第1章:甲状腺

甲状腺はどこにあるか?

[図1]
図1

普通は甲状腺は喉仏の丁度下に位置している。その形はH型をしていて真ん中でつながっている。右葉と左葉は気管を挟んで対称にあり、峡部と呼ばれる部分で連結されている。男性では普通甲状腺は見えないが、痩せた若い女性では顎を挙げたときに甲状腺が見えることがある。もし甲状腺が見えるなら、物を飲み込むときに上下に動く。若くて痩せたひとでは医者は甲状腺を触れることができるかもしれないが、首の短い成人では甲状腺は触れることができないかもしれない。正常な甲状腺は表面はなめらかで圧痛はない。また、しこりはなく軟らかい。甲状腺が胸骨の後ろにある人もいる[図1]。

甲状腺はどこから来たのか?

胎生期には、甲状腺は舌根部(舌の根元のところ)にある。胎児が大きくなるにつれて、甲状腺は首を下がっていき生まれる頃には、大人と同じ位置になる。この舌根部から首に下がってくる細い管を甲状舌管と言う。この管の下端部は甲状腺組織を持っていることがあり、錐体葉と呼ばる。この余分の甲状腺組織は峡部から上に延びて喉頭部の真ん中もしくは両サイドに位置することもある。

甲状腺がうまいこと下がらない時、どうなるか?

非常に希に甲状腺が正常に下がらず、舌根部辺りに留まることがある。このような異所性のものは普通ちゃんと機能せず、新生児の希だが重要な甲状腺機能低下症の原因となる。

甲状腺はどういう働きをしているか?

甲状腺は甲状腺ホルモンを作って血中に放出し、体の中で細胞や組織に働きかける。甲状腺以外にもホルモンを作る臓器としては、脳下垂体、卵巣、精巣などがある。これらは、内分泌臓器と言われる。甲状腺は2つのホルモンをつくる。ひとつはサイロキシンで、ヨード原子を4つ持っているので、T4とも呼ばる。もうひとつはトリヨードサイロニンで、ヨード原子を3つ持っているので、T3とも呼ばれる。2つのホルモンとも血中に放出され、体中を回りる。末梢組織でT4はT3に変換されます。T3が細胞に働く。

甲状腺ホルモンの働きは?

甲状腺ホルモンは体中の細胞の活動スピードを調節する。甲状腺ホルモンが少ないということは体の細胞がゆっくりしたスピードで働くことを意味する。反対に甲状腺ホルモンが多いと、速いスピードで働く。甲状腺ホルモンの調節は多くの面でレコードプレイヤーのスピード調節に似ている。もし、45回転のレコードを33回転のプレイヤーで回したら、音楽は間が抜ける。これは甲状腺機能低下症の状態に当てはまる。反対に、33回転のレコードを45回転のプレイヤーで回したら、ミッキーマウスの様なキーキー声になる。これは甲状腺ホルモンが出過ぎて、体の細胞が普通より速いスピードで働いているのに似ている。2つの甲状腺ホルモンは働きは似ているが、その働きは臓器によって、多少違ってくる。例えば、赤ちゃんの身体的および精神的な発育に甲状腺ホルモンは必要である。もし、T4がなければ、オタマジャクシは蛙になれない。人間もT4がなければ、新生児は発育障害を起こし、脳の働きも障害をうける。幼時期に甲状腺ホルモンが不足すれば、発育が遅れ、反対に甲状腺ホルモンが過剰になれば、発育しすぎるかもしれない。また甲状腺ホルモンは心臓や脈拍数などにも影響を与える。基本的には甲状腺ホルモンは酸素消費量を調節している。この調節は糖、蛋白、脂肪などの利用に影響を及ぼす。たとえば、甲状腺機能低下症があれば、血清コレステロール値は増える。もし、これが続けばコレステロールが血管壁に付着して、動脈硬化になり血管は狭くなる。

甲状腺ホルモンの産生
サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)は甲状腺細胞の中で作られる。
2つのホルモンはヨードを含んでいる、そしてヨードは甲状腺ホルモンを作るのに不可欠である。この不可欠な原材料は甲状腺細胞によって血流から取り込まれる。甲状腺細胞の中で、ヨードはT4やT3を形成するためにいくつかの化学的なステップを経て他の物質とともに合成される。そしていったん甲状腺ホルモンが作られると2つのホルモンは甲状腺の中の駐車場にしまっておかれる。“駐車された”甲状腺ホルモンは身体の細胞が甲状腺ホルモンを必要とする時に血流の中に貯蔵庫から解放される。

ヨードはどこから来るか?

通常ヨードは我々が食べる食品、特に魚によって供給される。
ヨードは土壌から同じく来る、その土壌のなかではパンと野菜を我々に提供するための農作物が育つ、そしてその土壌に生えた草を雌牛が我々にミルクを与えるために食う。ヨードは土壌に降る雨から得られる、そしてこの雨は海から蒸発させられた水から来る。はるかに海から離れた世界の一部では土壌中のヨードが不十分である可能性が高い。これは中央アフリカのコンゴ、南アメリカのアンデス、ヒマラヤ山脈、中央ヨーロッパのスイス、アメリカ合衆国の五大湖周辺、スペインやイランなどでみられる。これらの区域に住んでいる人々は食物中に含まれるヨードが少ないために、甲状腺ホルモンを作ることが難しい。それ故に、ヨードの摂取を補うために国を挙げての対策が必要である。

甲状腺ホルモンの分泌はどのように調節されているのか?

血流の中に分泌する甲状腺ホルモンの量を決定するものは何であるか?
簡単に理解することができる巧妙な機序がある。基本的にはそれはあなたの家でのセントラル・ヒーティングの制御のように働く。あなたの家の玄関あるいは居間にあるサーモスタットは温度を探知する。もし温度があるレベル以下に落ちるなら、サーモスタットは暖房装置のスイッチを入れて温度を上げる。温度がある決められたレベル以上に上昇したら、暖房装置のスイッチを消して温度を下げる。甲状腺を暖房装置に、下垂体をサーモスタットに例えることができる。下垂体はブドウの大きさであって、そしてあなたの脳の底にある。それは内分泌臓器オーケストラの指揮者と呼ばれ、そしてそれは他の内分泌腺を統制する多くの異なったホルモンを分泌する。

[図2]
図2

われわれが今興味をもっているのはTSHとして知られている甲状腺刺激ホルモンである。TSHは血流に入って、貯蔵されている甲状腺ホルモンを放出させて、甲状腺ホルモンをさらに多く生産し、そのために血液中からもっと多くのヨードを取り込む。甲状腺細胞のこの刺激の結果として、血流での甲状腺ホルモンのレベルは上昇する。ちょうどサーモスタットが居間の温度が上昇したことを探知するように、TSHを分泌する脳下垂体の細胞は甲状腺ホルモンが上昇したことを感じる。甲状腺ホルモンのレベルがあるポイントに達したら、脳下垂体からのTSHの分泌は減らされる、そして暖房装置(甲状腺)は一生懸命働くのをやめる。これはフィードバック機構[図2]と呼ばれるものである。下垂体は血液中を循環している甲状腺ホルモンのレベルに非常に敏感である。下垂体は脳のより高位にある視床下部と呼ばれる小さい内分泌腺からの指令にも反応する。

甲状腺ホルモンは血液中で どういう形で存在するのか?

T3とT4は血液中をある特定のたんぱくにゆるく結合して運ばれる。あなたは甲状腺ホルモンを石炭トラック(ホルモンを運搬する蛋白)で運ばれる石炭と見なすことができる。2つのホルモンの99.9%以上がこのようにして運ばれる。しかしながら、運搬蛋白にくっついている限りは、ホルモンとしては働かない。最初にそれをトラックから取り出さない限り、石炭トラックの石炭を使うことができないように。甲状腺ホルモンがタンパク質からはずれた時、細胞に対して働くようになる。若干のホルモンでは、ホルモンの1%以下が運搬 たんぱくにくっつかなくて、まるで、あなたの血液中に浮いているようなものである。このくっついていないホルモンは生物学的に活性である。たんぱく結合しているいわゆるフリーホルモンは血液中のT4やT3を測るときに重要になるので、あなたはあとでまたこのことについて少し説明を受けるであろう。運搬たんぱくに変化があると、くっつくホルモンの量が変化してはたらきも変わる。

問題と解答

Q1. 甲状腺とは何か?
それはあなたの身体の細胞の活動をコントロールする小さい内分泌腺である。
Q2. 甲状腺はどこにあるか?
それは男性がネクタイを結ぶ位置にある。
Q3. 甲状腺は何をするか?
それは体の他の部分に運ばれる化学物質である甲状腺ホルモンを作り出す。
Q4. 何が甲状腺ホルモンの放出を調節しているのか?
血中の甲状腺ホルモンのレベルにより調節されている。もし 甲状腺ホルモンのレベルが下がれば、脳下垂体から甲状腺刺激ホルモン(TSH)を出して、甲状腺ホルモンの血液中のレベルを上げる。

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