序章:はじめに

はじめに

甲状腺の病気を持った人やその家族を対象としたこの本の第2版を出す気になったのは、2つの理由があります。ひとつは甲状腺の病気が多いこと、もうひとつは病気の正しい理解は心配を減らし、よりハッピーな人生を送れるからである。

甲状腺の病気はどれ位の頻度か?

甲状腺疾患の頻度は地域によって違うが、常に女性の方が多い。WHOによれば、全世界で甲状腺の腫れている人が2億人いると推定している。これらのほとんどは、ヨード不足地域の人である。ヨードの必要性については後程述べる。しかし、ヨードが十分な地域でも7%の人で甲状腺が腫れており、女性は男性の10倍である。イギリスでは、45歳以上の10%で甲状腺機能低下症の人が存在する。アメリカでは甲状腺のはたらきに異常(甲状腺ホルモンが高いか低いか)のある人は1,000万人いるといわれている。このように、甲状腺の病気は多く、そして重要なことは、この頻度(多さ)が正しく認識されていないことである。

なぜ自分の病気について知ることが必要か?

多くを知れば、不安は少なくなるからです。何が悪いかを知れば、治療の受け入れや協力もできるし、医師の助けにもなります。このことは、甲状腺の病気を持つひとにも当てはまります。

我々は甲状腺の病気を持つ人を対象にこの本を書きました。我々はまた、その家族も対象にしています。なぜなら、甲状腺の病気は家族内によくみられるためです。もし、両親、兄弟、おじ、おば、いとこなどに甲状腺の病気の人が居れば、あなたも将来、甲状腺の病気になる可能性があります。

自己診断は勧められませんが、あなたがもし、甲状腺の病気になりやすい条件を満たしているなら、また、この本に書いてある症状があるなら、すぐ医師に診てもらうことを勧めます。しかしながら、時として甲状腺の病気の症状は気付かない程ゆっくり発症し、変化もゆっくりしているので、自分自身や周りの人にも気付かれないことがある。

甲状腺がどのように働き、甲状腺ホルモンをどのように作るか、その調節はどのようにされているかを理解することはそれ程、難しいことではない。我々は内容をなるべく理解しやすいようにする努力をしたが、あまりにも簡略化して科学的正確性が損なわれないようにもにした。今回の第2版では、巻末に本書で使用される専門用語の説明を加えた。

まったく同じ患者は1人としていないので、医学は正確な意味では科学として成り立たない。同じ病気に対しても、それぞれで症状の出方が異なる。同様に、医師もそれぞれの患者に対して微妙に治療法を変える。ある人に効いた治療が他の人に必ずしも効くとは限らない。しかし、この本に書いてあることと自分が今受けている治療が違っているのではと心配することはありません。基本的な原則はほとんどの人にあてはまるので、記載と少し違っていても心配はありません。ですが、治療の細かい点は人種、設備、医療レベル、経済の違いによって施設間、国間で微妙に異なります。
甲状腺学は日々進歩し、検査法や治療法も変わっています。そのために、この第2版を出版することにしました。

個々の患者の希望や必要性を受け入れること、社会的および経済的要因、甲状腺疾患を持つ人の特異性が治療効果 に影響を与えるかもしれない。

この本の出版に協力してくれた英国や米国の研究者に感謝します。しかしながら、われわれが治療したり診察した患者さん達から学んだことが一番多いことは疑いのない事実です。彼等に感謝の意を表します。

最後に、最近甲状腺の病気の診断を受けて最初にこの本を読む患者さんに一言。あなたに関連した章から読み始めることをお勧めします。例えば、バセドウ病と診断されているなら《第4章》から読み始め、橋本病による甲状腺機能低下症なら《第7章》から読み始めるとよいでしょう。医者にまだ言ってない症状や自分で気付かなかった症状に気付くかもしれません。事実を知ることで安心するかもしれません。それから、本の初めに戻り《第1章》《第2章》から読み始めることをお勧めします。甲状腺のおおまかなところを理解するのに役立つでしょう。《第3章》で検査について知るでしょう。病気を理解することで治療に協力的になり、治療効果の自己評価もできます。

以下の人々にこの場で謝辞を述べたいと思います。

Keith Duguid氏 ; C.R.Bayliss先生 ; Robert H.Phillips先生

London
Newcastle upon Tyne
1991
R.I.S.B
W.M.G.T

書籍の翻訳

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