲状腺全体が一様に大きくなっている場合と一部分だけが大きくなっている場合がある。甲状線腫は正常よりわずかに大きく感じるものから、明らかに目に見えるもの(3a)、そして小さいメロン(3b)の大きさまで、さまざまである。甲状腺の多くの疾患では甲状腺は大きくなる。甲状腺は腫れていても甲状腺ホルモンが正常の時がある、この状態は甲状腺機能正常であると言われる。甲状腺が腫れていて甲状腺ホルモンが増えている場合は、甲状腺機能こう進症であると言われる。甲状腺ホルモンの不足した状態は 甲状腺機能低下症である。これから、あなたは甲状腺の大きさと甲状腺の働きは直接関係ないことが分かると思います。

正常若くは小さい甲状腺が沢山の甲状腺ホルモンを作り、大きい甲状腺が甲状腺ホルモンをあまり作れないかもしれない。甲状腺腫は通常痛みはないが、ときどき押さえると痛いことがある。超過の甲状腺ホルモンを作り出してもよい。もし甲状腺がかなり大きいなら物を飲み込むときに違和感があることもある。甲状腺が非常に大きくなったら、単に美容上醜いだけでなく、それは気管を圧迫して、そして呼吸困難を起こすかも知れない。それは顔と脳からの血液を心臓まで送る静脈を圧迫して、そして頭が充血した感覚を起こすかも知れない。思春期や妊娠中の女性たちで甲状腺のわずかな腫脹がみられるが、これは正常と見なされる。もしあなたが小さい甲状腺腫を持っているとしても、あまり気にすることはありません。それはあなたが考えているほど醜いものではありません。実際、オランダの法廷画家Lely(1619~1680)によって描かれた優雅な女性たちの肖像画の多くによって見られるように、以前は小さい甲状線腫は、美の象徴であると思われた。甲状線腫の原因は調べられ、そしてそれがより大きくなることを防がなければならない。《第10章》《第11章》で甲状腺腫について詳細に述べられる。

自己免疫疾患

甲状腺は特に自己免疫の傾向にある、しかし最初に我々は 自己免疫とは何かを説明しなくてはならない。

自己免疫疾患とは何か?

我々のすべてがバクテリアやウイルスによる感染から我々を守る免疫系を持っている。赤ん坊は、特に母乳で育っているなら、母親から免疫能をもらっている。後年、赤ん坊が感染を受けた時には、終生免疫を獲得する。この免疫系はどのように働くか?血液中に細菌やウイルスにある蛋白を自分のもの以外と認識するリンパ球というものがある。リンパ球はその自分以外の蛋白を見つけて、それらを中和する抗体と呼ばれる化学的物質を作る。敵の兵隊が防御に侵入してきたのを迎かえ撃つ兵隊のようである。ちょうど敵兵を集めて武装解除させるか殺すように、リンパ球は侵略している 細菌を中和したり殺す抗体を作り出すことによって反応する。どんな種類の異種たんぱくに対しても敵と見なし抗体がそれらに対して作られる。 蛋白でできている皮膚や心臓あるいは腎臓のような器官が他人から移植されたときにも今まで述べてきたようなリンパ球の攻撃が起こる。移植された人(レシピエント)のリンパ球は移植された組織や器官を非自己と見なす。白血球は抗体を作って移植された組織を攻撃し、破壊するであろう。このレシピエントによる拒絶反応は移植外科学で大きな問題の1つである。自己免疫疾患では、まだはっきりした理由は分からないが、リンパ球が自分の体の組織を自分のものと認識できないことがある。すなわち、それは、そこにあるものでない、自分以外のものであると感じる。組織が非自己であるという間違った信念で自己に対する攻撃を開始する抗体が作り出される。それは 同じ連隊で一緒に仕えている兵隊が敵に属するということを急に考えるようなものである。自己免疫性甲状腺疾患では、リンパ球は甲状腺のある特定の細胞に反応する抗体を作り出す。これらの抗体の存在と強さはあなたの血液で測れる。ある抗体は甲状腺細胞に対して破壊的であって、それを殺す。他の抗体は甲状腺細胞を刺激して多くの甲状腺ホルモンを作り出す。希に、刺激抗体と破壊抗体を一緒に持っていることがあり、刺激的な抗体により甲状腺が活発に働いた後に、破壊抗体のために甲状腺の働きが低下することもある。

甲状腺機能亢進症

サイロキシンあるいはトリヨードチロニンあるいは両方の増加は甲状腺の働きすぎ(甲状腺機能亢進あるいは甲状腺中毒)を起こす。これの最も多い原因は、Graves病である。これは1835年にこの病気を持つ3人の若い女性の報告をしたダブリンの医師、Robert Graves博士の名にちなんで名を付けられた甲状線機能亢進症を呈する自己免疫疾患である。 英語圏内では、自己免疫性甲状腺機能亢進は彼の名前で呼ばれる。しかしながら、ヨーロッパでは甲状線機能亢進症は、1840年に甲状腺腫、目の変化、心悸亢進によって特徴づけられる状態の非常に明確な記述を出版したCarl von Basedowの名に因んでBasedow病として知られている。甲状腺機能こう進症 あるいは甲状腺中毒症では、体の細胞の代謝は増えている。レコードプレイヤーの上のターンテーブルはあまりにも速く回っている。
臨床症状は年齢によって幾分違うが、多くの場合、心拍数増加、心悸亢進、下痢、体重減少を引き起こす。抗体が甲状腺細胞を刺激して過剰の甲状腺ホルモンを分泌させるバセドウ病については《第4章》で述べる。一般に関連づけられた目変更は《第5章》で論じられる。他の頻度の低い甲状腺機能亢進については《第6章》で値述べる。

甲状腺機能低下症

甲状腺の働き不足は多く原因があり、それについては《第7章》《第8章》で論じられる。ヨード不足はどんな年齢においても甲状腺低下症の最も多い原因である。しかし、西洋では甲状腺機能低下症の最も多い原因は慢性甲状腺炎であり、これは1912年に日本の外科医Hashimoto博士が初めて報告した自己免疫性甲状腺炎である。甲状腺機能低下症では、身体の細胞はのろのろと働く。レコードプレイヤーはあまりにもゆっくりと回っている。心拍数は遅くなる、腸の動きは緩慢になり便秘になり、皮膚は乾燥して厚くなり、声は低くなりしわがれ声になり、寒さに弱くなる。臨床症状の詳細については《第8章》で論じる。

甲状腺炎

甲状腺の感染と炎症はよく見られる。この甲状腺炎症 の最も多い原因はウイルスである。このウイルス性甲状腺炎は、最初にそれを記述したスイスの医師の名にちなんでde Quervain甲状腺炎と呼ばれる。これは、甲状腺の炎症による首の不快感が通常あまりひどくないために亜急性と呼ばれるが、もし治療されないなら、数週あるいは数ヶ月の間持続する。甲状腺は破壊され、押さえると痛い(圧痛);飲み込むときにも痛いかも知れない。炎症のために一時的に甲状腺から甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出る、そして数週間甲状腺中毒症で苦しむかもしれない。
時々、ウイルス感染は甲状腺にまったく異常を起こさないこともある。甲状腺機能亢進症は無痛性甲状腺炎によることもある。亜急性甲状腺炎は《第9章》で論じられる。
非常に希に甲状腺に細菌感染が起こる。甲状腺に感染する細菌には咽頭炎を起こすブドウ球菌、皮膚感染を起こす連鎖球菌あるいは結核菌がある。

がん

甲状腺疾患の中でがんは希である、そして体中の悪性腫瘍全体としてもそれはさらにもっと希である。たいていの甲状腺がんは高分化度である;これはがん細胞が顕微鏡の下で正常甲状腺細胞のように見えることを意味する。これらの悪性細胞は通常増大速度が遅い、そしてそれ故腫瘍は速く成長しない。単にがん細胞はどちらかと言うと正常甲状腺細胞のように見えるだけではなく、それらは正常甲状腺細胞のようにしばしば振る舞う。例えば、それらは甲状腺刺激ホルモン(TSH)に反応し、そして血流からヨードを取り込む。これは、最初の治療である外科的切除後に、もし残存悪性細胞に対して放射性ヨウ素で治療ができることを意味する《第12章》。診断が早ければ、分化型甲状腺がんの治療は通常、成功する。

問題と解答

Q1. もし私に甲状腺腫があるなら、それはがんを意味するか?
多分、違うであろう。
甲状腺がんは非常に希であり、その他に甲状腺の腫大を起こす非常に多くの悪性でないものがある。
Q2. 自己免疫疾患とは何か?
それは、ある器官や組織があなたに属さないという間違った考えを得て非自己と認識し、それを取り除こうとする免疫系の障害である。
Q3. 自己免疫疾患では、私の体はどのようにして非自己細胞を取り除こうとするか?
自己抗体がつくられて非自己細胞を攻撃する。
Q4. 自己抗体は常に破壊的ですか?
いいえ、時々、それらはあなたの甲状腺を刺激して甲状線機能亢進症(バセドウ病)をひき起こす。

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